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イラン情勢の最新動向で深掘り分析【2026年5月版・愛媛経済編】 | プラスチックパレット株式会社
Regional Economy | Ehime Impact Report

イラン情勢の最新動向で深掘り分析
【2026年5月版・愛媛経済編】

2026年春のナフサショックは、愛媛経済を多重に圧迫している。製造品出荷額5兆5,931億円(四国最大規模)、新居浜・住友グループ企業城下町(住友化学・住友金属鉱山・住友重機械工業)、四国中央市の製紙業日本一(大王製紙・ユニ・チャーム集積)、西条市の日本製鉄・ルネサス・クラレ、今治造船(国内シェア35%・世界5.8%)・今治タオル、柑橘王国(いよかん・紅まどんな全国1位)、宇和島真鯛養殖全国シェア55.3%・1位、アコヤ真珠10年連続全国1位、道後温泉・しまなみ海道まで全産業に影響波及。愛媛独自の重層構造を一次ソースで深掘りした報道型レポート。愛媛経済編。

FIRST PUBLISHED: LAST UPDATED: CATEGORY: 地域経済・エリア別シリーズ・愛媛
Answer Block | 結論

2026年、愛媛経済は四国最大の重層産業構造(製造品出荷額5兆5,931億円)でナフサショックを受ける新居浜住友グループ四国中央市製紙日本一・西条素材産業・今治造船(国内35%・世界5.8%)・柑橘王国・宇和島真鯛養殖55.3%・1位・真珠10年連続1位・道後温泉まで影響波及。県内ガソリンは全国33位の中位水準。

製造品出荷額
5.59
兆円 / 2023年・四国最大
真鯛養殖 全国シェア
55.3
% / 全国1位(宇和島)
今治造船 国内シェア
35
% / 日本最大手・世界5.8%
非鉄金属 出荷額
1.46
兆円 / 25.9%・住友グループ

01愛媛経済を圧迫する6分野の構造

愛媛県の人口は約127万人、県内総生産(名目)約5兆1,381億円(令和4年)、製造品出荷額等は2023年に5兆5,931億円(全国第24位)で、四国最大の経済規模を持つ。基礎素材型の大企業集積(紙・パルプ、金・銅・ニッケル等非鉄金属、アルミナ等基礎化学、炭素繊維、アラミド繊維等高機能繊維)が県内産業の中核を形成し、加工組立型では造船業が盛ん。これら大企業を取り巻く中小機械産業群と地場産業(タオル・水引・柑橘・水産養殖)が重層的な経済構造を構成している。

Chemical | 化学・非鉄金属
新居浜 住友グループ企業城下町

新居浜市は江戸時代の別子銅山開坑(1690年)以来の住友グループ企業城下町で、住友金属鉱山・住友化学・住友重機械工業が集積。愛媛県製造品出荷額の25.9%(1兆4,641億円)を非鉄金属が占める産業構造。住友化学は2024年3月期上半期で966億円赤字、年間予想を100億円黒字から950億円赤字へ転換、新居浜事業のメチオニン収益不振で2025年3月までに2019年比3割の生産能力削減計画。2026年3月期は2期連続黒字(住友ファーマ売り上げ拡大)。ナフサショックは化学品事業の原料調達に影響。

住友グループ城下町 非鉄金属1.46兆円 住友化学
Paper | 製紙業日本一
四国中央市・大王製紙三島工場

四国中央市は製紙・紙加工業の製造品出荷額が日本一大王製紙の三島工場(年間生産210万トン・国内紙板紙8%シェア)が基幹工場、ユニ・チャーム・リンテックなど数多くの紙加工業者が集積、「紙製品なら、切手と紙幣以外は何でも作れる」と言われる集積地。2026年5月15日に大王製紙若林賴房社長が「供給に支障をきたさないよう薬品、資材ともに当面の必要量を確保」と表明、苛性ソーダ・ラテックスの海外調達を強化。2026年8月から家庭用・業務用全製品値上げを実施予定。

大王製紙210万t 国内シェア8% 8月全製品値上げ
Shipbuilding | 造船・素材
今治造船・西条素材産業群

今治市は今治造船(日本最大手・新造船竣工量シェア国内約35%・世界約5.8%)が拠点。瀬戸内海沿岸を中心にグループで10の造船所を保有、2026年3月日立造船マリンエンジンを子会社化。今治タオル産業も日本有数の集積。西条市は日本製鉄瀬戸内製鉄所(高耐食表面処理鋼板)、ルネサスセミコンダクタ西条工場(システムLSI)、クラレ西条事業所(液晶偏光膜用フィルム)、花王サニタリープロダクツ愛媛が集積。船舶用塗料・FRP・配管樹脂のナフサ由来資材コスト上昇が直撃。

今治造船国内35% 世界5.8% 西条素材集積
Citrus | 柑橘王国
いよかん・紅まどんな・河内晩柑 全国1位

愛媛県は柑橘王国として全国に知られ、いよかん・河内晩柑・ぽんかん・清見・はだか麦・愛媛果試第28号(紅まどんな)の生産量が全国1位。レモンは全国2位(広島県に次ぐ)。農業産出額1,244億円のうち果実が553億円(全体の4割・全国6位)。紅まどんなは愛媛県内限定生産で贈答品として高人気、ゼリーのようなプルプル食感が特徴。ナフサショックは農業機械燃料、ハウス栽培暖房灯油、農業用フィルム、出荷用段ボール・PEフィルム・PPバンドの値上げで多面的に影響。

いよかん全国1位 紅まどんな 果実553億円
Fishery | 養殖業全国1位
宇和島真鯛55.3%・真珠10年連続1位

愛媛は四国・全国でも特異な養殖業全国1位の県。魚類養殖業 全国シェア23.6%・1位、海面養殖業生産額全国シェア12.3%・1位。真鯛(まだい)養殖 全国シェア55.3%・1位(1990年以降連続)、宇和島市・愛南町の宇和海が主産地。しまあじ全国シェア52.3%・1位アコヤ真珠:10年連続全国1位、真珠母貝供給県として1992年以降70%以上のシェア・連続全国1位。「鯛一郎クン」「ふかうら真鯛」等のブランド養殖。ナフサショックは養殖いかだ・養殖網(PE/PP/ナイロン)、漁船A重油、配合飼料、鮮魚輸送発泡スチロール・PE保冷容器の値上げで影響。

真鯛55.3% 真珠10年連続1位 宇和島・愛南
Tourism | 観光業
道後温泉・しまなみ海道・松山城

愛媛観光の中核は道後温泉(日本最古の名湯)・松山城・しまなみ海道。道後温泉本館は2024年7月11日に約5年半の保存修理工事を経て全館営業を再開、加温・加水をしない新鮮な湯を提供。しまなみ海道(今治〜尾道全長約60km)は世界中からサイクリストが集まる人気スポットで、大島・伯方島・大三島が愛媛県側。来島海峡大橋・多々羅大橋等の橋梁群が観光資源。宇和島鯛めし・じゃこ天・松山郷土料理も観光集客力を持つ。ナフサショックは航空便燃料サーチャージ、フェリー・観光バス・レンタカー燃料費、ホテル電気代、お土産包装資材の値上げで複合的に影響。

道後温泉本館再開 しまなみ海道 松山城
Structural Note | 愛媛独自の構造

愛媛がナフサショックの影響を独自の経路で受ける理由は3つ。(a) 四国最大の製造業集積:新居浜住友グループ・四国中央市製紙日本一・西条市素材産業群・今治造船という4大製造拠点が県内に集中、原料コスト上昇が県経済全体に波及、(b) 柑橘王国+養殖業全国1位:いよかん・紅まどんな全国1位、真鯛養殖全国シェア55.3%、真珠10年連続1位という全国シェア1位品目の集積、(c) 道後温泉・しまなみ海道の観光資源:2024年道後温泉本館再開、しまなみ海道インバウンド需要回復という観光需要拡大期にナフサショックが重なる微妙な局面。これら3要素の重なりが、愛媛経済の独自構造を形成している。

02新居浜・住友グループと四国中央市の製紙業日本一

愛媛県の製造業の中核を形成するのは、新居浜市の住友グループ企業城下町と四国中央市の製紙業集積である。本章ではこの2大製造拠点へのナフサショック影響を整理する。

愛媛県製造業の業種別構造(2023年)

業種 出荷額・シェア 主要産地・特徴
非鉄金属 1兆4,641億円・25.9%(最大) 新居浜市・住友金属鉱山等
パルプ・紙 従業者数10,871人・13.3% 四国中央市・大王製紙等
食料品 事業所数381・従業者14,431人・17.7% 県内各地・地場食品
生産用機械 従業者8,114人・9.9% 新居浜・松山等
繊維 従業者8,058人・9.9% 今治タオル・西条衣料等
輸送用機械 船舶を中心とした集積 今治造船・西条工場
出典:愛媛県「2024年経済構造実態調査(製造業)」(2025年8月29日公表)

新居浜市──住友グループ企業城下町

新居浜市は江戸時代の別子銅山開坑(1690年)以来、住友金属鉱山住友化学住友重機械工業といった住友グループの企業城下町として名高い地域である。非鉄金属や化学関連、小惑星探査機の物質採取装置製造企業など技術力の高い中小機械産業群が形成されている。住友グループ各社の事業は、ナフサ・原油・LNG等の原料コスト上昇の影響を生産現場で直接受ける構造である。

住友化学 2024〜2026年の経営動向

住友化学は2024年3月期上半期(4月〜9月)に966億円のコア営業損益赤字を計上、2024年3月期の業績予想を100億円黒字から950億円赤字へ1,050億円引き下げる修正を発表した。新居浜の事業は、収益が多いメチオニンの不振が続き、2025年3月までに2019年3月期末比3割の生産能力削減計画を発表。新居浜市議会では従業員の配置転換・希望退職募集・派遣職員雇用止めの可能性、市の法人税収入減への影響が議論された。

その後の状況:2026年3月期連結決算では2期連続黒字に転換(住友ファーマの売り上げ拡大が貢献)。新居浜事業はナフサショックを通じた原料コスト上昇への対応と、メチオニン事業の構造改革の両軸での経営課題に直面している。

四国中央市──製紙業の製造品出荷額日本一

四国中央市は伝統的な水引工芸から紙・パルプの大型工場を有する大王製紙など、高度な最先端分野まで網羅する全国でも有数の紙の産地で、製紙・紙加工業の製造品出荷額等は日本一を誇る。大王製紙の三島工場は基幹工場で、紙・板紙をパルプから一貫生産・年間生産量約210万トン・国内紙板紙生産量の約8%のシェアを持つ。

同市にはユニ・チャーム(株)・リンテック(株)など数多くの紙加工業者が集積し、「紙製品なら、切手と紙幣以外は何でも作れる」といわれるほど、生産品目が多岐にわたる。ナフサショックの影響は、(a) パルプ製造工程の燃料・電気代、(b) 紙コーティング剤・粘着剤・接着剤等のナフサ由来資材、(c) 紙加工製品(紙オムツ・生理用品・衛生用品)のSAP・不織布・包装フィルム、(d) 苛性ソーダ・ラテックス等の薬品原料、と多面的に進行する。

大王製紙 2026年春の対応

2026年5月15日、大王製紙の若林賴房社長は戦略説明会で中東情勢への対応を明示した:

「供給に支障をきたさないよう薬品、資材ともに当面の必要量を確保しており、現時点で生産継続に向けた態勢は整っている。原油や液化天然ガス(LNG)の依存度は低く、エネルギー面での調達や仕入れコストの影響は大きくない。一方、生産に不可欠な苛性ソーダやラテックスは国内での調達に限界があり、サプライチェーンを海外に広げ安価な製品を集めることに注力している。」
── 愛媛新聞ONLINE「大王製紙『薬品・資材ともに必要量確保』 中東情勢受け戦略説明会で言及」(2026年5月15日)

さらに大王製紙はNHKの報道によれば、2026年8月から家庭用・業務用のすべての製品を値上げすると発表。中東情勢の緊迫化の影響で原材料や資材の調達価格が上昇していることが理由としている。

西条市──最先端素材産業の集積地

西条市は高耐食表面処理鋼板の開発・生産拠点である日本製鉄(株)瀬戸内製鉄所システムLSI製品等を製造するルネサスセミコンダクタマニュファクチュアリング(株)西条工場液晶偏光膜用フィルムのリーディング企業である(株)クラレ西条事業所花王サニタリープロダクツ愛媛(株)等の大手企業が集積する工業地域で、近年最も企業立地が活発な地域となっている。各企業ともナフサ・原油由来原料の調達コスト上昇影響圏にある。

03今治造船・今治タオル──愛媛が誇る世界トップ産業

今治市は日本最大手の造船企業と日本有数のタオル産地という2大基幹産業を擁する独自の経済構造を持つ。本章では今治の主要産業のナフサショック影響を整理する。

今治造船──日本最大手の造船メーカー

今治造船株式会社は、愛媛県今治市に本社を置く日本最大手の造船メーカー。愛媛県・香川県・広島県・山口県・大分県の瀬戸内海沿岸を中心にグループで10の造船所を保有している。1959年に檜垣正一が代表に就任以後は檜垣家が代表を務めるオーナー企業であり、非上場企業である。

今治造船グループの拠点

拠点 所在地 備考
今治工場(本社) 愛媛県今治市小浦町 主拠点
丸亀事業本部 香川県丸亀市昭和町 3事業部(昭和町・蓬莱町・西多度津)
西条工場 愛媛県西条市ひうち 2事業部(本工場・東ひうち事業部)
広島工場 広島県三原市 瀬戸内拠点
関係会社 岩城造船・しまなみ造船・あいえす造船(愛媛)等 グループ10造船所

2023年度の新造船竣工量シェアは国内約35%、世界約5.8%と、圧倒的な規模を誇る。1980年代に造船業界が不況に陥り、大手がドックを削減し新事業にシフトする中で生産能力を維持・拡大し、現在の業界ポジションを確立した。2026年3月には日立造船マリンエンジンの株式を追加取得し、子会社化している。

造船業へのナフサショック影響

造船業へのナフサショック影響は多面的:

  • 船舶用塗料・防錆塗料:ナフサ由来の樹脂系塗料
  • 配管樹脂・FRP船舶部材:船内配管・防水隔壁
  • 船内設備のプラスチック部品:内装・断熱材・空調ダクト
  • 電気配線の被覆材:PE/PVC被覆ケーブル
  • 燃料費:造船所内クレーン・重機・運搬車両の燃料
  • 溶接ガス・溶接資材:エネルギー集約型工程の運営コスト

今治タオル産業

今治市は日本有数のタオル産地として知られ、今治タオルブランドが全国・海外で高評価。今治タオル専門店「伊織」など、商店街・道後温泉エリアでも商品が展開される。ナフサショックの影響は、(a) 原料綿糸・染料、(b) 染色工程の燃料・電気代、(c) 包装フィルム・梱包資材、(d) 県外・海外出荷の輸送コストと多面的に進行。日本製織物として世界市場でのブランド力を持つ製品群に対するコスト圧力が、価格転嫁の難しさという経営課題を生む構造である。

04柑橘王国──いよかん・紅まどんな全国1位

愛媛県は四国の柑橘産地として古くから知られ、現在も全国シェア上位の柑橘類を多数産する。本章では愛媛農業の構造とナフサショック影響を整理する。

愛媛県の主要農産物(一次データ)

項目 数値・状況 備考
愛媛県農業産出額 1,244億円 令和3年
果実産出額 553億円(全体の4割・全国6位) 農業の中核
いよかん(伊予柑) 全国1位 愛媛の代表的柑橘
河内晩柑 全国1位 夏みかんの一種
ぽんかん・清見 全国1位 中晩柑類
紅まどんな(愛媛果試第28号) 全国1位・愛媛県内限定生産 贈答品高人気
はだか麦 全国1位 麦類
レモン 全国2位(広島県に次ぐ) 柑橘類
出典:愛媛県「数字で見る愛媛県」、いよ観ネット(愛媛県公式観光サイト)

紅まどんな(愛媛果試第28号)──県内限定生産の高級柑橘

紅まどんなの品種名は「愛媛果試第28号」といい、愛媛県内限定の生産のため、非常に希少価値が高いみかん。果肉はゼリーのようにプルプルなめらかで、酸味が少なく濃厚な甘みが特徴。中晩柑の中でも登場時期が早く、11月の中旬ごろから出荷が始まる。見た目の良さ・味の良さ・年末という時期の良さから、贈答品としても人気である。

柑橘類のラインアップ(中晩柑類含む)

愛媛では一年を通して柑橘を楽しめる多様な品種を展開:

  • いよかん(伊予柑):「伊予」は愛媛県の昔の呼び方、甘み・酸味のバランスが良い
  • 不知火(デコポン):ポンカンと清見を交配
  • 清見:温州みかんとオレンジ系の交配種
  • 紅まどんな:県内限定生産・贈答品高人気
  • 甘平:濃い甘さ
  • せとか:「柑橘の大トロ」と呼ばれる
  • はるみ:プチプチ食感
  • はれひめ:清見・オセオラオレンジ・温州みかんの掛け合わせ

農業へのナフサショック影響

愛媛農業はナフサショックの影響を以下5項目で受ける:

  • 農業機械燃料:トラクター・運搬車・収穫機・スプレーヤー等の軽油・ガソリン
  • ハウス栽培の暖房用灯油:温州みかん・紅まどんな・せとか等の施設栽培
  • 農業用プラスチック資材:マルチフィルム・トンネル資材・防鳥網・育苗ポット
  • 農薬・肥料:化学肥料・農薬の原料コスト上昇
  • 出荷用包装資材:贈答用化粧箱・段ボール・PEフィルム・PPバンド・冷蔵輸送容器

紅まどんなのような贈答用高級柑橘では、外箱・内張り・果実保護パッキング等の包装資材の品質と価格が経営に直結する構造のため、ナフサショック影響の透明な開示と販売価格への適正転嫁が経営課題となっている。

05養殖業全国1位──宇和島真鯛・愛南しまあじ・アコヤ真珠

愛媛県は四国・全国でも特異な養殖業全国1位の県である。本章では愛媛の養殖業構造とナフサショック影響を整理する。

愛媛県の養殖業 全国シェア(一次データ)

項目 愛媛県生産量・シェア 全国順位
漁業総生産 14万2,461トン・851億円(シェア3.4%/5.8%) 全国7位/3位
海面養殖業 6万2,762トン・614億円(シェア6.4%/12.3%) 全国7位/1位
魚類養殖業 5万8,377トン・539億円(シェア23.6%/21.3%) 全国1位/1位
まだい(真鯛)養殖 3万4,767トン・304億円(シェア55.3%/55.2%) 全国1位
しまあじ養殖 2,318トン・28億円(シェア52.3%/43.6%) 全国1位
ぶり類養殖 1万8,596トン・162億円(シェア13.4%/13.6%) 全国3位/2位
真珠生産 7.7貫(シェア38.1%) 全国1位(10年連続)
出典:規制改革推進会議「愛媛県の魚類養殖業の課題と対応策」(2020年)、愛媛百貨選

宇和島真鯛──全国シェア55.3%・1位

愛媛県の真鯛(まだい)養殖は1990年以降生産量日本一を誇り、全国シェア55.3%(3万4,767トン)瀬戸内海と黒潮が流れ込む宇和海は養殖に最適で、リアス式海岸の複雑な地形と豊富なプランクトンが真鯛の成長を促し、旨みを凝縮させる構造。宇和島市・愛南町が主産地。高速道路ネットワーク(瀬戸大橋・神戸淡路鳴門自動車道)の整備により、鮮度抜群の真鯛が全国へ届けられる流通体制が確立されている。

ブランド真鯛の展開

  • 鯛一郎クン(宇和島産):消化速度や栄養分を考えた餌で健康に育成
  • ふかうら真鯛(愛南町産):全国で初めて考案・導入された「鯛専用自動〆機」で鮮度を長時間保持
  • その他オリジナル名がつけられた養殖鯛が多数

愛媛真珠──10年連続全国1位

愛媛県のアコヤ真珠は生産量10年連続全国1位。リアス式海岸による深い入り江を有する宇和海は、波や風が穏やかで栄養豊富なため、アコヤ貝の養殖に適した海域。明治40年(1907年)に真円真珠形成の特許出願後、愛媛県でも真珠養殖事業がスタート、約8年で商品としての真円真珠の算出に成功した。

戦後、昭和31年以降のいわし・あじ・さばの回遊量激減を受け、愛媛県は真珠母貝養殖に転換。1992年以降70%以上のシェアを誇り、連続で全国1位の真珠母貝供給県として、養殖真珠産業の発展と保存に貢献している。日本全国の名だたる真珠加工会社が"愛媛品質"を求めて買い付けに訪れる。

水産業へのナフサショック影響

工程 影響を受ける主要コスト 素材・燃料の由来
① 養殖設備 養殖いかだ・養殖網・ロープ・浮き玉 ナイロン・ポリエステル・PE・PP(ナフサ由来)
② 漁船・操業 A重油・軽油・潤滑油・エンジンメンテナンス 原油直結
③ 配合飼料 魚粉・植物由来原料の海外調達コスト上昇 海上輸送費・為替変動
④ 鮮魚輸送 発泡スチロール容器・PE保冷容器・活魚水槽 ポリスチレン・ポリエチレン(ナフサ由来)
⑤ 流通・販売(県外出荷) トラック燃料・冷蔵車・段ボール 軽油・紙資材
「愛媛県は真珠の養殖に必要な『真珠母貝』の供給県として1992年以降70%以上のシェアを誇り、連続で全国1位となるなど、養殖真珠をとりまく産業の発展と保存に貢献しています。」
── Uwajima Inoue Pearl「真珠生産地愛媛宇和島のパール専門店」

06観光業──道後温泉本館2024年再開・しまなみ海道

愛媛観光は2024年に重要な転換点を迎えた。道後温泉本館の全館営業再開と、しまなみ海道インバウンド需要の本格回復が重なる局面である。本章では愛媛観光のナフサショック影響を整理する。

愛媛観光の主要資源

観光資源 規模・特徴 備考
道後温泉本館 日本最古の名湯・国の重要文化財 2024年7月11日全館営業再開(約5年半の保存修理工事完了)
道後温泉飛鳥乃湯泉 新しい姉妹施設・現代的設備 本館の混雑緩和機能
松山城 日本の名城百選・現存十二天守の一つ 松山市中心部
しまなみ海道 今治〜尾道全長約60km・10橋の橋梁群 世界中からサイクリスト集結
来島海峡大橋 世界初の三連吊り橋 愛媛側の景観スポット
大三島・大島・伯方島 しまなみ海道の愛媛側3島 大山祇神社等の歴史資源
多々羅大橋 橋長1,480m・20世紀斜張橋世界最大 「鳴き龍」現象も有名
佐田岬半島 日本一細長い半島 愛媛南予の自然観光

道後温泉本館 2024年7月再開の意義

道後温泉本館は2024年7月11日に約5年半におよぶ保存修理工事を経て全館営業を再開した。加温・加水をしない新鮮な湯が自慢で、「日本書紀」や「万葉集」にもその名が記されている歴史を持つ日本最古の名湯。国の重要文化財にして現役の公衆浴場でもある。映画「千と千尋の神隠し」のモデルの一つとも言われ、インバウンド観光客にも人気である。

道後温泉エリアには本館に加えて道後温泉飛鳥乃湯泉などの新しい姉妹施設、商店街「道後ハイカラ通り」、今治タオル専門店「伊織 本店」、伊予鉄道道後温泉駅から徒歩圏内の宿泊施設群が集積する観光クラスタを形成している。

しまなみ海道──世界中のサイクリストを集める観光資源

しまなみ海道は愛媛県今治市から広島県尾道市までの島々をつなぐ全長約60〜70kmの道で、瀬戸内海の景色を楽しみながらドライブやサイクリングができる人気スポット。世界中から多くのサイクリストが集まる。愛媛側には大島・伯方島・大三島が位置する。主要な観光スポット:

  • 来島海峡大橋:世界初の三連吊り橋
  • 多々羅大橋:20世紀斜張橋世界最大、「鳴き龍」現象
  • 亀老山展望公園:絶景の展望スポット
  • 大山祇神社:大三島の歴史的神社
  • レンタサイクル:橋を渡りながら愛媛・広島県境越え

愛媛グルメ・観光資源

観光客向けの愛媛グルメ:宇和島鯛めし松山鯛めしじゃこ天(農林水産省選定郷土料理百選)・海賊うどん・道後天丼御膳・愛媛みかんジュース(蛇口からみかんジュースも観光名物)。今治タオル製品・愛媛みかん・紅まどんな等の柑橘類・アコヤ真珠アクセサリーが土産品として人気である。

観光業への6つの影響経路

ナフサショックの観光業への影響:

  • ① 航空便の燃料サーチャージ上昇:松山空港〜羽田・関西等の運賃上昇
  • ② フェリー・観光船の燃料費:松山〜広島・しまなみ海道周辺航路
  • ③ 観光バス・レンタカー・レンタサイクル:県内移動コスト
  • ④ 宿泊施設の電気代・空調・暖房コスト:道後温泉旅館等の固定費
  • ⑤ 観光土産の包装資材値上げ:今治タオル・柑橘加工品・真珠アクセサリーのパッケージ
  • ⑥ 飲食店の食材コスト:鯛めし・じゃこ天等のご当地グルメ提供コスト

07県民生活・立場別の対応ポイント

ナフサショックの愛媛経済への影響に対する立場別の対応ポイントを整理する。本記事は特定の経営・調達判断を推奨するものではないが、四国経済産業局・愛媛県・業界団体の公式情報から読み取れる実務的アプローチをまとめる。

愛媛県内ガソリン価格の動向

愛媛県内のガソリン価格は新電力ネットの2026年2月9日〜5月11日集計で全国33位(レギュラー・同率有)、ハイオク34位、軽油34位と、全国中位の水準で推移。同じ四国でも香川県(レギュラー全国13位)より安く、徳島県(同40位)より高い構造である。2026年3月の中東情勢悪化を受けて全国平均ガソリン価格は190.8円(3月16日時点)まで急騰したが、政府の170円抑制補助制度実施により、2026年5月25日時点の全国平均ガソリン価格は169.2円で抑制効果が継続している。

① 県民・家庭の視点

  • 政府ガソリン補助制度の店頭反映を注視:170円抑制補助の効果が県内価格に反映されているか確認
  • 家計の燃料・電気代の最適化:エネルギー効率改善・省エネ家電への切替
  • 愛媛県消費者協会の物価動向確認:県内の食料品・日用品の価格動向を継続把握
  • 地産地消の活用:愛媛みかん・宇和島真鯛・じゃこ天等の地元食材活用で物流コスト最適化

② 県内事業者・中小企業の視点

  • 四国経済産業局の特別相談窓口活用:中東・ウクライナ情勢・原油高の影響を受けた中小・小規模事業者向け相談
  • 日本政策金融公庫等のセーフティネット貸付:金利引下げ対象拡大(2026年4月以降、中東情勢影響事業者も対象)
  • 価格交渉促進月間(毎年9月・3月)の活用:下請Gメンによるヒアリング、価格転嫁の促進
  • 2026年1月施行の中小受託取引適正化法・受託中小企業振興法の活用
  • 愛媛県中小企業団体中央会を通じた共同調達・情報交換

③ 製造業(住友グループ・大王製紙・今治造船・西条素材産業等)の視点

  • サプライチェーンの海外拡大:大王製紙が表明したような苛性ソーダ・ラテックス等の調達多元化
  • 長期契約・先行確保:燃料・原料の価格変動リスク軽減
  • サーキュラーエコノミー対応資材への切替検討:再生原料活用パレット・包装資材の評価
  • GX(グリーントランスフォーメーション)投資:再生可能エネルギーへのシフトと先端設備投資
  • 適切な価格転嫁:大王製紙2026年8月全製品値上げ等の前例を踏まえた価格戦略

④ 一次産業(柑橘農家・養殖業者)の視点

  • JAえひめ等を通じた共同調達:燃料・資材の一括調達のコストメリット
  • 農林水産省・水産庁の補助金制度:燃料補助・配合飼料補助等の確認
  • 愛媛県農林水産部の支援策:技術相談・スマート農業・養殖業支援
  • ブランド戦略の継続強化:紅まどんな・鯛一郎クン・ふかうら真鯛・愛媛アコヤ真珠の価値訴求
  • 長期契約・先行確保:配合飼料・燃料・資材の価格変動リスク軽減

⑤ 観光事業者の視点

  • 道後温泉本館再開機会の活用:2024年7月再開を経た観光集客機会の最大化
  • しまなみ海道インバウンド需要対応:サイクリスト・海外観光客向けのサービス強化
  • 燃料サーチャージの透明な開示:宿泊料金・パッケージツアー料金の構造を顧客に明示
  • 業務効率化での吸収:DX導入・予約システム高度化での生産性向上
  • 愛媛県観光協会・いよ観ネットの支援策活用:観光振興・受入体制整備の支援
Common Principle | 全立場の共通原則

立場を問わず2026年に共通するのは、「愛媛独自の重層産業構造(製造業+柑橘・水産業+観光)を踏まえた早期対応」の重要性である。新居浜住友グループ・四国中央市製紙日本一・今治造船・西条素材産業群という大企業集積と、柑橘王国・宇和島真鯛養殖・真珠10年連続1位という地場特産品クラスタ、道後温泉・しまなみ海道という観光資源が、ナフサショックの影響を独自の経路で受ける構造を形成する。四国経済産業局・愛媛県の支援窓口を積極活用し、3〜5年の中長期視点での対応戦略を組み立てることが、県内経済全体としての持続可能性に直結する。

082026年下半期〜2027年の愛媛経済見通し

愛媛経済の動向は、短期・中期・長期で異なるシナリオが想定される。現時点で報じられている各種データから読み取れる見通しを整理する。

Short-Term | 2026年6〜10月
大王製紙8月全製品値上げと夏期観光

2026年8月から大王製紙が家庭用・業務用全製品値上げを実施、紙製品全般の値上げ波が県内・全国に波及。夏期は道後温泉・しまなみ海道の観光ピーク期で、航空・フェリー・観光バス・宿泊施設の燃料費・電気代の上昇圧力。柑橘ハウス栽培の暖房準備期、宇和島真鯛・愛媛真珠の出荷期。住友化学のメチオニン構造改革と新居浜事業の動向が焦点。

Mid-Term | 2026年11〜2027年3月
紅まどんな出荷・道後温泉冬期需要

11月中旬から紅まどんな出荷開始、贈答需要期。今治造船・大王製紙・住友化学は2026年度業績の確定期。ナフサショック後の「新標準」を前提とした2027年度事業計画策定の局面。冬期は道後温泉の集客ピーク、しまなみ海道は閑散期で観光業のオフシーズン対応が課題。住友化学の2026年3月期連結決算結果が経済全体に影響。

Long-Term | 2027年以降
GX投資・サステナブル養殖・観光通年化

愛媛県の特性を生かしたエネルギー転換が進む。新居浜住友グループ・四国中央市製紙業のGX投資、今治造船の脱炭素船舶・LNG船建造拡大、西条素材産業の高付加価値化。一次産業では宇和島真鯛養殖のスマート化、紅まどんな等高級柑橘のブランド海外展開、愛媛アコヤ真珠のジュエリーブランド強化。観光業では道後温泉本館再開を生かした通年型集客モデル、しまなみ海道のサステナブルツーリズム化が進む。

業界各種レポート・愛媛県の各種資料が共通して示すのは、2026年内に愛媛経済への原油・ナフサ価格高騰の影響が中東情勢悪化前の水準に戻る見込みは薄いという認識である。値上げ・規制・制度対応後の「新標準」を前提とした県民・県内事業者・自治体の事業設計が、本県全体の持続可能性に直結する局面に入った。

出典・エビデンス一覧

  1. 愛媛県「2024年経済構造実態調査 製造業事業所調査の愛媛県分抜粋」https://www.pref.ehime.jp/page/126515.html
  2. 愛媛県「2024年経済構造実態調査(製造業)の愛媛県分結果の要約」https://www.pref.ehime.jp/uploaded/attachment/161947.pdf
  3. 愛媛県「えひめが誇るスゴ技 愛媛ものづくり産業紹介」https://www.sugowaza-ehime.com/monodukuri.php
  4. 事業構想オンライン「数字で見る愛媛県 タオル・造船・製紙など多様な地場産業」https://www.projectdesign.jp/articles/d9c80e12-60bf-41c5-bc6e-04d2bf6466a7
  5. 新居浜市「今後の本市の経済について(住友化学関連)」https://www.city.niihama.lg.jp/gikai7/r0512-66.html
  6. ジェトロ「愛媛県 地域への投資とビジネスチャンス」https://www.jetro.go.jp/invest/region/data/ehime.html
  7. 大王製紙株式会社「主要拠点」https://www.daio-paper.co.jp/company/base/
  8. 愛媛新聞ONLINE「大王製紙『薬品・資材ともに必要量確保』 中東情勢受け戦略説明会で言及」(2026年5月15日)https://www.ehime-np.co.jp/article/news202605150197
  9. 今治造船株式会社 公式サイトhttps://www.imazo.co.jp/
  10. 今治造船Wikipedia「会社概要・拠点・株式取得」https://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%BB%8A%E6%B2%BB%E9%80%A0%E8%88%B9
  11. いよ観ネット(愛媛県公式観光サイト)「みかん 種類や食べ方」https://www.iyokannet.jp/feature/mikan/type
  12. いよ観ネット「愛媛県の鯛がおいしい理由」https://www.iyokannet.jp/feature/tai/reason
  13. 規制改革推進会議 農林水産WG「愛媛県の魚類養殖業の課題と対応策」https://www8.cao.go.jp/kisei-kaikaku/kisei/meeting/wg/nousui/20200122/200122nousui02.pdf
  14. 愛媛百貨選「愛媛県産真珠 日本一の養殖産地から」https://ehime-hyakka.com/stories/12/
  15. 瀬戸マーレ「国内外で需要が拡大 愛媛県の養殖真鯛は生産量日本一」https://www.jb-honshi.co.jp/kanko/seto_mare/se_travel/anniv01/index.html
  16. Uwajima Inoue Pearl「真珠生産地愛媛宇和島のパール専門店」https://i-pearl.co.jp/lp2/
  17. 新電力ネット「愛媛県のガソリン価格推移一覧」https://pps-net.org/oilstand/ehime
  18. 松山観光コンベンション協会「しまなみ海道観光モデルコース」https://www.mcvb.jp/kankou/model/plan_shimanami.html
  19. 中小企業庁「中東情勢等を踏まえた中小企業・小規模事業者向け支援について」https://www.chusho.meti.go.jp/keiei/antei/kokusai_josei/
  20. 経済産業省「中東情勢を踏まえた燃料油・石油製品の安定供給確保」(2026年4月30日)https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/chyutoujyousei/dai6/pdf/siryou1.pdf
  21. actibook「2026年『ナフサ不足』の影響と実態」https://actibook.cloudcircus.jp/media/column/2026-naphtha-crisis
  22. ガソリン補助金「ガソリン全国平均価格の推移」https://nenryo-teigakuhikisage.go.jp/current_graph.pdf
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