透析患者33万7,414人を支える医療資材のナフサ依存構造、114品目中111品目が解決に至った2026年7月までの経緯と診療報酬改定20点引き下げの同時進行
ダイアライザーの中空糸膜から血液回路、透析チューブに至るまで、透析医療を構成する資材はいずれもナフサを起点とする石油化学由来の樹脂である。患者33万7,414人・調査対象4,512施設(いずれも2024年末)という規模を支える供給網が2026年にどう動いたのか。厚生労働省と日本透析医学会の一次資料をもとに、資材面と診療報酬面の2つの軸で記録する。
TL;DR — 3行要約
- 厚生労働省が2026年7月20日時点で整理した資料では、安定供給に影響があると判断された114品目のうち98品目が解決済み、13品目が解決の道筋に到達し、対応検討中は3品目まで減少した。
- 透析関連ではダイアライザーの製造用溶剤、透析用注射針の滅菌用ガス、透析装置洗浄剤の容器、透析チューブの4件がいずれも解決済みに区分され、制約が生じたのは製品そのものより製造工程に用いる溶剤・ガスの層であった。
- 資材面が収束に向かう一方、2026年度診療報酬改定では慢性維持透析(J038)が全区分一律20点引き下げとなり、施設側は加算取得による水準維持を求められる構造に移行した。
厚生労働省が2026年7月20日時点で整理した資料では、供給に影響があると判断された114品目のうち111品目が解決済みまたは解決の道筋に到達し、透析関連4件もすべて解決済みに区分された。同時に2026年度診療報酬改定で慢性維持透析は一律20点引き下げとなり、資材と収益の両面で構造が動いている。
CONTENTS
日本透析医学会
厚生労働省
2026年度改定
為替163.32円
CHAPTER 012026年の経過、封鎖から供給確保策までの時系列
2026年2月末のホルムズ海峡封鎖を起点として、日本の石油化学原料の調達構造が変化した。その影響は数週間の時差を置いて医療現場に到達し、政府は3月末から医療分野に特化した供給確保の枠組みを立ち上げている。透析医療は、治療の中断が短期間で生命に関わる領域であるため、この枠組みのなかで繰り返し名指しされてきた。
以下に、2026年2月末から7月24日までの主要な意思決定を時系列で整理する。日付は各機関の公表資料に基づく。
| 日付 | 主体 | 内容 |
|---|---|---|
| 2026-03-24 | 内閣官房 | 中東情勢に関する関係閣僚会議(第1回)開催。中東地域の航行の安全とエネルギーの安定供給確保を目的に設置。 |
| 2026-03-30 | 経済産業省 | 石油関連製品の製造者・卸業者等に対し、医療用途を中心とした安定供給確保への協力を要請。ポリエチレン等の安定供給と、医療機関への偏りのない供給を取引先にも促すよう求めた。 |
| 2026-03-31 | 内閣官房/厚生労働省/経済産業省 | 関係閣僚会議(第2回)で高市首相が、輸血パック等の医薬品、透析回路や注射器等の医療機器、医療用手袋等の医療物資について安定供給確保を指示。同日、厚生労働省と経済産業省が「中東情勢の影響を受ける医薬品、医療機器、医療物資等の確保対策本部」を設置し初会合を開催。 |
| 2026-04-02 | 内閣官房 | 中東情勢に伴う重要物資の安定的な供給確保のためのタスクフォース(第1回)開催。 |
| 2026-04-09 | 厚生労働省/内閣官房 | 確保対策本部(第2回)で、製造販売業者・医療機関等からの情報提供窓口の設置、医療機関での定点観測、EMISを用いたオンライン報告システムの整備を説明。同日タスクフォース(第2回)開催。 |
| 2026-04-16 | 厚生労働省/経済産業省 | 医療機関向けイソプロパノール消毒液、人工透析用ダイアライザーの製造に用いる溶剤など5品目について当面の供給停止リスクを解消したと発表。同日の関係閣僚会議(第4回)で医療用手袋の備蓄放出を決定。 |
| 2026-05-14 | 厚生労働省 | 医療用手袋の備蓄放出に関する事務連絡を発出。 |
| 2026-05-18 | 厚生労働省 | 医療機関等からの手袋要請受付を開始(放出量5,000万枚)。 |
| 2026-05-23 | 厚生労働省 | 備蓄手袋の配布を開始。以降、手袋類の相談件数は減少傾向に転じる。 |
| 2026-05-29 | 厚生労働省 | 薬局・医療機関およびメーカー・卸業者あてに、当面の必要量に見合う量のみを発注・受注する等の適切な対応を求める通知を発出。 |
| 2026-06-09 | 厚生労働省 | 分包紙について、メーカーによる優先供給の仕組みを開始。 |
| 2026-06-18 | 厚生労働省 | 薬剤容器について、同様の優先供給の仕組みを開始。 |
| 2026-06-22 | 厚生労働省 | 手袋の購入実績で約6割がSサイズであったことを受け、追加分のSサイズ2,000万枚の順次放出を開始。 |
| 2026-06-26 | 内閣官房 | 中東情勢に関する関係閣僚会議(第11回)開催。 |
| 2026-07-02 | 厚生労働省/経済産業省 | アイソレーションガウン、紙エプロン、サージカルマスクについて「販売可能な通販サイト」リストの提供を開始。 |
| 2026-07-08 | 厚生労働省/経済産業省 | 注射器、翼付き注射針等、輸液セット、滅菌バッグ等、歯科用注射針、針捨てボックスについて同リストの提供を開始。 |
| 2026-07-20 | 厚生労働省 | 医療分野の影響・対応の集計時点。相談総数14,316事業者、供給に影響があると判断された品目114件。 |
| 2026-07-24 | 内閣官房 | 重要物資の安定的な供給確保のためのタスクフォース(第3回)を持ち回りで開催。上記集計を含む各省提出資料を公表。 |
出典:内閣官房「中東情勢に関する対応」、厚生労働省・経済産業省の各公表資料。日付は開催日または公表日。
- 透析は初期段階から名指しされた領域である。3月31日の関係閣僚会議では、輸血パック・注射器と並んで透析回路が具体的に挙げられている。品目の一般名で指示が出た例は限られる。
- 解決の主軸は増産ではなく流通の整流化にあった。厚生労働省の資料は、主要な製造業者において例年並みの製造を確認したと繰り返し記している。課題は生産量ではなく、原材料・溶剤・滅菌ガスといった工程材の途絶と、需要側の発注行動に集中していた。
- 4月16日の5品目解消にダイアライザーが含まれる。透析資材そのものではなく、その製造に用いる溶剤が対象であった点が、この供給課題の性格を示している。
この経緯は、当社が継続して記録している中東情勢起点のサプライチェーン変動の一部である。原料側の価格推移についてはナフサ・原油完全まとめに3系列の全記録を整理している。
CHAPTER 02透析医療を構成する資材の樹脂依存マップ
血液透析は、患者の血液を体外に導き、半透膜を介して老廃物と余分な水分を除去して体内に戻す治療である。治療は週3回・1回4時間程度のセッションを生涯にわたり継続するため、1回ごとに使い捨てとなる資材の消費が途切れなく発生する。この資材群がどの樹脂で構成されているかを整理する。
2.1 主要資材と構成樹脂
| 資材 | 主構成樹脂 | 代替難度 | 備考 |
|---|---|---|---|
| ダイアライザー 中空糸膜 | ポリスルホン(PS)/ポリエーテルスルホン(PES) | 最も高い | 血液に直接接触する部材。生体適合性・透過性能・滅菌耐性の同時達成が要件となる。詳細はCHAPTER 04で扱う。 |
| ダイアライザー ハウジング・ヘッダー | ポリカーボネート(PC)/ポリプロピレン(PP) | 中程度 | 透明性と剛性が求められる部位。汎用樹脂グレードでの置換余地は膜より大きい。 |
| 血液回路・透析チューブ | ポリ塩化ビニル(PVC)/ポリエチレン(PE) | 高い | ローラーポンプで反復圧送されるため、柔軟性と復元性の両立が必要。厚生労働省の7月20日時点資料では「透析チューブ」が解決済み品目に含まれる。 |
| 穿刺針 ハブ・翼状部 | ポリプロピレン(PP)/ABS樹脂 | 中程度 | 針本体は金属だが、樹脂部品と滅菌工程を伴う。「人工透析用の注射針の滅菌用ガス」が解決済み品目に含まれる。 |
| 透析液容器・粉末製剤包装 | ポリエチレン(PE)/ポリプロピレン(PP) | 中程度 | A剤・B剤の輸送と保管を担う。容器側の供給が滞ると薬液そのものが動かせない。 |
| 透析装置洗浄剤の容器 | ポリエチレン(PE) | 解決済み | 装置の日常管理に必須。厚生労働省資料で早期に解決済みとされた品目。 |
| 廃液容器 | ポリプロピレン(PP) | 解決済み | 手術・処置全般で使用。7月20日時点で原材料の供給不安が解決済みに区分。 |
| 滅菌工程(酸化エチレンガス) | エチレン | 高い | 樹脂部材そのものではないが、熱に弱い医療器具の滅菌に不可欠。エチレン系の減産が工程全体の制約になり得る。 |
構成樹脂は各製品の一般的な材質構成に基づく。解決状況の区分は厚生労働省「石油関連製品の供給不足に伴う医療分野の影響・対応について」(2026年7月20日時点)による。
2.2 依存構造が3層に分かれている点
透析資材の供給課題を読み解く際、対象が同じ層にないことを区別する必要がある。厚生労働省が解決済みとして列挙した透析関連4件を見ると、その性格は明確に分かれている。
- 第1層:製品そのものの樹脂(中空糸膜、血液回路)。国内メーカーが生産の主体を担い、原料は樹脂グレードで調達される。
- 第2層:製造工程に使う溶剤・ガス(ダイアライザー製造用溶剤、注射針の滅菌用ガス)。製品重量に占める比率は小さいが、これが止まれば製造そのものが停止する。
- 第3層:周辺の容器・包装(透析装置洗浄剤の容器、薬剤容器)。代替が効きやすい一方、需要側の発注行動の影響を最も受けやすい。
2026年に実際に課題として顕在化したのは、第1層ではなく第2層と第3層であった。製品の生産能力ではなく、その周辺にある少量・多品種の工程材が制約要因になるという構造は、医療分野に限らず樹脂を扱う産業に共通する。当社が扱う物流資材でも、パレット本体よりも結束バンドや包装フィルムの調達が先に影響を受ける局面が繰り返し観測されている。
CHAPTER 03厚生労働省114品目、7月20日時点の到達点
内閣官房が2026年7月24日に公表したタスクフォース第3回の厚生労働省提出資料は、この4か月間の対応を品目単位で集計したものである。医療分野の供給課題を定量的に追跡できる現時点で最も網羅的な一次資料であるため、数値をそのまま整理する。
3.1 品目単位の対応状況
| 区分 | 品目数 | 前回(6月22日時点)との差 |
|---|---|---|
| 安定供給に影響があると判断された品目 | 114 | +8 |
| うち 解決済みの品目 | 98 | +19 |
| うち「目詰まり解消の仕組み」の構築により解決の道筋が立った品目 | 13 | +6 |
| うち 対応検討中の品目 | 3 | -17 |
出典:厚生労働省「石油関連製品の供給不足に伴う医療分野の影響・対応について」(2026年7月20日時点、内閣官房タスクフォース第3回 資料2)。品目数は品目単位で精査したもので、例えば約5,400の医療機関等から相談のあった同種の手袋は1品目として計上されている。
対象品目が8件増える一方で、対応検討中が17件減って3件になった点がこの集計の要点である。新たな課題の発生が続きながら、既存の課題の処理がそれを上回る速度で進んだことを示している。
3.2 相談の受付規模
相談総数は14,316事業者(メーカー・卸業者3,588、医療機関等10,728)で、前回6月22日時点から866事業者増加した。内訳の増加はメーカー・卸業者が508、医療機関等が358である。医療機関等からの相談10,728事業者のうち、定点観測が98事業者、情報提供が10,630事業者となっている。
この数字は延べ事業者数であり、同一事業者が複数の窓口から相談した場合はそれぞれ計上されている。したがって実数はこれより小さいが、一斉調査の回答が5,186事業者に達している点を含め、把握の網が相応に広いことは読み取れる。
3.3 透析関連の解決済み品目
解決済み98品目のなかから、透析医療に直接関わるものを抽出する。
| 品目 | 層 | 解決の性格 |
|---|---|---|
| 人工透析用の血液浄化器(ダイアライザー)の製造用溶剤 | 工程材(第2層) | 石油製品会社等への医療関連優先供給の要請により流通の目詰まりを解消。4月16日に5品目の一つとして公表。 |
| 人工透析用の注射針の滅菌用ガス | 工程材(第2層) | 滅菌工程用ガスの確保。同種の課題として小児カテーテル用A重油、心臓補助カテーテルの滅菌用ガス等が並ぶ。 |
| 透析装置洗浄剤の容器 | 容器・包装(第3層) | 容器材の供給確保。装置の日常管理に必要。 |
| 透析チューブ | 製品(第1層) | 製品そのものの供給確保。第1層に属する数少ない解決事例。 |
出典:同上。区分の「層」は本稿CHAPTER 02の整理による。
加えて、透析に隣接する領域では体外式膜型人工肺(ECMO)の洗浄剤、人工心肺装置に装着する人工肺等の洗浄剤、血液検査分析装置の洗浄剤、献血バッグの製造用溶剤なども解決済みに含まれている。体外循環を伴う治療領域全体で、同種の工程材の課題が並行して処理されたことがわかる。
3.4「目詰まり解消の仕組み」という手法
厚生労働省が2026年6月以降に構築した2つの仕組みは、増産要請とは異なる発想に立っている。
サプライチェーンを遡って供給元のメーカーを特定し、相談を寄せた医療機関等の情報をそのメーカーに伝達して優先的な供給を要請する。分包紙は6月9日開始で、相談のあった332の薬局等すべてについて7月21日時点で供給不足が解消した。薬剤容器は6月18日開始で、相談のあった437の薬局等のうち399(約91%)が解消している。
主要な製造業者で例年並みの製造を確認したうえで、確保に支障がある医療機関等に対し、代替品を含めた販売可能な通販サイトをリスト化して提供する。7月2日開始のアイソレーションガウン・紙エプロン・サージカルマスクで421医療機関、7月8日開始の注射器・翼付き注射針等・輸液セット・滅菌バッグ等・歯科用注射針・針捨てボックスで511医療機関の供給不足が解消した。
いずれも、供給量が足りているにもかかわらず必要な場所に届かないという状態を前提にした対処である。医療機関側から見れば、自施設の常用ルートで確保できない品目が、別ルートでは在庫として存在していたことになる。調達の実務では、この「ルート間の非対称」をどう埋めるかが課題となる。
医療用手袋については、備蓄放出の運用実績が別途示されている。2026年7月15日時点で配布対象は8,873医療機関等・最大約3,490万枚、7月19日時点の購入実績は4,921医療機関等・約2,172万枚である。配布対象医療機関等の数は5月18日からの週次で2,769件を最大値として下降し、7月9日から15日の要請週では219件まで減少した。備蓄水準を超える余剰分として約4億9千万枚が確保されている。手袋の価格妥当性については、厚生労働省の備蓄放出価格を市場実勢と照合した記事で個別に検証している。
CHAPTER 04中空糸膜の技術構造、なぜ代替が難しいのか
ダイアライザーの供給を論じる際、最も置き換えが難しい部材は中空糸膜である。ここでは、その構造と要求性能を整理し、代替素材への転換が短期間では成立しない理由を確認する。
4.1 中空糸膜の物理構造
中空糸膜は、内径0.2ミリ、膜厚0.05ミリ以下の極細チューブである。これを1万本程度束ねて円筒状のハウジングに収め、チューブの内側に血液を、外側に透析液を流すことで、膜を介した物質交換を行う。国内で使われる膜素材の主流はポリスルホン(PS)とポリエーテルスルホン(PES)で、いずれもナフサを起点とする石油化学由来のエンジニアリングプラスチックに分類される。
この構造が要求する性能は複合的である。
- 生体適合性:血液と直接接触するため、凝固系や補体系を過度に活性化しないこと。
- 分離性能:尿素やクレアチニンなどの小分子を通し、アルブミン等の有用蛋白の損失を抑えること。この選択性は膜の孔径分布によって決まる。
- 透水性能:除水を制御できる範囲に収めること。
- 機械強度:膜厚0.05ミリ以下でありながら、治療中の圧力に耐えて破断しないこと。
- 滅菌耐性:γ線、酸化エチレンガス、高圧蒸気のいずれかの滅菌工程で性能が劣化しないこと。
4.2 素材変更が短期間で成立しない理由
仮に膜素材の樹脂グレードを変更しようとした場合、越えるべき段階が複数存在する。
| 段階 | 内容 |
|---|---|
| 紡糸条件の再設定 | 中空糸膜は樹脂溶液を凝固浴に押し出して製造する。樹脂グレードが変われば孔径分布が変化するため、溶媒組成・凝固条件・延伸条件の再調整が必要になる。 |
| 性能の再検証 | 分離性能・透水性能・機械強度を設計値に収める検証を行う。膜の性能は治療成績に直結するため、許容幅は狭い。 |
| 生物学的安全性評価 | 血液接触部材として、細胞毒性・感作性・血液適合性等の評価が求められる。 |
| 薬事上の手続き | ダイアライザーは医療機器として承認・認証を受けており、原材料や製造方法の変更は届出または一部変更承認の対象となる。手続きの範囲は変更の内容によって異なる。 |
| 製造ラインの切替 | 既存ラインの条件を変更する間、当該ラインの生産は制約を受ける。供給が細っている局面で並行実施することは現実的に難しい。 |
これらは通常の製品開発として実施される手順であり、技術的に不可能なわけではない。しかし数週間から数か月の供給変動に対する即応策とはなり得ない。2026年の対応が素材転換ではなく流通の整流化と工程材の確保に集中したのは、この時間軸の差によるものである。
4月16日に供給停止リスクが解消された5品目に「人工透析用ダイアライザーの製造に用いる溶剤」が含まれていた点は、この構造を端的に示している。膜そのものの樹脂ではなく、紡糸工程で用いる溶剤の調達が止まれば、樹脂が手元にあっても膜は製造できない。製品重量に占める比率が小さい材料ほど、平時は調達の関心が向きにくく、変動時には制約要因として先に現れる。
CHAPTER 05国内メーカー4社体制と生産拠点の地理
国内で使用される中空糸膜の製造は、ニプロ、旭化成メディカル、東レ、日機装の各社が担っている。膜素材の主流がポリスルホン系である点は共通するが、各社が独自の膜構造と製品系列を持つため、施設ごとに採用製品が異なるのが実情である。
5.1 供給網の地理的構造
2026年3月31日の確保対策本部初会合で、上野厚生労働大臣は、中東産の石油製品を原料としてアジア諸国で生産され日本に輸入されている人工透析の部品や、手術中に使用する廃液容器といった医療関係製品について、長期的な供給に不安が生じているとの認識を示した。同日の関係閣僚会議で高市首相は、代替製品を世界全体から調達する対応を急ぐよう指示している。
ここから読み取れる構造は次の通りである。
- 最終製品の製造主体は国内メーカーである。ただしすべての工程が国内で完結しているわけではなく、部品・中間材の段階でアジア域内の生産拠点を経由する経路が存在する。
- その拠点が用いる原料は中東産の石油製品を起点とする場合がある。日本国内のナフサ調達が代替先に切り替わっても、アジア域内の拠点が同じ切り替えを完了しているとは限らない。
- したがって国内の原料確保と製品の入手可能性は一致しない。2026年の対応で「代替製品を世界全体から調達する」という表現が用いられたのは、この非対称に対応するためである。
この構造は物流資材でも同型である。当社が扱うプラスチックパレットにも、国内生産品と、韓国・台湾・マレーシア等の海外メーカー製品が並存する。国内の樹脂需給が落ち着いても、海外拠点側の原料調達や輸送日数の変動によって納期が動くことは珍しくない。調達先を一次サプライヤーの所在地だけで把握すると、実際の制約要因を見落とすことになる。
5.2 経済産業省の要請が対象とした範囲
2026年3月30日、経済産業省は石油関連製品の製造者や卸業者等に対して、医療用途などを中心とした安定供給確保への協力を要請した。要請の内容は、医療用品の原料となるポリエチレン等の安定供給を図ること、および最終需要家である病院等に偏りなく医療用品が供給されるよう取引先にも対応を促すことである。
この要請は原料メーカーに対する増産指示ではなく、既存の供給量を医療用途に優先配分し、流通段階での偏りを抑えるよう求めるものであった。厚生労働省の資料が繰り返し「主要な製造業者において例年並みの製造を確認」と記していることと整合する。2026年の医療資材の課題は、生産能力の不足ではなく配分と流通の問題として扱われている。
CHAPTER 062026年度診療報酬改定、J038一律20点引き下げの設計
資材の供給課題が処理されていく一方で、透析施設の収益構造には別の変更が加えられた。2026年度診療報酬改定である。改定は供給問題とは独立した政策文脈で決定されたものだが、施設にとっては同一年度内に両方が重なった。
6.1 慢性維持透析(J038)の点数変更
| 項目 | 変更 | 内容 |
|---|---|---|
| 人工腎臓(J038)慢性維持透析 | ▲20点 | 所定点数がすべての区分で一律20点引き下げ。 |
| 腎代替療法診療体制充実加算 | +20点 新設 | 施設基準を満たす場合に算定可能。算定できれば従来の点数水準が維持される設計。 |
| シャント維持管理に係る手技の評価 | 見直し | 緊急性の低い通常の狭窄に対する点数を引き下げ、閉塞や高度な狭窄に対する評価との差を明確化。 |
出典:2026年度(令和8年度)診療報酬改定、区分番号J038に係る改定内容。本表は業界団体による解説資料に基づく整理であり、点数・施設基準の正確な内容は厚生労働省の告示および関係通知を確認されたい。
6.2 加算の算定要件
腎代替療法診療体制充実加算の算定には、実績要件と体制要件の双方を満たす必要がある。
- 実績要件:在宅自己腹膜灌流指導管理料の算定実績が年24回以上、または腎移植に向けた手続きの実績が年2人以上のいずれかを有すること。
- 体制要件:シャントトラブル発生時に、連携医療機関で迅速に治療を行う体制を整備していること。
この設計は、血液透析のみを提供する体制から、腹膜透析および腎移植を含む腎代替療法全体を視野に入れた体制へ誘導する意図を持つ。実績要件のいずれも、血液透析の実施件数とは直接関係しない指標である点が特徴といえる。
加算を算定できない施設では、慢性維持透析の点数が実質的に20点低い水準となる。要件のうち腎移植に向けた手続きは連携先の移植施設との関係構築を要し、在宅自己腹膜灌流指導管理料の算定は腹膜透析患者の確保と指導体制の整備を要する。いずれも短期間で満たせる性質のものではないため、算定可否は施設の従来の診療方針によって分岐する。
6.3 資材コストとの関係
透析医療の診療報酬は、資材費を含む包括的な評価として設定されている。したがって資材の調達価格が上昇しても、その分が個別に診療報酬に上乗せされる仕組みは存在しない。原料価格の変動が施設収益に直接及ぶ構造であり、この点は病院経営における医療資材コストの構造を扱った記事でも整理している。
2026年の資材価格については、原料側の指標が期中で大きく振れた。アジアのナフサスポットは3月末に1トン1,200ドルを超える水準をつけた後、通関CIFのピークは約2か月遅れて5月16日の1,043ドルとなり、2026年7月24日時点では982ドル、為替163.32円で国産ナフサ価格指標は113,464円/klとなっている。原油(WTI)は7月24日に1バレル89ドル前後で、週間では約10%上昇した。原料価格は下落局面と上昇局面が交互に現れており、単一時点での判断は避けるべき局面が続いている。
CHAPTER 07施設経営への影響、収益構造と資材コスト
透析施設の経営環境を規定する要素は、2026年に3つが同時に動いた。患者数の減少局面、診療報酬の点数引き下げ、資材調達価格の変動である。それぞれの大きさを一次資料の数値で確認する。
7.1 患者数と施設規模の推移
日本透析医学会の統計調査(JSDT Renal Data Registry)2024年末時点の集計によれば、慢性透析患者総数は337,414人で、前年比6,094人の減少となった。透析患者数は2021年をピークとして以降は減少傾向を示しており、2024年は前年より大きな減少幅を記録している。人口百万人あたりの患者数は2,725.4人である。
| 指標 | 2024年末 | 前年比 |
|---|---|---|
| 慢性透析患者総数 | 337,414人 | ▲6,094人 |
| 人口百万人あたり患者数 | 2,725.4人 | — |
| 年間透析導入患者数 | 36,404人 | ▲2,360人 |
| 年間死亡患者数 | 38,348人 | +275人 |
| 年間粗死亡率 | 11.3% | 前年より上昇 |
| 患者平均年齢 | 70.27歳 | — |
| 導入患者平均年齢 | 71.69歳 | — |
| 調査対象施設数 | 4,512施設 | 施設調査票回答4,447施設(98.6%) |
| 透析コンソール台数 | 148,339台 | ▲1.4% |
| 同時透析可能人数 | 146,287人 | +0.1% |
| 最大収容能力 | 482,793人 | +0.4% |
出典:日本透析医学会「わが国の慢性透析療法の現況(2024年12月31日現在)」。前年比は2023年末との比較。
導入患者数が前年比2,360人減、死亡患者数が275人増という組み合わせは、患者総数の減少が継続する方向を示している。原疾患の内訳は糖尿病性腎症39.2%、慢性糸球体腎炎23.0%、腎硬化症14.5%である。導入患者では糖尿病性腎症37.6%、腎硬化症19.1%、慢性糸球体腎炎13.5%の順で、腎硬化症が慢性糸球体腎炎を上回る状態が続いている。
7.2 収容能力と患者数の関係
設備側の数値には注目すべき動きがある。患者総数が減少するなかで、最大収容能力は482,793人と0.4%増加し、同時透析可能人数も0.1%増となった。一方で透析コンソール台数は1.4%減少している。
2024年末の患者総数337,414人に対して最大収容能力482,793人という関係は、全国合計で見れば設備に余力がある状態を意味する。ただしこれは地域分布を捨象した数値であり、個別の施設や地域における充足度を示すものではない。設備の余力と患者数の減少が重なる状況で点数が引き下げられれば、稼働率の水準が施設の収益を左右する度合いは高まる。
7.3 医療費の規模
透析医療の費用規模については、内閣官房の健康・医療戦略参与会合(2026年7月2日開催)に提出された資料が整理している。同資料では年間総額を約1.6兆円(2018年推計)、総医療費に占める割合を約4%、維持透析の1人あたり年額を約500万円としている。
この規模の給付が制度的に維持されているために、透析医療は患者の自己負担が抑えられた形で継続されてきた。同時に、費用の大部分が公的給付で賄われる構造は、診療報酬の点数変更が施設収益に直接反映されることも意味する。市場価格による転嫁の余地がないという点で、一般的な事業とは収益構造が異なる。
患者総数の減少(2021年をピークに継続)、点数の引き下げ(J038一律20点、加算取得で水準維持)、資材調達価格の変動(原料指標が期中で上下)という3要素は、いずれも異なる要因から生じている。共通するのは、施設側が単独で制御できる範囲が限られている点である。制御可能な変数は、加算要件の充足、稼働率、調達ルートの複線化に絞られる。
CHAPTER 08腹膜透析・在宅への波及と新設管理料
2026年度改定では、腹膜透析(PD)に関する評価が複数の箇所で強化された。CHAPTER 06で扱った加算の実績要件がPDの算定実績を含んでいることと合わせて、政策の方向性が読み取れる。
8.1 治療法別の患者構成
2024年末時点の治療法別の内訳は次の通りである。血液透析濾過(HDF)患者数は213,721人で、維持透析患者全体の63.3%を占める。HDF患者数は2012年以降に増加が続いている。腹膜透析(PD)患者数は10,774人である。
| 治療法 | 患者数(2024年末) | 構成 |
|---|---|---|
| 血液透析濾過(HDF) | 213,721人 | 維持透析患者全体の63.3%。2012年以降に増加が継続。 |
| 腹膜透析(PD) | 10,774人 | 慢性透析患者総数337,414人に対して約3.2%。 |
出典:日本透析医学会「わが国の慢性透析療法の現況(2024年12月31日現在)」。構成比の算出は本稿による。
PDの比率は約3.2%であり、諸外国と比べて低い水準にとどまってきた。2026年度改定で腎代替療法診療体制充実加算の実績要件にPDの算定実績が組み込まれたことは、この構成を動かす方向の設計といえる。
8.2 在宅自己腹膜灌流指導管理料2の新設
腹膜透析の導入・維持管理において、基幹病院とかかりつけ医の連携を促進する目的で、在宅自己腹膜灌流指導管理料2(1,500点)が新設された。腹膜透析を導入した基幹病院が、他のかかりつけ医の求めに応じて指導管理を行った場合に算定でき、一連の治療につき2回限りとされている。
この設計は、PD患者が居住地の近くで日常的な管理を受けながら、導入施設の専門的な指導を必要に応じて受けられる体制を想定している。PD患者が全国で10,774人という規模であることを踏まえると、地域単位では該当患者が少数にとどまる施設が多く、連携なしに管理体制を維持することが難しいという実情に対応した措置と考えられる。
8.3 資材面から見たPDの位置づけ
腹膜透析は、血液透析と資材構成が異なる。血液回路とダイアライザーを使用しない一方、透析液バッグと接続用チューブ、接続デバイスを患者宅で日常的に消費する。医療機関の在庫としてではなく、患者宅への配送によって供給される点が血液透析との大きな違いである。
この違いは供給変動時の性格にも及ぶ。血液透析は施設在庫の水準で当面の継続可否が決まるのに対し、腹膜透析は配送の継続性が直接に治療の継続性となる。2026年の経過では腹膜透析の資材について個別の供給課題は公表資料に現れていないが、供給網の設計としては別の考慮が必要な領域である。
患者・家族の視点から医療資材の供給構造を平易に整理した記事として、病院で使われる使い捨て医療器具の解説も公開している。
CHAPTER 09在庫管理と発注行動、目詰まりが生じた局面
2026年の医療資材の課題で、供給側と同じ比重で扱われたのが需要側の発注行動である。厚生労働省の資料は、この点に関する対応を明示的に記録している。
9.1 5月29日通知とその効果
厚生労働省は2026年5月29日、薬局・医療機関およびメーカー・卸業者に対し、当面の必要量に見合う量のみを発注・受注する等の適切な対応を求める通知を発出した。この通知の前後で、相談件数の推移に変化が現れている。
| 品目群 | 転換点 | その後の推移 |
|---|---|---|
| 手袋類 | 2026年5月23日 備蓄手袋の配布開始 | 相談件数は減少傾向。配布対象医療機関等数は5月18日から20日の要請週2,769件を最大に、7月9日から15日の要請週で219件まで低下。 |
| 分包紙・薬剤容器 | 2026年5月29日 受発注に関する通知発出 | 相談件数は減少傾向。内訳は薬剤容器が約6割、分包紙が約3割、残る約1割に分包紙への印字に用いるインク・リボン等を含む。 |
出典:厚生労働省「石油関連製品の供給不足に伴う医療分野の影響・対応について」(2026年7月20日時点)。相談件数の分析にはAIツールを用いており、実際の相談内容とはずれが生じ得ると同資料に注記がある。
相談件数の減少は、通知や備蓄放出といった施策の実施時期と対応している。ただし同資料は、分包紙・薬剤容器について数は減っているものの相談は寄せられており今後も対応を行うとしており、収束を断定する記述にはなっていない。
9.2 なぜ前倒し発注が偏りを生むのか
供給の不確実性が高まると、各施設は在庫水準を引き上げる方向に行動する。個別には合理的な判断だが、全施設が同時に実施すれば、平時の生産量に対して短期間の需要が集中する。結果として、必要量を確保できる施設と確保できない施設が分かれ、全体の生産量は変わらないまま偏りが発生する。
厚生労働省の資料が「メーカーは昨年同量並みの製造を行っている一方、多くの医療機関・薬局から供給不安の相談があった」と記述しているのは、この状態を指している。2026年の対応が増産要請ではなく、優先供給の仕組みと販売ルートの情報提供という2つの手法に集約されたのは、課題の所在が生産量になかったためである。
9.3 施設側の在庫設計の考え方
一律の適正在庫水準を示す公的基準は存在しない。実務上の起点となるのは次の要素である。
- 自施設の消費実績:患者数・治療回数・使用製品の構成から週次の消費量を把握する。透析は治療スケジュールが定型的であるため、消費量の予測精度は他の医療分野より高い。
- 補充リードタイム:発注から納品までの所要日数を品目別に把握する。国内生産品と海外生産品ではこの日数が大きく異なる。
- 調達ルートの複線化:2026年に有効に機能した対処の一つが、常用ルート以外の販売ルートの提示であった。平時から代替ルートの存在を把握しておくことが、変動時の選択肢となる。
- 保管スペースの制約:透析資材は嵩張るため、在庫水準の引き上げには物理的な上限がある。パレット単位での保管効率や、ラック構成の見直しが実務的な論点になる。
ダイアライザー、血液回路、透析液は、いずれも重量に対して容積の大きい資材である。在庫を1週間分積み増すという判断は、保管面積の確保と荷役の増加を伴う。当社は物流資材の供給を通じて、保管効率と荷役負担の設計に関わる立場にある。医療機関の資材管理においても、パレットラックの段構成や、標準化された荷姿の採用が、在庫水準の実現可能性を左右する要素となる。
9.4 観測の時間軸、4段階の整理
供給状況と制度変更の影響は、異なる時間軸で現れる。現時点で確認できる事実と、各段階で観測すべき対象を整理する。推計値ではなく、公表資料で追跡可能な事項に限って記載する。
| 時間軸 | 2026年7月時点で確認できる事実 | 観測すべき対象 |
|---|---|---|
| 即時 (1〜3日) |
厚生労働省の情報提供窓口、医療機関での定点観測、EMISを用いたオンライン報告システムが稼働している(2026年4月9日の確保対策本部第2回で整備を説明)。 | 自施設で欠品が生じた品目について、常用ルート以外に在庫が存在するか。2026年の事例では、通販サイトリストの提供により7月2日開始分で421医療機関、7月8日開始分で511医療機関の供給不足が解消している。 |
| 短期 (1〜4週間) |
7月20日時点で対応検討中の品目は3件で、前回6月22日時点から17件減少した。一方で対象品目は8件増えており、新規の課題発生は継続している。 | 次回のタスクフォース資料における対応検討中の件数。増加に転じるかどうかが最初の判断材料となる。分包紙・薬剤容器は件数が減りながらも相談が継続していると同資料に明記されている。 |
| 中期 (1〜3か月) |
2026年度診療報酬改定でJ038が全区分一律20点引き下げとなり、腎代替療法診療体制充実加算20点が新設された。算定要件は腹膜透析の指導管理実績または腎移植に向けた手続き実績と連携体制である。 | 自施設の加算算定可否が確定した後の収益への反映。要件を満たすための体制整備には、連携先医療機関との関係構築と腹膜透析の指導体制が必要となる。 |
| 長期 (3〜12か月) |
人工透析の部品には、中東産の石油製品を原料としてアジア諸国で生産され日本へ輸入される経路が存在する(2026年3月31日、確保対策本部初会合での説明)。政府は代替製品を世界全体から調達する方針を示している。 | アジア域内の生産拠点における原料調達先の切替進捗。国内のナフサ調達が代替先へ移行しても、域内拠点が同じ切替を完了しているとは限らないため、製品の入手可能性は別途追跡する必要がある。 |
各段階の「確認できる事実」は本文中で引用した公表資料に基づく。観測対象は当社編集部による整理であり、将来の状況を予測するものではない。
9.5 モニタリングすべき5指標
| 指標 | 確認先 | 着眼点 |
|---|---|---|
| 供給課題品目数の推移 | 内閣官房タスクフォース/厚生労働省提出資料 | 対応検討中の件数が再び増加に転じるか。7月20日時点は3件。 |
| 相談事業者数の推移 | 同上 | 前回比の増加幅。7月20日時点は前回比+866事業者。 |
| ナフサ価格の3系列 | アジアスポット/通関CIF/国産基準価格 | 系列ごとにピーク時期が約2か月ずれる。単一系列での判断を避ける。 |
| 原油価格 | WTI/ブレント/ドバイ | 7月24日時点でWTIは1バレル89ドル前後、週間で約10%上昇。 |
| 自施設の品目別リードタイム | 取引卸・メーカー | 公表統計に現れない変化が最初に観測される場所。 |
CHAPTER 10用語集
CHAPTER 11出典・エビデンス一覧
一次資料(官公庁)
- 厚生労働省「石油関連製品の供給不足に伴う医療分野の影響・対応について」(2026年7月20日時点)
- 内閣官房「中東情勢に伴う重要物資の安定的な供給確保のためのタスクフォース(第3回)議事次第」
- 内閣官房「中東情勢に関する対応」
- 厚生労働省「中東情勢関連対策ワンストップポータル」
- 厚生労働省「第2回 中東情勢の影響を受ける医薬品、医療機器、医療物資等の確保対策本部」
- 内閣官房「健康・医療戦略参与会合(第26回)資料」
学会・統計
- 日本透析医学会「わが国の慢性透析療法の現況(2024年12月31日現在)」
- 日本透析医学会「2024年日本透析医学会統計調査報告書 調査結果と考察」
- 厚生労働省「医薬品・医療機器のサプライチェーン実態把握のための調査事業 調査結果概要」
専門メディア・市況
- LOGISTICS TODAY「透析34万人の命綱、樹脂が届かない」
- 日刊工業新聞「消毒液・人工腎臓製造向け 5品目で供給不安解消 厚労・経産省」
- 野村総合研究所 木内登英「医療用品の不足に備える:価格メカニズムと政府の生産資源配分への関与」
- 愛知県臨床工学技士会「2026年度診療報酬改定における『人工腎臓(透析)』」
- 大景化学「ナフサ価格推移表」
- Trading Economics「原油 価格・チャート」
当社の関連記事
CHAPTER 12よくある質問
ダイアライザーや血液回路はなぜ石油化学製品に依存しているのですか
ダイアライザーの中核部品である中空糸膜はポリスルホン(PS)やポリエーテルスルホン(PES)を主素材とし、血液回路や透析チューブはポリ塩化ビニル(PVC)やポリエチレン(PE)で構成される。いずれも原油から得られるナフサを起点とする石油化学由来の樹脂であり、生体適合性と滅菌適性を同時に満たす代替素材が実用段階にないため、依存構造が続いている。
2026年7月時点で透析資材の供給は確保されているのですか
厚生労働省が2026年7月20日時点で整理した資料によれば、安定供給に影響があると判断された114品目のうち98品目が解決済み、13品目が目詰まり解消の仕組みの構築により解決の道筋が立ち、対応検討中は3品目となっている。透析関連ではダイアライザーの製造用溶剤、透析用注射針の滅菌用ガス、透析装置洗浄剤の容器、透析チューブがいずれも解決済みに区分されている。
2026年度診療報酬改定で透析の点数はどう変わりましたか
慢性維持透析(J038)の所定点数が全区分で一律20点引き下げられた一方、腎代替療法診療体制充実加算20点が新設された。加算を算定できれば従来水準が維持される設計であり、算定には在宅自己腹膜灌流指導管理料の年24回以上の実績または腎移植に向けた手続きの年2人以上の実績と、シャントトラブル時の連携体制が求められる。
透析施設は資材の在庫をどの程度持つべきですか
一律の基準は示されていない。ただし2026年の経過では、前倒し発注が流通の偏りを生んだ局面があり、厚生労働省は2026年5月29日に当面の必要量に見合う量のみを発注・受注するよう通知を発出した。通知後に分包紙・薬剤容器の相談件数は減少傾向に転じており、在庫方針は自施設の消費実績と補充リードタイムに基づいて設定することが実務上の起点となる。
なぜプラスチックパレット株式会社がこの記事を書いているのですか
当社は千葉県我孫子市に本社を置き、プラスチックパレット・再生樹脂材料・PPバンド・ストレッチフィルム等の物流資材を全国に供給する専門商社である。取り扱う資材の多くがナフサを起点とする石油化学由来の樹脂であるため、原料価格と供給網の変動を日常的に追跡している。同じ原料構造を共有する医療資材の動向を、樹脂と物流の視点から整理して提供している。
本記事のご利用にあたっての注意事項
- 本記事の内容は2026年7月25日時点で公表されている情報に基づく。数値・制度・供給状況はいずれも変動し得るため、実務判断にあたっては各出典の最新版を確認されたい。
- 厚生労働省の品目数・相談件数は同省が公表した集計時点(2026年7月20日時点)の値である。集計方法は品目単位での精査に基づき、相談事業者数は延べ数として計上されている。
- 本記事は特定の医療機関の経営判断、医療機器の選定、投資判断を推奨するものではない。診療報酬の算定可否は個別の施設基準および届出内容によって決まり、本記事の点数に関する記述は業界団体の解説資料を基にした整理である。
- 治療方針に関する判断は、患者本人および主治医の間で行われるべきものである。本記事の記述を理由に治療の変更・中断を検討することは適切ではない。
- 引用は各出典の表記に従い、要約にあたっては原資料の趣旨を損なわない範囲で行っている。詳細は各リンク先の原文を参照されたい。