ニトリルグローブ危機の最前線2026
── 関税100%施行3ヶ月後の現在地
経過期間
(2026年1月〜)
ベトナム産値上げ率
(Glove Saver等)
緊急出荷制限実施
(ホルムズ封鎖を明示)
4/7案内で即時在庫切れ
(次回入荷未定)
2026年1月1日のUSTR対中関税100%施行から3ヶ月、ニトリルグローブ市場は「価格上昇+納期延伸+逆ザヤ局面」の3つの段階を経て新しい正常状態に入りつつある。Glove Saver・Innovative Biosciencesの業界分析ではマレーシア・タイ・ベトナム産も需要シフトで15〜25%値上がり、納期延伸が常態化。日本国内では中野デンタルサプライが3月11日にホルムズ封鎖を明示して緊急出荷制限を開始し、茨城県保険医協会の4月7日案内では100件超の注文が殺到し即時在庫切れ(次回入荷未定)となるなど現場では既に調達困難が表面化。CIMB Securitiesは「合成ゴム手袋の不足は2026年5月末頃から本格化する可能性」と警告。一方、経産省4月30日発表では5月のナフサ輸入量が平時比3倍まで拡大しPE在庫は1.8か月分に改善との明るい材料もあるが、NBR特殊原料・米国関税・メーカー逆ザヤの3要因が重なるグローブには量的緩和の恩恵が届くまでタイムラグがある。本稿では関税施行後3ヶ月の市場変化・5月時点の最新動向・2026年Q2-Q3の調達戦略5フレームワークに絞って整理する。問題の構造(NBR=ナフサ由来である理由・MARGMA緊急声明・マレーシア依存の歴史)については前編「イラン情勢とニトリルグローブ供給危機の深層」を参照されたい。
序文:関税100%施行3ヶ月後の現在地
2026年4月2日公開の前編「イラン情勢とニトリルグローブ供給危機の深層」では、ニトリルグローブの主原料NBR(ニトリル・ブタジエンゴム)がナフサ由来100%石油化学品である構造、MARGMA緊急声明(3/26)の詳細、マレーシア依存(世界シェア約45%)の歴史的経緯を整理した。
本稿はその続報として、2026年1月1日のUSTR Section 301による対中関税100%施行から3ヶ月後の市場変動を、実務担当者向けに整理する。前編公開後の3週間で市場には3つの新しい段階が現れ、5月時点ではさらに国内現場での具体的事例が積み上がっている。
1. 関税施行3ヶ月後の市場変化:米国市場の中国産排除→マレーシア・タイ・ベトナムへの需要集中→産地問わずの15〜25%値上げと納期延伸の常態化。
2. 日本国内卸の5月以降の動き:10〜20%の価格改定通知が医療・食品・製造業へ送付開始。CIMB Securitiesが5月末頃の不足顕在化を警告。歯科業界では中野デンタルサプライが3月11日に緊急出荷制限を実施、茨城県保険医協会では100件超の注文殺到で即時在庫切れ。
3. Top Glove逆ザヤ局面の意味:世界最大手の生産コスト>販売価格状態が示す、業界全体での値上げ伝搬の不可避性。
本稿は構造解説ではなく「これから何が起きるか・何をすべきか」に焦点を置く。具体的なエビデンスと実務フレームワークを5月以降の調達判断のベースとして活用いただきたい。
関税100%施行後の市場変動 ── 1月〜4月の3ヶ月間で何が起きたか
2026年1月1日のUSTR対中関税100%施行から4月までの3ヶ月間、市場は段階的に新しい正常状態へ移行した。本章では時系列で4つの主要マイルストーンを整理する。関税施行前の歴史的経緯(USTR Section 301の段階的引き上げ・連邦官報2024年9月18日付の最終措置)は前編「イラン情勢とニトリルグローブ供給危機の深層」第2章で詳述している。
1.1 関税推移の概観(再掲)
段階的引き上げは下図の通り進行し、2026年1月1日に100%へ到達した。本続報の議論はこの「100%以降」が起点となる。
従来関税率
(前年比約7倍)
(本続報の起点)
1.2 3ヶ月間の市場変動 ── 4つのマイルストーン
マイルストーン①:1月 ── 関税施行と米国市場の中国産排除
2026年1月1日、USTR Section 301に基づき中国製医療用グローブの関税が50%→100%に倍増。米国の医療・検査用グローブは約99%を輸入に依存(Coalition for a Prosperous America)しており、主要供給源だった中国産は実質的に米国市場から排除された。
マイルストーン②:2月〜3月 ── マレーシア・タイ・ベトナムへの需要集中
米国の巨大医療法人やディストリビューターは、代替供給源としてマレーシア・タイ・ベトナム産へ一斉にシフト。AMMEX(米国大手卸)の2026年4月マーケットアップデートは「ニトリルグローブの世界シェアは45〜50%、米国市場では最大70%」と報告。需要シフトの圧力は東南アジア各産地に集中した。
マイルストーン③:3月中旬〜 ── イラン情勢×需要シフトの複合影響
2026年2月末のイラン情勢悪化とホルムズ海峡封鎖が米国関税の影響と重なり、Top Glove社(The Edge Malaysia 3/18)はNBRラテックスのコストが前年比2倍に上昇と公表。MARGMAは3月26日に政府への緊急要請を発表(前編で詳述)。NBR原料逼迫は東南アジア各国の生産コストに直撃した。
マイルストーン④:4月 ── 価格上昇の常態化と納期延伸
3月末から4月にかけて、産地問わずの価格上昇と納期延伸が常態化。業界の認識は「短期的調整」から「新しい正常状態」へとシフトした。
「中国製医療用グローブには2026年1月から100%関税が適用されるが、影響は中国製のみに留まらない。マレーシア・タイ・ベトナム産も需要シフトにより15〜25%値上がりしている。マレーシアからの20%値上げは、関税の影響を受けた中国産の値段とほぼ同等になることが多い。低コストグローブの時代は産地を問わず終わった」
「需要が中国からマレーシア・タイ・ベトナムへシフトしたことで、これらの工場ではキャパシティ圧力により納期延伸とすべての産地での価格上昇が発生している。1グローブあたりの一般小売価格は2026年で$0.10〜$0.18(2019年は$0.04〜$0.08)に達している」
1.3 グローバル価格の到達点(一般指標)
一般小売価格
(2019年比2〜3倍)
1,000枚入箱単価
(CIMB分析・前年比+40%)
2026年4月引き上げ率
ベトナム産値上げ率
(Glove Saver等)
🆕 1.4 中長期市場予測 ── NBR市場の拡大基調(5月18日追加)
短期的な需給逼迫の一方、中長期のNBR市場は構造的拡大基調にある。世界のニトリルブタジエンゴム(NBR)市場規模は2025年に31億2,000万米ドル、2033年までに50億米ドルに達すると予測されている(Mordor Intelligence・データブリッジ市場調査)。CAGRは6.1%。自動車のシール・ガスケット・電動化対応シール用途の拡大、医療用手袋需要の継続的成長、産業インフラ開発の進展が主因。
NBR市場が今後8年間でCAGR 6.1%の成長を続けるということは、「いつかはコロナ前の価格水準に戻る」という前提が崩れたことを意味する。電動車向けの新規需要、医療衛生基準の継続的厳格化、Tier1サプライヤーの素材転換などにより、NBRの恒常的なタイト需給が続く可能性が高い。短期的なホルムズ情勢の改善で価格は一部緩和しても、構造的な「新しい正常状態」として5〜10%程度の恒久的な価格上昇は定着する見通し。Q2-Q3の調達戦略は「危機回避」ではなく「新水準への適応」として組み立てる必要がある。
日本企業の実務動向 ── 5月以降の納期通知・価格改定の実例
2026年4月以降、日本国内の卸売業者・専門商社から医療機関・食品工場・製造業へ送付される取引文書に、明らかな変化が見られる。本章では業界別に観測された実務動向を整理する。
2.1 価格改定通知の動向(5月以降納品分)
4月時点で、日本国内卸からの価格改定通知は5月以降の納品分について10〜20%の引き上げ幅が中心となっている。これは過去のパンデミック時の急騰局面(2020〜2021年)と比べると緩やかだが、「3〜6ヶ月のラグで段階的に進行する」性質がある点が特徴的だ。第一ライフ資産運用経済研究所の熊野英生首席エコノミストは「価格転嫁が3〜9ヶ月のラグで進む」と一般的な石油由来製品について指摘しており、ニトリルグローブも同じ波の中にある。
通知形式:「2026年5月1日以降の出荷分から、メーカー仕入価格改定に伴い10〜15%の価格改定をお願いせざるを得ない状況」「特に手術用・透析用などのマレーシア産依存度の高い品目では引き上げ幅が大きい」
納期回答:従来1〜2週間だったものが、3〜4週間先までの個別回答に変化。一部品目では「未定」回答も増加。
歯科業界向け卸である中野デンタルサプライは2026年3月11日(水)より「ホルムズ海峡封鎖による石油からの原料(ブタジエンゴム)供給停止の影響」を明示した上で、ニトリルグローブ各種について緊急の出荷制限および運用体制の変更を実施。同社は天然ゴム製ラテックスグローブについては「在庫を確保しておりますのでご安心ください」とする一方、ニトリル品については「平常時を大幅に上回る発注集中で在庫が急速に枯渇する恐れ」とし、「一人でも多くのお客様へ公平に製品を供給することを最優先」と表明した(中野デンタルサプライ公式案内)。
さらに茨城県保険医協会では、2026年4月7日にFAXで案内した川西工業株式会社「ヴェルパクト(VELPACT)」型番M-009(1ケース2,400枚・17,000円税込)に対し、100件を超える注文が殺到し即時在庫切れ、「次回入荷は未定」となる事態が発生(同協会公式発表 2026/4/8)。歯科診療所など中小医療機関での調達難は、5月時点で既に現実化している。
通知形式:「ナフサ・NBR原料価格の急騰、海上運賃・燃料サーチャージ上昇、為替動向を勘案し、2026年5月出荷分より価格改定」「年間契約品については契約延長時に再協議をお願いしたい」
事業者の対応事例:食品衛生法適合品の在庫を従来の2週間分から1.5〜2ヶ月分へ拡大する動きが広がっている。最終製品(弁当、惣菜等)への価格転嫁、または衛生管理基準の見直しを迫られる局面となっている。
通知形式:「クリーンルーム用ニトリルグローブ(パーティクル管理品)について、生産ライン稼働の問題から従来の指定品の供給が制限される可能性。代替グレードのご提案も含めご相談したい」
背景:低パーティクル・低イオン汚染品はマレーシアの特定ラインでしか製造できないものが多く、Take-or-Pay契約緩和の中で生産ライン稼働に影響が出始めている。
2.2 5月末の不足顕在化への警告(一次情報)
「合成ゴム手袋の不足は2026年5月末頃から本格化する可能性がある。ホルムズ封鎖が2ヶ月以上続けば戦略備蓄も枯渇し始め、需給バランスは産地を問わず崩れる」
「3月初旬から原料コストが20〜80%以上上昇している。2026年5〜6月にカナダ市場で品不足が顕在化すると見込まれる」
「ホルムズ海峡封鎖による石油からの原料(ブタジエンゴム)供給停止の影響を受け、現在、弊社商品であるニトリルグローブ各種において、平常時を大幅に上回るご発注が集中しております。このままの状況が続いた場合、在庫が急速に枯渇し、製品を必要とされる多くのお客様へ安定的に供給することが困難となる恐れがございます。一人でも多くのお客様へ公平に製品を供給することを最優先と考え、2026年3月11日(水)より緊急の出荷制限および運用体制の変更を実施させていただきます」
同様の値上げドミノは梱包資材・自動車部品・建設資材分野でも進行している。「ストレッチフィルム・PPバンド・OPPテープ供給危機と価格急騰の全貌レポート Vol.1」と「2026年5月1日値上げ完全版|建設・物流・包装資材30社一覧」を併せて参照されたい。
🆕 2.3 ナフサ供給環境の改善方向 ── 経産省4/30発表(5月18日追加)
5月時点で押さえておくべきもう一つの重要な動向として、経産省2026年4月30日発表「中東情勢を踏まえた燃料油・石油製品の安定供給確保及び重要物資の安定的な供給確保の対応状況」がある。同資料は石油化学全体としては量的緩和に向かっていることを示している。
5月のナフサ輸入量は平時比3倍(45万kL/月→4月90万kL→5月135万kL超)まで拡大、ポリエチレン等の川下製品在庫は約1.8か月分まで回復。ナフサ由来化学製品の供給は「これまでの『半年以上』からさらに伸び、年を越えて継続できる見込み」と発表されました。同資料は「前年同月比同量を基本とした調達」を徹底的に周知・広報する方針も明言。
ただしニトリルグローブの場合、①NBRラテックスという特殊な中間原料(マレーシア・タイのプラント依存度が高い)、②米国対中関税100%による需要シフト、③メーカーの逆ザヤ局面という3要因が重なっており、ナフサ環境改善の恩恵が末端のグローブに届くにはタイムラグがある。価格高止まり・納期延伸の構造は当面継続見通しと評価される。
接着剤分野では3月下旬から過剰発注・買い占めが発生し、需給混乱を実態以上に増幅させた。これを受け、2026年4月20日、日本接着剤工業会が需要側に対して「通常の事業活動に基づく適正な購買・在庫水準の維持」「過度な先行発注や買い占め行動の自制」を正式に協力要請(経産省4/30資料で確認)。ニトリルグローブでも同種の過剰発注リスクがあり、調達担当者は「適正在庫の段階的構築」(一気に2ヶ月分確保するのではなく月次10〜15%ずつ積み増す)を心掛けることが業界全体の供給安定化に寄与する。
Top Globeの「逆ザヤ局面」── 業界価格構造の根本変化
世界最大手Top Glove社の発表は、業界全体の価格構造の根本変化を示唆している。本章では「逆ザヤ局面」が意味する実務的インパクトを整理する。
3.1 「逆ザヤ」とは何か
同社のLim Cheong Guan業務執行役員は「NBRラテックスのコストは前年比2倍に上昇している」とし、生産コストは従来1箱あたり14〜15米ドルだったが、現状の販売価格約16ドルとの差が極めて薄くなっており、逆ザヤ(生産コスト>販売価格)局面に入りつつある。同社はニトリルラテックスを通常10〜14日分手元在庫として保有しているが、需給逼迫を受けて月次発注から短サイクル発注へ切り替えている。
3.2 逆ザヤが市場に伝える3つのシグナル
シグナル①:短期的な値上げの不可避性──Top Globeほどの規模の企業が逆ザヤに陥った場合、市場原理として値上げが避けられない。これが日本国内卸の5月以降の価格改定通知の根本的背景である。
シグナル②:供給優先度の変化──月次発注から短サイクル発注への切り替えは、メーカーが「長期顧客優先」へ供給配分をシフトしていることを意味する。新規顧客・スポット取引は事実上、後回しになる。
シグナル③:価格スライド条項の重要性──6ヶ月後の価格再交渉を予測した取引条件の見直しが業界全体で進むため、買い手側の契約条項見直しが急務となっている。
3.3 業界全体での値上げ伝搬予測
値上げ伝搬期間
(CIMB・RHB分析)
5月以降価格改定
(業界動向)
発注切替
(月次→週次傾向)
NBR手元在庫
(過去比短縮)
2033年予測
(2025年31.2億$)
CAGR予測
(2025-2033年)
同様の逆ザヤ・在庫管理短サイクル化は、自動車部品分野でも進行している。トヨタ系Tier1サプライヤーの2026年4月決算でも「ナフサ6月懸念」が業界共通の警鐘となっている。
2026年Q2-Q3の調達戦略 ── 5つの実践フレームワーク
本章は本続報の中核である。前編の構造分析と本続報の実務動向を踏まえ、調達担当者がQ2-Q3に取るべき5つの実践フレームワークを提示する。これは「在庫戦略・契約条項・データ管理・代替素材・調達ルート」の5軸構成となっている。
パンデミック後のJIT回帰から、地政学リスクを織り込んだ1.5〜2ヶ月分の安全在庫の段階的再構築が必要。一度に2ヶ月分を確保するのではなく、月次10〜15%ずつ積み増していく段階的アプローチが現実的。倉庫キャパシティ・キャッシュフローへの負担を分散しつつ、5月末の不足顕在化に備える。【5月18日補強】日本接着剤工業会4/20の自制要請(参考事例)が示すように、過度な先行発注・買い占めは需給混乱を実態以上に増幅させる。経産省4/30は「前年同月比同量を基本とした調達」を求めており、この方針はニトリルグローブにも準用すべき。
米国市場に生産枠を奪われる前に、長期契約(年間契約・四半期契約)による割り当て枠の確保が最優先。短期スポット価格の優位性を追うよりも、6〜12ヶ月の安定供給を確保する方が事業継続性に直結する。Top Globeの「短サイクル発注切り替え」が示す通り、メーカー側の供給優先度は「長期顧客」に向かっている。【5月18日補強】中野デンタルサプライ・茨城県保険医協会の事例(即時在庫切れ・次回入荷未定)は、既存取引枠を維持していない買い手は5月段階で物理的に調達できなくなることを示している。
3〜6ヶ月の値上げ伝搬期間を見据え、2026年6月までに契約条項を見直し。具体的には①価格スライド条項(原料価格が一定以上変動した場合に半年ごとに見直す条項)、②サーチャージ規定(運賃・エネルギー高騰分の別建て請求)、③不可抗力条項(地政学リスク・サプライチェーン停止時の供給義務免除)の3点。事前協議なしで5月以降の値上げを受け入れざるを得ない事態を避ける。
マレーシア・タイ・ベトナムへの調達ルート多元化に加え、素材切り替えの並行検討が必要。①PIR(Post-Industrial Recycled)再生材の活用、②天然ゴムラテックスへの一部回帰(中野デンタルサプライ事例ではラテックスグローブの在庫は確保されている)、③TPE(サーモプラスチックエラストマー)素材への切り替え。すべての用途で代替できるわけではないが、用途別に「代替可能率」を試算しておくことが急務。
仕入価格・納期・代替品の3軸でデータベース化。割当通知が来てから24〜48時間以内に確定発注の判断ができる体制を構築する。具体的には①過去2年の品目別仕入価格推移、②サプライヤー別納期回答実績、③代替品の認証状況・トライアル結果、を一覧化しておく。アロケーション体制下では既存実績がない新規発注は事実上不可となるため、データに基づいた即断即決が事業継続のカギとなる。
4.1 中長期見通し
BIC Advisory Group・AMMEX等の業界分析を総合すると、ホルムズ海峡情勢が早期解決した場合でも、価格・供給への影響は数か月続くと評価されている。AMMEX 2026年4月マーケットアップデートは「Q2にNBR制約による価格上昇圧力が継続する」と予測しており、米国の対中関税は政策的措置のため短期的な反転は見込めない。さらにMordor Intelligenceの中長期予測ではNBR市場が2025年31.2億ドル→2033年50億ドル(CAGR 6.1%)と継続的拡大基調であり、自動車電動化など新規需要も加わる。「新しい正常状態」として在庫水準・価格水準・契約条件を組み直す姿勢が求められる。
参照エビデンス一覧
- 米国通商代表部(USTR)/連邦官報「Notice of Modification: China's Acts, Policies and Practices Related to Technology Transfer」(2024年9月18日付公表)── Section 301に基づく対中医療用グローブ関税:2025年1月1日に7.5%→50%、2026年1月1日に50%→100%への段階的引き上げを最終確定。
- White & Case法律事務所「United States Finalizes Section 301 Tariff Increases on Imports from China」(2024年9月13日)── USTR最終措置の詳細解説、医療用グローブ関税100%への引き上げ確定。
- Coalition for a Prosperous America── 米国の医療・検査用グローブの約99%が輸入依存の事実。
- AMMEX「Market Update April 2026」── ニトリルグローブ世界シェア45〜50%、米国市場最大70%、Q2にNBR制約による価格上昇圧力継続予測。
- Glove Saver「2026 Nitrile Glove Tariffs: 100% Duties Impact on PPE Prices」(2026年3月19日)── マレーシア・タイ・ベトナム産も需要シフトで15〜25%値上がり、低コストグローブの時代は産地を問わず終了との分析。
- Innovative Bioscience「Lab Nitrile Gloves 2026: Tariff-Smart Selection」── 1グローブあたり一般小売価格$0.10〜$0.18(2019年$0.04〜$0.08)への上昇、需要シフトによるキャパシティ圧力と納期延伸。
- MARGMA(マレーシアゴム手袋製造業者協会)公式声明「Margma Urges Government Intervention to Secure Raw Materials and Provide Relief Amid Strait of Hormuz Blockade」(2026年3月26日)── NBR国内優先供給とTake-or-Pay契約緩和の2点要請、マレーシア世界シェア約45%。
- The Edge Malaysia「Top Glove to raise nitrile glove selling prices as nitrile latex costs double」(2026年3月18日)── Top Glove社Lim Cheong Guan業務執行役員のNBR 100%超上昇発言、生産コスト14〜15ドル/販売価格16ドルの逆ザヤ。
- European Rubber Journal「Malaysia glove makers issue call for help amid NBR latex shortage」(2026年3月27日)── MARGMA声明国際メディア報道、マレーシア世界シェア約45%確認。
- CPG Click Oil and Gas「The war in the Middle East has caused the price of rubber gloves to soar by 40%」── CIMB Securities Oong Chun Sungアナリスト分析、合成ゴム手袋1,000枚入り箱29ドル、5月末頃の不足顕在化警告、CIMB・RHB両社の警告。
- Bryant Times(AFP配信)「Mideast war drives up condom, rubber glove prices: manufacturers」── Karex社Goh CEO発言「価格最大30%引き上げ」、Top Glove社「NBR 100%超上昇」。
- CTV News「Iran war news: Price of PPE to rise, manufacturer says」(2026年4月28日)── RonCo Safety Daniel Pecchioli販売副社長発言「3月初旬から原料コスト20〜80%以上上昇」「2026年5〜6月にカナダ市場で品不足顕在化」。
- 日本経済新聞「首相、医療品の安定供給指示」(2026年4月1日)── 注射器・手袋など石油由来製品の代替調達指示。
- 財務省「貿易統計」── 2026年第1四半期の合成ゴム輸入価格指数の上昇。
- Federal Reserve / Reuters / Bloomberg各種報道(2026年3月)── ナフサ市況1トン850ドル超え、Brent原油120ドル/bbl到達。
- 中野デンタルサプライ株式会社「ニトリルグローブ供給逼迫に伴う出荷制限および緊急体制への移行について」公式案内(2026年3月11日)🆕 5/18追加
ホルムズ海峡封鎖による石油原料(ブタジエンゴム)供給停止の影響を明示し、ニトリルグローブ各種について緊急の出荷制限・運用体制変更を実施。ラテックス品は在庫確保済みとの併記により、素材切替の現実的な選択肢としてのラテックス回帰を支持する事例。歯科業界向け卸として、国内現場対応の最も早期かつ明確な公式コミュニケーションの一つ。 - 一般社団法人 茨城県保険医協会「ニトリルグローブの販売 在庫切れのご連絡」公式発表(2026年4月8日)🆕 5/18追加
4月7日のFAX案内(川西工業株式会社「ヴェルパクト VELPACT」型番M-009、1ケース2,400枚17,000円税込)に対し100件超の注文が殺到し即時在庫切れ・次回入荷未定となる事態を報告。中小医療機関での調達難の現実化を示す代表事例。 - 経済産業省「中東情勢を踏まえた燃料油・石油製品の安定供給確保及び重要物資の安定的な供給確保の対応状況」(2026年4月30日発表)🆕 5/18追加
5月のナフサ輸入量は平時比3倍(45万kL/月→4月90万kL→5月135万kL超)に拡大。ポリエチレン等の川下製品在庫は約1.8か月分。ナフサ由来化学製品の供給は「年を越えて継続できる見込み」と発表。日本接着剤工業会4/20の買い占め自制要請、4/21経産省・国交省説明会開催の経緯も記載。
内閣官房:経産省4月30日資料(PDF) - 日本接着剤工業会需要側への協力要請(2026年4月20日)🆕 5/18追加
「①通常の事業活動に基づく適正な購買・在庫水準の維持、②過度な先行発注や買い占め行動の自制等」を需要側に正式要請。3月下旬から発生した過剰発注への対応措置。ニトリルグローブ調達にも準用可能な業界横断的な参考事例(経産省4/30資料で確認)。 - Mordor Intelligence / データブリッジ市場調査「ニトリルブタジエンゴム(NBR)市場予測 2026-2033」🆕 5/18追加
世界のNBR市場規模は2025年に31億2,000万米ドルと推計され、2033年までに50億米ドルに達すると予測。CAGR 6.1%。自動車・電動化対応シール用途、医療用手袋、産業インフラ開発が主な成長要因。原料価格変動とサプライチェーン混乱が制約要因。 - bois創建 / 各種報道「出光丸4月28日ホルムズ海峡通過」(2026年4月28・29日)🆕 5/18追加
出光興産の大型タンカー「出光丸」が2026年4月28日にホルムズ海峡を通過してオマーン湾の公海へ脱出。イラン・米国間の衝突開始以来、日本に関係する船舶がペルシャ湾を脱出した初の事例。ホルムズ海峡の部分的な通航再開を示すシンボル的事例で、ナフサ供給環境改善の物理的裏付けとなる。
免責事項・編集方針
本記事は2026年4月3日初回公開・2026年5月18日最終更新時点で取得した一次情報・公的機関・業界各社の公式情報を独自に収集・整理したものです。情勢は日々変動しており、本記事の情報に基づく判断については必ず最新情報・専門家の助言を得た上で行ってください。