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2026 SUPPLY CHAIN GUIDE / TOILETRY

洗剤・シャンプーの価格構造2026|中身と容器がともにナフサ由来という二重構造

食品には逃げ道があった。牛乳の原料は飼料、醤油の原料は大豆で、いずれも農産物であり、ナフサの影響は容器の経路から届いていた。しかし洗剤とシャンプーは違う。主成分である界面活性剤の原料も、ボトルも詰め替えパウチも、すべてナフサを起点とする。相殺の働きにくい二重構造がどう価格に現れるかを、公表資料から整理する。

初版公開 最終更新 対象品目 洗剤・シャンプー・衛生用品 監視カテゴリ MONITORING 次回更新目安 2026年10月中旬
TL;DR — 3行要約
  • 洗剤とシャンプーは、食品と異なり中身の原料そのものがナフサ由来である。主成分の界面活性剤はエチレンから作られる酸化エチレンなどを原料とし、容器のポリエチレンも同じエチレンから作られる。
  • 三菱ケミカルグループは2026年5月1日納入分から、酸化エチレンなどを1キログラムあたり130円以上値上げした。同社の生産能力は国内全体の4割弱を占め、国内最大の日本触媒も4月1日出荷分から先行して値上げしている。
  • 花王は主力ブランドの値上げに向けて小売企業と交渉している段階にあり、改定率はまだ確定していない。上流の酸化エチレン改定から最終製品の価格交渉までは1ヶ月程度で、この先も反映が続く局面にある。
【総論】

洗剤とシャンプーは、中身も容器もナフサ由来という点で食品と決定的に異なる。界面活性剤の原料である酸化エチレンは2026年5月納入分から1kgあたり130円以上値上げされ、供給する三菱ケミカルGの生産能力は国内の4割弱。容器のポリエチレンも同じエチレン系統にあり、上流の変動が二重に効く構造にある。

130円+
酸化エチレンの値上げ幅
(1kgあたり・2026年5月納入分)
4割弱
三菱ケミカルGの酸化エチレン
国内生産能力シェア
10%+
大王製紙 家庭用紙製品
(2026年4月1日納品分)
4,493
食品・日用品の値上げ品目数
(2026年1〜6月累計)

CHAPTER 01食品との決定的な違い、中身の原料もナフサ由来である

当社はこれまで、牛乳・乳製品・卵、そして醤油・味噌・食用油の価格構造を扱ってきた。いずれの記事でも共通していた構図がある。中身の原料は農産物であり、ナフサの影響は容器の経路から届くというものだ。

牛乳であれば配合飼料、醤油であれば大豆と小麦、食用油であれば大豆と菜種。これらは農産物であり、価格は穀物相場と為替、そして米国の燃料政策で動く。中東情勢が効くのは紙パックの内側コーティングや、PETボトル、食品トレーといった容器の側だった。

洗剤とシャンプーには、その逃げ道がない

本記事で扱うトイレタリー製品は、この構図から外れる。中身の主成分である界面活性剤の原料が、ナフサ由来だからである。

日本経済新聞は2026年5月15日の報道において、洗剤に含まれる界面活性剤の原料などはナフサ由来であると明記している。つまり洗剤・シャンプー・ボディソープ・台所用洗剤は、中身と容器の双方が同一の上流に依存している。

ROUTE 01
中身の経路、ナフサから界面活性剤へ
ナフサを熱分解してエチレンを得る。エチレンから酸化エチレンを製造し、さらに中間材料を経て界面活性剤となる。これが洗剤の洗浄力を担う主成分である。
ROUTE 02
容器の経路、ナフサからポリエチレンへ
同じエチレンを重合するとポリエチレンになる。シャンプーのボトル、詰め替えパウチのフィルム、キャップとポンプがこれにあたる。中身とは別の工程を経るが、出発点は同じである。

二重に効くということの意味

二つの経路が同じ上流を共有しているため、ナフサ価格が動くと中身と容器のコストが同時に、同じ方向へ動く。食品であれば、穀物が下がって樹脂が上がるといった相殺が起こりうるが、トイレタリーではこの相殺が働きにくい。

また、調達上の対応策も限られる。食品では容器を紙に替える、再生材を使うといった選択肢が検討されてきたが、洗剤の中身については代替となる原料系統が容易には存在しない。植物油脂を原料とする界面活性剤も存在するが、そちらは記事2で扱った通り、米国のバイオ燃料政策により植物油の需給が変化している局面にある。

📌 この章のポイント

・食品は中身が農産物であり、ナフサの影響は容器の経路から届いていた
・洗剤・シャンプーは中身の主成分である界面活性剤の原料もナフサ由来である
・中身と容器が同じ上流を共有するため、コストが同時に同じ方向へ動く
・原料系統を切り替える余地が食品に比べて小さい

CHAPTER 022026年3月〜7月、洗剤・日用品に関わる出来事の時系列

トイレタリー製品の価格に直接関係した出来事を時系列で整理する。国際情勢そのものの全体像は、上位ハブ記事である【イラン情勢2026完全まとめ】米・イラン対立・ホルムズ海峡と日本産業への影響を参照されたい。

時期出来事どの層に効くか
2026-02-28 ホルムズ海峡が事実上封鎖 両層の起点
2026-03 帝国データバンク調査で、2026年4月単月の食品・日用品の値上げが2,516品目、1〜6月累計で4,493品目と集計される 最終製品
2026-04-01 日本触媒が酸化エチレンの値上げを出荷分から実施 第1層 界面活性剤の原料
2026-04-01 大王製紙が家庭用・業務用紙製品の一部を10%以上改定(納品分から) 紙系日用品
2026-04-17 三菱ケミカルグループが酸化エチレンなどの値上げを発表(5月1日納入分から、1kgあたり130円以上) 第1層 界面活性剤の原料
2026-05-01 三菱ケミカルグループの酸化エチレン改定が納入分から適用開始 第1層 界面活性剤の原料
2026-05 ユニ・チャームが紙おむつや生理用品を中心とする主力商品を2026年7月以降、順次数%値上げする方針を明らかにする 衛生用品
2026-05-15 花王が取引先の小売企業などに価格見直しの意向を伝え始め、夏以降に主力ブランドを順次値上げする方向で交渉していると報じられる 最終製品
2026-07-12 ホルムズ海峡が再閉鎖 両層の起点
📌 時系列から読めること

上流である酸化エチレンの改定が4月から5月に集中し、最終製品である洗剤の値上げ交渉が5月中旬から始まっている。上流の改定が最終製品の価格交渉に現れるまでの間隔が1ヶ月程度であることがわかる。ただし交渉から実際の店頭価格への反映には、さらに時間がかかる。

CHAPTER 03第1層、界面活性剤はどこから来るのか

界面活性剤は、水と油という本来混ざらないものを混ぜる働きを持つ物質である。分子のなかに水になじむ部分と油になじむ部分の両方を持つことで、汚れを水中に分散させる。洗剤、シャンプー、ボディソープ、台所用洗剤の洗浄力は、この物質が担っている。

ナフサから界面活性剤までの工程

STEP 01
原油からナフサへ
原油を精製して粗製ガソリンであるナフサを得る。日本は中東産への依存度が高く、ホルムズ海峡の通航状況が調達環境に直結する。
STEP 02
ナフサからエチレンへ
ナフサクラッカーで熱分解し、エチレン・プロピレンなどを取り出す。日本のエチレン原料はナフサが大半を占めるため、ナフサの供給状況がそのまま生産量に影響する。
STEP 03
エチレンから酸化エチレンへ
エチレンを酸化して酸化エチレン(エチレンオキサイド)を製造する。界面活性剤の主要な原料であり、この段階で価格改定が発生すると洗剤メーカーの調達コストに直接影響する。
STEP 04
酸化エチレンから界面活性剤へ
酸化エチレンとそれを基につくられる中間材料から、非イオン性を中心とする界面活性剤が製造される。日用品メーカーはこれを購入して洗剤を配合する。
STEP 05
界面活性剤から製品へ
界面活性剤に香料、酵素、安定剤などを配合して洗剤やシャンプーとなる。ここに容器のコストが加わって最終製品となる。

この工程は、当社が扱うプラスチックパレットの原料であるポリプロピレンやポリエチレンとSTEP 02まで同じ道を通る。物流資材と洗剤は、まったく異なる製品でありながら、同じナフサクラッカーの出口を分け合っている。エチレンプラントの稼働状況が両方に同時に効く理由がここにある。

ナフサからエチレンに至る上流の状況については、当社のナフサ供給「目詰まり」の正体で3層構造として整理している。

CHAPTER 04上流の値上げ、酸化エチレンと国内の供給構造

2026年、界面活性剤の原料段階で実際に価格改定が行われた。ここが本記事で最も具体的な数値を示せる部分である。

三菱ケミカルグループの改定

三菱ケミカルグループは2026年4月17日、界面活性剤の原料となる酸化エチレンなどを2026年5月1日納入分から値上げすると発表した。原料となるナフサの高騰を価格に転嫁するものである。

対象となるのは、基礎化学品であるエチレンからつくられる酸化エチレンと、それを基につくられる中間材料である。酸化エチレンは1キログラムあたり130円以上の値上げとなり、2026年5月1日納入分から適用される。同社は茨城県神栖市の鹿島コンビナートで生産しており、日用品メーカーなどに供給している。

供給構造から見た影響範囲

メーカー国内生産能力改定時期改定幅
日本触媒 国内の約4割
(生産能力で国内最大)
2026年4月1日出荷分 公表資料上、当社では確認できていない
三菱ケミカルグループ 国内全体の4割弱 2026年5月1日納入分 酸化エチレン 1kgあたり130円以上

この2社で国内生産能力の大半を占める。生産能力で国内最大の日本触媒が4月1日出荷分から先行して値上げし、4割弱を持つ三菱ケミカルグループが5月1日納入分から続いた形である。調達先を変えることで改定を回避する余地は、構造的に小さい

⚠ 1kgあたり130円以上という水準の位置づけ

この数値は酸化エチレンという原料段階での改定額であり、洗剤1本あたりの値上げ額ではない。洗剤に含まれる界面活性剤の量、界面活性剤に占める酸化エチレン由来成分の比率、そこから製品価格に至るまでの各段階のマージンによって、最終製品への影響額は変わる。

当社では、原料段階の改定額から最終製品の値上げ額を逆算することはしていない。両者は流通段階が異なり、単純な換算が成立しないためである。最終製品の価格については、各メーカーの発表を個別に確認する必要がある。

CHAPTER 05第2層、ボトルと詰め替えパウチの樹脂

洗剤・シャンプーのもうひとつの層が容器である。こちらは食品の記事でも扱ってきた経路だが、トイレタリーでは第1層と出発点を共有している点が異なる。

容器に使われている素材

部材主な素材エチレン系統との関係
シャンプー・ボディソープのボトル ポリエチレン(PE) エチレンを重合して製造。第1層と同じ出発点
詰め替えパウチ ポリエチレンなどのフィルム 同上。多層構成の場合は他樹脂も併用
ポンプ・キャップ ポリプロピレン(PP)、PE PPはプロピレン由来。同じナフサクラッカーの出口
衣料用洗剤の容器 PE、PET いずれもナフサ由来
ラベル・外装フィルム PP、PE ナフサ由来

Chapter 03で見た工程の STEP 02 で得られるエチレンは、酸化エチレンを経て界面活性剤になる道と、重合してポリエチレンになる道に分かれる。洗剤のボトルと中身は、この分岐の直前まで同じ原料であったということになる。

詰め替え用への切替が持つ効果と限界

容器コストの上昇に対する現実的な対応として、詰め替え用製品への切替がある。パウチはボトル本体に比べて使用する樹脂量が少ないため、容器由来のコストは相対的に低く抑えられる。

ただし限界がある。第一に、パウチもポリエチレンなどのフィルムであり、同じナフサ由来であること。第二に、中身の界面活性剤のコストは容器形態にかかわらず変わらないことである。二重構造のうち削減できるのは容器側の一部に限られる。

それでも、詰め替え用は当面の対応として合理性を持つ。二層のうち片方の負担を軽くする手段が他に少ないためである。業務用や施設向けでは、より大容量の規格への切替が同じ考え方にあたる。

CHAPTER 06最終製品への波及、花王の交渉と紙製品の改定

上流での改定は、最終製品にどう現れているか。2026年7月時点の状況を整理する。

花王は交渉の段階にある

日本経済新聞は2026年5月15日、花王が取引先の小売企業などに価格見直しの意向を伝え始めたと報じた。夏以降、主力の洗剤ブランド「アタック」やスキンケア「ビオレ」などを順次値上げする方向で交渉しているという。同記事は、洗剤に含まれる界面活性剤の原料などがナフサ由来であることを背景として挙げている。

⚠ 交渉と発表は異なる

ここで区別すべきは、これが価格改定の正式発表ではなく、交渉が始まった段階であることである。2026年7月時点で、対象品目ごとの確定した改定率は公表されていない。当社でも確認できていない。

報道の段階で改定率を推測して記載することはしない。実際の改定内容については、同社の公式発表をご確認いただきたい。調達計画上は「改定が来る前提で備えるが、幅は未定」という扱いが実態に即している。

紙系の日用品では改定が確定している

同じ日用品でも、紙製品では既に改定が実施されている。大王製紙は、ティシュー、トイレットペーパー、キッチンタオル、ペーパータオルなどを含む一部の家庭用・業務用紙製品を、2026年4月1日納品分から10%以上改定している。理由として、原燃料価格の高止まりに加え、円安、物流コストの上昇、人件費の増加が挙げられている。

またユニ・チャームは2026年5月、紙おむつや生理用品を中心に主力商品を2026年7月以降、順次数%値上げする方針を明らかにした。値上げに合わせて商品のリニューアルも実施するとしている。

紙製品は中身が紙であるため、トイレタリーのなかでは第1層のナフサ依存が相対的に小さい。それでも改定が先行しているのは、パルプ価格と原燃料コスト、そして物流費という別系統の要因が働いているためである。紙全般の価格構造については、当社の印刷・情報用紙15%値上げの構造分析で扱っている。

日用品全体の動き

帝国データバンクの2026年3月調査によると、2026年4月単月で食品・日用品を合わせて2,516品目が値上げとなり、2026年1〜6月の累計では4,493品目、年間平均値上げ率は15%に達する見込みとされた。4月は単月で年間最多の品目数が集中する月にあたる。

CHAPTER 07二重構造がもたらす実務上の含意

中身と容器が同じ上流を共有することは、実務上どのような違いを生むのか。シリーズで扱ってきた3カテゴリを比較すると輪郭が見えてくる。

カテゴリ中身の原料容器の原料相殺の働き方
牛乳・乳製品・卵 配合飼料(農産物) 紙パック、ポリスチレン 穀物と樹脂が別系統。片方が下がれば一部が相殺されうる
醤油・味噌・食用油 大豆・小麦・菜種(農産物) PET、ポリプロピレン 同上。食用油は米国の燃料政策が別要因として働く
洗剤・シャンプー 界面活性剤(ナフサ由来) ポリエチレン(ナフサ由来) 同一系統のため相殺が働きにくい
紙おむつ・トイレットペーパー パルプ(木材由来) 包装フィルム(ナフサ由来) パルプと樹脂が別系統。ただし原燃料と物流費が共通要因

相殺が働かないということ

食品では、穀物相場が落ち着けば樹脂が上がっても影響の一部が打ち消される。実際、記事1で扱った牛乳では、飼料が上がる一方で乳価が据え置かれるという形で、コストの一部が価格転嫁されずに留まっていた。

これに対して洗剤・シャンプーでは、ナフサが上がれば中身と容器のコストが同時に、同じ方向へ動く。相殺の余地がないぶん、上流の変動がより素直に最終価格へ向かう構造にある。逆に言えば、ナフサが下がる局面では両方が同時に下がる方向に働く。

調達側の対応余地

この構造のもとで取りうる手段は限られる。当社が整理すると次の3つになる。

  • 容器側の負担を減らす:詰め替え用・大容量規格への切替。ただしChapter 05で述べた通り、削減できるのは容器分に限られる
  • 使用量そのものを見直す:施設・事業所であれば、ディスペンサーの吐出量設定や希釈倍率の適正化が該当する。物流資材における使用量削減と同じ考え方にあたる
  • 改定の時期を見込んで計画する:上流の改定が最終製品に届くまでの時間差を踏まえ、年度予算に織り込む

調達先の切替による回避は、Chapter 04で見た通り上流の供給構造から難しい。使用量の削減という考え方については、当社の物流資材の使用量削減2026で、同じ発想を資材側で整理している。

CHAPTER 08購買・調達実務で使う判断軸

ここまでの構造分析を、流通・施設・事業所の購買判断に落とし込む。

判断軸1:上流の改定を最終製品の先行指標として使う

Chapter 02の時系列で見た通り、酸化エチレンの改定(4〜5月)から洗剤の値上げ交渉(5月中旬)までの間隔は1ヶ月程度であった。界面活性剤原料メーカーの価格改定発表は、トイレタリー製品の改定を予告する指標として機能する。三菱ケミカルグループ、日本触媒といった上流メーカーの発表を確認しておくことで、数ヶ月先の調達コストを見込める。

判断軸2:交渉段階と確定発表を区別する

Chapter 06で述べた通り、花王の件は交渉段階であり、2026年7月時点で改定率は未確定である。報道を根拠に予算を組むと、実際の改定内容と乖離する可能性がある。「改定が来ることは織り込むが、幅は確定していない」という前提で、幅を持たせた見積もりにしておくのが安全側の対応となる。

判断軸3:中身と容器を分けて削減余地を探す

二重構造であっても、対応策は層ごとに異なる。容器側は詰め替え・大容量への切替、中身側は使用量そのものの見直しである。どちらの層に手をつけているかを意識しないと、対策が容器側だけに偏る。施設向けであれば、ディスペンサーの設定見直しは中身側に効く数少ない手段となる。

判断軸4:紙系と樹脂系で改定の周期が異なる

同じ日用品でも、紙製品は原燃料とパルプ、樹脂系製品はナフサと、追うべき指標が分かれる。大王製紙が4月、ユニ・チャームが7月以降、花王が夏以降と、改定の時期が品目群ごとにずれている。年間の消耗品予算を組む際は、品目群を分けて時期を織り込むほうが実態に近い。

判断軸5:観測すべき指標

次の改定を先読みするために、継続して確認する意味がある指標は次の通りである。

  • 酸化エチレンなど界面活性剤原料メーカーの価格改定発表(三菱ケミカルグループ、日本触媒)
  • ナフサ価格と国内エチレンプラントの稼働状況
  • ポリエチレン・ポリプロピレンの樹脂改定発表(容器コストの先行指標)
  • パルプ価格と原燃料価格(紙系日用品の指標)
  • 日用品メーカーの改定発表と、その前段階にあたる取引先への意向伝達の報道
📌 この章のポイント

トイレタリーは、中身と容器が同じ上流を共有するために相殺が働きにくい。そのぶん上流の指標が先行指標として素直に機能するという利点もある。酸化エチレンの改定を見た時点で、数ヶ月先の洗剤価格に備えることができる。当社では樹脂容器・再生材に関するご相談を承っている。

CHAPTER 09用語集

本記事で使用する用語を整理する。

界面活性剤
分子内に水になじむ部分と油になじむ部分を併せ持ち、本来混ざらない水と油を混ぜる働きをする物質。洗剤・シャンプー・ボディソープの洗浄力を担う主成分にあたる。
酸化エチレン
エチレンオキサイドとも呼ばれる。エチレンを酸化して製造され、界面活性剤の主要な原料となる。国内では日本触媒と三菱ケミカルグループが大きな生産能力を持つ。
エチレン
ナフサを熱分解して得られる基礎化学品。酸化エチレンを経て界面活性剤になる道と、重合してポリエチレンになる道に分かれ、中身と容器の双方の起点となる。
ナフサ
原油を精製して得られる粗製ガソリン。石油化学製品の出発原料であり、日本は中東産への依存度が高い。原油と異なり国家備蓄制度の対象外である。
ナフサクラッカー
ナフサを高温で熱分解し、エチレン・プロピレンなどを取り出す設備。石油化学コンビナートの中核であり、稼働状況が下流の樹脂と化学品の供給を規定する。
ポリエチレン
エチレンを重合して得られる樹脂。シャンプーのボトル、詰め替えパウチのフィルム、キャップなどに用いられる。界面活性剤とエチレンを共有する。
中間材料
基礎化学品と最終製品の間に位置する材料。酸化エチレンを基につくられる中間材料が界面活性剤の直接の原料となり、この段階の価格改定が下流に波及する。
詰め替えパウチ
ボトルに中身を補充するための袋状容器。ボトル本体より使用樹脂量が少ないが、素材はポリエチレンなどのフィルムであり同じナフサ由来である。
トイレタリー
洗剤、シャンプー、ボディソープ、歯磨き、紙おむつなど、日常的に使用する家庭用の衛生・清潔関連製品の総称。
納入分・出荷分
価格改定の適用基準。納入分は取引先へ届いた日、出荷分は工場から出た日を基準とする。基準の違いにより既発注案件が新価格になるかが変わる。
生産能力シェア
ある製品について、国内の総生産能力に占める各社の割合。少数の企業に集中している場合、調達先の切替によって価格改定を回避する余地が小さくなる。
ホルムズ海峡
ペルシャ湾とオマーン湾を結ぶ海峡。世界の海上原油輸送の重要な経路であり、通航状況が原油とナフサの調達環境に直結する。
価格転嫁
上流で生じたコスト上昇を、下流の取引価格や販売価格へ反映させること。転嫁が進まない場合、コストは供給側の事業者に滞留する。

CHAPTER 10出典・エビデンス一覧

界面活性剤の原料

  • 三菱ケミカルグループ 2026年4月17日発表。界面活性剤の原料となる酸化エチレンなどを2026年5月1日納入分から値上げ。対象は基礎化学品エチレンからつくられる酸化エチレンと、それを基につくられる中間材料。酸化エチレンは1キログラムあたり130円以上の値上げ。原料となるナフサの高騰を価格に転嫁するもの。茨城県神栖市の鹿島コンビナートで生産し、日用品メーカーなどに供給。同社の酸化エチレンの生産能力は国内全体の4割弱を占める(日本経済新聞 2026年4月17日)
  • 日本触媒 酸化エチレンの生産能力で国内の約4割を占め国内最大。2026年4月1日出荷分から値上げを実施(同上)

最終製品

  • 花王 2026年5月15日報道。取引先の小売企業などに価格見直しの意向を伝え始め、夏以降、主力の洗剤ブランド「アタック」やスキンケア「ビオレ」などを順次値上げする方向で交渉している。洗剤に含まれる界面活性剤の原料などはナフサ由来であることが背景として挙げられている(日本経済新聞)
  • 大王製紙 ティシュー、トイレットペーパー、キッチンタオル、ペーパータオルなどを含む一部の家庭用・業務用紙製品を2026年4月1日納品分から10%以上改定。原燃料価格の高止まりに加え、円安、物流コストの上昇、人件費の増加を理由として挙げている
  • ユニ・チャーム 2026年5月、紙おむつや生理用品を中心に主力商品を2026年7月以降、順次数%値上げする方針を公表。値上げに合わせて商品のリニューアルも実施するとしている

調査機関

  • 帝国データバンク 2026年3月調査。2026年4月単月で食品・日用品を合わせて2,516品目が値上げ、2026年1〜6月の累計では4,493品目、年間平均値上げ率15%に達する見込み。4月は単月で年間最多の品目数が集中する月にあたる

本記事における留意点

  • 花王の価格改定は2026年7月時点で交渉の段階にあり、対象品目ごとの確定した改定率は公表されていない。本記事では改定率を記載していない
  • 日本触媒の2026年4月1日出荷分からの値上げについて、改定幅は当社では確認できていないため、実施の事実のみを記載している
  • 酸化エチレンの1キログラムあたり130円以上という値上げ幅は原料段階での改定額であり、洗剤やシャンプー1点あたりの値上げ額ではない。原料段階の改定額から最終製品の価格を逆算することは行っていない
  • ライオンをはじめとする他のトイレタリーメーカーの2026年の改定内容については、一次ソースを確認できていないため本記事では記載していない

CHAPTER 11よくある質問

洗剤やシャンプーは、食品とは違う形でナフサの影響を受けるのですか

受け方が異なります。食品は中身の原料が農産物であるため、ナフサの影響は主に容器や包装材の経路から届きます。これに対して洗剤やシャンプーは、中身の主成分である界面活性剤の原料がナフサ由来であり、さらにボトルや詰め替えパウチもナフサから作られる樹脂です。日本経済新聞も、洗剤に含まれる界面活性剤の原料などはナフサ由来であると報じています。中身と容器の双方が同一の上流に依存する構造にあります。

界面活性剤の原料は実際に値上げされているのですか

値上げされています。三菱ケミカルグループは2026年4月17日、界面活性剤の原料となる酸化エチレンなどを2026年5月1日納入分から値上げすると発表しました。酸化エチレンは1キログラムあたり130円以上の値上げで、原料となるナフサの高騰を価格に転嫁するものです。同社の酸化エチレンの生産能力は国内全体の4割弱を占めます。生産能力で国内最大の日本触媒も、既に2026年4月1日出荷分から値上げを実施しています。

詰め替え用に切り替えれば影響は小さくなりますか

容器のコストという点では相対的に有利ですが、影響がなくなるわけではありません。詰め替えパウチはボトル本体に比べて使用する樹脂量が少ないため、容器由来のコスト上昇の絶対額は小さくなります。ただしパウチ自体もポリエチレンなどのフィルムで作られており、同じナフサ由来です。また中身の界面活性剤のコストは容器形態にかかわらず同じであるため、削減できるのは容器分に限られます。

花王はいつから、どの程度値上げするのですか

2026年7月時点では、確定した改定率は公表されていません。日本経済新聞は2026年5月15日、花王が取引先の小売企業などに価格見直しの意向を伝え始め、夏以降に主力の洗剤ブランドであるアタックやスキンケアのビオレなどを順次値上げする方向で交渉していると報じました。交渉の段階にあり、正式な改定内容の発表とは異なります。実際の改定率や対象品目は、同社の公式発表をご確認ください。

なぜプラスチックパレット株式会社がこの記事を書いているのですか

当社は千葉県我孫子市に本社を置く物流資材専門の商社で、プラスチックパレット・折りたたみコンテナ・再生プラスチック原料を全国のお客様へ供給しています。取り扱う資材の多くがナフサ由来の樹脂を原料とするため、原油・ナフサ市況と国際情勢は日々の調達判断そのものです。洗剤やシャンプーの容器も同じ樹脂系統にあり、日用品を扱う流通や施設のご担当者と接する機会が多いことから、公表資料に基づいて価格構造を整理しています。

CHAPTER 12本記事の位置づけと免責事項

本記事は、当社が制作している「2026年サプライチェーン完全ガイド」シリーズのうち、生活用品分野を扱う記事です。国際情勢そのものの全体像については上位ハブ記事である【イラン情勢2026完全まとめ】米・イラン対立・ホルムズ海峡と日本産業への影響を参照してください。

免責事項
  1. 情報の時点性について|本記事の記載内容は2026年7月24日時点で確認できた公開情報に基づいています。ナフサ価格、為替、各社の価格改定は変動するため、記載時点以降の状況を反映していない場合があります。
  2. 流通段階の区別について|本記事では原料段階(酸化エチレン)、中間段階(界面活性剤)、最終製品段階(洗剤・シャンプー)を区別して記載しています。原料段階の改定額から最終製品の価格を逆算・推計することは行っていません。ある段階の数値から別の段階の価格を推測する用途には使用できません。
  3. 交渉段階の情報について|花王の価格改定に関する記載は、報道された交渉段階の内容です。正式な改定の発表とは性格が異なり、対象品目や改定率は変わる可能性があります。確定情報については各社の公式発表をご確認ください。
  4. 投資判断への非該当|本記事は日用品の調達・購買実務に資する情報提供を目的としており、特定の金融商品の売買や投資判断を推奨するものではありません。企業名・製品名の記載は事実関係の説明のためであり、当該企業の評価を示すものではありません。
  5. 引用の取り扱いについて|本記事における各社の発表内容、調査結果は、公表資料および報道の内容を当社が要約・整理したものです。正確な表現については各出典元の原文をご参照ください。記載に誤りを発見された場合は、お手数ですがご連絡いただけますと幸いです。
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