価格改定の適用基準日と価格転嫁2026|発注日か出荷日かで変わる負担と取適法の新ルール
価格改定の通知で最も見落とされやすいのが「いつから適用するか」の一行である。出荷日を基準とするなら、改定前に発注した案件であっても新価格が適用される。同じ2026年の改定でも、注文日・出荷日・納入日・納品日と基準はばらついていた。実際の改定を並べて検証し、2026年1月施行の取適法とあわせて整理する。
- 価格改定の通知には必ず適用の基準が書かれている。注文日・出荷日・納入日・納品日のどれを基準とするかで、改定発表前に発注した案件が旧価格のままか新価格になるかが変わる。
- 2026年の改定12件を並べると基準はばらついていた。当社が確認した範囲では納品分が5件、出荷分と納入分が各3件、注文日と出荷日の両方を条件としたものが1件である。
- 2026年1月施行の取適法では、協議に応じない一方的な代金決定が禁止された。ただしこれは値上げに応じる義務ではなく、協議の場を設けることと説明を行うことを求める規定である。
価格改定の通知で最初に見るべきは、改定率ではなく適用基準日である。出荷日を基準とすれば、改定前の発注でも新価格になる。2026年の改定は出荷分・納入分・納品分が混在していた。あわせて2026年1月施行の取適法で協議に応じない一方的な代金決定が禁止され、価格転嫁率は54.2%となっている。
(注文・出荷・納入・納品)
(2026年3月調査・中小企業庁)
(旧下請法の改正)
(役務提供委託等は100人)
CHAPTER 01適用基準日とは何か、なぜ改定率より先に見るのか
価格改定の通知を受け取ったとき、目が行くのは改定率である。10%なのか30%なのか。年間の購入額に掛け合わせれば、影響額はすぐに出る。
しかし実務でより先に確認すべき項目がある。適用基準日、すなわち「新しい価格をどの時点の取引から適用するか」を定めた一行である。
同じ改定率でも、負担する金額が変わる
仮に、あるメーカーが6月1日から10%の値上げを実施するとする。ここで、5月20日に発注し、6月10日に納品される案件があったとしよう。
改定率は同じ10%でも、基準が変わるだけで、この案件に旧価格が適用されるか新価格が適用されるかが逆になる。年度末に発注が集中する業種や、リードタイムの長い品目を扱う場合、この差は無視できない金額になる。
見落とされやすい理由
この項目が見落とされやすい理由は、通知文のなかでの扱いが小さいことにある。改定率は見出しや太字で示されるが、基準日は「2026年6月1日出荷分より」といった形で、日付表記の一部として書かれることが多い。「6月1日から」とだけ記憶して、「出荷分」の三文字を読み飛ばすことが起きやすい。
また、社内で通知を回覧する際に改定率だけが伝わり、基準の情報が落ちることもある。予算への影響を試算する担当者が基準を知らないまま計算すると、発注済み案件の扱いを誤ることになる。
当社はメーカーから資材を仕入れる立場と、お客様へ供給する立場の双方にある。したがって価格改定の通知を受け取る側と、出す側の両方を経験している。本記事はどちらか一方の視点に立つものではなく、双方に共通する実務論点として整理している。
CHAPTER 024つの基準、注文日・出荷日・納入日・納品日
実務で用いられる基準は、大きく4つに分かれる。それぞれ何を意味し、どの立場に有利に働くかを整理する。
| 基準 | 何を基準とするか | 既発注案件の扱い | 相対的に有利な立場 |
|---|---|---|---|
| 注文日基準 (発注日基準) |
買い手が注文を出した日 | 改定日より前の発注は旧価格 | 買い手 |
| 出荷日基準 | 売り手の工場・倉庫から出た日 | 発注済みでも出荷が改定日以降なら新価格 | 売り手 |
| 納入日基準 | 買い手の指定場所へ届いた日 | 出荷日基準よりさらに遅い時点で判定 | 売り手 |
| 納品日基準 | 納品として処理された日 | 納入日基準とほぼ同じ扱い | 売り手 |
出荷日・納入日・納品日の実務上の差
出荷日・納入日・納品日の3つは、いずれも売り手側の工程を基準とする点で共通する。差が出るのは、改定日をまたぐ輸送中の在庫の扱いである。
たとえば5月30日に出荷し、6月2日に納入される案件があった場合、6月1日改定であれば、出荷日基準なら旧価格、納入日基準なら新価格となる。輸送距離が長い場合や、いったん物流センターを経由する場合、この差が生じる案件は一定数出る。
注文日基準が使われる場面
4つのうち買い手に有利なのは注文日基準だが、これが単独で用いられることは多くない。当社が2026年の改定を確認した範囲では、注文日を条件として明示した例は出荷日と組み合わせる形であった。具体的にはChapter 03で扱う。
注文日基準が採用されにくいのは、売り手側から見ると、改定発表から改定日までの間に駆け込みの発注が集中し、旧価格での供給義務が積み上がるためである。特に供給が制約されている局面では、この運用は取りにくい。
実務で最も注意を要するのは、通知文に基準が明記されていないケースである。「6月1日より価格を改定いたします」とだけ書かれ、何を基準とするかが読み取れない場合がある。
この状態で発注済み案件が改定日をまたぐと、請求段階で認識の食い違いが表面化する。基準の記載がない通知を受け取った場合は、請求書が届く前に照会して書面で確認を残すことが、後の交渉を避ける確実な方法となる。
CHAPTER 032026年の改定を並べる、基準日はばらついている
ここが本記事の中核である。当社が2026年に確認した価格改定の発表12件を、適用基準ごとに並べる。同じ年の改定でありながら、基準は統一されていないことがわかる。
| 基準 | 企業・品目 | 適用時期 |
|---|---|---|
| 出荷分 | 日本触媒 酸化エチレン | 2026年4月1日出荷分 |
| ミツカン 納豆19品 | 2026年6月1日出荷分 | |
| イチビキ 醤油・調理味噌等 | 2026年9月出荷分 | |
| 納入分 | 三菱ケミカルグループ 酸化エチレン等 | 2026年5月1日納入分 |
| 日本製紙 飲料用紙パック | 2026年7月1日納入分 | |
| 日清オイリオグループ 食用油 | 2026年6月1日納入分 | |
| 納品分 | 大王製紙 家庭用・業務用紙製品 | 2026年4月1日納品分 |
| J-オイルミルズ 油脂製品 | 2026年6月1日納品分 | |
| 昭和産業 食用油 | 2026年6月1日納品分 | |
| 味の素 業務用調味料等 | 2026年8月1日納品分 | |
| キッコーマン食品 醤油・つゆ類等291品 | 2026年9月1日納品分 | |
| 注文日+出荷日 | 気泡緩衝材メーカー | 2026年4月20日以降の注文 または5月1日出荷分以降 |
この表から読めること
第一に、基準は業界慣行として統一されていない。化学品でも食品でも紙でも、出荷分・納入分・納品分が混在している。同じ食用油というカテゴリのなかでも、日清オイリオグループが納入分、J-オイルミルズと昭和産業が納品分と分かれている。
第二に、注文日を条件に含めた例は1件のみだった。気泡緩衝材のメーカーは「2026年4月20日以降の注文または5月1日出荷分以降」という二段構えの条件を示している。これは供給が制約されている局面で、駆け込み発注を抑える意図があったと考えられる。
第三に、複数の取引先から通知を受ける購買部門では、一律の処理ができない。10社から通知が来れば、10通りの基準を個別に確認する必要がある。年間の予算影響を試算する際、この確認を省くと計算がずれる。
本表は当社が2026年に確認した改定発表を、公表内容に記載された表現に沿って分類したものである。「納入分」と「納品分」は各社の表記をそのまま用いており、実務上の運用が同一かどうかは各社の取引条件による。
また改定率については本表では扱っていない。品目別の改定率は物流資材完全まとめ2026および食品・生活用品まとめ2026を参照されたい。
CHAPTER 04基準の違いが実務に及ぼす影響
基準日の違いは、購買実務の複数の場面に影響する。どこに効くのかを整理しておくと、確認の優先順位がつけやすくなる。
影響1:既発注案件の請求額
最も直接的な影響である。改定発表の時点で未納品の発注残がどれだけあるかによって、影響額が決まる。リードタイムの長い品目ほど発注残が積み上がっているため、影響を受けやすい。特注品や輸入品を扱う場合は、改定通知を受けた時点で発注残の一覧を確認する価値がある。
影響2:年度予算の試算
年間の購入額を試算する際、改定日をそのまま境目として計算すると誤差が出る。出荷分・納入分基準の場合、改定日の前後にまたがる案件は新価格側に寄るためである。年度末や期末に発注が集中する業種では、この寄り方が無視できない規模になる。
影響3:在庫の前倒し確保の判断
改定前に発注を前倒しして旧価格を確保しようとする対応は、注文日基準でなければ効果がない。出荷分・納入分・納品分が基準であれば、前倒しで発注しても改定日以降に出荷されれば新価格になる。前倒しの判断をする前に基準を確認しないと、倉庫費とキャッシュフローの負担だけが残る。
影響4:見積書の有効期限との関係
見積書に有効期限が記載されている場合、その期限内に発注すれば見積価格が適用されるのが通常の理解である。しかし改定通知が出荷日基準であれば、有効期限内に発注していても、出荷が改定日以降なら新価格になりうる。見積書の有効期限と改定の適用基準は別の概念であり、両方を確認する必要がある。
継続的な取引で基本契約書を締結している場合、価格改定の手続きや適用時期について定めが置かれていることがある。この場合、個別の改定通知よりも契約の定めが優先するのが原則である。
改定通知を受け取った際は、まず自社と当該取引先の間に基本契約があるか、あるとすれば価格改定に関する条項がどうなっているかを確認することが先になる。なお当社は法律の専門家ではないため、契約解釈に関わる判断については弁護士等の専門家にご相談いただきたい。
CHAPTER 052026年1月施行の取適法、何が変わったのか
ここまでは商慣行としての適用基準日を扱ってきた。2026年に入り、価格改定をめぐる制度そのものが変わっている。下請代金支払遅延等防止法(下請法)が改正され、2026年1月1日から中小受託取引適正化法(取適法)として施行された。
改正の経緯
公正取引委員会と中小企業庁が共催した有識者検討会「企業取引研究会」(座長:神田秀樹 東京大学名誉教授)が、学識経験者・経済団体・消費者団体等の委員20名により計6回の会合を開催し、令和6年12月25日に報告書を取りまとめた。これを受けて改正法が2025年5月16日に成立し、2026年1月1日に施行されている。
主な改正点
| 改正項目 | 内容 |
|---|---|
| 適用対象の拡大(取引) | 適用対象となる取引に、製造等の目的物の引渡しに必要な運送の委託が追加。発荷主が運送事業者に対して物品の運送を委託する取引が対象となる |
| 適用対象の拡大(規模) | 従来の資本金基準に加え、従業員基準が追加。従業員数300人(役務提供委託等は100人)の区分を新設 |
| 協議に応じない一方的な代金決定の禁止 | 代金に関する協議に応じないことや、必要な説明を行わないことなど、一方的な代金決定を禁止 |
| 手形払の禁止 | 対象取引において手形払を禁止。電子記録債権・ファクタリング等も、支払期日までに代金満額相当の現金を得ることが困難なものを禁止 |
| 面的執行の強化 | 公正取引委員会・中小企業庁に加え、事業所管省庁の主務大臣にも指導・助言の権限を付与 |
| 委託内容の明示方法 | 中小受託事業者の承諾の有無にかかわらず、電子メール等による明示が可能に(書面か電磁的方法かは委託事業者が選択) |
| 減額時の遅延利息 | 正当な理由なく製造委託等代金を減額した場合、減額部分について遅延利息の支払い対象となる |
物流に直接効く改正
物流事業者・荷主にとって重要なのは、対象取引に運送の委託が加わった点である。従来の下請法では製造委託・修理委託・情報成果物作成委託・役務提供委託が対象だったが、取適法では発荷主が運送事業者に物品の運送を委託する取引が明示的に含まれる。
あわせて規模要件に従業員基準が加わったことで、資本金の額では対象外となっていた取引にも適用が及ぶ可能性がある。自社が委託事業者に該当するか、中小受託事業者に該当するかを改めて確認する必要がある。
CHAPTER 06協議に応じない一方的な代金決定の禁止をどう読むか
改正項目のうち、価格改定の実務に最も関わるのがこの規定である。ただし内容を正確に理解しないと、双方にとって不利益な誤解が生じるため、慎重に整理する。
公表資料に書かれている内容
公正取引委員会のリーフレットでは、この規定について「代金に関する協議に応じないことや、必要な説明を行わないことなど、一方的な代金決定」を禁止するものと説明されている。中小企業庁の資料では、価格据え置き取引への対応として位置づけられている。
この規定を「受注側が値上げを求めたら、発注側は応じなければならない」と理解するのは誤りである。公表資料が禁じているのは、協議そのものに応じないことと、必要な説明を行わないまま一方的に代金を決めることである。
協議の場を設け、根拠を示して説明したうえで、結果として金額の合意に至らないことまでを禁じるものではない。逆に受注側から見れば、協議を求めれば必ず値上げが通るわけではなく、コスト上昇の根拠を示す準備が引き続き必要ということになる。
実務上の含意
この規定が実務にもたらす変化は、やりとりの記録が重要になることである。協議に応じたかどうか、説明を行ったかどうかが後から問われる可能性があるため、口頭のやりとりだけで済ませるリスクが高まった。
発注側の立場では、価格協議の申し入れを受けた際に、担当者レベルで曖昧に処理しないことが要点となる。協議の求めを無視したり、日程を先延ばしにし続けたりする対応は、この規定に照らして問題となりうる。
受注側の立場では、協議を申し入れた事実と、その際に示した根拠を記録として残しておくことが有効となる。中小企業庁は価格交渉のための根拠資料を作成できるツールを提供しており、公表資料に基づく資料でも足りるとの考え方が示されている。
適用基準日との関係
本記事の主題である適用基準日に引きつけると、次のように整理できる。基準日をどう設定するかは、代金の決定に関わる条件の一部である。したがって、基準日を含む改定条件を一方的に通知し、照会にも応じないという対応は、この規定の趣旨から外れる可能性がある。
一方で、基準日を明示したうえで説明に応じているのであれば、それが売り手に有利な出荷日基準であること自体が問題となるわけではない。問題は基準の内容ではなく、決定に至るプロセスにあるという読み方が、公表資料の記述に沿っている。
当社は物流資材の商社であり、法律の専門家ではない。本章は公正取引委員会・中小企業庁の公表資料に記載された内容を整理したものであり、個別の取引が規定に該当するかどうかの判断を示すものではない。具体的な事案については、弁護士等の専門家、または公正取引委員会・中小企業庁の相談窓口にご相談いただきたい。
CHAPTER 07価格転嫁の実態、転嫁率54.2%が示すもの
制度が整備される一方で、実際の転嫁はどこまで進んでいるのか。中小企業庁が毎年3月と9月を価格交渉促進月間と位置づけて実施している調査に、その数字がある。
2026年3月調査の結果
中小企業庁は受注側中小企業30万社を対象に、価格交渉・価格転嫁・支払条件の状況を調査している。2026年6月26日に公表された2026年3月時点の結果は次の通りである。
| 区分 | 転嫁率 | 前回比 |
|---|---|---|
| 全体 | 54.2% | 約1ポイント増 |
| 原材料費 | 55.7% | — |
| 労務費 | 50.0% | — |
| エネルギーコスト | 48.9% | — |
| 官公需 | 48.4% | 約4ポイント減 |
この数字の読み方
転嫁率54.2%とは、コスト上昇額のうち、価格に転嫁できた額の割合である。言い換えれば、コストが100上がったうち、約46が受注側に残っているということになる。
コスト要素別に見ると、原材料費が55.7%で最も高く、エネルギーコストが48.9%で最も低い。原材料は数量と単価が明確で根拠を示しやすいのに対し、エネルギーは製品1単位あたりの配賦が説明しにくいことが、この差の背景にあると考えられる。
官公需の48.4%が前回から約4ポイント減となっている点も見過ごせない。民間取引の転嫁が進む一方、官公需では反対方向に動いている。
転嫁率が5割程度にとどまっている状況で、適用基準日の設定はコストの負担者を左右する具体的な条件のひとつとして機能する。出荷日基準は、改定日をまたぐ発注残の分だけ、買い手側の負担を増やす。逆に注文日基準は、その分を売り手が負担する。
制度は協議のプロセスを求め、統計は転嫁が道半ばであることを示している。そのなかで基準日は、通知文の一行でありながら金額に直結する条件である。だからこそ、改定率と同じ重みで確認する価値がある。
CHAPTER 08購買・調達実務で使う判断軸
ここまでの内容を、日々の実務に落とし込む。
判断軸1:改定通知を受けたら基準日を最初に確認する
改定率より先に、「出荷分」「納入分」「納品分」「注文分」のどれが書かれているかを確認する。記載がなければ請求書が届く前に照会し、書面またはメールで回答を残す。この一手間が、後の請求段階での認識の食い違いを防ぐ。
判断軸2:発注残の一覧と突き合わせる
基準を確認したら、改定日時点で未納品となる発注残を洗い出す。出荷分・納入分・納品分が基準であれば、これらは新価格の対象になりうる。リードタイムの長い品目ほど影響が大きいため、特注品・輸入品から確認する。
判断軸3:前倒し発注は基準を確認してから判断する
Chapter 04で述べた通り、前倒し発注が有効なのは注文日基準の場合に限られる。基準を確認せずに前倒しすると、倉庫費とキャッシュフローの負担だけが残る可能性がある。前倒しを検討する前に、まず基準を確認する順序が正しい。
判断軸4:協議の記録を残す
取適法の施行により、代金に関する協議のプロセスが問われる場面が増えると考えられる。発注側・受注側のいずれの立場でも、いつ、誰が、どのような根拠を示して協議したかを記録に残すことが、双方にとって備えになる。メールでのやりとりを残す、議事録を作成して相互に確認するといった方法が考えられる。
判断軸5:契約書の定めを先に確認する
基本契約書に価格改定に関する条項がある場合、個別の通知よりも契約の定めが優先するのが原則である。継続的な取引先については、改定通知を受けるたびに契約書を確認するのではなく、あらかじめ主要取引先の契約条項を整理しておくと対応が速くなる。
判断軸6:自社が出す側の通知も点検する
当社を含め、多くの事業者は仕入れる立場と供給する立場の双方にある。自社が価格改定を通知する際に、基準日を明示しているかを点検する価値がある。基準が書かれていない通知は、取引先に照会の手間をかけ、結果として請求段階での交渉を生む。明示しておくことが、双方の実務負担を減らす。
判断軸7:観測すべき指標
制度と実態の両面で、継続して確認する意味がある情報源は次の通りである。
- 公正取引委員会・中小企業庁による取適法の運用状況と勧告・公表事例
- 中小企業庁の価格交渉促進月間フォローアップ調査(毎年3月・9月の月間後に公表)
- 労務費の適切な転嫁のための価格交渉に関する指針の改正状況
- 取引先メーカーの改定発表における基準日の表記の変化
適用基準日は、通知文のなかでは日付表記の一部にすぎない。しかし既発注案件の請求額、年度予算の試算、前倒し発注の是非という3つの判断を左右する。改定率と同じ重みで確認し、記載がなければ照会する。この習慣が、価格改定の局面での実務上の差になる。当社では物流資材の調達に関するご相談を承っている。
CHAPTER 09用語集
本記事で使用する用語を整理する。
CHAPTER 10出典・エビデンス一覧
制度・法令
- 公正取引委員会「2026年1月から『下請法』は『取適法』へ」リーフレット。適用対象となる取引への運送の委託の追加、従業員基準(300人、100人)の追加、協議に応じない一方的な代金決定の禁止、手形払の禁止、事業所管省庁への指導・助言権限の付与について記載
- 中小企業庁「2026年1月施行 下請法は取適法へ 改正ポイント説明会」資料(2025年10月14日)。対象取引に発荷主が運送事業者に対して物品の運送を委託する取引を追加、従業員数300人(役務提供委託等は100人)の区分を新設、協議に応じない一方的な代金決定の禁止(価格据え置き取引への対応)等
- 公正取引委員会・中小企業庁 共催「企業取引研究会」(座長:神田秀樹 東京大学名誉教授)。学識経験者・経済団体・消費者団体等の有識者計20名が委員として参画し、計6回の会合を開催、令和6年12月25日に報告書を取りまとめ・公表
- 「下請代金支払遅延等防止法及び下請中小企業振興法の一部を改正する法律」2025年5月16日成立、2026年1月1日施行
- 政府広報オンライン「2026年1月から下請法が『取適法』に!委託取引のルールが大きく変わります」。面的執行の強化、委託内容の明示方法、減額時の遅延利息について記載
- 中小企業庁「労務費の適切な転嫁のための価格交渉に関する指針」。受注者と定期的に労務費等の転嫁について協議の場を設けること、価格転嫁の根拠資料は公表資料に基づくもので構わないこと等を提示
統計・調査
- 経済産業省・中小企業庁「価格交渉促進月間(2026年3月)フォローアップ調査の結果」2026年6月26日公表。受注側中小企業30万社を対象。価格転嫁率54.2%(前回から約1ポイント増)、コスト要素別で原材料費55.7%・労務費50.0%・エネルギーコスト48.9%、官公需における価格転嫁率48.4%(前回から約4ポイント減)
- 中小企業庁「価格交渉促進月間の実施とフォローアップ調査結果」2026年6月26日更新。2021年9月より毎年9月と3月を価格交渉促進月間として設定
価格改定の適用基準(Chapter 03の根拠)
- 出荷分を基準とした例:日本触媒 酸化エチレン(2026年4月1日出荷分)、ミツカン 納豆19品(2026年6月1日出荷分)、イチビキ 醤油・調理味噌等(2026年9月出荷分)
- 納入分を基準とした例:三菱ケミカルグループ 酸化エチレン等(2026年5月1日納入分)、日本製紙 飲料用紙パック(2026年7月1日納入分)、日清オイリオグループ 食用油(2026年6月1日納入分)
- 納品分を基準とした例:大王製紙 家庭用・業務用紙製品(2026年4月1日納品分)、キッコーマン食品 醤油・つゆ類等291品(2026年9月1日納品分)、J-オイルミルズ 油脂製品(2026年6月1日納品分)、昭和産業 食用油(2026年6月1日納品分)、味の素 業務用調味料等(2026年8月1日納品分)
- 注文日と出荷日の双方を条件とした例:気泡緩衝材メーカー(2026年4月20日以降の注文または5月1日出荷分以降)
- 各社の改定内容の詳細および改定率については、当社の品目別記事で個別に扱っている
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本記事における留意点
- Chapter 03の分類は、各社が公表した表現(出荷分・納入分・納品分等)に沿って整理したものである。「納入分」と「納品分」の実務上の運用が同一かどうかは各社の取引条件による
- 取適法に関する記述は、公正取引委員会および中小企業庁の公表資料に記載された内容を整理したものであり、個別の取引が規定に該当するかどうかの判断を示すものではない
- 当社は法律の専門家ではないため、契約解釈や法令の適用に関わる判断については弁護士等の専門家、または公正取引委員会・中小企業庁の相談窓口にご相談いただきたい
CHAPTER 11よくある質問
価格改定の適用基準日とは何ですか
新しい価格をどの時点の取引から適用するかを定めた基準です。実務では注文日、出荷日、納入日、納品日のいずれかが用いられます。この基準の違いにより、改定の発表前に発注した案件が旧価格のままか新価格になるかが変わります。たとえば出荷日を基準とする場合、改定前に発注していても、工場から出るのが改定日以降であれば新価格が適用されます。改定通知を受け取った際に最初に確認すべき項目です。
2026年の改定では基準日がばらついているのですか
ばらついています。当社が確認した12件では、日本触媒とミツカンとイチビキが出荷分、三菱ケミカルグループと日本製紙と日清オイリオグループが納入分、大王製紙とJ-オイルミルズと昭和産業と味の素とキッコーマン食品が納品分を基準としています。さらに気泡緩衝材のメーカーは注文日と出荷日の両方を条件として示しました。同じ時期の改定でも基準が異なるため、複数の取引先から通知を受ける購買部門では個別に確認する必要があります。
2026年1月に施行された取適法とはどのような法律ですか
下請代金支払遅延等防止法(下請法)を改正した法律で、2025年5月16日に成立し、2026年1月1日に施行されました。従来の資本金基準に加えて従業員基準(300人、役務提供委託等は100人)が追加され、適用対象となる取引に製造等の目的物の引渡しに必要な運送の委託が加わりました。また新たな禁止行為として、協議に応じない一方的な代金決定の禁止と、手形払の禁止が定められています。
協議に応じない一方的な代金決定の禁止とは、値上げに応じる義務ですか
応じる義務とは異なります。公正取引委員会の説明では、代金に関する協議に応じないことや、必要な説明を行わないことなど、一方的な代金決定を禁止するものとされています。つまり協議の場を設けることと、決定に至る説明を行うことが求められる規定です。協議を経たうえで金額の合意に至らないこと自体を禁じるものではありません。ただし協議の求めを無視したり、日程を先延ばしにし続けたりする対応は問題となりえます。
なぜプラスチックパレット株式会社がこの記事を書いているのですか
当社は千葉県我孫子市に本社を置く物流資材専門の商社で、プラスチックパレット・折りたたみコンテナ・PPバンド・ストレッチフィルム・再生プラスチック原料を全国のお客様へ供給しています。メーカーから仕入れる立場と、お客様へ供給する立場の双方にあるため、価格改定の通知を受け取る側と出す側の両方を経験しています。2026年に多数の改定を追ってきた立場から、基準日という見落とされやすい論点を整理しています。
CHAPTER 12本記事の位置づけと免責事項
本記事は、当社が制作している「2026年サプライチェーン完全ガイド」シリーズのうち、購買・調達実務を扱う記事です。品目別の改定率や供給状況については物流資材完全まとめ2026および【食品・生活用品まとめ2026】を参照してください。
- 情報の時点性について|本記事の記載内容は2026年7月24日時点で確認できた公開情報に基づいています。法令の運用、各社の価格改定、統計調査の結果は変動するため、記載時点以降の状況を反映していない場合があります。
- 法令に関する記述について|取適法に関する記述は、公正取引委員会および中小企業庁の公表資料に記載された内容を当社が整理したものです。当社は法律の専門家ではなく、個別の取引が規定に該当するかどうかの判断を示すものではありません。契約解釈や法令の適用に関わる判断については、弁護士等の専門家、または公正取引委員会・中小企業庁の相談窓口にご相談ください。
- 適用基準の分類について|Chapter 03の分類は各社が公表した表現に沿って整理したものです。「納入分」と「納品分」の実務上の運用が同一かどうかは各社の取引条件によります。個別の取引条件については取引先に直接ご確認ください。
- 投資判断への非該当|本記事は購買・調達実務に資する情報提供を目的としており、特定の金融商品の売買や投資判断を推奨するものではありません。企業名の記載は事実関係の説明のためであり、当該企業の評価を示すものではありません。
- 引用の取り扱いについて|本記事における各社の発表内容、政府機関の公表資料は、その内容を当社が要約・整理したものです。正確な表現については各出典元の原文をご参照ください。記載に誤りを発見された場合は、お手数ですがご連絡いただけますと幸いです。