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シーリング材・コーキングの不足はいつまで続くか|2026年シーリングショックの現状と正常化の見通し
IRAN CRISIS × SEALANT MARKET 2026 JULY

シーリング材・コーキングの不足はいつまで続くか|2026年シーリングショックの現状と正常化の見通し

米イラン覚書合意でナフサ価格急落もクォータ制継続、7月追加値上げと正常化への3つの時間差構造を読み解く

📅 🔄 ✍️ プラスチックパレット株式会社
シンガポールナフサ 6月末 $500台/MT 5/16 $1,043ピークから急落
エチレン4月稼働率 67.3% 44ヶ月連続損益分岐割れ
建設物流資材 6月値上げ 30社超 7月追加改定も継続進行
補正予算 総額 3.1兆円 6月5日成立・7月支援開始
この記事の結論 2026年6月14日イスラマバード覚書合意でホルムズ海峡は再開に向かい、シンガポールナフサは$1,043→$500台/MTまで急落。しかしシーリング材のクォータ制は継続、ニチハ7月15%・マグ・イゾベール25%以上・サンゲツ7月改定と周辺建材の追加値上げも進行中。物流・生産・サプライチェーンの3つの時間差により、本格正常化は2027年前半の見通しだ。

1. シーリングショックの現在地、覚書合意後の「軟化とタイトネスの二重構造」

2026年6月14日のイスラマバード覚書合意でホルムズ海峡は再開に向かい、シンガポールナフサ価格は5/16ピーク$1,043/MTから6月末$500台/MTまで急落した。しかしシーリング材市場では、価格軟化現物タイトネスが同時進行する二重構造が続き、クォータ制配分の継続、ニチハ7月15%・マグ・イゾベール25%以上等の追加値上げ、住宅工程全体の遅延といった実務課題が残存している。

2026年2月28日の米国・イスラエルによるイラン攻撃を端緒とした中東情勢の激変は、遠く離れた日本の建設現場の「毛細血管」とも言えるシーリング材(充填材)の供給網を根底から破壊した。かつてないスピードで市場から製品が消え、価格が暴騰するこの現象は、もはや一時的な品薄の域を超え、構造的な供給崩壊として全国の工期を脅かした。

本記事では2026年7月時点の全体像を、公的経済指標・メーカー公式発表・国内外の流通実態に基づいて詳らかにする。6月14日のイスラマバード覚書合意はプラス材料だが、業界の実感としては「解消に向かう過渡期」(テイガク2026年6月30日更新)にすぎない。サプライチェーンがすぐに元通りになるわけではなく、新たな受発注・価格管理の仕組みが整うまで数か月を要するとの評価が主流だ。本シリーズの全体像は2026年ナフサショック総論で、覚書の脆さと暮らしへの影響は姉妹記事ナフサの目詰まり解説で、覚書履行と暮らしの実相はイスラマバード覚書の脆さで詳述している。

📌 2026年7月時点の現状サマリー
価格軟化サイド:①シンガポールナフサ5月ピーク$1,043→6月末$500台/MTへ急落、②Brent原油5月$114→6/4 $97割れ→6月末$68/バレル、③米国産ナフサ日本向け輸入が通常の5倍水準到達(Kpler)、④覚書合意でホルムズ海峡通行料60日間無料化。
現物タイトネスサイド:①エチレン4月稼働率67.3%・44ヶ月連続損益分岐割れ、②シーリング材クォータ制継続、③ニチハ7/1金属屋根材15%・マグ・イゾベール7/1グラスウール25%以上・サンゲツ7/1受注分改定、④住宅瑕疵担保保険物件でJIS適合品への需要集中。

2. イラン情勢の連鎖、開戦から6月14日覚書合意までの時系列

シーリングショックを俯瞰するには、上流のエネルギー市場・政治動向の理解が不可欠である。2026年2月28日の開戦から6月14日のイスラマバード覚書合意まで、市場を動かした主要イベントを整理する。

2026年2月28日
米国・イスラエルがイラン軍事施設・政府施設を攻撃、開戦。翌3月1日にイラン国営メディアがハメネイ師死亡を発表、中東情勢が決定的に緊迫化。
2026年3月上旬
イランがホルムズ海峡を段階的封鎖、3月4日「完全支配」宣言。戦争1週間で通過タンカー97%減少(Windward)。
2026年3月19日
サウジSAMREF精製所・カタールPearl GTL攻撃。シンガポールナフサ価格が3月6日 $776→1週間で$1,000/MT超に突き抜け。
2026年4月1〜9日
カネカMSポリマー+120円/kg、信越化学シリコーン+30円/kg〜、オート化学工業供給・価格調整発表。シーリング材業界全体で値上げ・受注停止が連鎖。
2026年4月13日
米CENTCOMがイラン港湾向け海上封鎖を正式発動。「二重封鎖」フェーズへ移行、通航数は平時比約90%超減の1日10隻前後に激減。
2026年5月3-4日
UAEフジャイラ主要石油関連施設へのイランドローン攻撃で火災発生。Brent原油5%超上昇し$114超に再急騰(Bloomberg)。
2026年5月12日
旭化成・三井化学・三菱ケミカル3社が西日本エチレン統合JV出資比率(三井45%・三菱45%・旭化成10%)で正式合意。2030年水島AMECクラッカー停止・大阪OPCへ集約方針確定(旭化成プレスリリース)。
2026年5月16日
シンガポールナフサ価格が$1,043/MTで歴史的ピーク(大景化学業界整理)。
2026年5月21日
第8回中東情勢関係閣僚会議。同日、石油化学工業協会がエチレン4月稼働率67.3%・44ヶ月連続損益分岐割れを発表。
2026年5月25日
高市早苗総理が3兆円規模の補正予算編成を正式表明。「中東情勢等対応予備費」創設、7-9月電気ガス料金1世帯計5,000円支援を決定。
2026年6月2日
第9回中東情勢関係閣僚会議。同日、赤澤経産大臣「ナフサは定期修理集中期間終了で7月に前年並みの生産量に戻る」との見通し表明。
2026年6月3〜4日
シンガポールナフサ$767/MTまで急落(5/16比 -26%)。Kpler海事データで米国産ナフサ日本向け輸入が通常の5倍水準に到達。6/4 Brent原油97ドル割れ、ホルムズ通過量が過去2週間で増加(TradingEconomics)。
2026年6月5日
2026年度補正予算(総額3兆1,135億円)が国会で成立。財源はすべて赤字国債。
2026年6月14日
イスラマバード覚書14項目暫定枠組が成立。パキスタン仲介、カタール・サウジアラビア・トルコ・エジプトも交渉支援。ホルムズ海峡60日間通行料無料・機雷除去30日以内・米国海上封鎖30日以内解除。
2026年6月17日
フランス・エヴィアン=レ=バンでのG7サミット最終日にデジタル形式で正式署名。高市総理「事態の収束に向けた大きな一歩として歓迎」と表明。
2026年6月末
シンガポールナフサが$500台/MTまで急落、Brent原油$68/バレル台へ。ただし覚書合意後11日で米イラン直接衝突3回・商船被弾2件が発生し、覚書の脆弱性が露呈。
2026年7月1日
電気ガス料金支援スタート(3か月合計5,000円)。同日、ニチハ金属外壁材・センタールーフ15%、マグ・イゾベール グラスウール25%以上、サンゲツ受注分改定など建材の7月値上げが一斉開始。

3. ナフサ・原油価格の乱高下と正常化の兆し、6月時点の実相

シーリング材の主原料である変成シリコーン・シリコーン・ポリウレタン系ポリマーは、すべてナフサから始まる石油化学品連産品の下流に位置する。上流価格が2月末に急騰し5月にピーク、6月に急落した今、シーリング材市場の下流でどんな時間差が生じているかを見る。

3-1. シンガポールナフサ価格の4か月推移

日付 価格 2月末比 局面
2026年2月27日 $588/MT 基準値 戦争前夜の平常価格
2026年3月6日 $776/MT +32% 開戦1週間で急上昇
2026年3月25日 $1,000超/MT +70%超 心理的節目突破
2026年4月1日 $917/MT +56% アジア域内フォースマジュール宣言連鎖後の水準
2026年5月16日 $1,043/MT +77%(ピーク) UAEフジャイラ攻撃後のピーク
2026年6月3日 $767/MT +30%(ピーク比-26%) 米国産ナフサ輸入5倍・需要破壊
2026年6月末 $500台/MT ピーク比-50%超 覚書合意で急落継続、原油と連動

出典:大景化学業界整理(2026.6)、C&EN(2026年3月17日)、Bloomberg、EIA。$500台/MTは6月末推定水準。

3-2. 「価格軟化」と「現物タイトネス」の二重構造

6月時点のナフサ市場の特徴は、価格は下がっているが現物は依然として手に入りにくいという二重構造だ。需給の緊張度を映すクラックスプレッド(ナフサと原油の価格差)はピークの4分の1に縮小したが、シーリング材市場では以下の理由で現物タイトネスが継続している。

価格が下がる理由:①米国産ナフサ輸入5倍水準(Kpler)、②サウジ紅海側からのホルムズ迂回調達進行、③ホルムズ通過量漸増(TradingEconomics)、④需要破壊と買い控え(demand destruction)。

現物のタイトネスが続く理由:①国内エチレン稼働率67.3%と低水準、②世界供給の約11%(日量1,000〜1,100万バレル)はオフラインまたは出荷不能、③米国原油在庫6週連続減少で運用最低水準近接(EIA)、④添加剤・容器・触媒など隣接資材のタイトネスは継続。

シーリング材業界特有のタイトネス要因

シーリング材の主原料である変成シリコーン(MSポリマー・サイリル)はカネカが独占供給、シリコーン系は信越化学工業・旭化成ワッカーシリコーンが主力供給者。供給企業が絞られている構造上、原料メーカーの生産調整がそのまま完成品のタイトネスに直結する。加えて、硬化触媒・接着改良剤・可塑剤といった「特殊添加剤」の多くはドイツ(BASF等)・中国依存で、これら数%の必須成分が届かなければ最終製品の出荷ができない。ナフサ価格が下がっても、この構造は変わらない。

3-3. 高市総理・赤澤経産大臣の見立てと業界の実感

高市早苗総理は2026年5月25日の記者会見で「原油は6月のホルムズ海峡を経由しない代替調達が8割程度まで引き上がり、年度を越えて来年春まで石油の安定供給を確保できる」「ナフサ由来の石油製品は年を越えて供給継続が可能」と説明した。赤澤亮正経済産業大臣も2026年6月2日、「ナフサは定期修理集中期間終了で7月に前年並みの生産量に戻る」との見通しを表明した。

ただし、これは政府の楽観的な見立てだ。石油化学プラントの多くは長期修理に入っており、フル生産再開には時間がかかる。「政府は足りていると言うが、業界は不足している」という認識のずれが続く。ICISの石油ガス・NGLアナリストは「停戦合意は市場の正常化を意味しない。物理的なタイトネスは封鎖解除後も少なくとも3ヶ月以上は継続する」と警告している(Discovery Alert、2026年5月)。

4. 主要メーカーの公式発表、4-5月改定と7月周辺建材の追加値上げ

現在、主要メーカーから発表されている公式な価格改定および供給制限のエビデンスは、現場の交渉において最も重要な資料となる。4月に一斉実施された値上げは6月時点でも継続する一方、7月以降は周辺建材で追加値上げが実施されている。

4-1. シーリング材メーカーの4-5月改定(継続中)

メーカー 代表製品・種別 改定幅・措置 実施時期 状況
カネカ MSポリマー・サイリル
変成シリコーン系の主原料ポリマー
+120円/kg以上 2026年4月1日出荷分〜 確定
信越化学工業 シリコーン系(KE-シリーズ等)
建築・土木・工業用シリコーン
+30円/kg〜 2026年4月1日納入分〜 確定
セメダイン 変成シリコーン・シリコーン・ウレタン系全般 供給困難を公式表明 2026年3月31日付通知 供給制限
サンスター技研 ペンギンシール
日本シーリング材工業会正会員
+30%以上 2026年4月出荷分〜 確定
オート化学工業 オートンイクシード等
一液ポリウレタンのパイオニア
価格改定・供給調整 2026年4月9日発表 供給制限
シャープ化学工業 シャーピーシリーズ
JIS規格対応品を幅広く展開
溶剤系+40%以上
その他+20%以上
2026年4月出荷分〜 確定
旭化成ワッカーシリコーン GENIOSIL®シリーズ
変成シリコーン系原料
親会社Wackerの供給制約が波及 2026年3月〜 影響継続
サンライズ 建築用シーリング材全般 出荷停止 2026年4月〜 出荷停止

出典:各社公式リリース、テイガク(2026年4月23日更新資料)、当社「2026年5月1日値上げ完全版」より確認。上記は4〜5月の改定が現行水準として継続。

4-2. 【7月版アップデート】周辺建材の追加値上げ

シーリング材本体の新規改定は2026年7月8日時点で未発表だが、周辺建材(屋根・外壁・断熱材・内装材)では7月1日以降に追加値上げが集中している。シーリング施工と同じ現場で使用される資材のため、工事全体のコスト増要因となる。

メーカー 製品カテゴリ 改定幅・措置 実施時期 状況
ニチハ 金属外壁材センターサイディング・センタールーフ(本体・付属部材) 約15%値上げ 2026年7月1日出荷分〜 確定
マグ・イゾベール グラスウール断熱材全種 25%以上値上げ+実績レベル受注制限 2026年7月1日出荷分〜 確定
サンゲツ 壁装材・床材・カーテン等の内装材全般 品目別価格改定 2026年7月1日受注分〜 確定
ケイミュー シビルスケア・グランスケア・ジェイスケア・アイアン角・大型雨とい等 減産・供給制限 2026年5月26日〜継続 減産中
パラマウント硝子 グラスウール断熱材 約15%値上げ 2026年6月1日出荷分〜 確定
川上産業 プチプチ・気泡緩衝材 原反25%以上・加工品20%以上・特殊品35%以上 2026年6月1日出荷分〜(実績上限併用) 確定
東京インキ グラビアインキ関連製品全般 30%以上値上げ 2026年6月1日出荷分〜 確定
タキロンシーアイ 雨とい・デッキ材・エクステリア製品・収納製品 20%以上値上げ 2026年6月1日出荷分〜 確定

出典:テイガク(2026年7月1日更新)、当社集計「建設・物流・包装資材 値上げ一覧 2026年6月|30社超・ナフサショック影響まとめ」、各社公式リリース。

⚠️ 8月以降の第3波値上げリスク
日本建材・住宅設備産業協会は「5月が価格固定契約の最終ライン。6月以降は第3波の値上げが予測される」と警告している。シーリング材本体でも8月〜秋の追加改定リスクは残存しており、①ナフサ・原油価格の再急騰(イスラマバード覚書崩壊シナリオ)、②円安の追加進行(1ドル165円超)、③政府補助の10月以降延長判断──の3要因が転換点となる。当社の姉妹記事2026年6月1日値上げ製品主要30品目一覧および5月1日値上げ建設・物流・包装資材30社一覧で最新動向を追跡している。

5. 原材料の海外依存構造、日本のシーリング材製造の脆弱性

5-1. 100%輸入に頼る「ナフサ」

シーリング材の主成分である合成樹脂(ポリマー)は、すべて輸入原油から精製されるナフサを原料とする。日本は国内消費量の60%以上を輸入に依存し、輸入分のうち約70%が中東産(C&EN 2026年3月17日)。この中東依存度は2020年53%から2024年74%へ急上昇し、世界的にも突出した一本足構造にある。日本国内に原油産出地がない以上、中東情勢の悪化は国産シーリング材メーカーにとっての「生命線の断絶」を意味する。

5-2. 代替調達の進展と限界

日本政府は戦略石油備蓄(約240日分)の活用と、中央アジア・南米・カナダ・ベネズエラ等からの代替調達を進めている。6月時点でKplerデータが示す通り、米国産ナフサの日本向け輸入は通常の5倍水準に到達し、経産省は中東域外からの月間ナフサ調達量を通常の45万キロリットルから90万キロリットルへ倍増、代替調達は5月需要60%・6月需要70%カバーまで進捗している。ただし米メキシコ湾からのタンカーは通常の2倍の45日を要するなど、コスト面・納期面の制約は残る。国家備蓄石油第2弾20日分も2026年5月1日以降放出中で、供給不足の緩和に一定の効果を発揮している。

5-3. 特殊添加剤の「ボトルネック欠品」

シーリング材の硬化速度や接着性を制御する「触媒」や「特殊添加剤(モノマー)」の多くは、ドイツ(BASF等)や中国の化学プラントに依存している。完成品の製造ラインが国内にあっても、これら数%の「必須成分」が届かないために最終製品の出荷ができない事態が全国のメーカーで発生している。欧州からの輸入船も、後述の喜望峰ルート迂回による大幅な納期延長に直面している。同じ構造で塗料用シンナーも目詰まりを起こしており、詳細はシンナー目詰まりの真実で解説している。

5-4. エチレン稼働率67.3%、44ヶ月連続損益分岐割れ

危機の深刻さを物語る数字が、石油化学工業協会が2026年5月21日に発表した最新統計だ。日本のエチレン4月稼働率は67.3%と過去最低水準まで落ち込んだ。業界では稼働率90%を損益分岐ラインとしているが、これを44ヶ月連続(約3年8ヶ月)で下回っている。旭化成・工藤幸四郎社長は2026年5月12日の記者会見で「日本のナフサクラッカーは損益分岐となる90%稼働を44ヶ月連続で下回り、直近は70%台にとどまっている」と発言。日本の石油化学業界はもともと長期不況の中にあり、そこに今回の中東危機が直撃した構造だ。ナフサ備蓄構造の脆弱性はナフサ備蓄4ヶ月の陰で進む石化産業の構造的敗北で詳述している。

6. 海外製シーリング材と物流の断絶、覚書合意後も残る課題

6-1. 喜望峰ルート迂回による「納期3〜4か月」

欧州(ヘンケル、シカ等)からの輸入船は、紅海・スエズ運河ルートを避け、アフリカ南端の喜望峰を回るルートに変更を余儀なくされている。通常約1か月だった輸送期間が3〜4か月以上に延び、4月発注分が現場に届くのは「夏以降」となる絶望的なスケジュールだった。

6月14日のイスラマバード覚書合意でホルムズ海峡は再開に向かうが、紅海ルートの安全性は依然として未確保だ。6月時点でもTradingEconomicsデータが示すホルムズ海峡通過量の漸増は確認されるものの、フーシ派リスクは継続中。サウジアラビアのヤンブー港(紅海側)経由の代替パイプラインルートも安全とは言い切れず、一部の船舶は米軍と連携した選別的通過に切り替えている。

6-2. 海上保険コスト・OFAC制裁の影響継続

海運大手各社は、中東近海を通過する貨物に対し、通常の3〜5倍の「緊急戦争リスク・サーチャージ」を適用している。これがシーリング材の原料となる輸入化学品の原価を直撃する。また、OFAC制裁(米国財務省)の二次制裁リスクから、イラン関連取引には金融機関も慎重姿勢をとっており、物流・保険・金融の三重の制約が生じている。

2026年5月18日、米財務省OFACは「エネルギー脆弱国」向けの一部制裁免除措置を6月17日まで延長し、「ホルムズ海峡閉鎖とイラン戦争により湾岸原油にアクセスできない『エネルギー脆弱国』を支援するため、30日間の制裁免除を延長」とベッセント財務長官が表明した。船積み済み原油・石油製品の取引を認める措置は継続しており、サプライチェーンの選別的継続が政策面でも下支えされている形だ。ただし覚書合意後の運用については、6月末以降も不透明な部分が残る。

6-3. 中東インフラの物理的被害と復旧の時間軸

物流ルートの正常化には、中東エネルギーインフラの物理的復旧も不可欠だ。3月19日のサウジSAMREF精製所(日量400,000バレル)・カタールPearl GTLの攻撃被害、5月3-4日のUAEフジャイラ攻撃による火災被害は、いずれも短期的な復旧が困難な規模だ。中東インフラの被害詳細は中東エネルギーインフラの崩壊と「失われる5年間」で詳述しているが、シーリング材原料の完全な供給正常化には、最短でも1〜2年を要する見通しだ。

7. 中国製シーリング材の台頭と採用リスク、JIS A 5758の法的拘束

国内メーカーが相次いで受注停止・出荷制限を発表するなか、中国製シーリング材がECサイトやホームセンターの一部に流通し始めている。中国は世界最大級のシーリング材生産国であり、国内大手の在庫が枯渇するなかで「価格が安く、すぐ手に入る」という点だけが注目されがちだ。しかしこの「手軽さ」の裏に、日本の建設現場では見過ごせない5つのリスクが潜んでいる。

7-1. 中国も同じナフサ危機下にある構造

見落とされがちな事実として、中国もナフサを大量輸入する石油化学大国であり、今回のホルムズ海峡封鎖の影響から無縁ではない。ただし中国はエタン・石炭・メタノールを原料とする代替ルートの設備が多く、内需の弱さもあって輸出玉が増えた結果、日本市場への流入が起きた。中国のシーリング材メーカー自身も原料高騰と調達難に直面しており、品質よりコスト削減を優先した製品が増加するリスクがある。「中国製なら手に入る」という前提そのものが、情勢の長期化とともに崩れる可能性がある。

7-2. JIS A 5758という「法的な壁」

国土交通省の「公共建築工事標準仕様書」(平成31年版、9.7節)は、シーリング材に使用できる材料をJIS A 5758(建築用シーリング材)に適合するものに限定している。これは法的拘束力を持つ仕様であり、公共工事・官庁営繕工事において非JIS品を使用した場合、検査不合格・工事のやり直しが命じられるリスクがある。中国製品の多くはこのJIS認証を取得しておらず、大手ゼネコンが参加する民間工事においても設計仕様書でJIS適合が条件とされているケースが大半だ。

JIS A 5758が義務付けられる主な現場

国・地方自治体・独立行政法人が発注する公共建築工事(官庁営繕工事)/大手ゼネコンが元請けとなる民間工事(設計仕様書でJIS適合を条件とする場合)/住宅瑕疵担保保険(住宅品確法)対応工事(保険法人の確認製品リスト掲載品が必要)。これらすべてでJIS非取得品は使用不可。施工後に発覚した場合、是正工事の費用は施工業者の負担となりえる。

7-3. JIS規格の技術的厳しさ、他国規格との比較

なぜJIS A 5758がこれほど重視されるのか。その理由はシーリング材専業メーカーであるシャープ化学工業が公式に解説しているデータが参考になる。JISの耐久性試験は、目地の拡大・縮小を模した引張圧縮繰り返しを2,000回実施する。対して米国のASTM規格ではわずか10回。繰り返し速度もJISはASTMの約1,000倍に達する。また高温側の試験温度もJISは最大100℃まで設定でき、外壁パネル表面が夏季に高温になる日本の気候を考慮した設計になっている(シャープ化学工業「コーキング材の耐久性 JIS規格と海外規格の比較」)。

さらにJISでは日本主導でISO規格に紫外線の影響を加味した試験方法が採用されており、これは従来の「圧縮引張のみ」の試験よりも劣化促進が顕著に確認されている。中国製品が準拠するGB規格(中国国家標準)はこれらの水準を担保していない。

7-4. 日本固有の気象・地震リスクと長期耐久性

シーリング材の性能はその国の気候・建物構造と不可分だ。日本には中国製品の長期耐久性を判断するうえで見逃せない固有条件がある。第一に地震動への追従性。JIS A 5758のクラス25(最高級)は、目地幅に対して±25%の伸縮に追従することを求める。地震が頻発する日本では、建物のムーブメントに追従できないシーリング材は短期間で破断し、雨水浸入の経路となる。一度弾力性を失ったシーリング材は元に戻らず、ひび割れを生じて次第に破断する(さくら事務所)。第二に紫外線・高温環境。日本の外壁面は夏季に表面温度が60〜80℃に達することがあり、紫外線照射量も多い。JIS規格の耐久性試験はこれを考慮した設計だが、GB規格品にこれと同等の実績データが存在するかどうかは検証されていない。

7-5. 「JIS相当品」表示の落とし穴

EC上で中国製シーリング材に「JIS相当品」「JIS規格適合」と記載されているケースがある。しかし注意が必要だ。JISマーク表示は経済産業大臣の登録を受けた「登録認証機関」による審査・認証が必要であり、自己申告や「相当品」表示は法的に認証取得とは別物だ。建築工事においてJIS適合の証明が求められる場面では、JISマーク表示認証を取得した製品でなければ要件を満たさない。「相当品」表示の中国製品を公共工事等に使用した場合、竣工検査での不合格リスクが残る。

7-6. 住宅瑕疵担保保険との関係

新築住宅では住宅品質確保促進法(品確法)に基づく10年間の瑕疵担保責任が義務付けられている。住宅瑕疵担保保険法人(JIO・住宅保証機構等)が定める「確認製品リスト」には、日本シーリング材工業会(JSIA)のFマーク(ホルムアルデヒド基準)認定および住宅保証機構の3条確認を取得した製品が掲載されている。中国製品のほとんどはこれらの認定を取得しておらず、品確法対応の新築・リフォーム工事に使用した場合、保険会社からの保険金支払い拒否・免責とされるリスクがある。施工業者が独自に費用を負担する事態を招きかねない。

7-7. 結論:「安さ」が招く5つのリスク

法的リスク
公共工事・JIS義務付け現場での使用不可。検査不合格・是正工事命令の可能性
品質リスク
JIS規格(引張圧縮2,000回試験)・紫外線耐候性の担保なし。早期破断・漏水の危険
保険リスク
住宅瑕疵担保保険の適用外。JSIA Fマーク・3条確認製品でないと保険免責の恐れ
地震リスク
地震多発国・日本固有の建物ムーブメントへの長期追従性が未実証
同時危機リスク
中国もナフサ大量輸入国で同じ危機下。「安く手に入る」前提が長期には崩れる

8. 流通実態、EC・ホームセンター・アロケーションの2026年7月現在

価格改定の動向と並んで、現場の調達担当者が最も知りたいのは「結局、どこから・どの程度の量を、いつまでに購入できるのか」という実務情報だ。本章では2026年7月時点の流通構造を、メーカー出荷段階から末端の通販在庫まで4つの段階に分けて整理する。

8-1. アロケーション(クォータ制)の実態

2026年4月以降、シーリング材の主要メーカーはクォータ制(割当制)を本格運用している。職人向け解説媒体「ペンキの味方」(2026年4月30日)の整理によれば、各メーカーは「平常時の月間平均販売実績を上限とするクォータ制」を採用し、その基準は2025年4月〜2026年3月の12か月間の実績ベースで設定されている。この運用は覚書合意後の2026年7月時点でも継続している。

🔴 クォータ制の本質、新規追加で別現場が止まる「ゼロサム配分」
この構造の意味するところは深刻だ。1軒分のシーリング材を新しい施主に追加配分すると、別の現場の納品が止まるという、文字通りゼロサムの分配が起きている。商社・代理店は過去実績のある既存顧客への配分を優先せざるを得ず、新規取引先の開拓・新規プロジェクトへの納品は実質的に困難な局面が続いている。「価格を払えば買える」という従来の前提が崩れ、「過去の取引実績の厚さ」が現物確保の主要決定要因に変わっているのが2026年7月時点の特徴だ。

8-2. 流通チャネル別の現状、5つのルート比較

チャネル 現在の状況 購入可能量 価格水準 判定
メーカー直販/一次代理店 クォータ制継続、新規は原則受付停止 過去12か月平均の80〜100% 4月公式価格改定が現行 割当制
二次商社/問屋 納期は通常3日→現在2週間以上 実需+α程度の小口に限定 公式価格+運賃調整 タイトネス継続
全国HC カインズ・DCM・コーナン・コメリ等で「お一人様3本まで」制限 1日あたり1〜3本程度 店頭定価+一部値上げ反映 個数制限
業務用EC
モノタロウ・ソニテック・e431
ケース単位(10〜20本)で在庫あり 1ケース単位での発注 POSシールLM 9,900円/ケース税抜等 在庫あり
消費者向けEC
Amazon・楽天
主要品番で購入可能、注文後キャンセルも散発 1本〜数本単位 1本333ml 1,400〜1,800円
(通常850円→1.6〜2.1倍)
在庫あり

8-3. 業種横断で進行する「インクショック」「ワニの口」現象

シーリング材以外の建材・包装分野でも同様の現象が発生している。News on Japan(2026年5月14日)によると、カルビーは2026年5月25日からポテトチップスを含む14品目のパッケージを段階的に白黒デザインへ切り替え、印刷で使用する石油由来資材の削減に踏み切った。「インクショック」と呼ばれるこの現象は、印刷インク原料のナフサ由来素材が手に入りにくくなったことが原因だ。日本経済新聞(2026年5月30日)は「食品値上げ要因の包装資材コスト要因が7割を占める」と分析し、ガソリン市況109.8 vs ナフサ市況128.3の「ワニの口」現象(市況指標の異常価格逆転)も報じた。これはシーリング材市場で起きている「価格軟化と現物タイトネスの二重構造」と同根のサプライチェーン病理であり、ナフサショックが建設・食品・印刷・物流など全方位に同時波及している現実を示している。

8-4. 正常化に向けた3つの早期シグナル指標

職人向け解説媒体「ペンキの味方」(2026年4月30日)は、シーリング材市場の正常化を判断する早期シグナル指標として次の3つを提示している。テイガク(2026年7月1日更新)も「代替輸入などの動きもあり、資材供給は回復傾向が見られる」と評価しており、これらの先行指標の観察が今後の調達計画立案に有効だ。本格回復は2027年Q1〜Q2の見込みだが、その手前で観測すべき先行指標である。

📊 正常化シグナル3指標
  1. ホームセンター在庫制限の解除:「お一人様3本まで」の個数制限が全国HCで撤廃される時点が、需給バランスが消費者向け流通まで正常化するシグナル。2026年9月までに観測できれば早期回復の兆候。
  2. メーカー通知頻度の低下:価格改定通知・供給制限通知・受注停止通知の発信頻度が、4月のピーク時から月1件以下まで減少する時点が、メーカー側の在庫水準と稼働率が安定したシグナル。
  3. 商社納期の短縮:現在2週間以上に伸びている商社経由の納期が、平常時の3日水準まで戻る時点が、川上から川下までサプライチェーン全体が機能回復したシグナル。最も信頼性の高い実務指標。

9. 覚書合意後の3つの時間差、正常化まで最短10ヶ月

「覚書が合意した今、シーリング材の値上げはいつ止まるか」——現場の関心はこの一点に集中している。答えは、原料から最終製品まで届くのに3つの時間差があるためだ。それぞれの時間軸を積み上げると、本格的な正常化は最短でも10ヶ月先となる。

9-1. 第一の時間差:物流の時間差(〜1ヶ月)

ホルムズ海峡が通行可能になっても、ペルシャ湾内に停泊中の石油タンカーが200隻前後、その他大型商船が1,000隻前後たまっているとされる(第一ライフ資産運用経済研究所、2026年6月)。平時のホルムズ海峡通航は1日100〜130隻程度なので、湾内の船が湾外に出るだけで最短10日、実際にはそれ以上かかる計算だ。加えて機雷除去も30日以内が目標だが、機雷が完全に除去されないと商船は安心して通れない。フーシ派による紅海側の脅威も継続中で、迂回ルートの安全性確保にも時間を要する。

9-2. 第二の時間差:生産の時間差(1〜3ヶ月)

国内エチレン4月稼働率は67.3%と過去最低水準まで落ち込んだ。損益分岐の90%を44ヶ月連続で下回っており、稼働を落としていた石油化学プラントの再稼働には、通常1ヶ月以上の準備期間が必要だ。赤澤経産大臣の「7月に前年並みの生産量に戻る」発言も、この定期修理集中期間終了のタイミングに沿ったものだが、政府と業界の認識には依然としてずれがある。シーリング材の主原料であるカネカMSポリマー・信越化学シリコーンの生産再開・出荷正常化には、原料エチレン・特殊添加剤の両面での安定確保が必要で、生産ラインのフル稼働までは3ヶ月程度を要する見通しだ。

9-3. 第三の時間差:サプライチェーンの時間差(3〜6ヶ月)

原料 → 樹脂 → 完成品まで、サプライチェーン全体を通過するのに数ヶ月かかる。例えば、6月に契約したナフサが実際に化学プラントで樹脂になるのは7〜8月、その樹脂がシーリング材メーカーで完成品になるのが8〜9月、そして商社・代理店・工事現場に届くのが9〜10月──こうしたリードタイムを経て、現場に「値下げされた製品」が並ぶには、最速でも半年前後の遅れが生じる。加えてクォータ制の解除には、メーカー在庫水準の完全回復と、価格の安定確認が必要で、これも数ヶ月を要する。

3つの時間差の合計、シーリング材の値下げ実感まで

物流1ヶ月 + 生産3ヶ月 + サプライチェーン6ヶ月 = 最短10ヶ月
2026年6月14日の覚書合意を起点とすると、シーリング材の値下げが現場で実感できるのは2027年4月以降が最短。テイガクは「本格回復は2027年Q1〜Q2」、ICISアナリストは「物理的タイトネスは封鎖解除後も少なくとも3ヶ月以上継続」と表明。専門家見立ての多くはこれと整合する。

10. 3つの今後シナリオ、2026年8月中旬が最大の転換点

イスラマバード覚書は「60日間の暫定枠組」で、2026年8月中旬に最終合意の可否が判明する。この結果次第で、シーリング材市場の今後は3つのシナリオに分岐する。それぞれの前提と業界への影響を定量的に整理する。

シナリオA(30%)
最終合意成立、覚書延長へ
前提:ホルムズ完全再開、イラン産原油市場復帰
ナフサ価格:$500〜600/MTで安定推移
シーリング材:11月頃にクォータ制解除、2027年前半で一部値下げ
業界動向:早期回復シグナル3指標が9月までに揃う
シナリオB(55%・最有力)
60日で最終合意に至らず、暫定継続
前提:覚書延長も脆弱状態継続、原油$70〜100/バレル
ナフサ価格:$600〜800/MTで高止まり
シーリング材:クォータ制継続、8〜秋の第3波値上げリスク残存
業界動向:本格回復は2027年前半以降、政府補助延長議論が10月以降本格化
シナリオC(15%)
覚書崩壊、軍事衝突再開
前提:ホルムズ再封鎖、原油$150/バレル超に再急騰
ナフサ価格:$1,000/MT超に再急騰
シーリング材:第2波値上げ・出荷停止拡大、住宅工程全体停滞
業界動向:政府はガソリン補助・電気ガス補助の延長・拡充を検討
⚠️ シナリオB(最有力)の実務含意と8月中旬の3観測ポイント
シナリオBが最有力の場合、シーリング材の現物確保は2026年秋まで実績ベースクォータ制が継続し、新規プロジェクトへの追加配分は困難な状況が続く。8月中旬の覚書最終合意判断・10月の政府補助延長判断の2つが、実務上の転換点となる。

8月中旬に注視すべき3観測ポイント:①米・イラン再交渉の進展(覚書延長・最終合意・破綻の3択)、②ホルムズ海峡通航量の変化(TradingEconomicsで日次追跡可能)、③シーリング材メーカーの追加通知(8月出荷分・9月出荷分の第3波値上げ有無)。これらを組み合わせて、9月以降の調達計画をリスケジュールする。工事案件を持つ施工会社は、①既存代理店との関係強化、②実績ベース枠の拡大交渉、③代替製品の技術検証、④乾式工法への設計変更検討──の4方向で並行対応が求められる。

11. シーリングショックを生き抜く戦略と実務指針

2026年7月時点で、シーリングショックは「ピーク越え・軟着陸過渡期」に入りつつあるが、現場のタイトネスは当面続く。施工業者・元請ゼネコン・施主の3方向で求められる実務対処を、4つの戦略に整理する。

11-1. 戦略1:エビデンスによる適正価格の勝ち取り

カネカの「120円/kg値上げ」・セメダイン声明・信越化学の値上げ通知を公式エビデンスとして施主に提示し、価格転嫁と納期延期の合意を早期に取り付ける。書面での合意と、追加請求条項の明記が重要だ。7月以降の周辺建材追加値上げ(ニチハ・マグ・イゾベール・サンゲツ)も併せて工事全体のコスト増要因として説明することで、施主の理解を得やすい。

11-2. 戦略2:マルチチャネルでの小口確保

特定の商社に依存せず、全国のHC在庫やECサイトの残数をこまめにチェックし、わずかな在庫を積み上げる機動力が重要だ。3か月先の使用量を早期に確保・保管するモデルへ転換。ただし、①賞味期限(シーリング材の未開封保存期間は概ね12ヶ月)、②保管温度条件(凍結・高温を避ける)、③現場計画との整合の3点を確認する。業務用EC(モノタロウ・ソニテック・e431)は継続的にケース単位在庫が確保しやすく、有力な補完チャネルとなる。

11-3. 戦略3:代替工法・代替素材への早期転換検討

シーリングに頼らない乾式工法や、他種の防水材への設計変更を、発注者側へ早期に提案する柔軟性が求められる。具体的には、①乾式ガスケット工法(外壁パネル目地部にEPDMゴムパッキンを使用)、②シーリングレス外壁ジョイントシステム(機械的接合方式)、③シート防水・アスファルト防水への切替(屋根・屋上部位)、④ブチルテープ併用工法──が実務的な候補だ。断熱材ではグラスウール・セルロースファイバー等の石油非依存素材への移行検討も選択肢だ。ただし、乾式工法への切り替えは意匠・防水性能・耐震性能への影響を伴うため、構造設計者・建築主との丁寧な合意形成が必要。既存の設計仕様書がJIS A 5758準拠の場合、変更には設計変更・監督員承諾の手続きが伴う。

11-4. 戦略4:政府支援策の間接活用

7月1日開始の電気ガス料金支援は、家庭用(1世帯計5,000円)に加えて、産業用高圧電力にも支援単価が適用されている。高圧電力7・9月は1.8円/kWh、8月は2.3円/kWhの値引きで、電力多消費型製造業(塗料・化学品・シーリング材メーカー)のコスト緩和を通じて、間接的に建材価格の抑制効果をもたらす見通しだ。補正予算3.1兆円の「中東情勢等対応予備費」も、特別高圧電力支援や重点支援地方交付金を通じてシーリング材メーカーの製造原価に影響する。経済産業省の中東情勢関連対策ワンストップポータルmeti.go.jp/chuto_josei)で最新の支援制度を確認できる。

🔧 施工会社・元請ゼネコン向け実務チェックリスト
  1. 既存契約案件の見直し:材料調達難による工期延長条項・追加請求条項の追加、公式エビデンス添付での再交渉
  2. 代理店との実績枠交渉:クォータ制配分の実績上限拡大交渉、複数代理店への発注分散
  3. 3か月先までの使用量確保:業務用EC・HCも活用したマルチチャネル調達、保管条件(温度・湿度)確認
  4. 設計仕様書の柔軟性確保:新規案件では代替製品・代替工法への切替権限を仕様書に明記
  5. JIS A 5758準拠の徹底:中国製品の使用は公共・大手ゼネコン案件で厳禁、DIY補修等の自己責任範囲に限定
  6. 正常化3指標の観察:HC個数制限解除・メーカー通知頻度低下・商社納期短縮の観察で調達計画を調整
  7. 8月中旬の情勢判断:イスラマバード覚書最終合意判断を注視、シナリオB前提の中期計画準備
主な情報源(2026年7月8日時点)
  1. 株式会社カネカ プレスリリース(2026年3月19日)「MSポリマー・サイリル +120円/kg値上げ」
  2. セメダイン株式会社 公式発表(2026年3月31日)「中東情勢に伴う供給困難の公式表明」
  3. 信越化学工業株式会社 価格改定通知(2026年4月1日)「シリコーン系シーリング材 +30円/kg〜」
  4. サンスター技研株式会社 価格改定発表(2026年4月)「ペンギンシール等シーリング材 +30%以上」
  5. オート化学工業株式会社 供給・価格調整発表(2026年4月9日)
  6. シャープ化学工業株式会社 価格改定通知(2026年4月)「シャーピーシリーズ 溶剤系+40%以上、その他+20%以上」
  7. サンライズ 出荷停止通知(2026年4月)「主要シーリング材の出荷・受注停止」
  8. 旭化成ワッカーシリコーン株式会社 供給制約通知(2026年3月〜)「GENIOSIL®シラン変性ポリマー等」
  9. ニチハ株式会社 プレスリリース(2026年5月)「金属外壁材センターサイディング・センタールーフ 15%値上げ 7月1日出荷分〜」
  10. マグ・イゾベール株式会社 プレスリリース(2026年5〜6月)「グラスウール断熱材 25%以上値上げ・実績レベル受注制限 7月1日出荷分〜」
  11. 株式会社サンゲツ「取引価格改定に関するお知らせ」(2026年4月13日発表)「2026年7月1日受注分〜品目別価格改定」
  12. ケイミュー株式会社 供給制限通知(2026年5月26日〜)「シビルスケア・グランスケア・ジェイスケア・アイアン角・大型雨とい等の減産」
  13. パラマウント硝子 グラスウール断熱材 全種約15%値上げ(2026年6月1日出荷分〜)
  14. 川上産業 プチプチ等全製品価格改定(2026年6月1日出荷分・実績上限併用)
  15. 東京インキ グラビアインキ関連製品全般 30%以上値上げ(2026年6月1日出荷分〜)
  16. タキロンシーアイ 雨とい・デッキ材・エクステリア製品等 20%以上値上げ(2026年6月1日出荷分〜)
  17. 国土交通省「公共建築工事標準仕様書(建築工事編)平成31年版」第9章第7節「シーリング材はJIS A 5758適合品に限定」
  18. シャープ化学工業株式会社「コーキング材の耐久性 JIS規格と海外規格の比較」(同社公式サイト)
  19. さくら事務所 マンション管理コンサルタント「シーリング材の劣化・破断」(s-mankan.com)
  20. 日本シーリング材工業会(JSIA)「住宅保証機構3条確認製品一覧」「Fマーク自主管理制度」(sealant.gr.jp)
  21. ペンキの味方「シーリング材 出荷停止 2026|不足はいつまで続くのか職人解説」(2026年4月30日)「クォータ制と早期回復シグナル3指標」
  22. テイガク「【2026年7月1日更新】建材資材の値上げと受注停止の影響」「代替輸入などの動きもあり、資材供給は回復傾向」評価
  23. 翔工務店「【2026年4月30日更新】中東情勢の影響による建材や資材の受注停止状況」
  24. 石油化学工業協会統計「エチレン4月稼働率67.3%」(2026年5月21日発表)「44ヶ月連続損益分岐90%割れ」
  25. 旭化成プレスリリース(2026年5月12日)「西日本エチレン製造設備統合JV出資比率合意」
  26. C&EN「Asahi Kasei to sharply scale back petrochemical production in Japan」(2026年5月)「日本のエチレン基数12基→8基」
  27. C&EN「Hormuz Strait pinch worsens for Asian chemical makers」(2026年3月17日)「日本ナフサ供給60%超輸入依存・輸入分70%中東産」
  28. News on Japan「Is Japan Really Running Short of Naphtha?」(2026年5月14日)「帝国データバンク46,741製造業社リスク、カルビー白黒パッケージ、インクショック」
  29. 米財務省OFAC発表(2026年5月18日)「エネルギー脆弱国向け一部制裁免除措置の30日間延長」ベッセント財務長官表明
  30. 首相官邸「中東情勢を踏まえた令和8年度補正予算等についての会見」(2026年5月25日)「3兆円補正予算・中東情勢等対応予備費・電気ガス料金支援」
  31. 時事通信「電気・ガス代5000円支援 補正予算3兆円規模 高市首相表明」(2026年5月25日)
  32. 補助金ポータル(2026年7月)「電気代・ガス代補助金、2026年7〜9月に3か月合計5,000円へ拡充」
  33. logistics-today「赤澤経産大臣記者会見」(2026年6月2日)「ナフサは7月に前年並みの生産量に戻る」
  34. 大景化学 業界整理(2026年6月)「ナフサ価格5/16 $1,043→6/3 $767の急落」
  35. ごりお【化学業界解説】note(2026年6月)「ナフサ価格が急落、クラックスプレッドがピークの4分の1に縮小」
  36. Kpler海事データ(2026年5-6月)「米国産ナフサの日本向け輸入5倍水準」
  37. TradingEconomics「ブレント原油価格チャート」(2026年6月4日)「1バレル97ドル割れ、ホルムズ通過量2週間で増加」
  38. EIA米国原油在庫データ「6週連続減少で最低運用レベル近接」
  39. Bloomberg「原油は上昇、ホルムズ海峡の緊張再燃で-ブレント114ドル台」(2026年5月3-4日)「UAEフジャイラ攻撃」
  40. Discovery Alert「Strait of Hormuz Oil Supply Shock: 2026's Deepening Crisis」(2026年5月12日)/World Oil分析(5月14日)「ICISアナリスト警告『物理的タイトネスは封鎖解除後も3ヶ月以上継続』」
  41. 第一ライフ資産運用経済研究所 嶌峰義清(2026年6月)「米・イラン戦闘終結の覚書発効も課題は多い」「湾内停泊タンカー200隻超・商船1,000隻前後」
  42. CNN.co.jp(2026年6月)「米国、イランとの覚書14項目公表」
  43. JBpress(2026年6月)「【最終版全訳】米国・イラン覚書14カ条」
  44. 時事ドットコム(2026年6月19日)「日本人乗る全船舶、ペルシャ湾外へ 1隻がホルムズ海峡通過―茂木外相」
  45. 内閣官房「中東情勢に関する関係閣僚会議(第8回・第9回)」(2026年5月21日・6月2日)
  46. Global-SCM「ホルムズ海峡危機:情勢と実務リスク」(2026年5月19日更新)「JPMorgan・Saudi Aramco・Goldman Sachs合同見解」
  47. 資源エネルギー庁「電気・ガス料金支援サイト」(denkigas-gekihenkanwa.go.jp)
  48. 経済産業省「中東情勢関連対策ワンストップポータル」(meti.go.jp/chuto_josei/)
  49. ジュンツウネットニュース「経済産業省が国家備蓄石油約20日分の放出開始」(2026年5月13日)
  50. Metoree「シーリング材メーカー56社」「シール剤メーカー39社」(2026年7月時点データ)
  51. 当社姉妹記事「2026年ナフサショック総論」「ナフサの目詰まり解説」「イスラマバード覚書の脆さ」「建設・物流・包装資材 値上げ一覧 2026年6月」ほか
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