2026年薬局経営の生存戦略
イラン情勢・薬価改定・地域支援加算の三重苦と
「重要供給確保医薬品75成分」備蓄要件の現実
〜6月施行後の疑義解釈その7・届出チェックリスト11項目・立地依存減算までを俯瞰〜
2026年6月1日、調剤報酬改定で「地域支援・医薬品供給対応体制加算」が新設。重要供給確保医薬品75成分(A群35+B群40)の1か月分備蓄が要件化。疑義解釈はその7まで、関係閣僚会議は第7回まで開催。薬価改定▲4.02%と立地依存減算(15点)新設で薬局経営は三重の圧力に直面。中小・チェーン・病院前の3類型で対応が分かれる。
本更新版で追記した主な事項は以下です。①疑義解釈資料 その1〜その7までの発出状況(3/23・4/1・4/20/21・5/8・5/22等)と経過措置の運用明確化。②令和8年度診療報酬改定に係る施設基準届出チェックリスト(4/20発出、届出期限11項目)の反映。③調剤薬局倒産2024年28件(東京商工リサーチ、2022年16件→2023年12件から増加)。④日本調剤 上場廃止(2025/12/19、アドバンテッジパートナーズによる買収)とM&A動向。⑤中東情勢に関する関係閣僚会議 第7回まで開催(5/12)、対策本部相談7,204事業者・64件影響/26件解決(4/30時点)。⑥ナフサ価格の反転局面(6/25にスポット$627/MTで衝突前水準を下回る)。⑦高市首相3兆円補正予算表明(5/25)。⑧財務省財政制度分科会(4/23)の「小規模分散」問題指摘。
2026年7月時点、薬局経営を取り巻く「三重の圧力」の現在地
2026年6月1日、令和8年度の調剤報酬改定が施行された。中でも最大の変化が、旧「地域支援体制加算」と旧「後発医薬品調剤体制加算」を統合・再編した「地域支援・医薬品供給対応体制加算」の新設である(厚生労働省告示第71号・保医発0305第8号)。同加算は5段階構造(加算1:27点/加算2:59点/加算3:67点/加算4:37点/加算5:59点)で、加算1の施設基準を満たさないと加算2〜5の算定ができない「二階建て」構造となる。
加算1の中核要件は、重要供給確保医薬品75成分の内用薬・外用薬について1か月分程度の備蓄である。ここで問題となるのが、その備蓄対象成分の一部が、中東情勢由来のナフサ供給への懸念・原薬調達の不透明さにより、卸からのアロケーション(割当出荷)対象となっている状況である。制度設計と現場の物理的供給の間に調整課題があるのが、2026年7月時点の薬局経営の現在地である。
さらに追い打ちをかけるのが、2026年4月1日施行の薬価改定▲4.02%(薬剤費ベース・厚生労働省告示第72号)、および同時新設された門前薬局等立地依存減算(15点マイナス)である。中東情勢×薬価改定×新加算要件の「三重の圧力」に、薬局経営は正面から向き合う局面にある。
本稿は、本シリーズの総論記事2026年中東クライシス:医薬品サプライチェーン断絶の全貌で扱った上流課題を、薬局現場の実務レベルで捉え直す解説である。姉妹記事2026年病院経営の生存戦略と対をなす、薬局経営者・管理薬剤師・事務担当者・在宅担当者向けの実務深掘り解説として構成した。
2026年6月1日施行後、疑義解釈資料はその7まで発出され、経過措置の細部が随時明確化されてきた。届出期限(5月7日〜6月1日、5月18日推奨)はすでに終了しているが、経過措置期限(旧実績みなしは令和9年6月1日まで、後発品85%要件みなしは令和9年5月31日まで、単品単価交渉は令和8年11月末まで)のカレンダー管理が実務の要となる。並行して、中東情勢由来の限定出荷への在庫対応も継続実施が必要である。
「地域支援・医薬品供給対応体制加算」を解剖する
本章では、2026年6月1日施行の新加算の構造を、告示・通知・疑義解釈の一次情報に基づいて解剖する。旧加算からの点数変化と要件変化の両方を押さえることが、薬局経営判断の土台となる。
1.1 5段階構造と点数(告示第71号)
2026年2月13日の中央社会保険医療協議会(中医協)第647回総会で答申され、3月5日の官報告示(厚生労働省告示第71号、保医発0305第8号)で確定した点数体系は以下の通りである。
| 区分 | 点数 | 対象 | 主な追加要件 |
|---|---|---|---|
| 加算1 | 27点 | 全区分共通 | 後発医薬品数量シェア85%以上、重要供給確保医薬品75成分の1か月備蓄、他薬局への分譲実績、後発品積極調剤の内外掲示、体制要件7項目 |
| 加算2 | 59点 | 調剤基本料1 | 加算1の全要件+実績要件8項目のうち3項目以上 |
| 加算3 | 67点 | 調剤基本料1 | 加算1の全要件+実績要件8項目のうち5項目以上 |
| 加算4 | 37点 | 調剤基本料1以外 | 加算1の全要件+実績要件6項目のうち3項目以上 |
| 加算5 | 59点 | 調剤基本料1以外 | 加算1の全要件+実績要件6項目のうち5項目以上 |
この構造で最も重要なのは、「加算1を取得できなければ、加算2〜5の算定も認められない」という「二階建て」の設計思想である。加算1の27点は全区分共通の基礎点数として位置づけられ、旧加算から実質▲3点相当の減点となる面もあるが、薬局が「地域医療への貢献」と「医薬品安定供給への貢献」を評価される制度基盤として位置づけられている(DGSオンライン、2026年2月13日)。
1.2 加算1の施設基準:7つの体制要件と1つの実績要件
加算1(27点)の施設基準は、大きく分けて体制要件7項目と実績要件1項目(後発医薬品85%以上)で構成される。
- 体制要件①:後発品85%以上:調剤した後発医薬品のある先発医薬品及び後発医薬品の合算規格単位数量に占める後発医薬品の割合。旧要件のカットオフ値は削除、直近3か月間の実績で判定。経過措置:令和8年3月31日時点で旧加算1〜3届出済み薬局は令和9年5月31日までみなす
- 体制要件②:医薬品安定供給に資する体制:重要供給確保医薬品75成分(A群35+B群40)のうち内用薬・外用薬について1か月分程度の備蓄努力、他薬局への分譲実績、後発品積極調剤の内外掲示
- 体制要件③:休日・夜間の調剤・相談応需体制:平日1日8時間以上、土日いずれかに一定時間以上開局、週45時間以上開局
- 体制要件④:セルフメディケーション関連機器:体重計・体温計・血圧測定器・体組成計・血中酸素飽和度測定器・握力計・骨密度測定器のうち少なくとも3つ設置(体重計・握力計を除いて認証医療機器であること)
- 体制要件⑤:調剤室面積16㎡以上:令和8年6月以降に開設・改築・増築する場合のみ適用
- 体制要件⑥:薬事未承認の研究用試薬・検査サービスを提供していないこと
- 体制要件⑦:地域連携:地域の保険医療機関・保険薬局・医療関係団体との連携で、取扱品目の情報共有や事前の取決めを行うことが望ましい
1.3 加算2〜5の実績要件(処方箋受付1万回当たり年間回数)
加算2〜5に共通する実績要件は、直近1年間の処方箋受付回数1万回当たりの年間回数で判定する(一部項目は当該薬局あたりの直近1年間の実績)。
- 実績①:かかりつけ薬剤師指導料等の算定回数(服薬管理指導料1のイ・2のイ)
- 実績②:単一建物診療患者1人の在宅薬学総合体制加算算定回数(在宅24回以上等)
- 実績③:調剤時残薬調整加算・薬学的有害事象等防止加算の算定実績
- 実績④:麻薬管理指導加算の算定実績
- 実績⑤:重度心身障害児(者)加算・特別養護老人ホーム入所者に対する調剤の算定実績
- 実績⑥:小児特定加算(小児在宅患者訪問薬剤管理指導料)
- 実績⑦:健康サポート薬局に関する研修受講と地域研修の実施実績
- 実績⑧:多職種連携会議への参加実績
経過措置として、2027年6月1日までに行う届出については、実績要件のうち「③調剤時残薬調整加算」は旧「調剤管理料の重複投薬・相互作用等防止加算」+「在宅患者重複投薬・相互作用等防止管理料」の算定回数合算、「④服薬管理指導料1のイ・2のイ」は旧「かかりつけ薬剤師指導料」+「かかりつけ薬剤師包括管理料」の算定回数合算とみなしてよい(疑義解釈その1、令和8年3月23日)。
旧地域支援体制加算は最低区分でも取得できれば加算が発生する構造だったが、新加算は「加算1が取れなければ加算2〜5も算定不可」の二階建て構造となった。従来、旧地域支援体制加算のみを算定していた薬局は、新設された加算1の要件(特に後発品85%以上・重要供給確保医薬品75成分の1か月備蓄)を満たせるかが、加算取得可否の分岐点となる。制度の運用は疑義解釈で随時明確化されており、経過措置の期限管理が実務の要諦である。
「重要供給確保医薬品75成分」の実務対応
加算1の施設基準の中で、実務上最も対応が難しいのが「重要供給確保医薬品75成分の1か月分程度の備蓄」要件である。本章では、この75成分の内訳と、備蓄実務のポイントを整理する。
2.1 供給確保医薬品762成分と重要75成分の関係
2025年11月28日の中医協総会で議論された制度設計に基づき、厚生科学審議会医療用医薬品迅速・安定供給部会(2025年10月27日 第2回)で了承された「供給確保医薬品」は合計762成分。このうち特に優先順位の高い75成分(A群35成分+B群40成分)が「重要供給確保医薬品」に指定されている。
| 区分 | 成分数 | 代表成分例 | 特徴 |
|---|---|---|---|
| A群 | 35成分 | シクロスポリン、ワルファリンカリウム、アセトアミノフェン外用 | 代替困難で医療上不可欠、供給停止時の影響が大きい第一優先 |
| B群 | 40成分 | ロキソプロフェンナトリウム、ジアゼパム坐剤 | 代替可能性はあるが供給停止時の影響が大きい第二優先 |
| 合計 | 75成分 | — | 薬局備蓄の対象(内用薬・外用薬に限る) |
重要供給確保医薬品75成分のうち、薬局が備蓄すべきは「内用薬」および「外用薬」に該当する成分である。注射剤は病院薬剤部の管轄となるため、薬局備蓄の対象外となる(この点は姉妹記事の病院経営編で扱っている)。
2.2 備蓄要件の「1か月分」の実務解釈
加算1の施設基準通知では、備蓄について「重要供給確保医薬品のうち内用薬及び外用薬であるものについて、1か月分程度は備蓄するよう努めること」と規定されている。この「1か月分」の実務解釈で押さえるべき点は3つある。
- 備蓄基準:自局の使用実績ベース:絶対数量ではなく、「当該薬局において直近1年間に調剤実績のある品目について、月平均使用量の1か月分」を意味する。調剤実績のない品目まで備蓄する必要はない
- 努力義務:「1か月分程度は備蓄するよう努めること」との規定で、絶対要件ではないが、算定継続のためには合理的な備蓄計画と実行が求められる
- 卸在庫は備蓄に該当しない:施設基準通知は明確に「薬局に現に医薬品の在庫を保有していることを指し、卸売販売業者が代わりに在庫を確保していること又は卸売販売業者に在庫を確保させていることのみでは、備蓄には該当しない」と規定
重要供給確保医薬品75成分のうちいくつかは、中東情勢由来のナフサ供給への懸念・原薬調達の不透明さにより、卸からのアロケーション(割当出荷)対象となっている。「1か月備蓄」を制度上要件化された一方で、その物理的な入手が難しい状況が並存する。総論記事医薬品サプライチェーン断絶の全貌で扱った通り、日本ジェネリック株式会社は2026年5月22日に8品目以上の販売中止を発表しており、業界全体で不採算品目の撤退が広がっている。要件充足のための備蓄計画は、この物理的制約を織り込んで組み立てる必要がある。
2.3 卸への「頻回配送・急配・返品」の抑制と単品単価交渉
加算1の体制要件には、備蓄以外にも「卸との適切な取引」に関する規定が組み込まれた。
- 頻回配送・休日夜間配送・急配の過度な依頼を慎むこと
- 厳格な温度管理を要する医薬品や、在庫調整を目的とした卸への返品を慎むこと
- 個々の医薬品の価値や流通コストを無視した値引き交渉を慎み、原則として全ての品目について単品単価交渉を行うこと(経過措置:令和8年11月末までは「望ましい」要件)
これらは「流通改善ガイドライン」の趣旨を施設基準に組み込んだものといえる。薬局が卸に過剰な負担を強いる取引慣行が、結果として医薬品流通全体の効率性を損ない、供給不安の一因となっているとの問題意識が背景にある。単品単価交渉は令和8年11月末までは「望ましい」要件だが、その後は必須要件となる見込みで、体制整備を計画的に進める必要がある。
三重の圧力の構造 ── 薬価改定・立地依存減算・供給不安
新加算の要件対応に加えて、薬局経営には他の圧力も同時にかかっている。本章では、それら圧力の相互作用を構造的に整理する。
3.1 第1の圧力:薬価改定▲4.02%(4月施行)
2026年4月1日、厚生労働省告示第72号「使用薬剤の薬価(薬価基準)の一部を改正する件」(令和8年3月5日官報告示)により、薬価改定が施行された。薬剤費ベースで▲4.02%、医療費ベースで▲0.86%の引き下げである。中間年改定の中では相対的に大きな引き下げ幅となった。
- 薬剤費収入への直接影響:公定価格が▲4.02%下がることで、薬剤費に対応する売上が同幅で減少する構造
- 後発品と長期収載品への影響:後発品の一部は「不採算品目」に指定され改定対象外となる措置もあるが、大半の品目で価格改定の影響を受ける
- 調剤基本料等の技術料には直接連動しないが、患者負担の総額減少による受診回数への影響が波及する可能性あり
3.2 第2の圧力:門前薬局等立地依存減算(新設・15点マイナス)
2026年6月1日施行の調剤報酬改定で新設された「門前薬局等立地依存減算」は、調剤基本料から15点マイナスの減算措置である。財務省財政制度分科会(2026年4月23日)が指摘した薬局の「小規模分散」の是正を制度側から促す政策的意図が組み込まれている。
- 減算対象:特定の医療機関に対する処方箋集中率が高い病院前・診療所前立地依存型薬局
- 経過措置:令和8年5月31日において現に保険指定を受けている保険薬局については、当面の間、減算に該当しないとする(疑義解釈その5、令和8年5月8日 問1)
- 6月1日以降の新規保険指定:保険指定時に減算要件を満たすと判定されれば、指定と同時に減算対象となる
- 財務省財政制度分科会の指摘(4/23):「薬局の小規模分散は対人業務の充実や安定的な医薬品供給の観点から問題」との認識を表明し、制度側からの立地依存見直し圧力が継続
3.3 第3の圧力:供給不安と限定出荷の継続
総論記事医薬品サプライチェーン断絶の全貌で扱った通り、中東情勢由来の医薬品供給への影響は、薬局の日常業務にも及んでいる。
- 限定出荷の広がり:厚労省2024年12月調査(第19回医療用医薬品の安定確保策に関する関係者会議 参考資料3、令和7年1月24日)では、限定出荷・供給停止が合計20%(3,244品目)に達し、大半が後発品(限定出荷571+供給停止1,016=計1,587品目)
- 日本ジェネリック 5月22日の販売中止:エポセリン坐剤、イミダプリル塩酸塩錠「JG」、アムバロ配合錠「JG」など8品目以上を一斉販売中止(同社お知らせ一覧)
- 沢井製薬「全製品供給状況一覧」:2026年6月24日時点で継続更新中、業界全体で限定出荷品目の運用継続が進行中
- 政府対応の進展:関係閣僚会議は5月12日に第7回まで開催、対策本部は5月18日に第5回、4月30日時点で対策本部への相談は7,204事業者、安定供給影響品目64件のうち26件解決済み
薬局は加算1の要件で重要供給確保医薬品75成分の備蓄を求められるが、その一部が中東情勢由来の限定出荷対象となり、卸経由での安定確保が難しい構造である。政府対応の進展でナフサ価格は6/25にスポット$627/MTと衝突前水準を下回ったが、原薬調達ルートの再構築には時間を要するため、薬局現場での限定出荷対応は当面継続する見通しである。加算取得のための備蓄計画と、日常運用での在庫確保の両側面から実務を組み立てる必要がある。
薬局類型別・生存戦略 ── 中小・チェーン・病院前
新加算の要件対応・薬価改定・供給不安のインパクトは、薬局の規模・立地・機能によって大きく異なる。本章では3類型に分けて戦略を解剖する。
調剤基本料1算定の中小独立薬局は、加算1(27点)の取得がまず経営目標となる。加算2・3の取得には在宅24回以上・かかりつけ薬剤師実績など高いハードルがあり、単独での達成は容易でない。
重要供給確保医薬品75成分の備蓄要件は、単独店舗では在庫スペース・資金負担が大きいため、地域薬局同士の分譲ネットワークへの参加が実効性のある選択肢となる。
2024年の調剤薬局倒産は28件(東京商工リサーチ、2022年16件・2023年12件から増加)で、後継者不在の解決策としてM&A・事業承継も現実的な検討対象となっている。
大手チェーン薬局(調剤基本料2または3算定)は、加算1+加算4(37点)または加算5(59点)の取得が経営目標となる。本部主導でスケールメリットを活かした対応が可能。
特に注目されるのが、本部主導の重要供給確保医薬品75成分の集中備蓄と店舗間融通体制の構築。エリア内での物流最適化を進めることで、単一店舗では実現困難な備蓄水準を確保できる。
2025年12月19日、業界大手の日本調剤がアドバンテッジパートナーズによる買収で上場廃止となり、業界再編の動きが加速する局面にある。中堅チェーンの動向にも注目が集まる。
特定の医療機関に対する処方箋集中率が高い病院前・診療所前薬局(調剤基本料3-イ等)は、新設された「門前薬局等立地依存減算」(15点マイナス)の直接的な影響を受ける。
加算1〜5に加えて減算15点が並行するため、収益への影響は複合的である。特別調剤基本料Bに該当する場合、加算自体が算定不可となる場合があり、経営構造の抜本的見直しが必要な局面となる薬局もある。
経過措置(令和8年5月31日時点で保険指定済み薬局は当面減算に該当しない)はあるが、恒久的な措置ではないため、集中率引き下げ努力・在宅事業展開・地域薬局との連携強化による経営構造転換が求められる。
4.1 薬局類型別インパクトの試算
月間処方箋受付枚数1,500枚規模の中規模薬局を例に、加算取得可否による年収差を試算する。
- 加算1のみ取得(27点):年間 27点×1,500枚×12月×10円 = 約486万円の加算収益
- 加算1+加算3取得(27点+67点=94点):年間 94点×1,500枚×12月×10円 = 約1,692万円の加算収益
- 加算1すら取得できない場合:年間約486万円〜1,692万円の収益機会喪失
- 薬価改定▲4.02%の影響:年間薬剤費売上を8,000万円と仮定すると、▲4.02%で年間約322万円の減収要因
新加算の取得可否は年間で数百万〜千数百万円の収益差を生む構造となる。中小独立薬局にとって、加算1の確実取得は経営の要諦であり、加算2・3への段階的な引き上げが中期経営目標となる。
疑義解釈その1〜その7の重要ポイント
2026年6月1日施行後、厚生労働省保険局医療課は疑義解釈資料を継続的に発出し、経過措置・算定要件の細部を明確化してきた。本章では薬局実務に直結する重要ポイントを整理する。
5.1 疑義解釈の発出状況
- その1(令和8年3月23日):初回発出。地域支援・医薬品供給対応体制加算の経過措置(旧加算算定回数の合算みなし)等
- その2(令和8年4月1日):最大ボリューム。調剤報酬点数表関係の細部Q&Aを収載
- その3(令和8年4月20日):施設基準届出の取扱い、届出期限の明確化
- その4(令和8年4月21日):電子的診療情報連携体制整備加算などの細部
- その5(令和8年5月8日):門前薬局等立地依存減算の経過措置(問1)、ベースアップ評価料関係
- その6(令和8年5月22日):電子的調剤情報連携体制整備加算等の追加解釈
- その7(令和8年5月29日):その6の一部訂正、追加解釈
- 令和8年度診療報酬改定に係る施設基準届出チェックリスト(4月20日発出):令和8年6月1日届出期限の11項目を網羅的にリスト化
5.2 薬局実務に直結する重要解釈ポイント
ポイント1:地域支援・医薬品供給対応体制加算の実績みなし
加算2〜5の実績要件のうち「調剤時残薬調整加算」と「服薬管理指導料1のイ・2のイ」は、2027年6月1日までに行う届出については旧加算の算定回数を合算してみなせる(疑義解釈その1)。この経過措置は薬局現場の届出実務の負担軽減として重要である。
ポイント2:門前薬局等立地依存減算の経過措置
「令和8年5月31日において現に保険指定を受けている保険薬局については、当面の間、門前薬局等立地依存減算に該当しないものとする」(疑義解釈その5 問1)。ただし令和8年6月1日以降に保険指定を受けた保険薬局は、保険指定時の要件充足状況で判定される。既存薬局への急激な影響を避ける一方で、新規開設の抑制効果が期待される制度設計となっている。
ポイント3:セルフメディケーション関連機器の兼用
体制要件④の関連機器7種類のうち3つ以上設置が必要だが、1製品が複数機能を兼ね備える場合、3製品未満の設置でも要件を満たす。血圧測定器・体組成計・血中酸素飽和度測定器等は、認証医療機器であることが必要(疑義解釈その2)。
ポイント4:他薬局への分譲実績の証跡管理
他の保険薬局に医薬品を分譲した場合、分譲に係る伝票、医療用医薬品の譲渡書または別紙様式4-1を用いて分譲後2年間保存することが求められる。同一開設者の薬局への分譲は、任意様式の伝票または譲渡書2年間保存でも可(疑義解釈その2)。
ポイント5:ベースアップ評価料の届出要件
6月以降算定するには必ず届出が必要(様式103)。令和8年6月から賃上げを行う場合、同年6月及び7月分の賃上げ実績を報告。令和8年4月から賃上げを行う場合においても、同年6月及び7月分の賃上げ実績報告が必要(疑義解釈その5)。
以下の経過措置期限は薬局経営者・管理薬剤師がカレンダー化して継続管理すべき項目である。令和8年11月末:単品単価交渉の「望ましい」要件から必須要件への移行期限。令和9年5月31日:後発医薬品85%要件の旧加算届出済みみなし期限。令和9年6月1日:地域支援・医薬品供給対応体制加算の実績要件みなし期限。これらの期限を過ぎると通常要件が適用されるため、期限前に実績要件を実際に達成しておく必要がある。
薬局経営者が今すぐ取るべき5つのアクション
ここまで見てきた三重の圧力の中で、薬局経営者・管理薬剤師・事務担当者・在宅担当者が今すぐ着手すべき実践的アクションを5つに整理する。
薬局における75成分1か月備蓄・店舗間融通体制の構築は、店舗内・店舗間の保管スペース確保と物流効率化を同時に求める。医薬品の適切な保管・搬送には温度管理対応の物流資材や、堅牢な折りたたみコンテナ・パレットが必要であり、運用品質が備蓄管理の精度を左右する。プラスチックパレット株式会社(千葉県我孫子市・全国対応)は、医療機関・薬局向けの物流資材を扱う専門商社として、薬局備蓄体制構築の物流面を支援できます。制度対応と現場対応の両輪を回すために、物流資材の見直しは隠れた実務改善ポイントです。
「地域医療の最後の砦」としての薬局の役割
2026年6月1日の調剤報酬改定は、薬局を「医薬品供給の最終セーフティネット」として再定義した重要な政策転換である。地域支援・医薬品供給対応体制加算の新設、重要供給確保医薬品75成分の備蓄要件化、単品単価交渉の要件組み込みは、いずれも「薬局が地域医療の最後の砦として機能できる基盤整備」を意図している。
一方で、中東情勢由来の医薬品供給への影響、薬価改定▲4.02%による薬剤費収益の減少、門前薬局等立地依存減算による立地依存型薬局への構造改革圧力は、「制度が求める理想と現場の物理的制約」の間で薬局経営を揺さぶる。政府対応の進展でナフサ価格は6/25にスポット$627/MTと衝突前水準を下回り、対策本部の相談は7,204事業者に到達(4/30時点)したが、加算取得のための備蓄計画と日常運用での在庫確保という2つの実務課題は当面併走する。
本稿の核心メッセージは3つある。第一に、加算1(27点)の確実取得を経営の出発点として、A群35+B群40の75成分備蓄計画を具体化すること。第二に、経過措置期限のカレンダー管理(令和8年11月末、令和9年5月31日、令和9年6月1日)を実務ルーティンに組み込むこと。第三に、単独では困難な備蓄要件は地域薬局間・チェーン店舗間の融通ネットワークで補完し、証跡管理(別紙様式4-1・2年間保存)を徹底すること。
本シリーズの医薬品サプライチェーン断絶の全貌(総論)と病院経営の生存戦略と併せて、医薬品供給の上流から川下まで(薬局は最終地点)の全体像を立体的に把握する一助となれば幸いである。
- 厚生労働省告示第71号「特掲診療料の施設基準等の一部を改正する件」(令和8年3月5日官報告示)― 地域支援・医薬品供給対応体制加算 加算1〜5の点数と施設基準
- 厚生労働省保医発0305第8号「特掲診療料の施設基準等及びその届出に関する手続きの取扱いについて」(令和8年3月5日)― 施設基準の詳細と別紙様式
- 厚生労働省告示第72号「使用薬剤の薬価(薬価基準)の一部を改正する件」(令和8年3月5日官報告示)― 薬価改定 薬剤費ベース▲4.02%、医療費ベース▲0.86%、2026年4月1日施行
- 中央社会保険医療協議会 総会(第647回)資料(2026年2月13日)― 地域支援・医薬品供給対応体制加算 加算1〜5の点数決定(27点/59点/67点/37点/59点)
- 中央社会保険医療協議会 総会(2025年10月28日)― 「後発医薬品使用体制加算」等の存廃議論
- 中央社会保険医療協議会 総会(2025年11月28日)― セルフメディケーション関連機器の設置状況議論
- 厚生科学審議会医療用医薬品迅速・安定供給部会 第2回 資料2「供給確保医薬品の選定について」(2025年10月27日)― 供給確保医薬品762成分、重要供給確保医薬品75成分(A群35+B群40)
- 厚生労働省保険局医療課事務連絡「疑義解釈資料の送付について(その1)」(令和8年3月23日)― 地域支援・医薬品供給対応体制加算の経過措置
- 厚生労働省保険局医療課事務連絡「疑義解釈資料の送付について(その2)」(令和8年4月1日)― 調剤報酬点数表関係の細部Q&A、セルフメディケーション関連機器
- 厚生労働省保険局医療課事務連絡「疑義解釈資料の送付について(その3)」(令和8年4月20日)― 施設基準届出の取扱い
- 厚生労働省保険局医療課事務連絡「疑義解釈資料の送付について(その4)」(令和8年4月21日)― 電子的診療情報連携体制整備加算
- 厚生労働省保険局医療課事務連絡「疑義解釈資料の送付について(その5)」(令和8年5月8日)― 門前薬局等立地依存減算の経過措置、ベースアップ評価料
- 厚生労働省保険局医療課事務連絡「疑義解釈資料の送付について(その6)」(令和8年5月22日)― 電子的調剤情報連携体制整備加算の追加解釈
- 厚生労働省保険局医療課事務連絡「疑義解釈資料の送付について(その7)」(令和8年5月29日)― その6の一部訂正、追加解釈
- 厚生労働省「令和8年度診療報酬改定関連通知及び官報掲載事項の一部訂正について」(令和8年5月29日)
- 厚生労働省「令和8年度診療報酬改定に係る施設基準届出チェックリスト」(令和8年4月20日発出)― 令和8年6月1日届出期限の11項目リスト
- 社会保険診療報酬支払基金「令和8年度診療報酬改定における施設基準の地方厚生(支)局等宛て早期届出(5月18日まで)のお願い」(2026年5月1日)
- 財務省財政制度等審議会「財政制度分科会」(2026年4月23日)― 薬局の「小規模分散」問題指摘
- 東京商工リサーチ「調剤薬局倒産件数調査」― 2022年16件、2023年12件、2024年28件
- 日本調剤株式会社「株式併合に係る適時開示」(2025年12月19日)― アドバンテッジパートナーズによる買収完了、上場廃止
- 厚生労働省「医療用医薬品の供給状況」第19回医療用医薬品の安定確保策に関する関係者会議 参考資料3(令和7年1月24日)― 2024年12月調査結果:限定出荷・供給停止合計20%(3,244品目)、後発品で限定出荷571品目+供給停止1,016品目
- 厚生労働省「医薬品安定供給・流通確認システム」稼働開始(2026年3月31日)
- 日本ジェネリック株式会社「医療関係者向けお知らせ一覧」― 2026年5月22日付 エポセリン坐剤、イミダプリル塩酸塩錠「JG」、アムバロ配合錠「JG」など8品目以上の販売中止案内
- 沢井製薬株式会社「全製品供給状況一覧」(2026年6月24日時点・継続更新中)
- 内閣官房「中東情勢に関する関係閣僚会議」(第1回2026年3月24日〜第7回2026年5月12日)
- 内閣官房「中東情勢に関する関係閣僚会議 第6回議事要旨」(2026年4月30日)― 対策本部相談7,204事業者、安定供給影響品目64件、解決済み26件
- 厚生労働省「第1回〜第5回 中東情勢の影響を受ける医薬品、医療機器、医療物資等の確保対策本部」(2026年3月31日〜5月18日)
- 厚生労働省「現下の中東情勢を踏まえた血液透析機器の安定供給に向けた関係事業者間の連携に係る独占禁止法上の取扱いに関する疑義への回答について」(2026年4月23日)
- 上野賢一郎厚生労働大臣 発表「透析資材について9月末までの十分な供給を確保」(2026年4月24日)
- 首相官邸「中東情勢を踏まえた令和8年度補正予算等についての会見」(2026年5月25日)― 高市総理3兆円補正予算表明、中東情勢等対応予備費創設
- 日本経済新聞「ナフサ価格がアジアで下落、衝突前下回る 代替調達で供給懸念が後退」(2026年6月25日)― 東京オープンスペック1トン627ドル
- DGSオンライン「【令和8年度調剤報酬改定】施設基準届出チェック/6月1日期限は11項目」(2026年4月21日)
- 日刊薬業「中東情勢、原薬のリスク洗い出し 原薬工、影響の程度は不透明」(2026年4月28日)
- プラスチックパレット株式会社「Oil & Naphtha Monitor」― ナフサ価格・供給状況の継続モニタリング
- 本記事は2026年7月13日時点で確認可能な公式発表・報道・業界統計をもとに、当社編集部が独自にまとめたものです。個別の薬局経営判断・調剤報酬算定・投資判断の根拠として利用される場合は、必ず厚生労働省告示・保医発通知・疑義解釈資料および各地方厚生局の指示、専門家(医事コンサルタント・公認会計士・弁護士等)にご確認ください。
- 本記事に登場する統計数値・改定率・算定要件は、公表時点の情報であり、その後の政策変更・診療報酬改定告示・疑義解釈追加により内容が変更される可能性があります。最新情報は各行政機関・業界団体の公式サイト(厚生労働省「令和8年度診療報酬改定について」特設ページ等)で随時ご確認ください。
- 疑義解釈資料は継続的に発出される可能性があります。本記事はその7(令和8年5月29日)までを反映していますが、その後の追加発出内容は必ず一次資料でご確認ください。
- 本記事は特定の薬局経営手法・M&A仲介会社・製薬メーカーの推奨・非推奨を目的とするものではなく、業界情報の提供を目的とするものです。個別の経営戦略・M&A判断・処方判断は、各薬局・医療機関の専門的判断のもとで行われるべきものです。
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