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【2026年緊急レポート】イラン情勢とマスキングテープ供給危機|ナフサ急落でも品薄が続く構造、粘着剤アロケーションの実態と対策(7月3日更新)
2026年 緊急レポート 7月3日 最新更新

【検証・更新版】イラン情勢とマスキングテープ供給危機|ナフサ急落でも品薄が続く構造、粘着剤アロケーションの実態と対策

📅 原記事:2026年4月3日 🔄 更新:2026年4月26日/5月18日(月次更新) 🆕 最終更新:
Answer

2026年7月3日時点、アジアナフサ価格は6/25に1トン627ドルまで急落し衝突前632ドルを下回った6/14イスラマバード覚書発効後もホルムズは6/20再閉鎖声明で流動的。テープメーカーはバックオーダー消化優先で、VAM+40円/kgスチレン系+100円/kgの値上げは定着。品薄と価格高止まりは8月中旬の交渉期限まで継続する見通し。

2026年2月28日、米国・イスラエルによるイランへの大規模軍事攻撃を機に、ホルムズ海峡は事実上の封鎖状態に陥った。それから4ヶ月余り、6月14日にパキスタンの仲介で米イラン「イスラマバード覚書」14項目が合意され、6月17日のG7エヴィアン=レ=バン最終日にデジタル署名・6月18日発効。ホルムズ海峡は60日間の「無料安全通航」が保証された。しかし6月20日にはイラン革命防衛隊が「全船舶接近禁止」の再閉鎖声明を出すなど、状況は依然として流動的である。アジアナフサ価格は6月25日に1トン627ドルまで下落し衝突前水準(632ドル)を下回ったが、マスキングテープをはじめとする石油化学由来製品の供給網では、バックオーダー消化と価格改定の後戻りが進まず、現場での品薄と高値は継続している。本レポートでは、一次資料・公式発表に基づき情報を検証し、現場の調達担当者が今すぐ取るべき行動を整理する。
Section 01

なぜ「マスキングテープ」が市場から消えるのか

マスキングテープは一見、紙製品のように見えるが、その核心部分である粘着剤(アクリル系・ゴム系)基材(クレープ紙・ポリエステル)は、石油化学由来の原材料で構成されている。なかでも粘着剤の主成分となる酢酸ビニルモノマー(VAM)・アクリル酸エステル・スチレン系モノマーは、いずれもナフサを起点とするサプライチェーンの末端に位置する。

ホルムズ海峡の封鎖によりナフサの調達環境が急激に悪化した結果、川上の化学メーカーが値上げと出荷制限に踏み切り、それが川下のテープメーカー・流通業者・現場ユーザーへと連鎖する構造が生じた。7月時点ではナフサ市況が急落局面に入っているが、値上げ改定の定着・バックオーダー消化・円安負担・軽質ナフサ得率ミスマッチといった構造要因により、テープ市場の価格と入手性はすぐには改善しない状況が続いている。

2026年2月末〜7月の主要タイムライン

2026年2月28日
米国・イスラエルがイランへの大規模軍事攻撃を開始。ホルムズ海峡の通航が急激に減少。
2026年3月上旬〜
国内化学メーカー(三菱ケミカル・三井化学・出光興産等)がエチレン製造設備の減産を順次開始。
2026年3月17日
三菱ケミカルがVAM(酢酸ビニルモノマー)について40円/kgの値上げを発表(3月18日出荷分より)。経産省が石油製品の安定供給対策を閣議決定。
2026年3月24日
DIC株式会社がポリスチレン・スチレン系製品の100円/kg以上の値上げを発表(4月1日納入分より)。政府が予備費8,007億円の使用を閣議決定。
2026年3月下旬〜
接着剤を含む粘着関連製品の過剰発注・買い占めが発生し始める。需給が実態以上に混乱する要因となる。
2026年3月28日
ホルムズ海峡を経由しない代替ルート(サウジ・ヤンブー港)から初の原油タンカーが日本到着。
2026年4月8日
トランプ大統領がSNSで「イランと2週間の停戦に合意」と投稿。ただし恒久的和平交渉は難航中で状況は流動的。
2026年4月20日
日本接着剤工業会が需要側に対して「①通常の事業活動に基づく適正な購買・在庫水準の維持、②過度な先行発注や買い占め行動の自制等」を正式に協力要請(経産省2026/4/30資料)。
2026年4月28日
出光興産の大型タンカー「出光丸」がホルムズ海峡を通過してオマーン湾の公海へ脱出。日本に関係する船舶が同区域を抜けた初の事例。
2026年4月30日
経産省発表:5月のナフサ輸入量が平時比3倍(135万kL超)、ポリエチレン等の川下製品在庫は約1.8か月分に。ナフサ由来化学製品の供給は「年を越えて継続できる見込み」に。
2026年5月1日
大倉工業がラミネート製品を30%以上、エフピコチューパがOPP防曇フィルムを35%以上値上げ(5月1日出荷分から)。OPPテープ・養生テープ等を含む梱包用フィルム全般の二次値上げ波が本格化。
2026年6月2日
赤澤亮正経産大臣が「ナフサ7月に前年並み生産量に戻る見通し」を表明(logistics-today)。政府は同3日、シンナー等溶剤の原料手当てを平時の1.8倍規模で確保する枠組みを発表。
2026年6月3日
アジアナフサ価格が3月上旬以来の安値に急落。指標価格(7月後半渡し)は1トン788ドルまで下落(ロイター)。ADNOCがオマーン・ソハール港経由のSTS方式でナフサ輸出を5月から再開したことが背景。
2026年6月14日
米・イラン「イスラマバード覚書」14項目がパキスタンの仲介で合意。軍事作戦の即時停止、60日間の交渉期間、ホルムズ海峡の60日間「無料安全通航」保証、高濃縮ウラン処分、米軍によるイラン港湾封鎖解除などを含む暫定枠組み。
2026年6月17-18日
G7エヴィアン=レ=バン最終日にトランプ大統領・バンス副大統領・ペゼシュキアン大統領らがデジタル形式で正式署名。6月18日発効。同日ホルムズ海峡を商船25隻が通過(4月18日以来の最多)。翌19日には日本企業所有タンカー1隻を含む6隻が通過(日経)。
2026年6月20日
イスラエル軍がレバノン東部・南部を攻撃し17人殺害。覚書のレバノン停戦条項に違反。同日イラン革命防衛隊が「ホルムズ全船舶接近禁止」声明を発出。米・イラン協議も延期(Axios)。三菱総研は同19日に「和平ではなく対立の一時停止、最も難しい問題は60日後へ先送り」と評価。
2026年6月21日〜
イラン再閉鎖表明後も、週末を通じて約800万バレル分のタンカー5隻がホルムズを通過(Bloomberg・NHK)。6月21日にスイスで覚書署名後の初協議が開始(NHK)。「通過が続いているが紛争前の1日約120隻に比べれば約2割の水準」と限定的な回復にとどまる(ロイター)。
2026年6月25日
アジアナフサ指標価格(東京オープンスペック)が1トン627ドル(中心値)に下落し、イラン軍事衝突前の水準632ドルを下回る(日経)。中東地域以外からの代替調達進展と、ホルムズ通航正常化への期待から供給不安が後退。原油価格の下落にも連動。
2026年8月中旬(想定・次の節目)
イスラマバード覚書の60日交渉期限が終了する見通し(覚書発効6/18から60日後)。この期限までに核問題・地域安全保障・制裁解除の最終形について合意できるか、または延長が成立するかが、ホルムズ通航の恒久化とマスキングテープ市場の正常化パスを大きく左右する。三菱総合研究所(6/19)は「最も難しい問題を60日後へ先送りした」と評価。
Section 02

原材料供給の断絶と急落局面:エビデンスに基づく分析(7月3日更新)

2.1 ナフサ供給の構造的脆弱性と急落局面への転換

約94% 日本の原油輸入に占める中東依存度(2025年実績) 出典:資源エネルギー庁、中東調査会(2026年)
約60% ナフサ輸入量に占める中東依存度(2024年度実績) 出典:経済産業省(2026年3月24日資料)
135万kL超 5月のナフサ輸入量(平時比3倍)
4月90万kL→5月135万kL超と拡大
出典:経済産業省(2026年4月30日発表)
627ドル/t 6月25日アジアナフサ指標価格
3月ピーク1,300ドル→6/3 788ドル→6/25 627ドル
出典:日本経済新聞(2026年6月25日) 🆕
ナフサ市況は衝突前を下回る水準に

ADNOCがオマーン・ソハール港経由のSTS方式でナフサ輸出を5月から再開したこと、6月14日のイスラマバード覚書合意によるホルムズ通航正常化への期待、原油価格の下落が主要因(日本経済新聞2026年6月25日、ロイター2026年6月3日)。赤澤亮正経済産業大臣は6月2日に「7月にナフサの生産量は前年並みに戻る」との見通しを表明し、政府は6月3日にシンナー等溶剤の原料手当てを平時の1.8倍規模で確保する枠組みも発表しました。ただし後述のとおり、市場価格の下落が現場での粘着剤・テープ価格に反映されるまでには複数のタイムラグと構造要因があります。

📋 検証メモ(ナフサ依存度の表記について)
元記事では「中東依存度73%以上」と記載されていましたが、経済産業省の公式資料(2026年3月24日)では「ナフサ調達先は中東4割・国産4割・その他地域2割」、中東調査会の分析では「ナフサ輸入量の中東依存度は47〜64%」と記載されています。本稿では輸入量全体(国産含む)ベースの「約60%」を採用しています。

2.2 粘着剤原料の値上げ:確認済みの公式通知

三菱ケミカル株式会社
2026年3月17日発表

酢酸ビニルモノマー(VAM)の価格改定を実施。中東情勢悪化による主要原料の調達環境急悪化・価格高騰・物流混乱による入荷不安定を理由としている。

  • 値上げ幅:+40円/kg(国内販売分)
  • 改定時期:2026年3月18日出荷分から即時適用
  • 同時改定:ポリビニルアルコール製品群も値上げ(4月からさらに追加改定)
DIC株式会社
2026年3月24日発表

ポリスチレン製品およびスチレン系製品の価格改定を実施。スチレン系樹脂の高騰は、ゴム系粘着剤の原料コストにも間接的な圧力をかけている。

  • 値上げ幅:ディックスチレンGPPS / HIPS・ハイブランチ・エラスチレン各 100円/kg以上
  • 改定時期:2026年4月1日納入分より

2.3 接着剤の過剰発注問題と業界の対応

日本接着剤工業会が4/20に買い占め自制を正式要請(7月時点でも要請継続)

2026年3月下旬頃から接着剤を含む粘着関連製品で過剰発注・買い占め行動が発生。これが需給混乱を実態以上に増幅させたことを受け、2026年4月20日、日本接着剤工業会が需要側に対して「通常の事業活動に基づく適正な購買・在庫水準の維持」「過度な先行発注や買い占め行動の自制」を正式に協力要請しました(経産省2026年4月30日資料)。

4月21日には経産省・国交省が住宅・建材設備業界向けの説明会を開催し、川中の目詰まり解消と適正発注への理解を求めました。マスキングテープ・養生テープを含む粘着テープ製品についても、前年同月同量を基本とした発注が推奨されており、この方針は6月・7月時点でも継続しています。

🆕 2.4 「市況急落≠実購入価格」を読み解く4つの構造要因

ナフサ市況が下がってもテープの実勢価格が下がらない理由

アジアナフサ市況は5/16の$1,043から6/25の$627まで約4割下落しましたが、現場での粘着剤・テープ価格は下がっていません。これは以下の4つの構造要因によります。

①フォーミュラ+プレミアム:実際の輸入価格は市況単価に地政学リスクプレミアム・銘柄調整費・数量割増が上乗せされ、市況の下落分がそのまま実購入価格に反映されない設計になっています。

②海上輸送費・戦争保険料:ペルシャ湾岸を運航する船舶の戦争保険料は衝突前の水準に戻っておらず、代替ルート(オマーン・ソハール経由STS等)は追加輸送コストが恒常的にかかります。

③円安:2026年5月16日の1ドル158.45円から6月3日には159.69円とさらに円安が進行。ドル建て市況の下落分を為替が一部相殺しています。

④軽質ナフサ得率ミスマッチ:日本のクラッカーは中東産ナフサの組成前提で設計・運用されており、代替産地(米国・アルジェリア・ペルー等)の軽質ナフサでは派生品(エチレン・プロピレン・BTX等)の構成比率が変化し、実質的な原料コストは市況ほど下がりません。

結果として、三菱ケミカルVAM+40円/kg・DICスチレン系+100円/kg等の値上げは「原料市況が落ち着いた後も採算是正分として定着する」ケースが大半となり、テープの実勢価格が下方修正される見通しは立っていません。

📄 4つの構造要因の詳細解説は、姉妹記事「ナフサの『目詰まり』を一般向けにわかりやすく解説、米イラン覚書合意でもスーパーの値上げが続く本当の理由」にまとめています。

Section 03

主要メーカーの供給状況と型番別在庫実態

3.1 主要製品の供給状況(2026年6月末〜7月初旬時点)

製品 主な用途 粘着特性 2026年6月末〜7月初旬 供給状況 18mm 参考価格帯
3M 79H(2479H) シーリング・サッシ 強粘着・のり残り極小 非常にタイトな状態が継続
箱単位での注文制限が継続
高騰継続(前年比20〜30%増傾向で定着)
日東電工 No.720N 塗装・一般養生 中粘着・直線性が良い 既存取引先優先
4月調査時点で1箱の出荷予定は7月中旬とアナウンス済み
10〜15%程度の実勢価格上昇傾向が定着
カモ井 No.3303-HG シーリング・塗装 強粘着・薄膜基材 代替需要により品薄化が継続
ほぼ全サイズが取扱停止・終了状態が継続
在庫ありの場合は割高傾向が継続
中国製汎用品
(モノタロウPB・エスコ等)
一般塗装・養生 アクリル系・平面紙基材 比較的安定
購入数量制限(1点まで)は継続
国産品比3〜5割安。用途限定で代替検討の余地あり

3.2 B2B通販サイトのリアルタイム価格・在庫状況(モノタロウ調査)

※ 2026年4月26日時点でモノタロウ(monotaro.com)にて確認した実売価格・在庫状況です。5月・6月・7月初旬時点で確認したところ、以下の在庫切れ・取扱停止の状況に大きな変化は見られていません。価格・在庫は随時変動します。

製品・品番 内容量(18mm幅) 販売価格(税込) 在庫・出荷状況 備考
3M 2479H(79H後継) 1パック(5巻) ¥868 在庫切れ
出荷予定:2026年5月22日(アナウンス)
ケース(100巻)¥6,598も在庫切れ。多数の注文コードが取扱停止中・取扱終了。7月時点でも状況に大きな変化は見られていない。
日東電工 No.720N 1パック(6巻) ¥769 当日出荷
残り1点
1箱(60巻)¥6,488は在庫切れ(出荷予定:2026年7月中旬)。ケース単位はほぼ取扱停止中。
日東電工 No.720N 1箱(60巻) ¥6,488 在庫切れ
出荷予定:2026年7月中旬
80巻・100巻ケースも取扱停止中。4月時点でアナウンスされた7月中旬の出荷予定通りに供給が回復するかは、7月初旬時点でも要監視。
カモ井 No.3303-HG 1箱(各巻数×10パック) ¥5,398〜¥5,698 ほぼ全サイズ取扱停止中 代替需要の急増により全サイズが取扱停止中または取扱終了。単品(1個)販売分も取扱終了。
モノタロウPB(中国製) 1パック(7巻) ¥509〜519 当日出荷
⚠️ お一人様1点まで
箱単位(7巻×10パック)¥4,298も当日出荷だが1点まで制限。商品ページに「国際情勢の影響で価格変更・数量制限・欠品の場合あり」と注記掲載中。
エスコ EA943ML-18(中国製) 1包(7巻) ¥776 翌日出荷
返品不可
平面紙基材・アクリル系粘着剤。複数サイズ展開あり。国産品と比べ制限は少ないが、返品不可条件が付いている。
📊 モノタロウ調査からわかること(4月調査時点/7月初旬時点でも同傾向) 国産3社(3M・日東電工・カモ井)はケース・小パック問わず在庫切れ・取扱停止が常態化しており、7月初旬時点でも大きな変化は見られていない。一方、中国製(モノタロウPB・エスコ)は当日〜翌日出荷で在庫が確保できている状態にある。ただしモノタロウPBは「お一人様1点まで」の購入制限がかかっており、需要集中のサインが継続している。品質・のり残りリスクは用途ごとに異なる

📄 → 【詳細記事】中国製マスキングテープは国産品の代わりになるか:用途別採用可否マトリクスと実務チェックリスト

3.3 在庫確保のための提言

対策項目 具体的なアクション
納期管理 通常のリードタイムに+1〜2週間の余裕を持たせた発注を推奨。6月14日のイスラマバード覚書合意後もイラン革命防衛隊が6月20日に「ホルムズ全船舶接近禁止」声明を出すなど、ホルムズ情勢は依然として流動的。停戦後も供給正常化には数ヶ月単位の時間がかかる見込み。
適正在庫量の維持 【要請継続】 日本接着剤工業会(4/20)・経産省(4/30)は「前年同月同量を基本とした適正発注」を求めており、この方針は7月時点でも継続。過剰発注は流通の目詰まりを悪化させるため、1.5〜2ヶ月分を上限とした適正在庫の確保を心掛けること。
代替品の検討 「カモ井加工紙」「寺岡製作所」の同等品をバックアップとして確保しつつ、一般養生・塗装用途に限りモノタロウPBやエスコ等の中国製汎用品も選択肢に入れる。国産品比3〜5割安で当日出荷可能だが、シーリングや外装仕上げなど精度を要する用途では事前にのり残りテストを行うこと。
マルチソース化 3M・日東・カモ井の3社を並行して検討し、18mm・24mmといった汎用サイズについて複数ルートから調達。特定型番への固執が工期遅延リスクになる。
仕様の再考 バージン材不足の影響を受けにくい代替グレードへの切り替えテスト。粘着力を抑えた再生紙基材の適用可能性を現場で事前検証しておく。
Section 04

今後の見通し:ナフサ急落でもテープ市場の正常化まで必要な時間差(7月3日更新)

アジアナフサ価格が6月25日に1トン627ドル(衝突前632ドル)を下回るまで急落しても、マスキングテープの店頭在庫が回復するまでには、複数の「時間差」が積み重なる。原油タンカーが日本に着いてから、マスキングテープとして店頭に並ぶまでの工程を分解すると、その構造的な遅れが見えてくる。

フェーズ 内容と所要時間の目安
① 原油タンカー輸送 中東から日本への航行日数は約20日。6月18日の覚書発効後にホルムズ通航は再開したが、6月20日にイラン革命防衛隊が「ホルムズ全船舶接近禁止」声明を出すなど流動的な状態が続く。ロイターの分析では、覚書後の通航数は紛争前1日約120隻の約2割に留まる限定的な回復。
② ナフサ精製・在庫回復 経産省4/30発表:5月のナフサ輸入量は平時比3倍(135万kL超)、ポリエチレン等の在庫は約1.8か月分。赤澤経産大臣は6月2日に「7月にナフサ生産量は前年並みに戻る」と表明。ただし減産中のエチレン設備を通常稼働に戻すにも数週間を要する(石化協4月エチレン稼働率67.3%)。
③ 粘着剤原料(VAM・アクリル酸)の生産再開 三菱ケミカル等による値上げ改定は既に定着済み。ナフサ市況が下がっても、フォーミュラプレミアム・戦争保険料・円安・軽質ナフサ得率ミスマッチという4つの構造要因(Section 2.4参照)により、原料コストは市況ほど下がらない。増産に転じるにも1〜2ヶ月の遅れが見込まれる。
④ テープメーカーによる製品製造・出荷 3M・日東電工・カモ井加工紙各社が生産を増やし始めても、注文残(バックオーダー)の消化が優先されるため、新規注文への対応には時間がかかる。
⑤ 流通在庫の回復 モノタロウ・アスクル等の通販サイトで「在庫あり」が安定して表示されるようになるのは、④が解消されてさらに数週間後。4/26調査では日東電工No.720Nのケースは2026年7月中旬が出荷予定となっており、この時間軸は現実のものとなっている。

上記の各フェーズを合算すると、停戦が成立してから現場でマスキングテープを通常通りに調達できるようになるまで、最低でも3〜4ヶ月、状況次第では半年以上かかる可能性がある。6月14日の覚書合意はプロセスの起点であって終点ではなく、6月20日の再閉鎖声明が示すように地政学リスクは60日間の交渉期間終了後(8月中旬)に再燃するリスクを孕んでいる。三菱総合研究所(6月19日)も「和平ではなく対立の一時停止、最も難しい問題は60日後へ先送り」と評価している。

⚠️ 価格の高止まりはさらに長期化する
在庫が戻っても価格はすぐには下がらない。三菱ケミカル・DICが実施した値上げは「原料市況が落ち着いた後も採算是正分として定着する」ケースが多い。また5月1日以降、大倉工業のラミネート製品30%以上・エフピコチューパのOPPフィルム35%以上・グンゼ6/22出荷分2次値上げ9%など二次値上げ波も本格化している。テープの実勢価格は危機前の水準には戻らず、10〜20%程度の恒久的な価格上昇として定着する可能性が高い。

結論:現場が取るべき「選択」の分かれ道(7月3日更新)

7月時点の状況は「ナフサ市況は改善、しかし現場は品薄と高値が継続」という乖離した局面である。アジアナフサ価格は衝突前水準を下回り赤澤経産大臣も「7月に生産量は前年並みに戻る」と表明する一方、テープメーカーはバックオーダー消化が優先で、日本接着剤工業会の買い占め自制要請も継続中。値上げ改定・円安・軽質ナフサ得率ミスマッチという構造要因により、現場の品薄と高値は依然として続いている。

中東産ナフサの供給環境が安定するまでの間、特定の型番へのこだわりが工期の遅延を招くリスクがある。3M・日東・カモ井の3社を並行して検討し、汎用サイズの在庫を「見つけた瞬間に確保する」ことが基本戦略。それでも入手できない場合の第4の選択肢として、中国製汎用品(モノタロウPB・エスコ等)を用途を限定した上で活用することも現実的な手段となっている。発注量は前年同月同量を基本とした適正量を心掛けたい(日本接着剤工業会・経産省の要請)。6月14日イスラマバード覚書の60日交渉期限が終わる8月中旬前後は次の節目で、覚書が延長・恒久化されれば供給正常化は加速するが、破綻すれば再度の混乱リスクも視野に入れておく必要がある。

📄 関連記事:【代替手段の実態】中国製マスキングテープは国産品の代わりになるか — 用途別採用可否マトリクスと実務チェックリスト

📚 参考資料

  • 1
    日本国際問題研究所 戦略コメント2026-8(2026年3月10日)/朝日新聞(2026年2月28日)[link]
  • 2
    経済産業省「中東情勢を踏まえた燃料油・石油製品の安定供給確保」(2026年3月24日)[PDF]
  • 3
    Bloomberg/ゴムタイムス社「三菱ケミカルVAM値上げ40円/kg」(2026年3月17-18日)[link]
  • 4
    DIC株式会社 公式プレスリリース「ポリスチレン・スチレン系製品100円/kg以上値上げ」(2026年3月24日)[link]
  • 5
    中東調査会「ホルムズ海峡の封鎖で揺らぐアジアの石油供給網」(2026年3月23日)/資源エネルギー庁データ
  • 6
    経済産業省「中東情勢を踏まえた燃料油・石油製品の安定供給確保及び重要物資の安定的な供給確保の対応状況」(2026年4月30日)[PDF]
  • 7
    日本接着剤工業会「適正な購買・在庫水準の維持および過度な先行発注・買い占め自制の協力要請」(2026年4月20日)
  • 8
    プラスチックパレット株式会社「2026年5月1日値上げ完全版|建設・物流・包装資材30社一覧」[link]
  • 9
    プラスチックパレット株式会社「イラン情勢と梱包用・包装用テープ供給不足の現状」[link]
  • 10
    logistics-today「赤澤亮正経産大臣、ナフサ7月に前年並み生産量に戻る見通し表明」(2026年6月2日)
  • 11
    ロイター「アジアのナフサ価格急落、ADNOCがオマーン経由で輸出再開」(2026年6月3日)
  • 12
    AFP/共同通信/各報道「米イラン『イスラマバード覚書』14項目合意・G7署名・発効」(2026年6月14-18日)
  • 13
    三菱総合研究所「アメリカとイスラエルによるイラン攻撃⑦ 危機の先延ばし 米・イラン覚書14項目の意味するもの」(2026年6月19日)
  • 14
    共同通信/ロイター/Axios/NHK/Bloomberg/日本経済新聞「ホルムズ通航6隻・イラン革命防衛隊再閉鎖声明・通航継続」(2026年6月19-21日)
  • 15
    日本経済新聞「ナフサ価格がアジアで下落、衝突前下回る 代替調達で供給懸念が後退」(2026年6月25日)[link]

ご利用にあたっての注意事項

  • 本記事は2026年7月3日時点の公開情報に基づいて執筆しています。イラン情勢・原油・ナフサ市況・為替・企業各社の値上げ動向は時々刻々と変化するため、最新の状況は必ず原典または各社公式発表をご確認ください。
  • 本文中の数値・固有名詞(価格・生産量・稼働率・日付・企業名など)は執筆時点の一次資料・報道に基づきますが、後続の訂正・アップデートにより変更される可能性があります。
  • 原油・WTI・ブレント・アジアナフサ価格・為替レート・在庫・備蓄量に関する記述は情勢解説を目的としており、投資・取引・調達契約の判断材料として推奨するものではありません。
  • 海外報道・外国政府発表を引用している箇所は、報道機関の翻訳・要約を経由しているため、原文との完全一致を保証するものではありません。原文ニュアンスの確認には各出典URLをご参照ください。
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