ニュースで聞くイラン情勢が招く「2026年ホルムズ海峡の再閉鎖」をやさしく解説、代替調達が進んでも身近な商品の値段が下がらない本当の理由
- 2026年7月12日、イランがコンテナ船を攻撃してホルムズ海峡を「追って通知まで再閉鎖」と宣言、米軍が空爆を再開しました。6月の停戦覚書は事実上崩れた形です。
- 前日にはハメネイ師の息子で新最高指導者のモジタバ師が「復讐を誓う」と声明。翌日には行動として表れた形になりました。
- 原油そのものは米国など中東以外からの調達が進み、3月のような品切れは起きにくくなっていますが、プラスチック製品や日用品の値段は「じわり」と続く見通しです。
2026年7月12日未明、イラン革命防衛隊はキプロス船籍のコンテナ船「GFS Galaxy」を攻撃し、ホルムズ海峡を追って通知まで再閉鎖すると宣言しました。米軍は同日朝から対イラン空爆を再開しています。前日にはハメネイ師の息子・モジタバ新最高指導者が「復讐を誓う」と声明を発表。日本は原油の中東以外からの代替調達が進んでほぼ100%に近づき、ナフサの代替輸入も大幅に拡大したため、3月のような品切れは起きにくくなっていますが、輸送費や保険代の上乗せが続くため、プラスチック製品や日用品の値上げは「じわり」と続く見通しです。
- STEP 012026年7月、また何が起きたの?
- STEP 02「ホルムズ海峡」ってどこ?なぜそんなに大事なの?
- STEP 036月の「イスラマバード覚書」って何だったの?なぜ壊れたの?
- STEP 04「ハメネイ師の息子」が「復讐」って言ったの、どういうこと?
- STEP 05「GFS Galaxy」って船の攻撃、私たちに関係あるの?
- STEP 06「代替調達が進んでる」って本当?原油はもう安心なの?
- STEP 07じゃあ「ナフサ」って何?なぜ暮らしのモノに響くの?
- STEP 083月みたいな品切れ、また起きるの?「第2波」って何?
- STEP 09私たちにできる備えは?慌てて買いだめすべき?
- STEP 10今後どうなる?いつ落ち着くの?
- FAQよくあるご質問
2026年7月、また何が起きたの?
2026年7月11日から12日にかけての約24時間で、中東で大きな出来事が3つ続けて起きました。冒頭の3行まとめで概要は掴めたはずですが、ここでは何が、いつ、どんな順番で起きたのかを、もう少しじっくり見ていきます。
なぜこのタイミングだったの?
実はこれらの出来事は、それぞれ「たまたま重なった」わけではありません。前の最高指導者ハメネイ師(モジタバ師の父)は2026年2月28日に米国とイスラエルの攻撃で亡くなり、7月4日から10日にかけて国葬が行われていました。国葬期間中、テヘランの街には「復讐」と書かれた赤い旗が並び、参列者は「復讐だ!」と唱えていたと報じられています。
そして国葬が終わった翌日にモジタバ師が声明を出し、その翌日にはコンテナ船攻撃と海峡閉鎖宣言、米軍の空爆再開が起きたのです。「言葉」が「行動」に変わった瞬間と言えます。
お子さんが家族の葬儀の場で「必ず仕返しする」と決心を口にして、その翌日に本当に行動に移す、そんな流れです。決心の言葉が飾りではなく、次の日から実際の行動になったことが、今回のニュースの重みです。
「ホルムズ海峡」ってどこ?なぜそんなに大事なの?
ニュースでよく聞く「ホルムズ海峡」。場所や役割をあらためて確認しておきましょう。
ペルシャ湾とアラビア海をつなぐ、細くくびれた海の道です。もっとも狭いところで幅は約34kmしかありません(東京駅から千葉駅の直線距離とほぼ同じ)。北岸はイラン、南岸はオマーンで、両方の国の間を大型タンカー(石油運搬船)が毎日たくさん通過しています。
世界の石油の約2割が通る「石油の心臓」
この細い海の道を、1日あたり約2,000万バレルの原油が通っています。これは世界で船で運ばれる原油全体の約4分の1にあたります。もしここが閉じてしまうと、世界の石油の流れが一気に細くなる、という重要な場所です。
特に日本にとっては生命線です。日本は原油のほとんどを海外から輸入していますが、そのうち中東からの輸入が9割以上を占め、そのほぼすべてがこのホルムズ海峡を通っています。
家に水を運ぶ「水道管」が1本しかない状態を想像してみてください。その水道管が細くなったり、時々止まったりすると、お風呂も洗濯も炊事も影響が出ます。ホルムズ海峡は、世界のエネルギーにとっての「水道管」のような存在です。
ただし今回は、日本の政府と企業が「別の水道管」(米国や中南米、アフリカからの原油)を急いで整えてきたので、蛇口から水が出なくなる事態は避けられている状況です。
6月の「イスラマバード覚書」って何だったの?なぜ壊れたの?
実は7月12日の再閉鎖宣言の少し前、6月には「もう戦闘は終わりにしよう」という合意ができていました。2026年6月17日、パキスタンの首都イスラマバードで米国とイランが停戦覚書に署名したのです。トランプ大統領がSNSで「イランと戦闘終結で合意した」と発表しました。
この覚書には14の項目があり、暮らしに直結する部分としては「米国が海上封鎖を解除する」「イランが海峡の機雷を除去する」「イラン側は60日間、商船の無償・安全航行の確保に努める」といった内容が入っていました。3月から続いていた混乱に一区切りがついた瞬間でした。
なぜ約3週間で壊れてしまったの?
ところが、覚書が結ばれてから約3週間後、7月に入ると連続で商船攻撃が起きました。7月6日にはイランがホルムズ海峡で商船3隻を攻撃(合意後で最多)、7月7日と8日には米軍が報復として計170を超える標的に空爆を実施しました。そして7月12日のGFS Galaxy攻撃と再閉鎖宣言、米軍今週3度目の空爆…と続きます。
- 6月17日:米イラン停戦覚書に署名、60日間の安全航行が約束された
- 7月6〜8日:イランが商船攻撃→米軍が報復空爆(80拠点+90拠点)
- 7月12日:コンテナ船攻撃と再閉鎖宣言、米軍今週3度目の空爆。覚書は事実上崩れました
なぜ「まだ交渉できる」との見方も残るの?
ただし、覚書が完全に消滅したかというと、そうとも言えません。米側は「イランは覚書遵守の機会を再び与えられたが、また失敗した」との見解で、依然として交渉の余地は残しています。オマーンが仲介役として「通航料なしの南北二経路案」を提示しており、これが復活する可能性もあります。イラン側も対米協議を完全に打ち切ってはいません。
ご近所トラブルで「もう仲直りしよう」と握手したのに、次の週にはまたケンカが再燃してしまう、というイメージに近いかもしれません。ただし完全に絶交したわけではなく、双方が「まだ話し合いは続けられる」と言っている状態です。
「ハメネイ師の息子」が「復讐」って言ったの、どういうこと?
今回のニュースで一番注目されているのが、モジタバ・ハメネイ師の「復讐」声明です。少し整理して見ていきましょう。
モジタバ師ってどんな人?
モジタバ・ハメネイ師は、2026年2月28日の米イスラエル攻撃で亡くなった前最高指導者アリ・ハメネイ師の息子です。父の死後、6月8日に新しい最高指導者に選ばれました。ただし、選ばれてから7月11日の声明までの約1か月間、公の場に姿を見せていませんでした。
報道によれば、モジタバ師自身も2月末の攻撃で負傷したとされ、暗殺や居場所の特定を心配しての「姿を見せない体制運営」だった可能性があります。父の国葬にも参列していません。
「復讐を誓う」の意味と重み
7月11日の声明で、モジタバ師は父ら(2月末攻撃で殺害されたイラン指導層全体)の「殉教」に対して「復讐を誓う」「必ず達成されなければならない」と表明しました。参列者への謝意も述べたうえで、復讐は「国民の求めだ」と主張しています。
「これは体制の意思ではなく国民の意思だ」というフレーミングは、外交上の譲歩を難しくする効果を持ちます。「政治家個人の決断」なら妥協の余地がありますが、「国民の総意」となると、簡単に引っ込められない立場になるからです。
それでも姿を見せない不気味さ
興味深いのは、これだけ強い声明を出しながらも、モジタバ師本人は依然として公の場に姿を見せていない点です。イラン国内では体制が「盤石だ」とアピールしたい一方で、最高指導者本人の暗殺リスクへの懸念が続いている、という矛盾した状況が続いています。
職場の新しい社長が就任して1か月経つのに、まだ社員の前で顔を見せていない状態を想像してみてください。声明文だけが届く。「社長は本当に大丈夫なのか?」「誰が本当に決めているのか?」という不安が広がりますよね。
米国側から見ると、交渉相手が「姿を見せない状態」なので、「本当に約束を守れる人は誰なのか」が見えにくく、これが覚書修復を難しくしている原因の一つになっています。
「GFS Galaxy」って船の攻撃、私たちに関係あるの?
今回攻撃されたのは、キプロス船籍のコンテナ船「GFS Galaxy」という船です。船名や船籍だけ聞くと「遠い国の話」に感じるかもしれませんが、実は今回の攻撃には日本にとっても大事な意味があります。
「コンテナ船」ってどんな船?
コンテナ船は、皆さんもよく耳にする、あの大きな四角い箱(コンテナ)をたくさん積んで運ぶ船です。中身は原油やLNGのような資源ではなく、日用品、機械、部品、食品、家電など「一般の荷物」です。私たちがスーパーやネットショップで買う輸入品の多くは、こうしたコンテナ船で運ばれてきています。
7月に入ってからイランが攻撃していたのは、これまでLNG船(液化天然ガス)や原油タンカーなど「資源を運ぶ船」でした。7月6日に攻撃されたのはカタール国営のLNG船「Al Rekayyat」やサウジ船籍の原油タンカー「Wedyan」です。
ところが今回のGFS Galaxyは、一般の貨物を運ぶコンテナ船。資源だけでなく「日々の暮らしを支える貨物船」にまで攻撃対象が広がったことが、大きな警戒サインとして受け止められています。
日本の輸出入への影響は?
日本は完成品・部品・食品などをアジア、中東、ヨーロッパと盛んに取引しています。中東やインド方面へ向かうコンテナ船の多くはホルムズ海峡付近を通る航路を利用します。もしコンテナ船が「攻撃されるかもしれない」という状態が続くと、船会社は遠回りルート(喜望峰迂回)を選ぶことになります。
喜望峰迂回とは、アフリカ大陸の南端をぐるりと回るルートで、通常より12〜16日ほど余分にかかります。荷物の到着が遅れるだけでなく、燃料代や船の借り賃、保険料も上乗せされ、最終的には商品の値段に響いてきます。
宅配便のトラックが本来の道を通れなくなり、遠回りしなくてはいけない状況を思い浮かべてください。到着日が2週間ほど遅れて、その分の運転手さんの人件費や燃料代も上乗せされる。宅配業者はその費用を運賃に上乗せせざるを得ず、結果として送料が値上がりする。今、世界の海でそれと似たことが起きています。
「代替調達が進んでる」って本当?原油はもう安心なの?
ニュースを見ていると、3月クライシスの頃と比べて「原油は代替調達が進んでいる」という説明を目にする機会が増えました。これは本当なのでしょうか。結論から言うと、原油については本当に大きく進展しています。
日本が米国の原油輸出先で1位に
資源エネルギー庁が6月8日時点で公表した見通しによれば、原油の代替調達は6月時点で約8割、7月時点でほぼ10割に復元する見通しとなっています。もっと象徴的なのは、2026年6月時点で日本が米国の原油輸出先の第1位になったことです(ブルームバーグ船舶データ)。ちなみに2025年時点では日本は米国の輸出先第13位。それが半年でトップに躍り出たことになります。
2026年3月に中東からの輸入が急減した後、日本は米国、中南米、中央アジア、アジア太平洋など、中東以外の国々からの原油輸入を急速に増やしてきました。UAEのフジャイラ港(ホルムズ海峡を通らない位置にある港)からの調達もこれに含まれます。
4月26日には「中東情勢悪化後に調達・積載された初の米国原油を積んだタンカー」が千葉沖に到着しました。5月には米国からの原油輸入が前年比約4倍にまで拡大しています(経済産業省 4月30日資料)。
「代替できた=もう安心」ではない理由
ただし、これは「数量」だけの話です。代替調達には、それ自体のコストがかかります。輸送日数の長期化、原油の性質の違いによる精製工程の微調整、世界中が同時に米国産へ切り替える中での価格競争など、目に見えにくいコスト圧力が続きます。この4つのコスト圧力については、後ほどSTEP 08「第2波」で家計への影響も含めて詳しく取り上げます。
いつも使っていた近所のスーパーが閉まったので、少し遠くのお店に通うようになった、というイメージです。「なくてはならない食材」は買えるようになりました。でも、往復のガソリン代や、そこで買える食材の種類の違い、他の家庭も同じお店に集まって値段が上がりやすくなる、といった影響があります。
じゃあ「ナフサ」って何?なぜ暮らしのモノに響くの?
ニュースで「ナフサ」という言葉を聞いて、「原油と何が違うの?」と感じた方は多いはずです。ナフサは、原油から作られる代表的な石油製品の一つで、私たちの暮らしのなかで特に影響が大きい原料です。
ナフサは、原油を精製したときに得られる無色透明の液体です。ガソリンや灯油と同じく、原油から作られる仲間ですが、燃料として使うのではなく、化学製品の「材料」として使われるのが最大の違いです。
ナフサをさらに分解すると、エチレンやプロピレンといった基礎化学品ができ、そこからプラスチック、合成繊維、洗剤、化粧品、塗料、農薬、医薬品原料など、暮らしのあらゆる場面で使われるものが作られていきます。
ナフサから作られる身近なモノたち
「うちにはナフサから作られたものなんて無いよ」と思われるかもしれません。でも、実はほとんどのご家庭に、ナフサ由来の製品があふれています。
食品用ラップ、保存袋、タッパー、まな板、スポンジ、洗剤ボトル、食器洗い用のブラシ、電気ポットの外側、冷蔵庫のトレー、レジ袋、コンビニのおにぎりの包装フィルム、ペットボトルの容器…このほとんどが、ナフサから作られたプラスチックです。
シャンプーとリンス、洗顔料、化粧水、乳液、口紅、歯ブラシ、コンタクトレンズ、シェービングクリーム、洗濯洗剤、柔軟剤、浴槽の材質、ユニットバスのパネル…これらもナフサ由来の化学原料や樹脂から作られています。
塩ビ管(水道管や排水管)、断熱材、壁のクロス、床のフローリング、窓のサッシ、カーテン、家電のカバー、車のダッシュボード、タイヤ、DVDケース、お子さんのおもちゃ、文房具のペンやノートの表紙…数え上げるときりがないほどです。
ナフサの中東以外からの輸入は大幅に拡大
ナフサに関しても、2026年3月クライシス以降、米国、アルジェリア、スペイン、ポルトガル、イタリアなど、中東以外からの調達が急速に進みました。経済産業省の資料によれば、米・アルジェリア・ペルー等から日本に届くナフサ輸入は、5月時点で緊迫化前の月45万klから、月135万klを超える水準(約3倍)に拡大しました。
ただしナフサは、原油と比べると石化プラントに直接投入できる形での在庫が短い(約20日分)ため、輸入が滞るとその影響は比較的早く出ます。3月クライシスのときも、三菱ケミカルが3月6日から減産を開始しました。今回は代替輸入が進んでいるので、同様の急激な減産にはなりにくいと見られますが、価格面での影響は続きます。
ナフサ代替調達で、暮らしの何が変わる?
ここまで読んで「輸入元が変わっても、家庭で使う製品には関係あるの?」と感じられた方もいらっしゃると思います。代替調達が進んだ結果、私たちの暮らしにも小さな、しかし大切な変化が起きています。
お米を新潟産から北海道産に切り替えるようなイメージです。基本的な性質は同じで、炊いたご飯として食卓に出せば区別はほとんどつきません。ラップやトレー、洗剤ボトルも、米国産ナフサ由来のものと中東産ナフサ由来のもので、私たち消費者から見た使い心地はほぼ変わりません。
ただし違うのは、「値段の付き方」です。運ぶ距離が遠くなった分、輸送費が上乗せされます。世界中の国が同じ米国産に集まる分、価格競争も起きます。「品切れの心配は減ったけれど、少しずつ値段は上がる」という状態が続きやすいのは、こうした事情によります。
3月クライシス直後は「スーパーからラップが消える」「洗剤が高い」といった話題が広がりました。今回の再閉鎖では、そうした物理的な品切れは避けられる公算が大きいのが、代替調達が進んだ結果としての「安心材料」です。値段の面での影響は残るものの、生活を大きく変えなければならないような事態は起きにくいのが現時点の見通しです。
3月みたいな品切れ、また起きるの?「第2波」って何?
「またあの時みたいに、スーパーからラップやトレーが消えるの?」というのが、多くの方の心配ではないでしょうか。結論から言うと、同じような品切れの再現は起きにくいと見られています。ただし、別の形での影響は続く見込みです。
3月の「第1波」は「数量ショック」だった
2026年3月クライシスでは、ホルムズ海峡が事実上封鎖され、中東からの原油・ナフサ・LNGが日本にほとんど届かない状態が続きました。その結果、以下のような影響が出ました。
- 三菱ケミカル(3/6〜)を先頭に、国内エチレン設備の稼働率が70%前後まで低下
- TOTOはナフサ調達不安定化でユニットバスの新規受注を一時停止
- 日本サニパックはポリ袋等の全商品を30%値上げ、カネカは住宅用断熱材を40%値上げ
今回の「第2波」は「価格・輸送コスト」中心
これに対して、7月12日の再閉鎖宣言後は、代替調達がだいぶ進んだ状態からのスタートです。原油はほぼ100%代替できる見通しで、ナフサも中東以外からの輸入が3倍以上に拡大しています。ですから、「モノが手に入らない」という数量ショックは起きにくい状況です。
ただし、代替調達を続けるにも、以下の要素で継続的にコストがかかります。
①船を長く借りるコスト:米国から日本まで約22日、通常より長い航海の分、船の借り賃と燃料代が上乗せされます。
②戦争リスク保険の高止まり:ホルムズ海峡近辺を通る船の保険料は3月クライシス時に前週比4〜6倍まで上昇。今回も再上昇の兆しがあります。
③品質適合のための微調整:米国産原油と中東産原油では性質が違うため、精製工程で微調整が必要です。
④世界中が同じ供給源を求める:欧州も米国産へシフトしているので、需給が引き締まりやすくなります。
「スーパーの棚は埋まっているけれど、じわりと値段が上がっている」ような状態です。3月のように「棚から消える」パニックは起きなくても、月々のお買い物のレシートが少しずつ厚くなっていく、そんな影響が続きやすい局面です。
ですので今回の局面は、「一気にパニック」ではなく「じわりと家計が重くなる」ケースへの備えが大切になります。
私たちにできる備えは?慌てて買いだめすべき?
「不安だから念のため買っておこう」と考えたくなる場面ですが、実は買いだめは避けたほうがよいとされています。政府や業界団体からも呼びかけが出ています。
3月クライシスで実際に何が起きたか
3月クライシスでは、実は「本当の品不足」だけでなく、「過剰な発注」による流通の混乱も起きました。経済産業省の4月30日資料によれば、川上(原料)の供給量は足りているのに、流通・需要側の一部が普段よりも多く発注した結果、中間業者や卸小売の混乱を招いた事例があったとされています。
特に接着剤は、3月下旬頃から過剰発注が発生し、4月20日には日本接着剤工業会が「通常の事業活動に基づく適正な購買・在庫水準の維持」を呼びかけました。
経済産業省は「原油やナフサ由来の化学製品の供給が、年を越えて継続できることの理解を広め、前年同月同量を基本とした調達を行うよう徹底的な周知・広報を進める」との方針を示しています。企業だけでなく個人消費者にも同じ考え方が当てはまります。
日本の石油備蓄は約8か月分
資源エネルギー庁の情報によれば、日本は2026年2月時点で約8か月分の石油備蓄を持っています。国が保有する「国家備蓄」、企業が法律で保有を義務付けられている「民間備蓄」、UAE・サウジアラビア・クウェートとの間で行う「産油国共同備蓄」の3つで構成されています。
また、電力・ガス会社は、ホルムズ海峡経由で運ばれるLNG輸入量の1年分に相当する約400万トンの在庫を持っています。すぐに供給が止まる事態にはならない、ということです。
では、私たちにできる備えは?
- 「買いだめしない」ことが結果的に一番の備え。普段どおりの使い方が流通の安定を助けます。
- 値上げの動向は落ち着いて情報を確認する。政府や信頼できるメディアの一次情報から把握するのが安心です。
- 光熱費やガソリン代の変動を家計簿でチェック。ガソリン補助金の状況は経産省サイトで確認できます。
災害時のパニック買いをイメージしてみてください。「みんなが慌てて買うから、本当に必要な人に届かなくなる」現象です。今回は品不足自体は起きにくい状況ですので、慌てて買いだめしても、家に余った商品が積みあがるだけ、ということになりがちです。
今後どうなる?いつ落ち着くの?
最後に、今後の見通しを整理しておきましょう。事態が動く可能性のあるポイントは、時間軸で3つに分けて考えると分かりやすくなります。
短期(1〜4週間)の焦点
まず注目すべきは、米国とイランが再び交渉のテーブルに戻れるかどうかです。7月12日の攻撃応酬直後にも、両国は交渉継続の意向を完全には否定していません。オマーン仲介の「南北二経路案」が復活するかもしれません。ただしトランプ大統領は「イランとの停戦は少なくとも一時的に停止」と発言しており、緊張状態が数週間続く可能性が高いと見られます。
この間、船会社は喜望峰迂回か通常ルートかの判断を続け、戦争リスク保険(海が危ないときの上乗せ保険代)は高止まりが続きます。ブレント原油は7月10日終値で$76台、WTIも$71台で高止まりしています。3月ピーク時の$126には及ばないものの、しばらくは価格の上乗せが続く見込みです。
中期(1〜3か月)の焦点
中期的には、モジタバ・ハメネイ師が公の場に出てくるか、そして具体的な体制運営が誰の主導で進むかが焦点になります。「復讐」を掲げた新最高指導者が公の場に姿を見せないままだと、交渉の相手方が誰なのかが不明確なままで、覚書の修復が困難になります。
また、企業レベルでの動きとしては、石化サプライヤーからの価格改定通告が7月〜9月に相次ぐ可能性があります。3月クライシス時と異なり、代替調達が進んでいるので急激な値上げ幅は抑えられそうですが、じわりとした価格上昇は続く見通しです。
長期(3か月〜1年)の焦点
長期的には、ホルムズ海峡そのものへの依存度を下げる構造的な変化が加速していく見通しです。日本政府は米国からの原油輸入拡大を継続方針として掲げており、2025年11月には高市首相がトランプ大統領との会談で「日本において米国から調達する原油を備蓄する共同事業」の実現に言及しています。
「原油価格が3月クライシス前の水準($60台)に完全に戻るのは2027年後半」との予測も出ています(野村證券)。当面は「じわりとした値上げが続きつつも、パニックは避けられている」局面が続くとみられます。値上げの動向はこまめにニュースで確認しつつ、暮らしの中では大きく行動を変える必要はないのが現時点の見通しです。
大雨で川が増水した後の水位の戻り方に似ています。ピークは過ぎましたが、川の流れが完全に平常に戻るには時間がかかる。3月のように「一気に押し寄せる」ではなく、「じわじわと引いていく」段階です。落ち着いて、日々の情報にアンテナを立てておくことが、いま一番大事な備えかもしれません。
よくあるご質問
ホルムズ海峡が閉じると、なぜ日本の暮らしに関係するのですか
ホルムズ海峡は、日本が使う石油の大部分が通る海の道です。石油から作られる「ナフサ」という原料は、プラスチック製品、洗剤、化粧品、塗料、住宅用の断熱材、食品包装のトレーやラップ、農業ハウスなど、身近な多くの商品の元になっています。海峡が閉じると、船で運ぶ費用や保険代が上がって、こうした商品の値段に響くことになります。原油そのものは米国など他の国からの調達が進んでいるので3月のような品切れは起きにくくなっていますが、値段の面では影響が続きやすい状況です。
「ハメネイ師の息子が復讐宣言」というニュース、どう受け止めればいいですか
2月末に亡くなったハメネイ師の後を継いだ息子のモジタバ師が、7月11日の葬儀終了に合わせて米国とイスラエルに対する「復讐を誓う」と声明を出しました。翌日にはイランがコンテナ船を攻撃して海峡を再閉鎖と宣言し、米軍が空爆を再開しました。声明が実際の行動に結びついた形です。ただし全面戦争に一気に発展するかは不透明で、外交交渉と局地的な応酬が繰り返される見通しです。
身近な商品の値上げは、いつまで続きそうですか
野村證券などの見通しでは、原油価格が3月クライシス前の水準に完全に戻るのは2027年後半頃と予想されています。それまでは輸送費や保険代の上乗せ、代替調達に伴う品質微調整コストなどが続くため、プラスチック製品や日用品の価格は「じわりと続く値上げ」型で推移する見通しです。ただし3月のような急激な品切れ・大幅値上げは起きにくく、月々のお買い物のレシートが少しずつ厚くなる感覚での影響が中心と考えられます。今後の焦点は、モジタバ・ハメネイ新最高指導者が公の場に姿を見せ、対米交渉が再開できるかどうかです。
私たちにできる備えはありますか。慌てて買いだめすべきでしょうか
買いだめは推奨されません。日本には約8か月分の石油備蓄があり、政府も供給の安定化に取り組んでいます。3月クライシスの際、一部の商品で過剰な発注が起きて流通が混乱した事例がありました。経済産業省も「前年同月と同じ量を基本とした調達」を呼びかけています。普段どおりに使うことが結果的に一番の備えになります。値上げの動向は落ち着いて情報を確認するのが安心です。
なぜプラスチックパレット株式会社がこの記事を書いているのですか
当社はプラスチックパレット・再生樹脂・PPバンド・ストレッチフィルムなどの物流資材を扱う専門商社です。中東情勢はナフサ価格を通じて樹脂原料コストや物流資材の価格、お客様の調達計画に直結します。原料市況や地政学、サプライチェーンの動きを継続的に追いかけて、業界の方だけでなく暮らしの中で不安を感じている方にも役立つ形でお伝えしています。
主な情報源
- 時事通信「イラン最高指導者、米イスラエルに『復讐』 ハメネイ師葬儀終了で声明」2026年7月11日
- 時事通信「イランへの攻撃開始 商船襲撃への報復―米軍」2026年7月8日
- 時事通信「【やさしく解説】依然続くホルムズ海峡封鎖 あれもこれも石油製品、家計影響どこまで?」2026年5月1日
- 日本経済新聞「イラン革命防衛隊、ホルムズ再封鎖を宣言 米軍は再攻撃を開始」2026年7月12日
- 日本経済新聞「イランが商船攻撃、ホルムズ支配譲らず オマーン側ルートの通航阻止」2026年7月8日
- AFPBB News「米軍が新たにイラン空爆、民間コンテナ船への攻撃受け」2026年7月12日
- AFPBB News「革命防衛隊、ホルムズ海峡を封鎖『追って通知があるまで』」2026年7月12日
- CNN.co.jp「殺害されたハメネイ師の葬儀に大勢の市民、響く嘆きの声 イラン」2026年7月4日
- BBC News日本語版「ホルムズ海峡で複数の船舶に攻撃、日本船籍のコンテナ船も」2026年3月12日
- NHK「ホルムズ海峡付近でイランが商船2隻ミサイル攻撃 米メディア」2026年7月7日
- 資源エネルギー庁「中東情勢を踏まえた石油及び関連製品等に関する対応」2026年6月8日時点公表資料
- 経済産業省「中東情勢を踏まえた燃料油・石油製品の安定供給確保及び重要物資の安定的な供給確保の対応状況」令和8年4月30日
- 野村證券エコノミスト「日本の原油及びナフサの代替調達に関する現状把握・今後の論点Q&A」2026年7月10日
- 第一生命経済研究所 新家義貴「対中東輸出入が急減、代替調達は進むか」2026年5月21日
- 三菱UFJ銀行経営企画部経済調査室「経済情報:ホルムズ海峡の事実上封鎖と世界経済への影響」2026年4月3日
- ジェトロ ビジネス短信「石油統計速報では3月の原油輸入は前年同月比16.5%減少、経済産業省が代替調達を報告」2026年4月30日
- アイ・グリッド・ソリューションズ グリラボ「【26年イラン攻撃】ホルムズ海峡封鎖による日本への影響とは?」2026年6月
- プラスチックパレット株式会社「【2026年7月12日速報】IRGCがホルムズ海峡を再封鎖(専門版)」2026年7月12日
- プラスチックパレット株式会社「ナフサの『目詰まり』を一般向けにわかりやすく解説」2026年6月
- 本記事は2026年7月12日 10:00 JST時点で入手できた報道・公表資料に基づいて作成しています。その後の情勢変化は反映されていない場合があります。
- 本記事に記載した数値・依存度・稼働率などは各種公表資料の引用または概算であり、状況の変化に応じて更新される可能性があります。
- 本記事は投資や投機の判断を推奨するものではなく、原油関連銘柄などの売買を勧めるものではありません。投資に関する判断は各自の責任と、必要に応じて専門家の助言に基づいて行ってください。
- 英語一次資料や海外報道の内容を要約・翻訳した箇所については、翻訳や要約の限界により原文のニュアンスが完全には伝わらない可能性があります。より正確な把握が必要な場合は、末尾の情報源の原資料をご参照ください。
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