ニュースで聞く2026年半導体が生み出す「3つの新しい世界」をやさしく解説、
AIブームとイラン戦争がつながる本当の理由
2026年の夏、ニュースを見ていると不思議な光景に出会います。「経産省が1600億円もの助成を、イスラエルの半導体会社に決定」「マイクロソフトとグーグルが原発を再稼働してまでAIデータセンターを作る」「ウクライナのドローンが年産数百万機」「米国とイスラエルがイランを攻撃、AIが標的選定を担当」──これらは一見バラバラなニュースに見えますが、実はすべて「半導体」を通してつながっているのです。2026年、半導体は世界の在り方を根本から変えつつあります。この記事では、日本政府の4兆円助成、AIデータセンター建設ラッシュ、そしてドローンAI戦争という「3つの新しい世界」を、暮らし目線でやさしくお伝えします。
そもそも「半導体」って何がすごいの?
まず、この記事の主役である「半導体」の基本から始めましょう。半導体は、スマホ・パソコン・家電・車・工場・データセンター・戦場のドローンまで、電気で動くすべての機械の「脳」に使われる部品です。
半導体は、電気で動くすべての機械の「心臓」であり「脳」
もし今朝、あなたが目覚まし時計で起きて、スマホでニュースをチェックして、電子レンジで朝食を温めて、テレビで天気予報を見て、車で会社に行って、パソコンで仕事をした──と考えてみてください。これら全ての機械の中には、必ず半導体が入っています。半導体がなければ、これらは全て「ただの箱」になります。
半導体は「シリコン」という素材で作られる、爪の先ほどの小さなチップです。この小さなチップに、数十億〜数百億もの微細な電子回路が刻まれていて、それが電気の流れをコントロールすることで、機械は「考えて動く」ようになります。私たちが「AI」と呼んでいる技術も、突き詰めれば「大量の半導体で計算する」ことに他なりません。
2026年、なぜ半導体が「新しい世界」を生み出しているのか
2026年、半導体は3つの大きな変化を同時に生み出しています。それが、この記事のタイトルにある「3つの新しい世界」です。
| 新しい世界 | どんな変化? |
|---|---|
| ①経済安全保障の中核物資に | 日本政府が3拠点(ラピダス・TSMC・タワー)合計約4兆円もの助成を決定。半導体は「国家戦略物資」に格上げされた。 |
| ②AIインフラの物理化 | ChatGPTなどのAIが実際に動くには、巨大なデータセンターと大量の半導体が必要。米4大テックは2026年に約100兆円(約6,500億ドル)を投資。 |
| ③戦争の半導体化 | ウクライナは年産700-800万機のAIドローン、米・イスラエル対イラン戦は「第1次AI戦争」。半導体が戦争のあり方そのものを変えている。 |
これらの3つの変化は、それぞれ独立したニュースとして報じられていますが、すべて「半導体」という共通の糸でつながっています。以下の章で、それぞれ順を追ってやさしくお伝えしていきます。
日本政府はなぜ4兆円もの巨額助成を決めたの?
2026年、日本政府はラピダス・TSMC熊本・タワーセミコンダクターという3つの半導体拠点に対して、合計約4兆円もの助成を決定しました。4兆円は日本の国家予算の約3〜4%に相当する巨額です。なぜ、これほどの助成が必要なのでしょうか。
2026年、合計約4兆円の助成金が動く
合計約4兆円は、1980年代の日本半導体全盛期以来の大規模な政策転換です。それぞれ役割が違い、ラピダスは最先端AI用、TSMC熊本は車載・スマホ用、タワーはAIデータセンター用と、日本の半導体エコシステムを3拠点で構成する構造になっています。
3つの助成、それぞれの役割
3拠点は競争関係にあるのではなく、それぞれ違う役割を持つ相互補完的な構造です。以下、暮らし目線で「何に使う半導体を作るのか」をやさしく整理します。
3拠点は「レストランの三ツ星シェフたち」
日本の半導体3拠点を、レストランのシェフに例えてみましょう。ラピダス(北海道千歳)は「フランス料理の三ツ星シェフ」──超最先端の2nm半導体を作る、日本の技術復権を象徴する存在。世界と最先端で戦う役割です。TSMC熊本は「イタリアン・和食も作れる家庭料理の名店」──車載・スマホ・産業機器向けの、実用性重視の半導体を大量生産。私たちの日常を支える中核です。タワーセミコンダクター(富山・新潟)は「新業態のフュージョン料理店」──AIデータセンター向けの光通信用半導体という、比較的新しいけれど需要が急拡大する分野を担当。
3つのシェフがいることで、日本という「食のまち」全体が魅力的になるのと同じで、3拠点があることで日本の半導体エコシステムが充実するのです。
なぜ「今」4兆円もの助成が必要だったのか
4兆円もの助成が2026年に集中的に動いた理由は、3つあります。
- AI需要の爆発:ChatGPT・Claude等のAIサービスの裏にあるデータセンターで、大量のAI半導体が必要になっています。世界的な奪い合いが起きている状況で、日本も参戦しないと取り残されます。
- 依存構造を減らす:これまでAI用の先端半導体は、台湾TSMCや韓国SKハイニックスに大きく依存してきました。台湾で有事が起きれば世界のAI産業は事実上停止する──そんな地政学的リスクを踏まえて、日本国内の量産体制が急務です。
- 日本の半導体復権:1980年代、日本の半導体は世界シェア50%を超えていましたが、その後衰退。今回の助成は、AI時代に日本の半導体産業を再び強くする長期戦略の一部です。
こうした背景で、日本政府は「経済安全保障推進法」という法律の枠組みを使って、単なる産業補助金を超えた「10年継続生産・需給ひっ迫時の日本企業への優先供給」を条件とする助成を行っています。経済安全保障推進法は2022年に成立、2023年に完全施行された、日本にとって重要な物資を国内で安定的に確保するための新しい法律で、半導体は2022年12月に「特定重要物資」として指定されています。半導体は今や、経済だけでなく、国の安全保障にも直結する物資となったのです。
AIデータセンター建設ラッシュって何?
次に、世界で今起きている「AIデータセンター建設ラッシュ」の話です。マイクロソフト・グーグル・メタ・アマゾンの米国4大テック企業(専門用語で「ハイパースケーラー」と呼びます)は、2026年に合計約6,500億ドル(約100兆円)ものAIデータセンター投資を計画しています。
100兆円って、どのくらいの規模?
100兆円という金額を、日常の感覚に置き換えてみます。日本の1年間の国家予算は約114兆円ですから、4社合計の投資額は日本の国家予算にほぼ匹敵する規模。この巨額の投資が、ChatGPTやClaudeのような生成AIを動かすための「AIの家(データセンター)」を世界中に建てる動きに使われているのです。
特にアマゾン(AWS)は単独で2,300億ドル(約35兆円)、マイクロソフト・グーグル・メタも1,000〜1,500億ドル規模の投資計画を公表しています。これは2025年比で30〜40%増加した水準で、2027年もほぼ同じ水準の投資が続く見通しです。
建設ラッシュの裏にある「三重苦」
ただし、投資計画は華やかでも、実際の建設は大変です。米国では計画済み案件の約40%が遅延・中止に追い込まれるという異常事態が起きています。原因は「①電力不足・②資材不足・③熟練技術者不足」の三重苦。特に電力不足は深刻で、マイクロソフトは電力確保のためスリーマイル島原発の再稼働契約まで結んでいます。半導体・変圧器・配電盤は納期2〜3年に延伸し、熟練電気技術者も世界的に不足しています。日本国内でも産学官連携での人材育成が急務です(詳細は専門版記事へ)。
日本のデータセンター需要は3.5倍に
日本国内でも、AIデータセンター需要は急拡大しています。経済産業省の推計によれば、データセンターの電力消費は2024年の約19TWhから2034年に約66TWhへ3.5倍に拡大する見通しです。この需要を支えるため、北海道石狩・苫小牧、九州、東北への地方分散が加速しています。
北海道AI・半導体クラスターの形成
北海道は「冷涼な気候・電力余力・地震リスク低・再エネ豊富」の4条件を満たす拠点として注目され、ソフトバンク苫小牧、NTT石狩、グーグル札幌等の複数事業者の投資規模合計は1兆円超との報道もあります。2027年後半に量産開始予定のラピダス2nm工場と、複数のAIデータセンターが北海道内に集積することで、「北海道AI・半導体クラスター」の形成が進んでいます。
九州(福岡・熊本)ではTSMC熊本(JASM)と連携したAIデータセンター、東北ではグーグルが仙台で再生可能エネルギー調達を進めるなど、半導体・AI・再エネの3つが同時に地方で動くのが2026年日本の特徴です。
半導体関連企業の株価はどう動いているの?
2026年、半導体関連企業の株価は明暗が鮮明に分かれている状況です。AI用先端半導体・HBM関連は好調で、汎用DRAM・EV関連は苦戦、という二極化構造になっています。
「AI一極集中」の株価構造
| 企業 | 国 | 2026年前半の動向 |
|---|---|---|
| NVIDIA | 米国 | AI半導体で圧倒的シェア、時価総額約4兆ドル台で推移。2026年Q1決算で売上816億ドル(前年比+85%)。 |
| TSMC | 台湾 | 株価約434ドル前後、AI関連受注が全体を牽引、日本の熊本工場も稼働中。 |
| SKハイニックス | 韓国 | 2026年Q1決算で営業利益率72%(過去最高)、HBMシェア世界53%。ただし6月にNvidia Rubin報道で12%急落するなど変動も大きい。 |
| Samsung | 韓国 | 営業利益7.66兆ウォン(前年比+3%)、SKハイニックスとの差が広がる。HBM3E量産で追い上げ。 |
| 東京エレクトロン | 日本 | AI向け半導体装置需要で堅調、コータ・デベロッパー(塗布現像装置)世界シェア圧倒。 |
| アドバンテスト | 日本 | AI半導体テスタ需要で好調、NVIDIA・SKハイニックスの主要サプライヤー。 |
NVIDIAは「AIブームの中心」にいる会社
NVIDIAの時価総額約4兆ドル(約600兆円)は、日本の代表的な大企業の時価総額と比較しても圧倒的な水準です。1社でこれだけの価値があると評価されているのは、「AIを動かすには、まずNVIDIAのGPU(半導体)を買う必要がある」という状況が世界的に定着しているためです。
NVIDIAの半導体1個の値段は、1個数百万円という高額帯。1台のAIサーバーには8個以上のGPUが搭載され、ハイパースケーラーは何十万〜何百万個も購入します。まさに「AIブームの中心にいる会社」と言えます。
株価変動リスクも顕在化
ただし、AI関連銘柄も安泰ではありません。2026年6月23日にはNvidia Rubinのアーキテクチャ変更報道でSKハイニックス株が12%急落、7月にはホルムズ海峡再閉鎖で地政学リスクが再拡大するなど、突発的な変動リスクも抱えています。特に中東情勢によるヘリウム(半導体製造に必要なガス)の供給リスクと、AIデータセンターがイランのドローン攻撃で障害を起こす事例(3月AWS UAE・バーレーン)などが、市場に新しいリスクを織り込む要因となっています。
EV・パワー半導体はどうなっているの?
AI用半導体が好調な一方、EV(電気自動車)向けのパワー半導体は2026年に厳しい局面を迎えています。EV需要が世界的に失速し、需給ミスマッチが顕在化。日本のメーカーは大規模な再編に動いています。
EV需要失速の背景
2020年代前半に急拡大したEV市場は、2025年後半から2026年にかけて需要増加率が鈍化しています。原因は、①BYD(中国)・テスラ(米)の激しい価格競争、②欧米での補助金縮小、③充電インフラ整備の遅延、④電池コスト低下の頭打ち、⑤消費者の慎重姿勢。この結果、車載向けのパワー半導体(SiC=炭化ケイ素、GaN=窒化ガリウム、IGBT等)は、供給過剰・価格下落・在庫調整のトリプル逆風に晒されています。
パワー半導体は「電気の交通整理係」
パワー半導体は、電気の流れを効率的にコントロールする「交通整理係」のような役割を持ちます。EVでは、バッテリーからモーターへ電気を送るとき、モーターの回転速度を細かく調整するとき、家庭用コンセントから急速充電するときなど、様々な場面でパワー半導体が働きます。
パワー半導体は、SiC(炭化ケイ素)やGaN(窒化ガリウム)といった「次世代素材」を使うことで、より高効率で、より小型で、より高温にも耐えられる性能を実現します。日本メーカー(ローム・東芝・三菱電機・富士電機など)はこの分野で世界的な強みを持っています。
日本のパワー半導体メーカー再編
EV需要失速の環境下で、日本のパワー半導体メーカーは大規模な再編に動いています。
| 企業 | 2026年の動き |
|---|---|
| ローム | デンソーとの車載SiC提携協議、東芝・三菱電機とのパワー半導体統合検討 |
| 東芝 | ローム・三菱電機との統合協議、SiC・IGBT事業の集約可能性が浮上 |
| 三菱電機 | パワー半導体事業の分離・統合協議、SiC生産能力拡大投資も継続 |
| デンソー | ロームとの提携で車載SiC供給網強化、トヨタEV戦略と連動 |
中長期には3つの需要要因が復活
短期的には厳しいパワー半導体ですが、中長期的には需要拡大は不可逆とされます。3つの需要要因が同時に働くためです。
- EV・電動化:EV・ハイブリッド車の普及は続き、モーター制御・充電器等でパワー半導体需要が中長期で拡大。
- 再生可能エネルギー:太陽光発電・風力発電のパワーコンディショナ、蓄電池システムでパワー半導体需要が急拡大。
- AIデータセンター電源:AIサーバーの高密度化に伴う電源変換の高効率化で、SiC・GaN需要が加速。特にAIデータセンター向けは日本メーカーの新しい市場となる可能性があります。
ドローンAI戦争って何?「第1次AI戦争」とは?
ここからは、半導体が生み出す3つ目の新しい世界、「戦争の半導体化」についてです。2022年に始まったウクライナ・ロシア戦争と、2026年2月に始まった米・イスラエル対イラン戦は、世界で初めて「AI駆動型ドローン戦争」が本格的に運用された紛争として記録されています。
「なぜ半導体の記事でドローン戦争を扱うのか」と思われるかもしれません。実は、AI駆動のドローン1機には、AI推論用の半導体、通信用の半導体、電源制御の半導体などが大量に搭載されており、年産数百万機規模のドローンを支えているのが「小型で高性能・低消費電力の半導体」だからです。半導体の進化なしにはAIドローン戦争は成立しません。逆に言えば、AIドローン戦争の拡大は、半導体産業に対して新しい大きな需要を生み出しているのです。
ウクライナのドローン生産、桁違いの急拡大
ウクライナの軍事ドローン生産は、開戦当初の年間3,000〜5,000機から、2026年目標では700-800万機まで拡大しています。わずか4年で1,000倍以上の生産能力に達したのです。
4年で1,000倍以上に
ロシアもイラン製Shahed-136のライセンス版「Geran」を年間2〜2.5万機生産し、ウクライナの主要都市には毎月約5,000機のドローンが飛来する状況が続いています。
「6,000ドルのドローンで500万ドルの戦車撃破」
Google元CEOのエリック・シュミット氏は複数のインタビューで、6,000ドル(約90万円)のドローンで500万ドル(約7.5億円)の戦車2両を撃破できるとの指摘を行い、戦争経済の根本転換を示唆しています。従来の戦車・戦闘機・軍艦を主体とする戦争観が、AI搭載の小型で安価なドローンによって根底から覆されつつあるのです。
「軽自動車1台で高級スポーツカー2台を止める」ようなコスト転換
このコスト構造の転換を、身近な例に置き換えるとこうなります。「約90万円の軽自動車1台で、約7.5億円もする高級スポーツカーを2台まとめて止められる」──こんな圧倒的な費用対効果の逆転が、AIドローン戦争の実態です。
もちろん実際には、6,000ドルのドローンには、AI推論用の半導体、通信用の半導体、電源制御の半導体などが搭載されており、それらを支えているのが「小型で高性能・低消費電力・耐環境性の半導体」という技術基盤です。半導体の進化が、戦争のあり方そのものを変えているのです。
米・イスラエル対イラン戦「第1次AI戦争」
2026年2月28日、米国とイスラエルはイランに対して共同軍事作戦を開始しました。米国側の作戦名は「壮絶な怒り(エピック・フューリー)」、イスラエル側は「獅子の咆哮(シャアガト・ハアリ)」。Forbes等の主要メディアはこの紛争を、「米国にとって初の、AI・自律システム・商用テクノロジーが主役となった戦争」──『第1次AI戦争』として位置付けています。
Palantir Maven Smart System・AI迎撃ドローン「メロプス」
Palantir Maven Smart System(MSS):米国防のAIプラットフォーム。衛星画像・ドローン映像・レーダー・シギント(信号情報)を統合し、AIがオペレーターに標的分類・兵器推奨・攻撃パッケージをほぼリアルタイムで生成。作戦開始24時間で1,000以上の標的を攻撃する驚異的なテンポを実現しました。
AI迎撃ドローン「メロプス(Merops)」:Google元CEOエリック・シュミット氏が関与する技術。イラン製の安価な攻撃ドローン(Shahed-136など)を迎撃するAI搭載ドローンで、従来の迎撃ミサイルに比べて生産コストを400分の1(1/400)に抑えました。「安価なドローンには安価なドローンで対抗する」という戦争経済の転換を象徴する兵器です。
水上自爆ドローン(USV):2026年7月12日、米中央軍がイランの数十目標を攻撃した際に初の実戦投入。水上を無人で航行し、標的に体当たりして自爆する新型兵器です。
AIデータセンターが軍事目標に
「第1次AI戦争」の衝撃的な側面として、AIサービスの基盤となるデータセンターが実際の軍事目標となった点があります。イラン革命防衛隊は、Google・Amazon・NVIDIA等の米テック企業7社の周辺国拠点を「新たな標的」として指定。実際にAWS(アマゾンのクラウドサービス)がUAE(アラブ首長国連邦)とバーレーンの3つのデータセンターでドローン攻撃を受け、クラウドサービスに障害が発生しました(2026年3月)。
「ChatGPTが動かなくなる日」が現実に
もし、あなたが今日ChatGPTやClaudeにアクセスできなくなったら、どうしますか?その理由が「中東でデータセンターが攻撃されたから」だとしたら、驚きますよね。しかし2026年、これは既に起きています。AWSデータセンターがUAE・バーレーンで攻撃を受け、クラウドサービスに障害が発生したのです。
この事実が意味するのは、「AIサービスやクラウドサービスの安定性が、遠く離れた地域の戦争の影響を受ける」という新しい現実です。私たちが毎日使うAI・クラウドサービスの裏には、世界中のデータセンターがあり、そのデータセンターが地政学的リスクに晒される時代に入ったのです。
私たちの暮らしにどう影響しますか?暮らしでできる工夫は?
「4兆円助成」「100兆円AIデータセンター投資」「ドローンAI戦争」──これらは大きな話題ですが、私たちの暮らしにどうつながるのでしょうか。実は、身近な場面にじわじわと影響が及んでいく可能性があります。
暮らしへの4つのつながり
| 場面 | どうつながるか(Ch2-Ch6の総括) |
|---|---|
| AI・スマホ・家電 | すべて半導体で動いており、国内量産体制の整備でより安定・高速・低価格なサービスが期待できる。ただし中東情勢でクラウド障害の可能性もある。 |
| 電気代・エネルギー価格 | AIデータセンター需要拡大で電力消費は10年で3.5倍に。GX転換が同時進行、家庭の電気代にも影響。 |
| 地方経済の活性化 | 北海道千歳・熊本菊陽町・富山魚津/新潟妙高等、半導体関連投資で数百〜数千人規模の雇用創出が期待される。 |
暮らしの中でできる5つの工夫
個人の力で半導体政策や国際情勢を左右することはできませんが、暮らしの中で以下のような工夫が意味を持ちます。
- ニュースへの関心を保つ:「AIブームが半導体に、それが暮らしに」というつながりを意識するだけで、消費や投資の判断が変わります。今回のような大きな政策判断があるとき、「これは私たちの暮らしにどうつながるか」を考える視点を持ちましょう。
- 電気製品を大切に長く使う:スマホ・PC・家電を修理して長く使うことは、半導体需要への圧力を減らす効果があります。「壊れたら買い替え」ではなく「まず修理を検討」する習慣が、経済安全保障の下支えにもなります。
- 省エネで電力需給を支える:AIデータセンター需要拡大で電力需給がひっ迫する時代です。家庭での省エネ(LED照明・エアコン設定温度・待機電力削減)は、日本全体の電力インフラを守る一助になります。
- 地方産業への関心:北海道千歳、熊本菊陽町、富山・新潟の半導体復権は、地方経済の未来にも直結します。日本各地の産業を応援する意識、地方の特産品や商品を選ぶ意識が、日本全体の経済安全保障の土台を強くします。
- デジタルサービスへの「感謝」を忘れない:ChatGPT・Claude・地図アプリ・SNS──これらの便利なサービスの裏には、世界中の技術者・データセンター・半導体・原材料・戦争を含む地政学がすべてつながっています。「便利は当たり前ではない」と意識することが、レジリエントな暮らしへの第一歩です。
この記事では、2026年の日本で同時に進行している「半導体を巡る3つの新しい世界」を、暮らし目線で見てきました。①日本4兆円助成という経済安全保障、②100兆円AIデータセンター投資という物理インフラの拡大、③ドローンAI戦争という新しい戦争のかたち──これらは一見バラバラなニュースですが、すべて「半導体」という共通の糸でつながっています。
「AIブーム」「イラン戦争」「日本の半導体復権」「EV減速」「北海道のデータセンター」──これらの言葉がニュースで並ぶとき、その裏には「半導体で動く世界」の複雑な構造があります。私たちがスマホでChatGPTに質問するたび、その質問は世界中のデータセンターの半導体を経由し、そして同じ半導体技術が、遠く戦場でドローンとして飛び、戦争のかたちを変えています。
日本政府の4兆円助成は、こうしたグローバルなサプライチェーンを国内でしっかり結び直すための、大きな政策判断です。北海道千歳のラピダス、熊本菊陽町のTSMC、富山魚津・新潟妙高のタワーセミコンダクター──これら3拠点で、AI時代の中核部品が国内で作られる時代が2027-2028年に本格化します。それは1980年代の日本半導体全盛期以来の、大きな時代の転換点です。
私たちにできることは小さなことばかりですが、ニュースで聞く「半導体」「AI」「ドローン戦争」といった言葉を、少しでも身近に感じるきっかけになれば、この記事を書いた甲斐があります。半導体拠点で働く技術者さん、AIサービスを支えるデータセンター運営者さん、そして遠くで戦場に晒される人々──それを少しでも意識できるようになる、そんな小さな変化が、私たちの日常を少し豊かにしてくれるはずです。
本記事は「やさしく解説シリーズ」として、暮らしへの影響を中心にお伝えしました。日本の半導体4兆円助成の詳細、米4大テックの6,500億ドル投資の内訳、半導体株価のAI一極集中構造、ドローンAI戦争の技術詳細、Palantir Maven Smart Systemの分析など、より専門的な情報をご希望の方は、以下の記事をご覧ください。
▶ 2026年半導体が生み出す新しい世界/タワー社1600億円・ラピダス累計2兆3千億円・TSMC支援からAIデータセンター建設ラッシュ・半導体株価・ドローンAI戦争まで多面的に読み解く(専門版)主な情報源
- 日本経済新聞「タワーセミコンダクターの半導体生産に1600億円補助 光通信用」(2026年7月14日) ── 経済安保推進法認定、半導体計画への補助額として過去最大。
- Rapidus公式・経済産業省・日本経済新聞 ── 累計政府支援約2兆3千億円、2026年2月に政府1,000億円出資(黄金株)+民間32社1,676億円出資、2027年後半2nm量産開始目標。
- 経済産業省「TSMC熊本(JASM)への支援」 ── 累計約1兆2,560億円、第1工場28/22nm稼働中、第2工場16/12/6/7nmが2027年後半量産開始予定。
- マイクロソフト・グーグル・メタ・アマゾン各社2026年度CapEx公表 ── 米4大テック年間CapEx合計約6,500億ドル、AWS単独2,300億ドル超。
- NVIDIA・SKハイニックス 2026年Q1決算 ── NVIDIA売上816億ドル(+85%)・時価総額約4兆ドル台、SKハイニックス営業利益率72%(過去最高)・HBM世界シェア約53%、6月Nvidia Rubin報道でSKハイニックス12%急落。
- 日本経済新聞・Reuters「AIデータセンター建設遅延40%」(2026年前半) ── 電力・資材・人材の三重苦、原発再稼働・SMR投資加速。
- 経済産業省「日本のデータセンター電力消費推計」(2025年) ── 2024年19TWh→2034年66TWhで3.5倍拡大、地方分散加速。
- 日本経済新聞「ローム・東芝・三菱電機のパワー半導体統合協議」 ── 車載SiC・IGBT事業の再編検討、EV需要失速下での構造改革。
- ゼレンスキー大統領・ウクライナ国防省発表 ── ドローン生産2022年3,000-5,000機→2024年200-220万機→2026年700-800万機目標。
- Forbes JAPAN「第1次AI戦争──イラン攻撃は戦争をどう変えているか」(2026年4月1日) ── 米・イスラエル対イラン戦を「AI・自律システム・商用テクノロジーが主役の戦争」と位置付け、Palantir Maven Smart Systemの詳細分析。
- 日本経済新聞「米軍AI迎撃兵器メロプス・米7社標的化」(2026年3月) ── AI迎撃ドローン「メロプス(Merops)」が迎撃ミサイル1/400コストで機能、AWS UAE・バーレーン3拠点がドローン攻撃で障害、AIデータセンターが軍事目標化。
- 首相官邸・内閣官房・経済産業省 ── 赤澤亮正 経済産業大臣「中東情勢に伴う重要物資安定確保担当」兼務指定(2026年3月)、関係閣僚会議11回開催。