2026年5月1日出荷分を境に、建設資材・物流資材・包装資材を中心とした価格改定が雪崩のように進行している。引き金は中東情勢の緊迫化──ホルムズ海峡の事実上の封鎖により、原油・ナフサの調達環境が極端に悪化したことだ。本稿では、メーカー公式発表など一次情報で確認できた30社超の値上げ・出荷制限・受注停止情報を一元整理する。
・2026年5月1日出荷分を境に建設・物流・包装資材30社超で一斉値上げが進行中
・原因はナフサ高騰・中東情勢緊迫化・ホルムズ海峡封鎖による石油化学原料の供給不安
・改定幅は10〜80%と広範──ルーフィング40〜50%、断熱材40%、シンナー50〜80%が大幅
・価格上昇に加え、出荷停止・受注停止・納期遅延が同時進行
・「発注日」ではなく「出荷日」基準で新価格適用される事例が多く、4月発注済み案件にも影響
本記事は、メーカー公式発表・公式PDF・公式プレスリリースなどの一次情報で確認できた内容のみを掲載する。一部、業界紙(新建ハウジング、日経新聞、塗料報知等)で確認された情報を補足的に引用しているが、その場合も必ずメーカー側の公式コメントが含まれているケースに限定している。販売店ブログ、二次引用情報のみで確認された情報は除外している。
2026年5月1日値上げ|建設・物流・包装資材30社超 早見表
まず、2026年5月1日出荷分前後で価格改定・出荷制限・受注停止が発表された主要メーカーを一覧で示す。改定率は各社発表ベース、実際の適用価格は製品仕様・取引条件・出荷日・販売ルートにより異なる場合がある。
| 分類 | 発表元 | 対象製品 | 改定幅 | 実施時期 |
|---|---|---|---|---|
| 建設・住設 | タキロンシーアイ | 住設建材製品全般 | 20%以上 | 2026年5月1日出荷分〜 |
| インフラ | タキロンシーアイシビル | インフラ営業部 全製品 | 30%以上 | 2026年5月1日出荷分〜 |
| 採光・建材 | 三菱ケミカルインフラテック | 樹脂波板「ヒシ波」、ポリカ平板「ヒシカーボ」 | 10%以上 | 2026年5月1日出荷分〜 |
| サイン | 三和サインワークス | 取扱い全製品 | 20%以上 | 2026年5月1日出荷分〜 |
| 副資材 | ニップコーポレーション | Nプライマー、NプライマーGK | 個別案内 | 2026年5月1日出荷分〜 |
| 樹脂建材 | 信越化学工業 | シリコーン事業本部 全シリコーン製品 | 10%以上 | 2026年5月1日出荷分〜 |
| 建材 | ウッドワン | 建具・収納・床材・階段部材等のカタログ価格 | 個別案内 | 2026年6月22日受注分〜 |
| 塗料・シンナー | 日本ペイント | シンナー製品全般(追加値上げあり) | 75% +α | 3月19日発注分〜/4月16日追加 |
| 塗料・シンナー | 関西ペイント | シンナー製品全般・出荷統制 | 50%以上 | 2026年4月13日出荷分〜 |
| 塗料 | エスケー化研 | 水性・溶剤・粉体製品全般 | 10〜30% | 2026年5月11日出荷分〜(溶剤主力は4月21日〜) |
| シンナー | ロックペイント | シンナー類全般 | 30%以上 | 2026年4月1日出荷分〜(量制限3/25〜) |
| シーリング | アイカ工業 | SE-770シーリング ほか | 受注一時停止 | 2026年4月15日〜当面の間 |
| シーラント | KFケミカル | KFスペシャルシーラント | 受注一時停止 | 2026年4月15日〜 |
| ルーフィング | 田島ルーフィング | アスファルト系防水材料・ポリスチレン断熱材 | 40〜50% | 2026年5月1日納品分〜(4/10新規受注停止) |
| 防水材 | 日新工業 | 防水材料全般・アスファルトルーフィング | 出荷停止 | 2026年4月10〜13日〜 |
| 屋根材 | 旭ファイバーグラス | アスファルトシングル「リッジウェイ」「オークリッジ」 | 約30% | 2026年7月1日出荷分〜 |
| 断熱材 | カネカ | カネライトフォーム(押出法ポリスチレン) | 約40% | 2026年4月1日出荷分〜 |
| 断熱材 | デュポン・スタイロ | スタイロフォーム | 約40% | 2026年5月1日出荷分〜 |
| 断熱材 | 旭化成建材 | ネオマフォーム・ネオマゼウス | 約20% | 2026年5月7日出荷分〜(一部サイズ販売終了) |
| 断熱材 | パラマウント硝子 | グラスウール断熱材 全種 | 約15% | 2026年6月1日出荷分〜 |
| 断熱材 | マグ・イゾベール | グラスウール製品 全般 | 25%以上 | 2026年7月1日出荷分〜 |
| 断熱材 | フクビ化学工業 | 断熱材含む製品全般 | 個別案内 | 2026年4月以降 |
| 梱包・物流 | 川上産業 | プチプチ等の全製品 | 原反25%・加工20%・特殊35% | 2026年5月1日出荷分〜 |
| 包装・物流 | グンゼ包装システム | 収縮製品全般、ロールラベル製品全般 | 25〜30%以上 | 2026年5月1日出荷分〜 |
| 包装 | グンゼ | 包装用ナイロンチューブ、ラベル用収縮フィルム | 30%以上ほか | 2026年5月1日出荷分〜 |
| 産業フィルム | 大倉工業 | ラミネート製品、プロセスマテリアル製品 | 30%以上 | 2026年5月1日出荷分〜 |
| 食品包装 | エフピコチューパ | OPP防曇フィルム、サンバッグ等 | 25〜35%以上 | 2026年5月1日出荷分〜 |
| 印刷・包装 | 東京インキ | グラビアインキ関連製品全般 | 30%以上 | 2026年5月1日出荷分〜 |
| 産業繊維 | 東洋紡エムシー | 超高強力PE繊維「イザナス」「ツヌーガ」 | 5〜10% | 2026年5月1日出荷分〜 |
| 設備 | TOTO | ユニットバス・トイレ・衛生陶器全シリーズ | 受注停止→段階再開 | 2026年4月13日〜(4月20日段階再開) |
| 設備 | ハウステック | システムバスルーム | 納期回答停止 | 2026年4月15日〜 |
※上記は2026年5月2日時点で確認できた一次情報・公式発表をベースとした一覧。今後さらに値上げ発表が追加される可能性がある。本記事は随時更新する。
なぜナフサ高騰が全産業に波及するのか|構造分析
ナフサ(粗製ガソリン)は、石油化学産業の基礎原料である。原油を精製する過程で得られる軽質留分で、エチレン・プロピレン・ベンゼン・トルエン・キシレンといった主要な石化原料の出発点となる。
本来、日本は中東地域から原油の約9割を輸入しており、その大部分はホルムズ海峡を経由してタンカーで運ばれる。2026年2月末の米国・イスラエルによるイラン攻撃以降、ホルムズ海峡が事実上の封鎖状態に陥り、日本向けの原油輸送は深刻な遅延と数量減少に見舞われた。これに伴い、国産ナフサ価格指標は2026年5月1日時点で125,103円/㎘という歴史的高値に達している。
ナフサショックの全体像と、PP樹脂・ジェット燃料・医薬品・スマートフォン産業など他産業への波及については、関連記事「2026年ナフサショック|ホルムズ海峡封鎖が引き起こす供給網危機の全貌」で詳述している。
ナフサから派生する石油化学製品ピラミッド
ナフサは下流で次のように分岐する。それぞれが、今回値上げの対象となった製品群に直接対応する。
政府は当初、この状況を「サプライチェーンの目詰まり」と表現していたが、現場の認識は異なる。国内の石油化学プラントの多くは、海外メーカー(中東・東南アジア)からの原料輸入に依存する形に再編されており、ナフサだけ確保できても、添加剤・触媒・副資材が揃わなければ製造ラインは動かない。これは「目詰まり」ではなく、過去20年の国内製造業の空洞化に起因する構造問題である。
建設資材編|住設建材・インフラ資材・樹脂建材
住設建材製品全般|タキロンシーアイ
タキロンシーアイは、住設建材製品全般について、2026年5月1日出荷分より20%以上の価格改定を実施。同社は、ホルムズ海峡封鎖に伴うナフサの逼迫と価格高騰、原材料メーカー各社による供給制限・価格改定を理由として挙げている。住宅資材としては、雨どい、デッキ材、エクステリア製品、収納製品、勝手口ステップ等が対象。
インフラ営業部 全製品|タキロンシーアイシビル
タキロンシーアイシビルは、インフラ営業部の全製品について、2026年5月1日出荷分より30%以上の価格改定を発表。発表ではホルムズ海峡の実質的航行停止、ナフサ価格急騰、供給不安の長期化、物流費の大幅上昇、安定供給維持のための追加コストが理由として示されている。雨水ます、雨水浸透施設、グリーストラップ、研ぎ出し流し等のインフラ系製品が対象となる。
樹脂製波板・ポリカーボネート平板|三菱ケミカルインフラテック
三菱ケミカルインフラテックは、樹脂製波板「ヒシ波」シリーズとポリカーボネート平板「ヒシカーボ」全種について、2026年5月1日出荷分より10%以上の値上げを実施。中東情勢による資源輸送不安、ナフサ供給減少、原料価格と物流費の高騰が背景。採光資材としての需要が高い建材であるため、農業ハウス・倉庫・工場・店舗の屋根材まで広範囲に影響する。
サイン・看板関連製品|三和サインワークス
三和サインワークスは、取扱い全製品について、2026年5月1日出荷分より20%以上の価格改定を発表。同社は今後の状況次第では欠品や大幅な納期遅延が発生する可能性があるとしており、サイン業界・店舗開業案件への影響が懸念される。
シリコーン製品全般|信越化学工業
信越化学工業は、シリコーン事業本部が取り扱う全シリコーン製品について、2026年5月1日出荷分より10%以上の価格改定を発表。原油価格やナフサの高騰に加え、原油由来の原材料、製造用エネルギー、製品容器、包装資材、物流費の上昇を理由としている。半導体・電子部品・建材・自動車・医療など、多分野に波及する基幹素材の値上げ。
住宅設備の受注停止|TOTO・ハウステック
TOTOは2026年4月13日、ユニットバス・トイレ・衛生陶器全シリーズの新規受注を停止。原油由来のナフサからつくる素材を使う溶剤が不足したためで、4月20日から段階的に再開。ハウステックも4月15日からシステムバスルームの納期回答を停止している。住宅設備分野は、樹脂部品・接着剤・パッキン・配管に至るまで、ナフサ系材料への依存度が極めて高い。
塗料・シンナー・シーリング編|業界史上最大級の値上げ
塗料・シンナー業界では、2026年に入ってから前例のない規模の値上げと出荷統制が連続している。シンナーの主原料は石油化学製品(ナフサから精製される溶剤類)であり、ナフサ供給逼迫の影響を最も直接的に受けるカテゴリだ。
シンナー75%値上げ+追加値上げ|日本ペイント
日本ペイントは2026年3月19日発注分よりシンナー製品全般を約75%値上げ。さらに4月16日出荷分より塗料本体を10〜20%、シンナーをさらに15〜25%追加値上げと、わずか1カ月で連続改定を実施した。4月17日からは下塗り材16品種の受注を一時停止(〜4月25日、延長可能性あり)。
シンナー50%以上値上げ+出荷統制|関西ペイント
関西ペイントは4月2日、シンナー製品を4月13日出荷分から50%以上値上げすると発表。同時に、4月2日17時以降の受注分について、昨年4月度の出荷実績を上限とする出荷統制(アロケーション)を開始。状況によっては受注できない可能性も明示している。
製品全般10〜30%値上げ|エスケー化研
エスケー化研は4月7日、製品全般の価格を2026年5月11日出荷分から改定すると発表(溶剤系主力製品は4月21日出荷分から先行)。改定幅は水性製品15〜25%、溶剤製品20〜30%、粉体製品10〜15%。中東情勢の緊迫化による原油・ナフサ価格高騰、原料価格急騰と納入数量制限の増加が背景。さらに4月13日には溶剤下塗り・錆止めの受注停止、4月21日からは水性下塗材も受注一時停止に発展している。
シンナー30%以上+量制限|ロックペイント
ロックペイントは2026年3月25日出荷分よりシンナー類の量制限を開始、4月1日出荷分から30%以上の値上げを実施。海外製品の緊急輸入も検討中だが、現状では必要量の調達は極めて困難としている。
シーリング・シーラント類|アイカ工業・KFケミカル
アイカ工業はSE-770シーリング等について4月15日より受注を一時停止。KFケミカルもKFスペシャルシーラントの受注を停止。住宅・建築のシーリング材は、骨格工事の最終段階で必須となる材料であり、これらの供給停止は工期遅延に直結する。
塗装作業では、シンナーは塗料の希釈用だけでなく、塗装機械・道具の洗浄、施工現場の汚れ除去にも大量に使用される。シンナーが入手できなければ、塗料があっても塗装作業自体が停止する。2026年4月時点で、業者1社につきシンナー1缶までという制限を設ける販売店も出現している。
屋根材・防水材・断熱材編|住宅建築の根幹を直撃
ルーフィング受注停止+40〜50%値上げ|田島ルーフィング
田島ルーフィングは2026年4月10日17:30をもって、防水材・住宅建材の新規受注を全面停止。同時に、アスファルト系防水材料類とポリスチレン・ウレタンフォーム系断熱材について、5月1日納品分から40〜50%程度の価格改定を発表。RBボードはすでに4月1日から約40%値上げを実施済み。
床材については7月21日納品分から20〜30%値上げを予定するが、こちらは供給継続を前提としている。屋根の下葺き材であるルーフィングは、これが止まると建物を雨から守れず、工期が完全停止する性質の資材である。
防水材料全般 出荷停止|日新工業
日新工業は2026年4月10日からアスファルトルーフィング・フェルト類の出荷を停止。4月13日には防水材料全般の出荷停止に拡大。トップコートシンナー・キシレン・NSソルベントなど副資材の出荷制限・停止も4月1日から先行している。
アスファルトシングル屋根材|旭ファイバーグラス
旭ファイバーグラスは、アスファルトシングル屋根材「リッジウェイ」「オークリッジ」本体および専用部材(ヒップアンドリッジ、スターターシングル、リッジロール、シングル釘、シングル用接着剤)について、2026年7月1日出荷分から約30%の値上げを発表。当面の数量制限・新規案件受注見合わせの可能性も示している。グラスウール製品については4月1日より数量制限・納期調整を実施。
押出法ポリスチレンフォーム断熱材|カネカ・デュポン・スタイロ
カネカ「カネライトフォーム」は2026年4月1日出荷分より40%値上げ。「自助努力では限界に達しており、今後の安定供給のために値上げが不可避と判断した」と公表、追加改定の可能性も示唆。デュポン・スタイロ「スタイロフォーム」は2026年5月1日出荷分より40%値上げ、こちらも追加価格改定の可能性を明言している。
フェノールフォーム断熱材|旭化成建材
旭化成建材「ネオマフォーム」「ネオマゼウス」は2026年4月1日受注分より受注制限・納期調整を発動、5月7日出荷分より20%値上げ。一部サイズの販売終了も発表されており、設計変更を余儀なくされる現場が増えている。
グラスウール断熱材|パラマウント硝子・マグ・イゾベール
パラマウント硝子はグラスウール断熱材全種を2026年6月1日出荷分から約15%値上げ。マグ・イゾベールは2026年7月1日出荷分から25%以上の値上げと実績レベルの受注制限を発表している。
「家が、建たない。見通しすら、立たない」──ルーフィング・断熱材・接着剤・シーリングが揃って供給停止に陥る事態は、建築実務者の間で強い危機感を生んでいる。新築では工程の最初に必要な断熱材、屋根工事に必須のルーフィング、最終仕上げのシーリングと、工程のあらゆる段階に「材料が来ない」リスクが分散している。
物流資材・包装資材・フィルム・インキ編
プチプチ等の緩衝材|川上産業
川上産業はプチプチ等を含む全製品について、2026年5月1日出荷分より原反25%以上、加工品20%以上、特殊品35%以上の価格改定を実施。同時に、2026年4月20日以降の注文または5月1日出荷分以降について、昨年度の出荷量実績を出荷上限とする方針も示している。
収縮ラベル・ロールラベル|グンゼ包装システム
グンゼ包装システムは収縮ラベルなど収縮製品全般を25%以上、ロールラベル製品全般を30%以上値上げ(2026年5月1日出荷分〜)。原材料価格高騰と物流コスト上昇を背景に、早期引取り、必要最小限の発注、納期・数量調整への協力も求めている。
包装用ナイロン・ラベル用収縮フィルム|グンゼ
グンゼ本体は包装用ナイロンチューブ「ピュアラップ」を現行価格比30%以上、ラベル用収縮フィルム「ファンシーラップ/GEOPLAS」については素材別にPS=120円/kg、ハイブリッドスチレン=105円/kg、PET=80円/kg、オレフィン=120円/kgの値上げを発表(2026年5月1日出荷分〜)。
ラミネート・プロセスマテリアル|大倉工業
大倉工業は2026年5月1日出荷分より、ラミネート製品を現行価格比30%以上、プロセスマテリアル製品の原反製品を180円/kg以上、二次加工製品を350円/kg以上値上げ。中東情勢不安による原油・ナフサ調達環境悪化、価格急騰、原材料メーカー各社の価格改定が背景。
OPP防曇フィルム・サンバッグ|エフピコチューパ
エフピコチューパは2026年5月1日出荷分より、規格OPP防曇フィルム35%以上、規格OPPロール35%以上、サンバッグシリーズ25%以上、おにぎり・サンドイッチフィルム30%以上、その他フィルム30%以上の価格改定を実施。食品包装業界全体への影響が大きい。
グラビアインキ全般|東京インキ
東京インキはグラビアインキ関連製品全般について、2026年5月1日出荷分より30%以上の価格改定を実施。原油・ナフサ供給逼迫、原油市況・国産ナフサ価格の高騰、顔料・樹脂・添加剤・溶剤など主要原材料価格の上昇を理由としている。食品・日用品・医薬品の包装印刷を支える基幹原料であり、川下への影響範囲は極めて広い。
超高強力ポリエチレン繊維|東洋紡エムシー
東洋紡エムシーは超高強力ポリエチレン繊維「イザナス」と高強力ポリエチレン繊維「ツヌーガ」の原糸・加工品について、2026年5月1日出荷分より5〜10%の価格改定を実施。石油・ナフサ由来の原材料・副資材価格上昇、燃料費、物流・輸送費高騰が背景。漁網・産業用ロープ・防護ネット・スポーツ用品など特殊用途向け基幹素材。
影響が出やすい業種マップ
今回の価格改定は、単一メーカー・単一素材の問題ではない。ナフサを起点に、樹脂原料、添加剤、溶剤、フィルム、梱包材、建材、工業材料へと連鎖的に波及している。業種別の影響範囲を整理する。
自動車Tier1サプライヤーへの影響については、関連記事「トヨタ系Tier1の決算が示す『ナフサ6月懸念』──ホルムズ封鎖が突きつけた供給網の真の脆弱性」で詳述している。
価格だけでなく「供給制限」にも注意
今回の特徴は、単なる価格改定にとどまらず、受注停止・出荷統制・納期遅延・数量制限が同時並行で発生している点だ。実務上は「高くなる」だけでなく、必要な数量が希望納期で入らないリスクを念頭に置く必要がある。
確認できている供給制限・出荷統制の事例
川上産業は、5月1日出荷分以降について昨年度の出荷量実績を出荷上限とし、納期目安として原反14日以上、加工品21日以上を案内。ニップコーポレーションも、当面の間は昨年の月実績を上限とした注文数量を求めている。三和サインワークスも、今後の状況次第では欠品や大幅な納期遅延が発生する可能性があるとしている。
塗料業界では、関西ペイントが4月2日17時以降の受注分について昨年4月度の出荷実績を上限とする出荷統制を実施。日本ペイントは下塗り材16品種を4月17日13時から4月25日まで受注停止。エスケー化研は溶剤下塗り・錆止めを4月13日から、水性下塗材を4月21日から受注一時停止。アイカ工業はSE-770シーリングを4月15日から当面の間、受注停止としている。
屋根材・防水材では、田島ルーフィングが4月10日17:30から防水材・住宅建材の新規受注を全面停止し、再開時期は未定。日新工業もアスファルトルーフィング類・防水材料全般の出荷を停止している。
プラスチックパレットへの影響と代替戦略
今回のナフサショックは、当然ながらプラスチックパレット業界にも直撃している。新品プラスチックパレットの主原料はポリプロピレン(PP)またはポリエチレン(PE)であり、ナフサから派生する樹脂そのものだからだ。各メーカーから値上げ・供給制限の発表が相次いでいる。
しかし、ここで重要な点がある。「再生プラスチックパレット」は、今回の値上げ幅が新品パレットよりも小幅に抑えられている。容器包装リサイクル材(容リ材)ベースの再生原料は、ナフサ由来のバージン原料への依存度が低く、国内回収・国内再生のクローズドサイクルで動いているためだ。
輸出ワンウェイ用途、国内出荷で回収不可となる用途では、再生プラスチックパレットへの切り替えが値上げ影響を最小限に抑える有効な手段となる。さらに、即納性とコスト安定性を両立する選択肢として、中古プラスチックパレットも急速に注目を集めている。
ナフサショックに強い再生プラ・中古パレットへの切り替え
プラスチックパレット株式会社は、容リ材ベースの再生プラスチックパレットを中心に、輸出ワンウェイ・国内出荷向けの最適製品を取り揃えています。バージン原料ベースの新品パレットと比較して、値上げ幅が小さく、即納性に優れるのが特徴です。
発注・見積り時に確認すべき7つのポイント
建設・物流・包装資材を扱う企業は、以下の点を早急に確認する必要がある。特に、受注日基準ではなく「出荷日基準」で新価格が適用されるケースが多いため、4月中に発注済みでも5月以降の出荷で新価格になる可能性がある点に留意したい。
- 5月1日以降出荷分に新価格が適用されるか(受注日基準か出荷日基準か)
- すでに見積済みの案件にも価格改定が反映されるか(見積有効期限の確認)
- 発注済み品でも改定対象になるか(出荷日が5月以降か)
- 出荷数量の上限が設定されているか(昨年実績ベースのアロケーション)
- 納期回答・納期確定までの日数が延びているか(リードタイム延長)
- 代替品・仕様変更・簡易包装への切替が発生するか
- 次回以降の追加改定リスクがあるか(特に塗料・シンナー)
特に建設・物流・食品包装の現場では、案件単位で見積有効期限・出荷日基準・納入日基準を確認しておくことが重要だ。価格改定の多くは「受注日」ではなく「出荷日」を基準としているため、4月中に発注していても5月1日以降の出荷で新価格が適用される可能性がある。
FAQ|よくある質問
Q1. 2026年5月1日から値上げされる主な建設資材は何ですか?
住設建材(タキロンシーアイ20%以上)、インフラ関連資材(タキロンシーアイシビル30%以上)、樹脂製波板・ポリカーボネート平板(三菱ケミカルインフラテック10%以上)、サイン資材(三和サインワークス20%以上)、Nプライマー(ニップコーポレーション)、シリコーン製品(信越化学工業10%以上)、ルーフィング(田島ルーフィング40〜50%)、断熱材(カネカ・スタイロ40%、旭化成20%、グラスウール各社15〜25%)、塗料・シンナー(日本ペイント・関西ペイント・エスケー化研・ロックペイントなど)が対象です。
Q2. 物流資材・包装資材の値上げ対象は?
緩衝材・プチプチ(川上産業25〜35%)、ラミネート製品(大倉工業30%以上)、プロセスマテリアル製品、OPP防曇フィルム・OPPロール(エフピコチューパ35%以上)、サンバッグ(25%以上)、おにぎり・サンドイッチフィルム(30%以上)、収縮ラベル(グンゼ包装システム25%以上)、ロールラベル(30%以上)、ナイロン包装材(グンゼ30%以上)、グラビアインキ関連製品(東京インキ30%以上)、超高強力ポリエチレン繊維(東洋紡エムシー5〜10%)が対象です。
Q3. なぜナフサ高騰で建設資材や物流資材が値上がりするのですか?
ナフサは、ポリエチレン、ポリプロピレン、塩化ビニル、ポリスチレン、PET、溶剤、樹脂添加剤、接着剤など多くの石油化学製品の基礎原料です。そのため、ナフサ価格や供給が不安定になると、樹脂製建材、フィルム、梱包材、ラベル、インキ、接着・シーリング材料、塗料・シンナーなどに連鎖的に影響します。2026年は中東情勢の緊迫化とホルムズ海峡封鎖により、原油・ナフサ調達が極めて困難な状況にあります。
Q4. 今回の値上げは一度で終わりますか?
各社発表では、今後の国際情勢、原料価格、供給状況によっては追加の価格改定や納期・数量調整の可能性が示されています。実際、日本ペイントは3月19日のシンナー75%値上げに続き、4月16日に塗料本体10〜20%・シンナー15〜25%の追加値上げを発表しました。中東情勢が不透明な以上、5月1日改定後も継続的な確認が必要です。
Q5. 発注済みの商品も値上げ対象になりますか?
メーカーや製品によって扱いが異なりますが、今回の多くの発表は「2026年5月1日出荷分より」としているため、発注日ではなく出荷日を基準に新価格が適用される可能性が高い状況です。個別案件では必ず仕入先・メーカーに確認する必要があります。また、川上産業・関西ペイントなどは出荷統制(昨年実績を上限)を併用しているため、価格と数量の両面でのリスク確認が必要です。
Q6. プラスチックパレットや物流資材のコスト上昇を抑える方法はありますか?
輸出ワンウェイ・国内出荷など回収不可の用途では、容器包装リサイクル材(容リ材)をベースとした再生プラスチックパレットへの切り替えが、値上げ影響を最小限に抑える有効な手段です。バージン原料への依存度が低い再生材ベース製品は、今回の値上げ幅も他製品と比較して小幅に抑えられています。さらに、中古プラスチックパレットは価格安定性と即納性の観点から有力な代替手段となります。
Q7. ホルムズ海峡封鎖はいつまで続きますか?
2026年5月時点で、中東情勢の見通しは依然として不透明です。業界の中間シナリオでは「シンナー品薄は年内継続、20〜30%の値上げが定着」との予測も出ています。経産省は4月14日に石油化学メーカーに対する原料安定供給の緊急要請を発出しましたが、構造的な供給制約の解消には相当の時間がかかると見られています。
一次情報リンク一覧
本記事で参照した主要な一次情報・公式発表は以下の通り。価格改定の詳細、適用条件、対象製品、出荷制限の有無については、必ず各社の最新発表をご確認いただきたい。
- タキロンシーアイ|住設建材製品価格改定(公式PDF)
- タキロンシーアイシビル|インフラ営業部全製品価格改定(公式PDF)
- 三菱ケミカルインフラテック|採光材製品価格改定(公式PDF)
- 三和サインワークス|価格改定発表
- ニップコーポレーション|Nプライマー価格改定
- 信越化学工業|シリコーン製品価格改定
- 関西ペイント|中東情勢に伴うシンナー製品の出荷統制・価格改定
- 田島ルーフィング|新規受注停止のお知らせ
- 川上産業|プチプチ等価格改定・出荷制限
- グンゼ包装システム|収縮製品・ロールラベル価格改定
- グンゼ|包装用ナイロンチューブ・収縮フィルム価格改定
- 大倉工業|合成樹脂製品価格改定(公式PDF)
- エフピコチューパ|フィルム製品価格改定(公式PDF)
- 東京インキ|グラビアインキ関連製品価格改定(公式PDF)
- 東洋紡エムシー|高強力ポリエチレン繊維価格改定
- 大景化学|国産ナフサ価格指標推移
- 新建ハウジング|田島ルーフィング 防水材新規受注停止 受注再開時期未定
- 新建ハウジング|エスケー化研 5月11日出荷分から製品価格値上げ
- 新建ハウジング|田島ルーフィング アスファルト系防水材料・断熱材を値上げ


