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イラン情勢とコメ供給不足の可能性(2026年5月18日更新)|重袋・肥料・燃料高騰が招く「食糧流通」の危機
2026年5月18日更新

イラン情勢とコメ供給不足の可能性、
重袋・肥料・燃料高騰が招く「食糧流通」の危機

プラスチックパレット株式会社 初稿:2026年4月4日 最終更新:
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【5月18日 最新情報】コメ価格は下落転換——しかし包装コスト危機は続く 農水省(5/8発表)によるスーパーでのコメ5kg平均価格は3,796円(前週比46円安)で2週連続下落。令和7年産米の増産(+66万トン)・民間在庫急増(329万トン)が背景。一方、国産ナフサは5/16時点で1,043ドル/MT・116,858円/kL(為替158.45円)高止まり継続。帝国DB(5月発表)は「ナフサ不足を要因とした今夏以降の食品包装値上げラッシュの可能性」を指摘。千葉県市原市スーパーで購入制限、宮城県栗原市で「ゴミ袋の在庫がゼロに近い状況」(FNN取材)。コメの穀物危機は緩和も、包装・容器の危機はこれからが本番。
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【4月27日 情勢サマリー(継続中)】ホルムズ海峡 — 「二重封鎖」・停戦交渉は膠着 4月26日時点で通航隻数は平時比90%超減(1日3〜5隻)。IRGCは4月22日に外国籍コンテナ船2隻を拿捕。マクロン仏大統領が「数日〜数週間以内の再開」を表明したが米国は協議に不参加。Brent原油は105〜106ドル台で高止まり中。4月の中東以外からの代替調達は約90万kL(平時45万kLから倍増)、そのうち3分の1が米国産(経産省3/31発表)。5月に入り一定の緩和が続くが完全通航回復には至らず。
ホルムズ通航数(平時比)
▼90%超
1日3〜5隻(平時60〜140隻)
Lloyd's List / IMF Portwatch 2026/4/26
国産ナフサ価格(5/16)
116,858円/kL
1,043ドル/MT・為替158.45円
大景化学公表データ 2026/5/16
コメ小売価格(5/3週)
3,796円/5kg
2週連続下落・1月4,416円のピークから減少
農水省発表 2026/5/8
国内ナフサ民間在庫
約20日分
国家備蓄(原油)と別枠。ナフサは備蓄義務対象外
JPCA / 各種報道 2026/4
PE包装 値上げ幅(継続中)
+90〜120円/kg
食品包装今夏値上げラッシュの可能性(帝国DB 5月)
帝国データバンク 2026/5発表
国内エチレン稼働率(4月)
75.7%
国内12基中6基が減産継続(4/15時点)
JPCA 2026/4/15

ホルムズ海峡「二重封鎖」の最新状況(4月27日・5月18日現在)

4月4日の本記事初稿では「事実上の封鎖」と表現しましたが、その後の展開はより複合的な様相を呈しています。現在は「イランによる選別通航(非同盟国・中国・ロシア籍を黙認)」と「米CENTCOMによるイラン港湾封鎖」が並行する二重封鎖フェーズに移行しています。

4〜5月の主要動向タイムライン
2026年4月13日
米CENTCOMがイラン港湾・沿岸への出入り船舶を対象とした海上封鎖(Operation Epic Fury)を発令。即日6隻に引き返しを命令。
2026年4月17〜18日
イランが停戦期間中の「開放宣言」を発表し原油価格が11%急落したが、翌18日にはIRGCが砲撃を行い事実上撤回(Kpler, CNBC)。
2026年4月19〜20日
米海軍がイラン貨物船を拿捕。商業航行が再び事実上停止状態に(Bloomberg 2026/4/20)。
2026年4月22〜23日
IRGCがパナマ船籍MSC Francesca・リベリア船籍Epaminondasの2隻を拿捕、別の1隻に発砲(Al Jazeera 2026/4/23)。トランプ大統領が機雷敷設船舶への破壊命令を発出。
2026年4月25日
マクロン仏大統領が「数日〜数週間以内の再開を目指す」と表明(Reuters 2026/4/25)。米国の特使パキスタン訪問が直前に中止、イラン・米国直接協議は「予定なし」(Al Jazeera)。
2026年4月28日
出光興産の大型タンカー「出光丸」がホルムズ海峡を通過してオマーン湾の公海へ。イラン・米国間の衝突開始以来、日本に関係する船舶がペルシャ湾を脱出したのは初。サウジ・ジュアイマ積出港から原油約200万バレルを積載。
2026年5月上旬〜18日
「条件付き通航」段階が継続。商船拿捕・通航料主張は依然継続中で、樹脂・包装材・建材の供給不安は当面継続見通し(リフォーム補助金ナビ5月版)。中東以外からの代替調達は拡大中で、米国からのナフサ輸入は5月で前年比約4倍(月135万kL規模)まで拡大見込み。
隠れたリスク:機雷が「外せない」可能性

米国防総省が議会の機密ブリーフィングで示した推計では、イランが敷設した機雷の完全除去には約6か月を要する可能性があるとされています(PBS NewsHour 2026/4/25)。イラン自身が機雷位置を追跡できなくなっている可能性も指摘されており、政治的に開放を決定しても物理的に完全開放できないリスクがあります。

仏TotalEnergiesのプヤネCEOは4月24日、「イラン戦争が数か月続けば世界的なエネルギー不足が現実のものになる」と市場警鐘を鳴らしました(Reuters 2026/4/25)。

IEAの4月月報では2026年の世界石油需要を前年比日量8万バレルの純減と予測(コロナ禍2020年以来の需要縮小)。3月の世界石油供給は前月比日量1,010万バレル減の9,700万バレルまで落ち込み、IEAはこれを「史上最大の供給途絶」と位置づけました(IEA石油市場報告 2026/4/14)。

【5月18日 新情報】コメ価格は下落転換——しかし包装コスト危機は継続中

4月27日版の記事を執筆した時点でのコメ小売価格は4,416円(2026年1月・ピーク水準)でしたが、5月に入り大きな転換が確認されています。

コメ価格の下落転換(2026年5月時点)

農水省が2026年5月8日に発表した全国スーパー約1,000店舗のデータ(POS)によると、4月27日〜5月3日の5キロ当たり平均価格は3,796円(前週比46円安)で、2週連続の下落となりました(時事ドットコム 2026/5/8)。

さらに米穀安定供給確保支援機構が2026年5月11日に発表した4月分調査では、向こう3ヶ月のコメ価格見通し指数が28(7ヶ月連続で「安くなる」見通し)となっています。指数50が分かれ目で、28は強く「安くなる」を示します。

背景:令和7年産米の大幅増産(前年比+66万トン)により、民間在庫は329万トン(前年同月比+70万トン・27%増)まで積み上がっています(農水省「米穀の取引に関する報告」令和7年11月末時点)。集荷業者・卸売業者が損切り覚悟の「在庫放出」に動いており、6〜7月には3,500円台まで下落するとの見方も出ています(くらしのコンパス 2026/5)。

5月の重要な構造変化:「コメ価格下落」≠「食糧危機の解決」

ここで重要なのは、コメ価格の下落はあくまでも「令和7年産米の増産・在庫急増」によるものであり、ナフサ由来の包装コスト・輸送コストの高止まりという構造的問題は解決していないという点です。

帝国データバンク 2026年5月発表:食品包装値上げラッシュの予告

帝国データバンクが2026年5月に発表した分析では、2026年5月の飲食料品値上げ品目は70品目で、食品包装フィルムをはじめ石油由来の樹脂素材でコスト上昇圧力が顕著となっており、「食品包装・資材分野では強力な値上げ圧力がみられる」と指摘されています。

さらに同分析は「早ければ今夏以降、ナフサ不足を要因とした値上げラッシュの可能性がある」と警告しています(プレスリリース 2026/5)。これは精米袋・食品包装全体の値上げが「コメ価格下落」の恩恵を相殺しうることを意味します。

ゴミ袋・食品容器の品薄が現実化(2026年5月)

千葉県市原市のスーパーでは(2026年4月下旬、FNN取材)、担当スタッフが「入荷が滞ってしまって、今出せるのはこれが最後になる」と語り、1家族2点までの購入制限を実施。特に割安な45リットル50枚入りが真っ先に消えました。

宮城県栗原市の環境課は「在庫がゼロに近い状況」と説明しており、実際の供給不足が始まっていることが確認されています(暮らしの設備ガイド)。市原市公式は「例年と同程度の数量が安定的に供給されている」と発表しましたが、店頭から消えているのはナフサ不足報道を受けた買いだめが原因です。

食品容器にも拡大:豆腐パックメーカーからは1パックあたり1.6円の値上げ通知が届いており、中小メーカーでは年間300万円規模の負担増となる見込み。一部のプリンメーカーでは容器の調達困難を理由に5月上旬からの販売休止を検討するケースが出ています(2026年ナフサ不足影響調査)。

ナフサ危機の現在地——「政府は足りると言うのに、現場は在庫なし」

4月初稿時点では「価格暴騰」が主な論点でしたが、現在はより深刻な「流通の目詰まり」フェーズに突入しています。政府は「日本全体で必要量は確保できている」と繰り返しますが(赤沢経産相・閣議後記者会見 2026/4/3)、現場の実態とは乖離しています。

なぜ「在庫あり」なのに現場に届かないのか

野村総合研究所(木内登英, 2026/4/20)は目詰まりの構造を以下の4点に整理しています。

  1. マクロとミクロの乖離:ナフサは種類・グレードが多岐にわたり、「量は足りている」でも特定グレードが不足すれば既存設備では生産できない。
  2. 価格高騰による「売るほど赤字」:ナフサから生産するエチレンが赤字になるため、メーカーが減産・出荷制限を継続。
  3. 買い急ぎによる過剰確保:川中(商社・卸)の前倒し調達が流通量を需要家ベースで減らす。
  4. 川中のブラックボックス化:流通の多層構造で情報が不透明になり、政府の統計と現場の実態が乖離する。
4月15日・5月時点の主要動向

4月10日:高市首相が関係閣僚会議で、国家石油備蓄の約20日分を5月上旬以降に追加放出する方針を表明(Bloomberg 2026/4/9・NHK)。正式決定は4月15日(経産省プレスリリース)。5月1日から約580万kL(20日分)の放出を開始(ENEOS・出光・コスモ・太陽石油の4社)。

4月13〜20日:クボタケミックスが塩ビ管製品の新規注文受付を一時停止(sattu-ai-agent.com 2026/4/14)。5月7日出荷分からの値上げも発表(日本農業新聞 2026/4/16)。

4月15日:国内エチレン設備12基のうち6基が3月上旬から減産継続、3基が定期修理中で通常稼働は3基のみ(ロジスティクストゥデイ 2026/4/14)。

4月の中東以外からの代替調達:経産省によると、4月の中東以外からの到着量が約90万kL(平時45万kLから倍増)、そのうち3分の1(約30万kL)が米国産。5月には米国からの調達が前年比約4倍(月135万kL規模)まで拡大見込み。

5月16日:国産ナフサ価格は1,043ドル/MT・116,858円/kL(為替158.45円)と高水準が継続(大景化学公表データ)。4〜6月の国産ナフサ基準価格は1〜3月(6万円台半ば)の約2倍に上昇する見通し(日経5/15)。

重袋(じゅうたい)——「玄米はある、袋がないから出荷できない」

精米されたコメをスーパーの棚に並べるまでに、必ず通過しなければならない工程がある。それが「袋詰め」だ。5kg・10kgの消費者向けポリエチレン製米袋から、30kgの業務用クラフト重袋まで、コメの出荷は包装資材なしには成立しない。2026年春、この「最後の一工程」を支える重袋の供給網が、ナフサ危機によって上流から順に崩れつつある。

ポリエチレン樹脂メーカーの「+90〜120円/kg」値上げが意味するもの

重袋の主原料はポリエチレン(PE)樹脂、とりわけ低密度ポリエチレン(LDPE)だ。粘りがあり裂けにくいLDPEは、ナフサ→エチレン→ポリエチレンという化学変換を経て生産される。そのPE樹脂メーカーが2026年3〜4月に一斉に前例のない規模の値上げを実施・発表した。

PE樹脂メーカー各社の値上げ(2026年3〜4月)

東ソー(2026/3/23 ニュースリリース):低密度・直鎖状低密度・高密度ポリエチレン等、全PE製品を現行価格から+90円/kg以上値上げ。2026年4月1日納入分より適用。

旭化成(2026/3/31):PE全製品を4月1日出荷分から+120円/kg以上値上げ。国内PE市況のおおむね3割超の引き上げに相当する(note宮野宏樹 2026/4)。

三井化学(2026/3末):ポリエチレン・ポリプロピレンを+90円/kg以上値上げ。

日本ポリエチレン(2026/3/10・3/19):まず「中東情勢の緊迫化に伴う供給への影響について」を公示。その後「価格改定のお願い」を通知。

重袋メーカー(袋製造業)への波及——「価格改定」から「供給影響」へ
重袋・包装資材メーカー各社の動向(2026年3〜4月)

共同製袋(2026/3/10):「中東情勢の緊迫化に伴う当社製品の供給への影響について」を公式サイトに掲示。続く3/19に「ポリエチレン製品価格改定のお願い(予告)」を発表。価格改定前に供給影響の告知が先行した点が異例。

TOPPANホールディングス(2026/4/15 日経報道):包装資材の仕入れ値が2〜3割増加しているとして、顧客の食品・日用品メーカーへの値上げ打診を4月21日以降に開始すると表明。

JA全農(2026/4/16 日農・日経報道):農業資材メーカーからの20〜40%の値上げ要請を受け、農業用ハウスビニールなどナフサ由来農業資材を4月から順次値上げすると表明。精米袋(米袋)についても原料メーカーからポリエチレンの安定供給状況を継続確認中と明かした(日本農業新聞 2026/4/25)。

精米ラインを止める「最後の一袋」問題

精米工場の自動パッキングラインは、特定の厚み・強度・寸法のPEフィルムやFFS(Form-Fill-Seal)用ロールフィルムに対応して設計されている。このフィルムが1種類でも欠品すれば、ライン全体が止まる。手作業での代替を検討しても、2026年の深刻な人手不足下では即座の代替は難しい。

さらに深刻なのが「実績割り」の壁だ。日本マタイをはじめ大手重袋メーカーは、PE樹脂の調達難を受けて既存顧客に対しても「前年実績比での割り当て(実績割り)」を厳格化している。大手米卸・精米工場は前年実績枠で袋を確保できる一方、急な増産が必要な中小精米工場や新規顧客には袋が届かない。

政府も「目詰まり」を認定——しかしナフサ補助金はない

経産省の4月10日対応方針案(内閣官房公表)では、「ポリエチレン等の川下の製品在庫が国内需要の約2か月分ある」としつつも、「流通段階で目詰まりが発生している」と明記。しかし政府の燃料補助はガソリン・軽油等が対象であり、ナフサは対象外。石化メーカーが「売れば赤字」の状態でエチレン減産を継続する以上、PE→重袋→精米工場という川下への供給圧縮は、補助スキームが変わらない限り構造的に解消されない(NRI 木内登英 2026/4/20)。

「精米した米を包装する袋でも、原料メーカーからポリエチレンの安定供給状況を継続確認している」——JA全農が4月25日に明かしたこの一言が、重袋問題の核心を示している。確認が必要な状況にある、ということ自体が異常なのだ。(日本農業新聞 2026/4/25)

農業現場の二重苦——コメ価格の変化と担い手の消滅リスク

コメ価格の現状(2026年1〜5月)——転換点を迎えた価格動向

「令和の米騒動」(2024〜2025年)から続くコメ高価格は、2026年5月に転換点を迎えました。1月の4,416円をピークに2週連続下落で3,796円(5/3週、農水省5/8発表)となり、6〜7月には3,500円台との見方も出ています。しかしこの下落はナフサ由来コスト問題の解決ではないことに注意が必要です。コメ自体の増産・在庫増が原因であり、包装・輸送・肥料等のナフサ由来コスト高止まりは続いています。

農家が直面するコスト増(2026年春)

燃料:軽油は政府補助でも高止まり。大規模農家では毎日200L消費するケースもあり、前年比3割超のコスト増は年間数百万円規模の負担増に直結します(農家直販・岡元農場 2026年)。

肥料:化学肥料はナフサ・天然ガス由来の原料に依存。中東経由の運賃高騰と原料価格上昇が重なり「第2次肥料ショック」が進行中。農水省「肥料原料を巡る情勢」(2026/3)は紅海・ホルムズ周辺の航行リスクを明示しています。

包装資材:重袋コストの上昇が精米・出荷工程に波及。ナフサ由来のコスト増が農業バリューチェーン全体に広がっています。

生産者・現場の声(2026年3〜4月)
肥料高騰
JA全農・JA全中 自民党会合での発言(2026年4月16日)
秋に使用する肥料の値上げは必至。石油製品ナフサ由来の農業用資材でも価格高騰や供給制約が生じており、精米袋などにも値上げが広がっている
JA全中は同会合で、中東情勢が悪化・長期化した場合、燃料不足などで秋のコメ収穫作業に支障が生じかねないとの懸念を正式に表明。JA全農は6月以降の燃料供給が不透明であると報告した。(時事通信 2026/4/16)
燃料・肥料
農林水産業者(複数社) 帝国データバンク・企業アンケートより(2026年4月3〜7日調査)
農機具の燃料費の上昇と肥料の高騰の影響がある
帝国データバンクが1,686社を対象に実施したアンケートで、「マイナス影響がある」と回答した農林水産業者の声として収録。全業種の96.6%が「マイナス影響あり」と回答しており、農業・農林水産分野でも同様の傾向が確認されている。(帝国データバンク 2026/4/9)
重袋・包装資材
パルプ・紙・紙加工品製造業者 帝国データバンク・企業アンケートより(2026年4月3〜7日調査)
原材料としてのポリエチレン、各種プラスチックフィルム、溶剤などの調達難や価格上昇が大きく影響している。原材料の入荷がないと、製造が不可能となり、稼働停止となる。顧客の生産活動も滞ることが予想され、顧客の倒産リスクが増大している
コメの重袋・食品包装材を製造する川上業者に近い事業者の声。ポリエチレン製の重袋はこのサプライチェーンの最下流に位置しており、川上の製造停止は精米工場の出荷に直結する。(帝国データバンク 2026/4/9)
「農家が降りたら、中東が平和になっても田んぼは戻らない」

農水省の米生産費統計(2025年度版見込み)によれば、10アールあたりの全算入生産費は約91,000円。コメ小売価格が5月に3,796円まで下落しても、包装・輸送・肥料・燃料のコスト増が農家手取りを圧迫し続けており、特に高齢農家を中心に春の作付けを断念する動きが加速しています。4月に作付けを見送った農地は、秋に収穫をもたらしません。

コスト削減のために肥料投入量を減らせば、1反あたり10〜20%の収穫量減少リスクがあり、品質の低下(一等米比率の低下)が農家の手取りをさらに圧迫する「負のスパイラル」が懸念されます。また、離農によって発生した耕作放棄地は一度荒れると水田に戻すことが極めて困難であり、これは日本のコメ生産基盤に対する「不可逆的なダメージ」です。

農機具の「血液」が干上がる——重油・エンジンオイルの供給危機

田植え機・トラクター・コンバインは、春の作付けから秋の収穫まで農業の根幹を担います。これらのディーゼル農機は軽油(燃料)とエンジンオイル(潤滑油)なしでは1時間も動けません。2026年春、この「農業の血液」ともいえる2種の油脂類に同時に異変が起きています。

① 軽油・重油の高騰と6月以降の供給不透明

政府はレギュラーガソリンを170円程度に抑制する緊急的激変緩和措置を投入していますが、農業用のA重油は別途の支援スキームです。JA全農は4月16日の自民党会合で「6月以降の燃料供給が不透明」と正式に表明しており(時事通信 2026/4/16)、秋のコメ刈り取り・乾燥作業に必要な燃油の確保に懸念が高まっています。大規模農家では日量200Lを消費するケースもあり、燃料費の前年比3割超増は年間数百万円規模の追加負担です。

② エンジンオイル(潤滑油)の「三位一体不足」

エンジンオイルの供給危機は、単純な原油高に止まりません。ベースオイル・添加剤・容器(ポリ缶)の三者が同時に逼迫するという、過去に例のない複合的な不足が進行しています。

供給危機の構造(2026年4月時点)

ベースオイルの逼迫:エンジンオイルの主成分(約80〜90%)であるベースオイルは中東の大型製油所への依存度が高い。ホルムズ海峡封鎖により調達が著しく制約されており、ENEOSをはじめ国内主要メーカーが割当販売(実績枠制)に移行した(ミカド商事 2026/4/10)。

添加剤の迂回輸送:エンジンオイルの性能を決定づける添加剤(ルーブリゾール・インフィニアム等)は欧州から輸入されるが、紅海・ホルムズ情勢の連動でスエズ運河が使用困難となり、喜望峰経由への航路変更を余儀なくされている。輸送日数は+2週間〜1か月、運賃は3倍以上(TAKUMIモーターオイル 2026/4)。

ポリ容器の欠乏:オイルを充填するポリエチレン製容器もナフサショックの直撃を受けており、「ベースオイル・添加剤・容器の三位一体の不足」が5月のオイル製造量を前年の100%を確保するのがぎりぎりの状態に追い込んでいる(ミカド商事 2026/4/22)。

③ DH-2規格オイルの供給停止——農機の「DPF詰まり」リスク

2015年以降、25.84馬力以上のディーゼル農機には排ガス規制に対応したDPF(ディーゼル微粒子捕集フィルター)が義務化されており、これにはJASO DH-2規格のエンジンオイルが必須です。DH-2以外のオイルを使い続けると、DPFが目詰まりを起こし最悪の場合は部品一式交換(数十万円規模)に至ります(日本農業機械工業会)。

業界当事者
ミカド商事株式会社(エンジンオイルメーカー) オイルマニアブログ(2026年4月10日)
今回の状況はその比ではなく、異次元のレベルの深刻さ。今は「価格よりも原材料の確保を優先せざるを得ない」状況
製油業界の実務者として現状を公開。4〜5月の価格改定に続き夏(3Q)にも再値上げの可能性を予告。通常は1か月前に見積もりが来るベースオイルが「遡って価格改定されるケースすら発生している」と明かした。

農機整備タイミングと危機の重複:収穫期までに手を打てるか

農機のエンジンオイル交換は年1〜2回、春の作業開始前(田植え前)と秋の収穫後が一般的とされています。2026年は春の交換タイミングがオイル供給の最混乱期と完全に重なっており、オイルが確保できなければ農機を適切にメンテナンスできないまま作業シーズンを迎えることになります。

物流コスト高騰と「目詰まり」の連鎖

ナフサ危機レポート(2026/4/14)によれば、2026年3月に軽油価格は1か月で28円/L上昇。燃料費が前年比3割上昇した場合、日本の運輸業者の約25%が赤字に転落すると試算されています。

さらにIEAは4月の月報で、物流への影響はコスト上昇にとどまらないと指摘しています。燃料高が輸送コストを押し上げ、原料制約が生産を落とし、荷動きが縮む。積載率と稼働率が下がれば固定費の吸収力も落ちる——物流はコスト増だけでなく、数量減による収益悪化にも直面している(ロジスティクストゥデイ 2026/4/14)。

コメのような「重量物・低単価品」はこの構造変化の直撃を受けやすく、地方産地からの長距離出荷が目詰まりを起こすリスクが高まっています。コメ小売価格が下落傾向にある中で物流コストが高止まりすれば、産地・卸の収益はさらに圧迫されます。

今後のシナリオ——夏・秋の収穫期を見据えて(5月18日更新)

コメ価格は「令和の米騒動」から転換しつつありますが、食糧流通全体としての危機は形を変えて継続中です。3つのシナリオを5月18日時点でアップデートします。

A
夏場の食品包装値上げラッシュ

帝国データバンク(2026/5発表)が「早ければ今夏以降、ナフサ不足を要因とした値上げラッシュの可能性がある」と指摘。コメ価格自体は下落転換しても、袋・パック・容器のコスト増が食品全体の値上げに転嫁される「第2波」が来ます。千葉・宮城でのゴミ袋品薄、豆腐パック+1.6円/個、プリンメーカー5月上旬販売休止検討はその前兆です。

B
2026年産米の作付け断念・収穫量低下

令和7年産米は豊作でも、燃料・肥料の二重高騰による春の作付け断念が加速。4月に作付けを見送った農地は秋に収穫ゼロ。エンジンオイルDH-2欠品で農機が適切にメンテナンスできないまま秋の収穫期を迎えるリスクも残ります。2025年産(700万トン前後)に続き、2026年産米の市場流入量が計画を下回るシナリオが現実味を帯びています。

C
価格二極化——「安すぎるコメ」と「袋が高い」の逆転

令和7年産米の損切り販売でコメ価格がさらに下落する一方、精米袋(PE袋)・輸送費・エネルギーコストが高止まりを続けた場合、「コメ自体は安いが、袋に詰めて店まで運ぶコストが高い」という構造的矛盾が精米業者・卸の収益を直撃します。中小精米工場の廃業が進めば、コメ自体は増産でも「精米・流通のボトルネック」による実質的な棚不足が再発するリスクがあります。

参照エビデンス一覧(2026年5月18日現在)
ホルムズ海峡・地政学
  • global-scm.com「ホルムズ海峡危機:情勢と実務リスク(2026年4月26日更新)」— 通航隻数・Brent原油・二重封鎖の構造を整理。4月25〜26日の外交動向含む。
  • Bloomberg「ホルムズ海峡、事実上停止状態」(2026/4/20)— 米イラン船拿捕後の商業航行停止を報道。
  • Al Jazeera ライブブログ(2026/4/23・25)— IRGCによる船舶拿捕・マクロン大統領発言・米国の交渉姿勢。
  • PBS NewsHour(2026/4/25)— 米国防総省の機雷除去に「約6か月」との見積もりを報道。
  • Reuters(2026/4/25)— TotalEnergiesプヤネCEOの「世界的エネルギー不足警告」。
  • bois創建(2026/04/28・04/29)— 出光丸4/28ホルムズ海峡通過(日本関連船として初)を報道。
  • 経産省プレスリリース(2026/4/15、4/24)— 国家備蓄石油第2弾の放出。約580万kL(20日分)、5/1から順次放出。
  • 経産省(2026/3/31発表)— 4月の中東以外からの代替調達は約90万kL(平時45万kLから倍増)、米国産は3分の1(約30万kL)。5月に米国からの調達が前年比約4倍(月135万kL規模)まで拡大見込み。
IEA・原油需給統計
  • IEA「石油市場報告」(2026/4/14)— 2026年世界石油需要を前年比日量8万バレル純減予測(2020年以来の縮小)。3月供給は「史上最大の供給途絶(日量1,010万バレル減)」と位置づけ。
  • ロジスティクストゥデイ「石油需要がコロナ以来の減少転換」(2026/4/27)— IEA月報の内容を物流視点で解説。
ナフサ・石油化学・重袋
  • 東ソー株式会社ニュースリリース「ポリエチレン樹脂の価格改定のお知らせ」(2026/3/23)— PE全製品を+90円/kg以上、4月1日納入分より値上げ。
  • 旭化成(2026/3/31)— PE全製品を+120円/kg以上、4月1日出荷分より値上げ。
  • 日本ポリエチレン株式会社公式サイト(2026/3/10・3/19)— 「中東情勢の緊迫化に伴う供給への影響について」および「価格改定のお願い」を順次公示。
  • 共同製袋株式会社公式サイト(2026/3/10・3/19)— 「中東情勢の緊迫化に伴う当社製品の供給への影響について」「ポリエチレン製品価格改定のお願い(予告)」を公示。
  • 日本農業新聞(2026/4/16・4/25)— 精米袋のポリエチレン安定供給をJA全農が継続確認中との情報を報道。
  • 日本経済新聞(2026/4/25)— JA全農が農業資材値上げへ ナフサ高、仕入れ原価の2〜4割上昇受け。
  • 内閣官房「中東情勢を踏まえた燃料油・石油製品の安定供給確保及び重要物資の安定的な供給確保のための対応方針(案)」(2026/4/10)— ポリエチレン等の川下の製品在庫が国内需要の約2か月分あるとしつつ、流通段階の目詰まりを認定。
  • 野村総合研究所・木内登英「石油製品の流通の目詰まりはなぜ生じたのか」(2026/4/20)— 目詰まりの4要因を整理。
  • 帝国データバンク(2026/4/21)— 「ナフサ不足で国内製造業の約30%に調達リスク、4万社超が影響」。
  • 日本経済新聞(2026/4/15)— TOPPANホールディングスによる食品包装材値上げ打診開始(仕入れ値2〜3割増加)の報道。
  • 帝国データバンク プレスリリース「飲食料品値上げ、ナフサ供給不安でラッシュ再燃の兆し」(2026/5発表)— 2026年5月の飲食料品値上げは70品目。食品包装・資材分野で「早ければ今夏以降、ナフサ不足を要因とした値上げラッシュの可能性がある」と指摘。
  • 大景化学「ナフサ価格推移表」(2026/5/16時点)— ナフサ1,043ドル/MT・為替158.45円・国産ナフサ価格指標116,858円/kL。
  • 暮らしの設備ガイド「ナフサ不足でゴミ袋が品薄に」(2026年)— 千葉県市原市スーパーで1家族2点制限(FNN取材)、宮城県栗原市で「在庫がゼロに近い状況」(環境課)。
  • 2026年ナフサ不足影響調査(2026年5月)— 豆腐パック1パック+1.6円値上げ通知、プリンメーカーが容器調達困難を理由に5月上旬からの販売休止を検討。
農業・コメ・食糧安全保障
  • 農林水産省「米の相対取引価格」・「肥料原料を巡る情勢」(2026/3)— コメ流通価格・肥料原料の中東依存リスクを確認。
  • 農林水産省「米生産費統計(2025年度版見込み)」— 10アールあたり全算入生産費 約91,000円のデータ。
  • JA全中・JA全農(2026/4/16 自民党会合)— 秋肥値上げが必至、6月以降の燃料供給が不透明、精米袋への値上げ波及を正式表明。時事通信が報道。
  • 帝国データバンク「中東情勢による原油価格高騰・供給不安の影響アンケート」(2026/4/9)— 1,686社調査。農林水産業者の「燃料費・肥料高騰の影響」、パルプ・紙業者の「ポリエチレン等の調達難で稼働停止リスク」を収録。96.6%が「マイナス影響あり」と回答。
  • ミカド商事株式会社「オイルマニアブログ」(2026/4/10・4/22)— ベースオイル・添加剤・容器の三位一体不足の詳細解説。ENEOSの割当販売移行、DH-2出荷停止の経緯を報告。
  • TAKUMIモーターオイル「DH-2規格完全解説」(2026/4)— 添加剤の喜望峰迂回と輸送日数3倍・運賃3倍超の実態。農機DPFへの影響を解説。
  • 一般社団法人日本農業機械工業会「農機用オイル」— DH-2規格の農機への必要性とSTOU/TOU規格の基礎情報を提供(常設資料)。
  • 農林水産省(2026/5/8発表)— 全国スーパー約1,000店舗での4月27日〜5月3日のコメ5kg平均価格は3,796円(前週比46円安・2週連続下落)。時事ドットコム(2026/5/8)が報道。
  • 米穀安定供給確保支援機構(2026/5/11発表)— 向こう3ヶ月のコメ価格見通し指数が28(7ヶ月連続で「安くなる」見通し)。指数28は強く「安くなる」を示す。
  • オイシルメディア「コメ価格が4週連続下落!令和の米騒動は転換点へ」(2026/3)— 令和7年産米の大幅増産(+66万トン)・民間在庫329万トン(前年比+70万トン・27%増)。
  • マイナビ農業「2026年、コメ相場は崩れるのか?令和の米騒動の終わりを読む」(2026年1月)— 令和8年産米の生産732万トン予測・損切り販売見通しを整理。
  • くらしのコンパス「コメ価格が下落!向こう3ヶ月『安くなる』見通し」(2026/5)— 6〜7月には3,500円台まで下落するとの見方。
  • 岡元農場(2026年)— 農家視点の燃料コスト増・米価高止まり・ホルムズ海峡封鎖の影響を農家当事者が解説。
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