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ニュースで聞く「2026年ガソリン・ナフサ3重ショック」をやさしく解説、ホルムズ再封鎖と米備蓄枯渇とロシア製油所炎上が同時に起きる本当の理由 | プラスチックパレット株式会社
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ニュースで聞く「2026年ガソリン・ナフサ3重ショック」をやさしく解説、ホルムズ再封鎖と米備蓄枯渇とロシア製油所炎上が同時に起きる本当の理由

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この記事の結論

世界の石油は「中東から運ぶ→精製する→備蓄する」の3段階で支えられています。2026年夏に突入する今、この3段階がすべて同時に詰まる前代未聞の事態に。ホルムズ海峡が6月20日に再封鎖ロシアで製油所が炎上米国の備蓄が1983年以来最低。中国・インドは備蓄や割安原油で凌ぐ中、日本のガソリンやスーパーの値上げが続く本当の理由を、暮らし目線でやさしく解説します。

1. ニュースで聞く色々な言葉、実は全部繋がっています

毎日のニュースで「中東情勢」「ホルムズ海峡が封鎖」「ロシアの製油所が攻撃された」「アメリカの石油備蓄が減っている」といった言葉を、バラバラに耳にしませんか?実はこれらは別々の話ではなく、すべてが繋がって、今、日本に住む私たちの暮らしのモノの値段を押し上げています。プラスチックパレット株式会社では以前「ナフサの目詰まりをやさしく解説」する記事も公開しましたが、本記事ではさらに広い視点で、今起きている3つのショックの全体像を整理します。

世界の石油事情を「家のごはん作り」に例えると
世界の石油事情は、ご家庭のごはん作りに例えるとわかりやすくなります。
「材料の仕入れ」=中東で原油を掘ってタンカーで世界に運ぶ
「調理(精製)」=各国の製油所でガソリンや原料に加工する
「非常食の備蓄」=もしもの時のために国家備蓄を持っておく
普通は「仕入れができない時は備蓄を取り崩す」「調理が止まったらお隣から借りる」など、どこかが助け合って成り立ちます。ところが世界の石油事情では今、仕入れ・調理・非常食の3つが同時に苦しくなっているのです。本記事ではこの「ごはん作り」の例えを使いながら、各章を見ていきます。

同時に起きている3つのショック

Shock 01
🌊
ホルムズ海峡
『再封鎖』
材料の仕入れ路がふさがれた状態。6月20日にイランが再封鎖を宣言。
Shock 02
🔥
ロシアの
製油所炎上
調理場(製油所)が次々に攻撃されて壊れている状態。産油国なのにガソリン輸入。
Shock 03
📉
米国の備蓄
1983年以来最低
非常食の備蓄が底をつきかけている状態。1973年オイルショックを教訓に作った仕組みが今、機能不全に近づいています。
第1章のポイント
  • 世界の石油事情は「仕入れ→調理→非常食」の3段階で支えられています。
  • 2026年夏、この3段階がすべて同時に苦しくなっています。
  • これは世界で初めての、3つ重なるショック(トリプルショック)です。

2. 1つ目のショック、ホルムズ海峡の「再封鎖」

「ごはん作り」の材料の仕入れ路(中東の海の道)

ホルムズ海峡は、中東の真ん中にある狭い海の道です。一番狭い所では幅が約34km、地図で見ると親指と人差し指の間くらいの細さです。サウジアラビア、UAE、カタール、クウェート、イラク、イランといった中東の産油国は、ここを通らないと外の世界に原油を運び出せません。

日本に運ばれる原油の約95%(経産省・帝国データバンク調査)、プラスチック製品の原料になるナフサの74%が、この海峡を通って届いています。中でも輸入元の内訳はUAEが43.3%、サウジアラビアが39.4%、クウェートが6.2%、カタールが4.2%(2025年実績)。UAEとサウジの2カ国だけで日本の原油輸入の8割以上を占めるほどの依存度です。ですからホルムズ海峡が閉じると、日本では、ガソリン代だけでなく、スーパーで売られる食品の包装、レジ袋、洗剤の容器、化粧品のプラスチック部品、衣服の合成繊維まで、暮らしのありとあらゆるモノの値段に影響が出てしまいます。

2026年に起きたこと、紙の上の停戦と48時間後の再封鎖

2026年2月28日、米国とイスラエルがイランを攻撃し、戦争が始まりました。直後にイランがホルムズ海峡を事実上の封鎖状態にし、通る船舶の数は一時ゼロになりました。その後、約3ヶ月半の交渉を経て、6月14日にパキスタンの仲介で「イスラマバード覚書」という暫定的な停戦の枠組みが合意されました。

6月17日にG7サミット最終日のフランスで正式に署名され、18日に発効。覚書には「60日以内に最終合意する」「ホルムズ海峡で60日間は通航料を取らずに自由に通らせる」といった重要な約束が盛り込まれました。実際、覚書発効の翌日には商船25隻がホルムズ海峡を通過し、約2ヶ月ぶりの最多を記録。ただし、紛争が起きる前は1日に約120隻が通っていたので、25隻はその約2割の水準にとどまります。完全な正常化からは程遠い限定的な回復だった段階で、市場には「これでようやく落ち着くのでは」という安堵感が広がっていました。

ところが、48時間後に状況は急変
覚書発効からわずか48時間後の6月20日朝、イスラエル軍がレバノン東部・南部を攻撃し、レバノン兵を含む17人が死亡。覚書では「レバノンを含む全戦線で軍事作戦を即時停止する」と定められていたので、これは明確な違反です。同じ日、イラン革命防衛隊が「ホルムズ海峡を全ての船舶に対して封鎖した。接近してはならない」と国営テレビで声明を出しました。停戦は、紙の上では成立したけれど、現場では48時間しか持たなかったということです。
第2章のポイント
  • ホルムズ海峡は、日本の原油の約95%、ナフサの74%が通る命綱です。
  • 6月14日に米・イランで停戦の暫定枠組み(イスラマバード覚書)が合意されました。
  • 覚書発効後、商船25隻が通過しましたが、これは紛争前120隻の約2割の水準です。
  • 48時間後の6月20日、イスラエルのレバノン攻撃を受けて、イランが再封鎖を宣言しました。

3. 2つ目のショック、産油国ロシアが「ガソリンを輸入する」異常事態

「ごはん作り」の調理場(製油所)が壊れている

ロシアと言えば、世界有数の産油国です。地下から掘り出される原油の量では世界トップクラス。ところが、その産油国であるロシアが今、ガソリン不足に陥り、よその国から輸入しようとしています。一見すると不思議な状況ですが、理由は単純です。

原油とガソリンの違いを、お米に例えると
原油は、田んぼで稲を刈ったばかりの「稲穂」のような状態です。これを精米所(製油所)に運んで、もみを取り、白米にして、初めてご飯として食べられます。原油も、製油所で精製して初めてガソリン、軽油、灯油などになります。
ロシアは「稲穂(原油)はたくさんあるのに、精米所(製油所)が次々に壊されている」状態。ご飯(ガソリン)を炊きたくても、白米にする工場が足りないのです。前章で出てきた「ごはん作り」の例えで言えば、材料はあるけれど調理場が止まっている状態です。

何が起きているのか、ウクライナのドローン攻撃

ウクライナはロシアに侵攻されて以降、ロシアの戦争資金源となっている製油所を、長距離ドローンで攻撃する作戦を続けてきました。2025年だけで対露攻撃は180回を超え、ロシアの精製能力の約25%が削り取られたとされています。これは大雑把に言うと、ロシア国内のガソリンスタンド4軒のうち1軒分の供給が消えたような規模です。

特に2026年6月17日から18日にかけての夜には、過去2年で最大規模となる無人機1,000機による大規模攻撃が実行されました。モスクワ南東部にあるロシア最大級のガスプロムネフチ製油所(カポトニャ)が直撃され、巨大な爆発で石油貯蔵タンクの屋根が空中数十メートルまで吹き飛ばされました。BBCが検証した映像では、住民の服や髪の毛にまで黒い油の粒が降り注ぐ「石油の雨」が確認されています。この製油所は1ヶ月で3回目、その週だけで2回目の被弾でした。

産油国ロシアで起きている異常事態

結果として、産油国ロシアでは、信じられないような事態が連続しています。

時期 起きたこと
2026年4月1日〜 ガソリンの輸出禁止。国内優先のため。
2026年6月1日〜11月30日 ジェット燃料の輸出禁止。
2026年6月時点 ロシア各地で「1台あたり20リットルまで」の給油制限が始まる。
2026年4月以降 カザフスタンやベラルーシからガソリン輸入の交渉を開始。
2026年6月 ノヴァク副首相が国際会議で初めて公式に減産を認める
第3章のポイント
  • ロシアは原油を掘る量は多いですが、ガソリンを作る工場が次々に攻撃されています。
  • 2025年中だけで180回超の対露攻撃、精製能力の約25%(4軒に1軒分の供給)が削減されました。
  • 産油国ロシアが給油制限・ガソリン輸入という前代未聞の事態になっています。
  • ロシアで余る原油は、後の章でお話するインドが安く買い続けています。

4. 3つ目のショック、米国の「非常用備蓄」が1983年以来の少なさに

「ごはん作り」の非常食ストックが、底をつきかけている

米国の戦略石油備蓄(SPRと言います)は、テキサス州とルイジアナ州の地下にある巨大な岩塩でできた洞穴に、国が非常用に蓄えている石油のことです。1973年の第1次オイルショックを教訓として、1975年に作られた仕組みです。

家庭の防災備蓄に例えると
災害に備えて、家に飲料水やレトルト食品を1週間分ストックしている家庭がありますね。それと同じ発想で、米国は「世界規模のオイルショックが起きた時のために」原油を非常用に蓄えています。前章までの「ごはん作り」の例えで言うところの、『非常食ストック』にあたる部分です。今までは、中東で何か起きると、この備蓄を放出して『世界の最後の頼み』として市場を安定させてきました。
ところが今、その『非常食ストック』が底をつきかけているのです。家庭でも防災備蓄が大切だと学んだのが1973年の経験。それから50年経って、その仕組みが機能しなくなる瀬戸際にあります。

レーガン政権以来の歴史的低水準

米エネルギー省(DOE)の発表によれば、2026年6月時点で米国の戦略石油備蓄は3億4,030万バレルまで減少。これは1983年、レーガン政権以来の最低水準です。今から43年前と同じ水準にまで減ってしまったのです。

減り方も急ピッチです。トランプ政権が2026年3月に発表したIEAという国際機関との協調放出計画では、米国だけで1億7,200万バレルを放出することになっており、すでに約6,600万バレルが市場に出されました。週単位で見ると、近頃は890万バレルずつ取り崩されています。これは備蓄の歴史で3番目に大きな取り崩しペースです。

『最後の頼み』が頼れなくなる
このまま放出計画が全部完了すると、米国の備蓄は約2億4,300万バレルまで減ります。これは法律で決まっている貯蔵容量の約3分の1という、ほぼ空っぽに近い水準。今後また価格が上がっても、世界が頼れる供給源がなくなるのです。米国内では『これ以上の輸出は止めて、自国民を優先しよう』という議論も出始めており、もしこれが現実になると、アジア向けの輸出が減って価格はさらに上がる可能性があります。
第4章のポイント
  • 米国の戦略石油備蓄(SPR)は1973年オイルショックを教訓に1975年に作られた仕組みです。
  • 2026年6月、3億4,030万バレル=1983年以来の少なさになっています。
  • 放出計画が完了すると、容量の約3分の1まで減る見込みです。
  • これ以上の世界的価格上昇に、米国は救援を出せない状態に近づいています。

5. なぜ中国や韓国ではなく、日本だけ値上げが厳しいの?

実はこの危機の負担は、世界で均等に分配されていません。同じアジアでも、中国とインドは比較的余裕があり、日本と韓国だけが厳しい状況に追い込まれています。「ごはん作り」の例えで言うと、中国とインドは『非常食を温存できる家庭』、日本は『非常食をどんどん取り崩している家庭』に近い状態です。

中国の構造的優位、米国の4倍の備蓄

中国の石油備蓄は、米国の約4倍にあたる約14億バレルあります。コロンビア大学エリカ・ダウンズ上席研究員のブルームバーグ取材コメントによれば、これは『中東からの輸入が完全に途絶えても半年分の供給不足を補える』水準です。世界で群を抜いて多いこの備蓄を、中国は今回の危機ではほとんど取り崩していません。代わりに、原油の輸入量そのものを減らし、製油所の稼働を下げ、需要を絞ることで対応しています。『非常食には手をつけず、生活費を切り詰めて凌ぐ』戦略です。

インドの構造的優位、割安なロシア原油の最大買い手

一方、インドはロシア原油の最大の買い手です。ロシアは戦争で他国に売りにくくなったため、北海ブレントという指標価格から最大3割引のバーゲン価格で、インドに原油を売り続けています。インドはロシア原油の輸入で年間50億ドル前後を節約しているとされます。前章でお話したロシアの「余っている原油」は、インドが吸い上げる構造になっています。

日本と韓国だけが、値上げを一身に引き受ける構造

IEA(国際エネルギー機関)が2026年5月に発表したレポートでは、「OECDアジア(つまり日本と韓国)が、輸入依存度の高い石油化学セクターで最も大きな打撃を受けた」と明記されています。つまり、中国は備蓄でショックを吸収し、インドは割安ロシア原油を吸収し、米国は備蓄を取り崩して輸出益を確保する一方で、日本と韓国だけが「高すぎて買えない」状態を一身に引き受ける形になっているのです。

第5章のポイント
  • 中国は備蓄が世界最大級(米国の約4倍)で、温存しながら需要を絞っています。
  • インドはロシア原油の最大買い手で、割安価格を享受しています。
  • 日本は中東依存度が高い構造のため、値上げを直接受け止めています。
  • IEAは「日本・韓国の石化セクターが最も大きな打撃を受けた」と明記しています。

6. 暮らしの中で、ガソリンとスーパーの値上げが続く本当の理由

ガソリン価格は今、全国平均で何円?

経済産業省(2026年3月24日資料)によると、2026年3月16日時点のガソリン全国平均価格は1リットル190.8円(前週比+29.0円)でした。政府はガソリン補助金、軽油・重油・灯油への同額補助、航空機燃料へのガソリンの4割補助を導入し、170円台への抑制を目指しています。2025年度予備費から8,007億円の使用を閣議決定し、うち7,948億円をガソリン補助金財源に充てました。ガソリン価格が190円台で踏みとどまっているのは、政府の巨額補助があるおかげとも言える状況です。

スーパーの値上げの7割は、実は「ナフサショック」が原因

日経新聞(2026年5月30日報道)は、スーパーで起きている食品値上げの約7割が、包装資材の値上げを要因とする「ナフサショック由来」であると報じました。ナフサは原油から作られるプラスチック原料で、お惣菜のトレー、お菓子の袋、ペットボトル、調味料の容器、冷凍食品の包装すべての原料です。さらに2026年5月下旬からはポリ袋などプラスチック製品の30%値上げが予告されており、エネルギー・食品・日用品を横断する物価高が現実のものになっています。

身近な品目 値上げの仕組み
食品全般 トレー・袋・ペットボトルの原料費アップで、食品本体は同じでも包装代が上昇
洗剤・シャンプー 容器のプラスチック価格が上昇、本体価格に転嫁
衣服 合成繊維(ポリエステル等)の原料費アップ
ガソリン・灯油 原油から直接作られるため最も直接的な影響
電気・ガス 火力発電の燃料費アップ。料金改定にラグはあるが半年〜1年かけて反映

なぜ「市況が下がった」というニュースを聞いても、お店では値段が下がらないの?

ニュースで「原油価格が下がった」と聞いても、スーパーやガソリンスタンドではなかなか値段が下がらない、と感じている方も多いと思います。これには、市況の表面的な価格と現場の実購入価格を分ける、4つの上乗せ要因があります。

上乗せ要因 どんな仕組み?
追加料金(プレミアム) 長期契約には基本料金にプラスして「特別追加料金」が乗ります。この特別料金が、封鎖以降に跳ね上がっています。
海上輸送費と戦争保険料 ホルムズ海峡を通る船にかかる戦争保険料は、平時の最大40倍にもなりました。さらに迂回航路では2〜3週間も余分にかかり、燃料代と船賃が膨らみます。
円安 覚書発効当日に円は1ドル161円81銭まで急落。同じドルの石油を買うのに、円換算では2割以上多く払う必要が生じています。
原油の質の違い 日本の製油所は中東産の原油に合わせて設計されています。代わりに米国産を買うと、できる製品の比率が変わってしまい、実質コストが上がります。

家計への影響はどのくらいか、年間1〜5万円の負担増の試算

帝国データバンクが2026年3月19日に発表した試算(TDBレビュー No.43)によれば、ドバイ原油価格が前年比でどれだけ上昇するかによって、家計(二人以上の勤労者世帯)の年間支出への影響は次のように見込まれています。

原油価格の上昇率 消費者物価押し上げ 勤労者世帯の年間支出増
シナリオ1(前年比+20%) +0.25ポイント +1万78円
シナリオ2(前年比+50%) +0.63ポイント +2万5,194円
シナリオ3(前年比+100%) +1.26ポイント +5万388円

年収200万円未満の世帯ではシナリオ3で年2万5,194円の負担増、もともと支出が収入の95%を超える状況のため、額は小さくとも生活への打撃は相対的に大きくなる、と帝国データバンクは指摘しています。野村證券の森田京平氏も、原油100ドル高止まりのケースでは2026年度のコアCPIインフレ率は前年比+2.8%、実質賃金は明確なマイナスとなりスタグフレーション(景気停滞と物価上昇が同時に進む状態)の色合いが強まると分析しています。

第6章のポイント
  • ガソリン全国平均価格は190.8円、政府の補助金で170円台への抑制を目指しています。
  • スーパーの食品値上げの約7割は、ナフサショック由来の包装資材値上げが原因です。
  • 市況≠実購入価格。プレミアム・輸送費・円安・原油の質という4つの上乗せがあります。
  • 原油倍増で勤労者世帯の年間支出が約5万円増、低所得世帯ほど影響が深刻になります。

7. 家計を守るために、私たちにできる暮らしの工夫

ここまで読まれて「ではどうすればいいの?」と感じた方も多いと思います。世界情勢を個人で変えることはできませんが、暮らしの工夫で家計への影響を和らげることはできます。ここでは「過度に節約しすぎず、過度に買い込まず、賢く工夫する」観点で、5つの具体策を整理します。

暮らしの工夫 具体的な内容
政府の対策を活用する ガソリン補助金で全国平均が170円台に抑えられています。通常の給油で問題ありませんが、補助の対象品目(軽油・灯油・重油・航空機燃料も含む)と仕組みを知っておくと安心です。
パニック買いをしない 買い占めは小売店の在庫を一時的に枯渇させ、結果として更なる値上げを招きます。「経済活動も社会活動も今止めるべきではない」と高市首相も呼びかけており、必要な分を必要な時に買う姿勢が、結果として家計も社会も守ります。
エコバッグ・詰め替えを選ぶ プラスチック原料費が上がる中、長く使う容器や詰め替え用商品を選ぶことで、暮らしの支出を抑えられます。シャンプー・洗剤・調味料などは詰め替え品の単価が大幅に安くなっています。
電気・ガス料金補助を確認 政府は2026年1-3月期から電気・ガス料金補助を実施。長期化の場合は延長・拡充の可能性があるため、自治体ウェブサイトや経産省サイトで定期的に情報確認すると良いでしょう。
エネルギーの使い方を見直す 過度に節約する必要はありませんが、夏のエアコンの設定温度を1度上げる、不要な照明を消す、車の燃費の良い運転を心がけるなど、基本的な省エネで月数百円〜数千円の差が出ます。
投資・取引判断について
原油価格・WTI水準・為替・備蓄量等の数値および将来見通しは、各種報道・専門機関のシナリオ分析を整理したもので、特定の取引・投資判断を推奨するものではありません。資産運用や投資のご判断は、金融機関や専門のアドバイザーへのご相談、一次資料の確認のうえ、ご自身の責任において行ってください。
第7章のポイント
  • 世界情勢は個人で変えられませんが、暮らしの工夫で家計への影響を和らげられます。
  • 政府の対策を活用する/パニック買いをしない/詰め替えを選ぶ/補助情報を確認する/省エネに取り組む。
  • 「過度に節約しすぎず、過度に買い込まず、賢く工夫する」が基本です。

8. いつまで続くの?、3つのシナリオで見る今後の見通し

経済の専門機関や証券会社のレポートをもとに、今後の見通しを「明るいシナリオ」「普通のシナリオ」「厳しいシナリオ」の3つに整理しました。SMBC日興証券の宮前耕也氏は「早ければ2026年4-6月期、遅くとも7-9月期には生産活動に下振れ圧力」がかかると予測しています。野村證券の髙島雄貴氏は、原油価格は2026年10-12月期から2027年1-3月期あたりまでは高止まりしやすいと分析。6月20日の再封鎖宣言は、明るいシナリオから普通〜厳しいシナリオへの軸足移動を意味します。

🌤️
明るいシナリオ
米国がイスラエルに圧力をかけ、6月20日の再封鎖が短期で撤回。覚書通り60日以内に最終合意。中東各国が増産に動き、価格が下がる。

原油の目安:70-85ドル
暮らし目線:ガソリン170円台で安定。家計年間負担+1万円程度。
普通のシナリオ
覚書の最終合意は遅れ、断続的な停戦と再封鎖を繰り返す。ロシアの製油所被弾も続き、米国の備蓄に余力がない状態が継続。

原油の目安:90-100ドル
暮らし目線:ガソリン180-190円。家計年間負担+2.5万円。値上げ続行。
⛈️
厳しいシナリオ
レバノンでの戦闘が本格化、覚書が完全破綻。ホルムズ完全封鎖、湾岸インフラがさらなる損傷を受ける。米国の備蓄も底をつく。

原油の目安:100ドル超
暮らし目線:ガソリン200円超。家計年間負担+5万円。スタグフレーション懸念。
価格が落ち着くには、複数の条件が複合的に絡み合う必要がある
原油・ナフサ価格が下がるためには、(1) 世界的に「高くて買えない」状態が広がる、(2) 米国やOPEC+が大幅増産する、(3) 中東の壊れたインフラが復旧する、(4) ロシアの製油所が復旧する、(5) ウクライナ・イラン両戦線で本当の停戦が履行される、(6) 米国の備蓄が再積み増しされる——といった複数の条件が複合的に絡み合う必要があります。一つだけが先行しても、市場全体の正常化には繋がりにくいのが現状です。
第8章のポイント
  • 専門機関の予測では2027年春までは高止まりが続きやすいとされています。
  • 6月20日の再封鎖宣言は、明るいシナリオから厳しいシナリオへの軸足移動を意味します。
  • 家計負担は年間1〜5万円増、低所得世帯ほど影響が深刻になる試算です。
  • 価格が落ち着くには、複数の条件が複合的に絡み合う必要があります。

9. よくある質問(FAQ)

結局、今、世界では何が起きているの?
私たちの暮らしを支えている石油の流れは、世界全体で『中東から原油を運ぶ→各国で精製してガソリンや原料にする→緊急時のために備蓄しておく』という3段階で動いています。2026年夏に突入する今、この3段階がすべて同時に詰まっています。中東ではホルムズ海峡という重要な海の道が再び閉じられ、ロシアでは戦争で製油所が次々に攻撃されてガソリンを作れなくなり、アメリカでは非常用の石油備蓄が1983年以来の少なさになっています。3つのショックが重なって起きるのは、世界で初めての事態です。
なぜホルムズ海峡が日本の暮らしに関係するの?
ホルムズ海峡は中東の真ん中にある、幅が最も狭い所で約34kmの海の道です。サウジアラビアやUAE、カタールなど中東の産油国が原油を世界に運ぶ時、必ずこの海峡を通ります。日本に運ばれる原油の約95%、プラスチックの原料になるナフサの74%が、この海峡を通って届いています。海峡が閉じると日本に石油が届かなくなり、ガソリン代だけでなくスーパーで売られる食品の包装やレジ袋、洗剤の容器、衣服の繊維まで、暮らしのあらゆるモノの値段が上がります。
産油国のロシアが、どうしてガソリンを輸入しているの?
原油は地下から掘り出されたままの状態では、車に入れることはできません。製油所という工場で精製して、初めてガソリンや軽油、灯油になります。ロシアは原油を掘る量は世界有数ですが、戦争でその精製工場が次々に攻撃されて壊れています。原油は余っていても、それをガソリンに変える工場が足りない状況です。だからロシア国内では1台20リットルまでの給油制限が始まり、カザフスタンやベラルーシからガソリンを買おうと交渉しています。これは産油国としては前代未聞の異常事態です。
アメリカの石油備蓄が少なくなると、日本にも関係あるの?
あります。アメリカが持っている戦略石油備蓄は、世界的な石油不足が起きた時の『最後の安全装置』のような役割を果たしてきました。今までは中東でショックが起きると、アメリカが備蓄を放出して市場を安定させてくれました。しかし2026年6月時点で、その備蓄が3億4,030万バレルまで減り、1983年以来の少なさになっています。この『最後の安全装置』が弱くなっているため、これからまた価格が上がっても、世界が頼れる供給源がない状態です。日本にとっては、価格高止まりが長引く可能性が高まっています。
中国は同じように困っていないの?
中国はあまり困っていません。理由は2つあります。1つ目は、中国の石油備蓄が約14億バレルもあり、アメリカの備蓄の約4倍と、世界で群を抜いて多いことです。中東からの輸入が完全に止まっても半年分を補える計算になります。2つ目は、中国はこの危機でも備蓄を温存し、代わりに国内の需要そのものを絞って対応していることです。一方、インドはロシアから余った原油を安く買い続けています。中国・インドが備蓄や割安原油で凌ぐ中、日本と韓国は中東依存度が高いため『値上がりを一身に引き受ける』形になっています。
私たちの暮らしへの影響はいつまで続くの?
専門機関の見方では、価格の高止まりは2027年春頃まで続く可能性があるとされています。SMBC日興証券の宮前耕也氏は『早ければ2026年4-6月期、遅くとも7-9月期に生産活動への下振れ圧力がかかる』と予測しました。野村證券の髙島雄貴氏は、ホルムズ事実上封鎖が続くとWTI原油が95ドル前後で高止まり、悲観シナリオでは100ドル超が続くと分析しています。中東情勢の安定、ロシアでの戦争停止、米国の備蓄回復、需要の減少といった条件が複合的に絡み合って初めて、価格は落ち着きやすくなります。
原油高で、私たちの家計に年間いくら影響が出るの?
帝国データバンクが2026年3月に発表した試算によると、ドバイ原油価格が前年比20%上昇した場合に二人以上の勤労者世帯で年間1万78円の支出増、50%上昇で年2万5,194円、100%上昇では年5万388円の支出増が見込まれています。同時に消費者物価上昇率は0.25〜1.26ポイント押し上げられる見込みです。年収200万円未満の世帯では、収入の95%以上を支出が占めるため、額は小さくとも生活への打撃は相対的に大きくなります。野村證券の試算では、原油100ドル高止まりのケースで実質賃金が明確なマイナスになり、スタグフレーション(景気停滞と物価上昇が同時に進む状態)の色合いが強まるとされています。
家庭でできる暮らしの工夫はありますか?
暮らし目線でできる工夫がいくつかあります。一つは政府の対策を最大限活用することです。経産省のガソリン補助金で全国平均価格が170円台前後に抑えられており、これは政府の補助で実現している水準のため、過度なまとめ買いは避けつつ通常の給油を続けて問題ありません。二つ目は『パニック買いをしないこと』です。買い占めは小売店の在庫を一時的に枯渇させ、結果として更なる値上げを招きます。三つ目はエコバッグ・詰め替え用商品の積極利用です。プラスチック原料費が上がる中、長く使う容器を選ぶことで暮らしの支出を抑えられます。電気・ガス料金の補助延長情報も自治体ウェブサイトで定期確認すると良いでしょう。

主な情報源(一次資料・主要報道機関)

  1. 共同通信「イラン『ホルムズ海峡を再封鎖』 レバノンでの停戦違反と非難」2026年6月20日
  2. AFP「米イラン和平覚書の要点、60日以内の最終合意と米制裁解除を明記」2026年6月18日
  3. ロイター「ホルムズ海峡の原油輸送、回復の兆し 米イラン覚書署名受け」2026年6月19日
  4. 時事通信「覚書発効、原油輸送拡大 米副大統領、イランとの60日協議開始」2026年6月19日
  5. 朝日新聞「ロシア最大級の製油所が炎上 モスクワに最大規模のドローン攻撃」2026年6月19日
  6. BBC News Japan「ウクライナ、モスクワに最大規模の攻撃で製油所直撃 地面や服に黒い染みと住民」2026年6月20日
  7. 集英社オンライン「追い詰められたプーチン『産油国なのにガソリンを輸入』の緊急事態」2026年6月20日
  8. 米エネルギー省(DOE)SPR残量公表(Investing.com経由)「米戦略石油備蓄、1983年以来の最低水準に低下」2026年6月上旬
  9. Newsweek日本版「米国の戦略石油備蓄が急減、危険水域に」2026年5月26日
  10. 毎日新聞「中国が石油備蓄を加速 どのくらいもつの?」2026年3月20日
  11. 日経新聞「中国が石油備蓄拡充へ、イラン情勢踏まえ 再エネ・原発は『倍増』」2026年3月11日
  12. Bloomberg日本版「ホルムズ海峡混乱による供給ショック、需要急減につながる瀬戸際に」2026年4月25日
  13. 帝国データバンク TDBレビューNo.43「原油価格高騰が物価および家計支出に与える影響」2026年3月19日
  14. nippon.com「原油価格倍増で家計負担は年5万円アップ:低所得層ほど深刻な影響」2026年4月3日
  15. 野村證券(NOMURA ウェルスタイル)森田京平「原油高の日本経済への影響を3つのシナリオで試算」2026年
  16. 野村證券(NOMURA ウェルスタイル)髙島雄貴「ホルムズ海峡の今後 悲観・楽観含めた4シナリオ別の原油価格見通し」2026年5月1日
  17. JBpress 宮前耕也(SMBC日興証券)「早ければ2026年4-6月期、遅くとも7-9月期には生産活動に下振れ圧力」2026年4月26日
  18. 経済産業省「中東情勢を踏まえた燃料油・石油製品の安定供給確保(資料4)」2026年3月24日
  19. 経済産業省「第2弾の国家備蓄原油の放出を行います」2026年4月24日
  20. 内閣府 政策統括官(経済財政分析担当)「中東情勢の緊迫化と原油価格上昇の我が国経済への影響」2026年3月
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