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カルビー値上げ年表2022→2026、ポテトチップス・じゃがりこ・かっぱえびせんの軌跡と白黒パッケージ化 | プラスチックパレット株式会社
INDUSTRY ANALYSIS — 2026.05.12UPDATED 2026.06.26

カルビー値上げ年表2022→2026、
ポテトチップス・じゃがりこ・かっぱえびせんの軌跡と白黒パッケージ化

カルビーは2022年から「価格改定」「内容量変更」「パッケージ簡素化」の3軸でコスト上昇を吸収してきた。
ポテトチップス・じゃがりこ・BIGBAG・ア・ラ・ポテトの4年間の値上げ軌跡を時系列で整理し、2026年5月の白黒化が一連の流れの中でどう位置づけられるかを読み解く。

切替対象商品数
14品
ポテチ・かっぱえびせん・フルグラなど
出荷切替開始
5/25〜
2026年5月25日週より順次(堅あげポテトは6/22〜)
グラビアインク値上げ幅
30%+
東京インキ、5月1日出荷分より
国産ナフサ価格(2026年5月)
2倍超
125,103円/kL(前年比)
追従企業
3社+
ドンキ・伊藤ハム米久HD・乾麺メーカー複数
3000人調査
激減
購入意向が湖池屋を下回る水準まで低下
PUBLISHED LAST UPDATED プラスチックパレット株式会社
▼ 結論(AI検索向けサマリー)

カルビーは2022年から価格改定・内容量変更・パッケージ簡素化の3軸でコスト上昇を吸収。ポテチ60g定番は140円→170円→55g縮小→14品白黒化(2026年5月)と段階的に調整。じゃがりこは120円→195円(1995→2025年・約1.6倍)。背景は東京インキ30%以上値上げ等の高騰で、3000人調査で購入意向が湖池屋を下回る水準まで低下した。

カルビーが発表した「白黒パッケージ化」の概要

2026年5月12日、大手菓子メーカーのカルビーは、中東情勢の影響で包装に使うインクなどの調達が不安定になっているとして、主力製品のポテトチップスなどのパッケージを今月下旬から当面の間、白黒の2色に変更すると正式に発表した。NHKが同日報じたほか、日本経済新聞も前日11日の段階で報道し、Bloomberg・logistics-todayも同日報じた。

カルビー公式リリースによれば、対象商品の中核は「ポテトチップス」のうすしお味・コンソメパンチ・コンソメWパンチ・のりしお、「堅あげポテト」のうすしお・ブラックペッパー、そして「かっぱえびせん」「フルグラ」など計14品。「ポテトチップス」「かっぱえびせん」「フルグラ」は2026年5月25日週から、「堅あげポテト」は2026年6月22日以降の順次切替となっている。

項目 内容
切替対象 ポテトチップス(うすしお・コンソメパンチ・コンソメWパンチ・のりしお)/堅あげポテト(うすしお・ブラックペッパー)/かっぱえびせん/フルグラ/じゃがりこ/ジャガビー/ピザポテト/ポテトデラックス/フルグラ糖質オフ/グラノーラ/サッポロポテト(計14品)
切替時期(主要) ポテトチップス・かっぱえびせん・フルグラ:2026年5月25日週以降/堅あげポテト:2026年6月22日以降
終了時期 未定(インク調達が安定するまでの緊急措置)
品質・価格・内容量 変更なし
追加影響 2026年7月発売予定の「サワークリーム風味」新商品の発売が中止
直接的理由 ナフサ由来の印刷インク(溶剤・樹脂・顔料)の調達不安定化

カルビーのポテトチップスパッケージは軟包装フィルムへのグラビア印刷が主流で、うすしお味の赤、コンソメパンチの黄色、のりしおの緑、堅あげポテトの黒地に金、かっぱえびせんの青といったカラーリングは半世紀近くにわたってブランドアイデンティティの中核を担ってきた。これらの色を失うという決断は、通常でありえないほど踏み込んだ対応である。

2026年5月12日の記者会見では、官房副長官の佐藤啓氏が「印刷用インクあるいはナフサについて、現時点で直ちに供給上の問題が生じるとの報告は受けていない」と述べながらも、政府が同日カルビーへのヒアリングを予定していることを明かし、関係企業との意思疎通を図ると表明した。政府レベルで対応が始まったことは、問題の深刻さを示している。

業界関係者の証言として、宮野宏樹氏のレポート(2026年5月16日)が興味深い背景を伝えている。カルビーは2026年2月末のホルムズ海峡封鎖を受けて、3月の段階から印刷インクの調達状況を毎週モニタリングしていた。4月に入り、複数の主要インクメーカーから「特色インクの安定供給が困難」との通告を受けた段階で、白黒化の検討が本格化したとされる。検討開始から発表までわずか1か月強という意思決定スピードは、平時のパッケージ刷新サイクル(通常6か月から1年)と比較すると、いかに緊急性が高かったかを物語っている。

なぜ白黒になるのか ―― グラビアインクとナフサの連鎖

表面的には「インク不足」だが、その根本を辿ると石油化学産業の構造問題に行き着く。印刷インクは大きく「顔料・染料(色の成分)」「樹脂(バインダー)」「溶剤」「添加剤」で構成される。このうち樹脂と溶剤の多くは、ナフサ(粗製ガソリン)を原料とする石油化学製品だ。

SUPPLY CHAIN — 原料からパッケージまでの連鎖

原油 → ナフサ → 石油化学製品(エチレン・プロピレン等)→ 溶剤・樹脂・顔料 → 印刷インク → グラビア印刷(軟包装フィルム) → ポテトチップス袋

このチェーンのどこかが詰まれば、最終商品の生産が止まる。有色インクほど多種類の顔料と専用樹脂を必要とし、カラー印刷では6〜7色の特色インクが使われることが多い。1色でも入荷が止まれば、ライン全体が停止する。

2026年2月のホルムズ海峡の事実上の封鎖状態を受け、日本の石油化学産業が根本から揺らいだ。帝国データバンクの調査では、ナフサ関連製品の調達リスクに直面する可能性がある製造業は全国で約4万7,000社、集計可能な製造業全体の約3割に相当するとされている。化学工業日報などの市況データによると、国産ナフサの基準価格は2026年3月にわずか2週間で1トン当たり600ドル台後半から1,100ドル前後へと急騰し、2026年5月時点で約125,103円/kLと前年比で2倍超の水準を記録している。

こうした状況を受け、東京インキは2026年5月1日出荷分からグラビアインキ関連製品の価格を30%以上値上げすると発表した。同社は「原材料価格の高騰と供給環境の逼迫は、企業努力のみで吸収できる範囲を超えている」と説明しており、顔料・樹脂・添加剤・溶剤すべてが値上がりしている。富山スガキなど国内印刷メーカーからも、インクの値上げ要請が種類によって10〜20%に達するという実態が報告されている。

樹脂サイドでも値上げが連鎖している。旭化成は2026年4月1日出荷分からポリエチレン全製品で1キログラムあたり120円、率にして30%超の値上げを実施。三井化学、プライムポリマー、住友化学なども相次いで値上げを発表し、樹脂の安定調達自体が困難になっている。日本印刷産業連合会の年次レポートによれば、2026年度の印刷インク生産量は2年ぶりにマイナス成長へと転じる見通しが示されており、特にグラビア印刷向け・軟包装向けのカラーインクで需給が逼迫している。

カラーパッケージを維持しようとすれば6〜7色の特色インクが必要だが、そのうち1色でも入荷が止まれば生産ライン全体が止まる。最初から白黒の2色に絞り込めば、調達リスクは劇的に下がり、安定供給が可能になる。カルビーの判断はここにある。

なぜ「無い」のではなく「高い」のか

ここが今回の問題を理解するうえで最も重要なポイントである。ナフサ由来の資材は市場に存在している。しかし価格が高騰しすぎており、従来の仕様のまま使い続けることに合理性がなくなっている。

「資材が全くない」という状況であれば、企業は代替手段を探すしかない。しかし「あるにはあるが高い」「調達できても納期が読みにくい」「価格転嫁を続ければ商品価格がさらに上がる」「かといって中身の品質は落とせない」という複合的な状況では、まず「削れる部分から削る」という判断が合理的になる。そしてパッケージの印刷仕様は、最初に見直しやすい項目のひとつだ。

この意味で、今回の白黒化を「コスト削減」ではなく「コストアップ対策」と捉えることが正確だ。すでに上がってしまったコスト、今後さらに上がる可能性のあるコストを、どこかで防衛的に吸収しなければならない。その結果として生まれた決断である。

カルビー値上げ・内容量変更の時系列(2022年〜2026年)

今回の白黒パッケージ化は、単発のできごとではない。カルビーは2022年から「価格改定」と「内容量変更(実質値上げ)」を組み合わせながら、段階的にコスト上昇を吸収してきた。同社は公式リリースで一貫して「エネルギーコスト、原材料価格、物流費の高騰を吸収すべく取り組んでいるが、自助努力のみでは対応が極めて困難」という説明を続けている。商品別の主要な軌跡を整理する。

ポテトチップス(うすしお・のりしお・コンソメパンチ等の定番)

カルビーの看板商品である定番ポテトチップスは、2022年から4年連続で段階的な調整を受けてきた。2022年2月に税込140円、同年9月には150円へ再値上げ。2023年6月160円と価格を上げた後、2024年6月の改定では他商品(じゃがりこ・じゃがビー等)が値上げされ、ポテトチップスは55g 160円のまま据え置き2025年7月21日発売分からは内容量を60gから55gへ縮小(5g減・約8.3%の実質値上げ・価格据え置き)。そして2026年6月1日納品分から55g 160円→170円へ価格改定(2026年2月2日発表)。さらに2026年9月1日納品分からポテチ7品+じゃがりこ18品の計25品で追加5〜10%値上げを2026年5月14日の決算発表時に予告した。1袋あたり1975年発売時90gで100円だったのが、現在は55gで170円。50年で内容量は約4割減、価格は約7割増となっている。

時期ポテトチップス定番備考
2022年2月税込140円(60g)2022年最初の価格改定
2022年9月150円(60g)同年内で2回目(2022年6月22日発表、157品目+5〜20%)
2023年6月160円(60g)2023年6月1日納品分(2023年2月6日発表)
2024年6月160円据え置き(60g)じゃがりこ等は値上げ、ポテチは据え置き(2024年2月6日発表)
2025年7月21日160円据え置き(55gへ縮小)うすしお等10品で内容量変更(2025年3月3日発表)
2026年6月1日160円→170円(55g)2026年2月2日発表(17品目5〜30%)
2026年5月12日パッケージ白黒化発表ナフサ由来インク高騰への対応
2026年9月1日ポテチ7品+じゃがりこ18品 計25品 5〜10%2026年5月14日決算発表時に予告(年内3回目)

じゃがりこサラダ・チーズ(57〜55gの主力ロングセラー)

1995年発売のじゃがりこは、長らく60gの内容量を保ってきたが、2022年1月に57g(じゃがりこサラダ)/55g(じゃがりこチーズ)への内容量縮小を実施。同年9月には商品価格を165円へ値上げし、その後も2023年6月175円、2024年6月185円、2025年6月には195円へと毎年10円刻みで価格を引き上げている。30年前の発売時120円と比較すると、約1.6倍の水準まで上昇したことになる。2026年5月14日の決算発表では、じゃがりこ18品を2026年9月1日納品分から3〜10%追加値上げすることが発表された。コンビニ限定の「じゃがりこ サラダ」57gは約180円→約190円となる見込み。

時期じゃがりこサラダ/チーズ備考
1995年(発売時)63g・120円じゃがりこサラダ発売(新潟・長野テスト販売)
2007年60gへ縮小馬鈴薯不足が理由
2022年1月57g(サラダ)/55g(チーズ)15年ぶりの内容量変更
2022年9月165円2022年6月22日発表分(出荷額+5〜20%)
2023年6月175円+10円
2024年6月185円+10円
2025年6月195円発売時比約+62.5%
2026年9月1日じゃがりこ18品 +3〜10%コンビニ限定57g 約180→190円(2026年5月14日発表)

かっぱえびせん(1964年〜の60年史)

1964年発売のかっぱえびせんも、2022年以降の値上げの流れに乗っている。発売当初の90g・100円から始まり、徐々に内容量を減らしながら価格を維持してきたが、2022年1〜2月にレギュラーサイズは90g→80gへの縮小(高温・干ばつによるじゃがいも減収・原材料価格上昇)。同年9月にはカルビーが157品目を9月1日納品分から再値上げした際、かっぱえびせんも値上げ対象に含まれた。2026年5月12日の白黒パッケージ化対象14品にも、かっぱえびせんは中核として組み込まれた。発売60年で内容量は90g→80g(-11%)、価格は約2倍へ。

堅あげポテト・ピザポテト・ア・ラ・ポテト・BIGBAG・じゃがビー

その他の主力商品も同様の軌跡を辿っている。堅あげポテトは2019年140円→2022年9月160円→2023年6月170円→2024年6月180円→2025年9月190円と毎年値上げ。ピザポテトは2023年6月170円→2024年6月180円→2026年6月190円。秋季限定のア・ラ・ポテトは2022年に72g→67g+155円→170円、2023年9月180円、2024年9月190円、2025年9月発売分からは64gへの再ステルス値上げが続いた。大容量のBIGBAGは2002年発売時170gから2022年1〜2月に152gへ約10%減量、2023年に160gへの増量を伴う価格改定後、2026年2月には再び150gへ縮小するステルス値上げが行われた。じゃがビー(うすしお75g)は2026年6月、想定価格が280円→370円へと一気に約32%値上がりする。

カルビーポテト株式会社(本社:北海道帯広市、代表取締役社長:田崎一也)はカルビーグループ内でじゃがいも調達・前処理を担う子会社で、業務用「お湯だけでマッシュポテト プレーン」等も製造している。同社も2025年6月1日納品分から一部商品を約10%値上げ(店頭での想定改定率)。グループの川上工程である原料調達段階でもコスト圧力が顕在化しており、川上から川下まで連鎖的な値上げが続いている構造だ。原材料(じゃがいも)・燃料費(北海道→全国輸送)・包装資材費の三層で値上げ圧力を受けている。

業界用語:「ステルス値上げ」「シュリンクフレーション」とは

用語解説

ステルス値上げ:価格はそのまま据え置きで内容量を減らすことで実質的に価格を引き上げる手法。明示的な値上げに比べて消費者に気づかれにくい一方、ばれた際に「不誠実」と批判されるリスクも伴う。

シュリンクフレーション(Shrinkflation):Shrink(縮小)とInflation(インフレ)を組み合わせた造語で、ステルス値上げの英語表現。世界的なインフレ局面で食品メーカーが多用しており、欧米では消費者団体や監督官庁が「隠れた値上げ」として規制を求める動きもある。日本では明示的な値上げと内容量変更を組み合わせる「ハイブリッド型」が主流。

商品別の累積値上げ率比較

各商品の発売以来〜現在までの累積値上げ率を整理すると、ロングセラーほど長期的な価格・内容量の調整を受けてきたことが分かる。

商品発売時 / 現在内容量変化累積値上げ率
ポテトチップス定番1975年90g・100円 / 55g・170円-39%(90→55g)価格+70%(gあたり実質約2.8倍)
じゃがりこサラダ1995年63g・120円 / 57g・195円-9.5%(63→57g)価格+62.5%(30年で約1.6倍)
ポテトチップスBIGBAG2002年170g / 150g-11.8%(170→150g)特売実勢298円前後(オープン価格)
ア・ラ・ポテト1998年95g・138円 / 64g・190円-33%(95→64g)価格+37.7%(gあたり約2倍)
かっぱえびせん1964年90g・100円 / 80g・約170円-11%(90→80g)価格+70%(60年で約1.7倍)
堅あげポテト2007年70g / 65g・190円-7.1%(70→65g)価格140円→190円(+35.7%、6年で)
ピザポテト60g定番 / 60g・190円据え置き2023年170円→2024年180円→2026年190円
じゃがビー(うすしお75g)75g / 75g・370円据え置き2026年6月280円→370円(+32%)

2022年以降のカルビー本体・主要価格改定一覧

カルビー本体としては、2022年から2026年にかけて以下の主要な価格改定・内容量変更を発表してきた。今回の白黒パッケージ化(2026年5月12日)は、これら一連の対応の延長線上に位置づけられる。

発表日対応内容主な背景
2022年1月じゃがりこ内容量縮小(60g→57g/55g)、ポテチBIGBAG 170→152gじゃがいも不作・原材料価格上昇
2022年6月22日ポテトチップス・じゃがりこ等157品目を9月1日納品分から再値上げ(出荷額+5〜20%)バレイショ・パーム油・物流費高騰
2023年2月6日2023年6月1日納品分から価格改定および内容量変更エネルギー・原材料価格高騰
2024年2月6日2024年6月1日納品分から17品の価格改定(じゃがりこ185円・ピザポテト180円等)エネルギーコスト・原材料・物流費高騰
2025年3月3日うすしお味ほか10品60g→55g(2025年7月21日発売分)/コンビニ限定シリーズ内容量見直し原材料価格上昇・じゃがいも調達難
2026年2月2日17品目を6月1日納品分から5〜30%値上げ(ポテチ55g 160→170円、じゃがビー280→370円・+32%)北海道産じゃがいも調達難・物流費・人件費
2026年5月12日14品を白黒2色印刷へ(5/25週〜、堅あげポテトは6/22〜)ナフサ由来インク・溶剤・フィルムの調達不安定化
2026年5月14日2026年3月期決算発表時にポテチ7品+じゃがりこ18品の25品 9月1日納品分から5〜10%値上げ予告じゃがいも仕入れ価格・物流費(中東情勢は無関係と明言)

値上げ理由のカテゴリー別整理(2022〜2026年)

カルビーが各年の値上げ発表で挙げた理由を時系列に並べると、当初は「エネルギー・原材料」中心だったコスト圧力が、年を追うごとに「物流費」「人件費」「包装資材費」「じゃがいも調達難」へと広がってきた。

主因(最も強調された理由)副次要因
2022年エネルギーコスト・原材料価格物流費・パーム油・じゃがいも不作
2023年エネルギー・原材料価格(継続)物流費(2024年問題前)
2024年エネルギーコスト・原材料・物流費2024年問題(トラック運転手時間外労働規制)
2025年原材料価格(じゃがいも調達難)北海道天候不順・じゃがいも卸値1kg631円(2025年5月過去最高)
2026年(白黒化発表時)ナフサ由来インク・溶剤・フィルムの調達不安定化中東情勢(ホルムズ海峡)・東京インキ30%以上値上げ
2026年(9月値上げ予告)じゃがいも仕入れ価格・物流費人件費上昇(中東情勢は無関係と明言)

時系列から見える3つの転換点

2022〜2026年の4年間を俯瞰すると、カルビーのコスト対応には3つの転換点がある。

第1の転換点は2022年。コロナ後の原油・原材料高に対応するため、同年内に2回(1月・9月)の価格改定および内容量変更を実施。これ以降、毎年6月納品分での価格改定がルーティン化した。

第2の転換点は2025年。それまで「価格を据え置いて内容量を減らす」もしくは「内容量はそのままで価格を上げる」という選択肢を商品ごとに使い分けてきたが、2025年7月21日発売分から主力ポテトチップス60g→55gの内容量変更に踏み切り、価格据え置きでの実質値上げが定番化した。

第3の転換点が2026年5月。これまでは「中身(内容量)」か「価格(タグ)」のいずれかを調整してきたが、今回はじめて「パッケージそのもの(外装デザイン)」に手を入れた。ブランドアイデンティティの中核であるカラーリングに踏み込むという意味で、過去4年間のどの調整よりも踏み込み度が深い。

6月時点の店頭展開と他社追従の動き

5月25日週の出荷切替開始から1ヶ月が経過した6月時点で、白黒パッケージはすでに店頭に並び始めている。朝日新聞は2026年6月1日付で「パッケージが白黒になったカルビーの『ポテトチップス』や『かっぱえびせん』が店頭に並び始めた」と報道。Yahoo!ニュースのエキスパートコラム(山路力也氏、2026年6月17日)でも、複数メディアの報道として店頭展開状況がまとめられている。

他社追従の動き ―― スナック菓子から日用品PBへ

カルビーの白黒化判断は、食品業界・小売業界へ急速に波及している。日本経済新聞は伊藤ハム米久ホールディングスも白黒包装を検討中と報道。さらに2026年6月4日にはテレ朝NEWSが、ドン・キホーテが低価格プライベートブランド(PB)「情熱価格」の水やティッシュなど26品目を白黒パッケージ化する新展開を報じた。これはナフサ高騰対策というよりも、コスト訴求型PB商品の新フォーマットとして白黒パッケージを活用する事例として注目される。

週プレNEWS(2026年5月31日)は「ポテチに続く白黒パッケージ商品」と題して、複数メーカーの追従動向を報道。複数の乾麺メーカーも2026年6月出荷分から無地包材への切替を進めている。富山スガキなど印刷会社でもインク10〜20%の値上げ要請が来ていることが報告されており、印刷業界全体が同じ需給逼迫の波に飲み込まれている。

時期 追従企業・業種 対応内容
2026年5月11日 伊藤ハム米久ホールディングス 白黒包装への切替を検討中(日経報道)
2026年5月31日 乾麺メーカー複数社 2026年6月出荷分から無地包材への切替(週プレNEWS報道)
2026年6月4日 ドン・キホーテ「情熱価格」 水・ティッシュなどPB 26品目で白黒パッケージ採用(テレ朝NEWS報道)
2026年6月 富山スガキなど印刷会社 インク種別10〜20%の値上げ要請を受領

プラグ社3000人調査 ―― 購入意向が湖池屋を下回る水準まで低下

デザイン会社プラグ(東京・千代田)が10〜60代の男女計3000人を対象に実施した消費者調査の結果が、2026年6月24日付の日経クロストレンドで報じられた。カルビーの白黒パッケージ化により購入意向は大きく低下し、パッケージ変更を発表していない競合の湖池屋を下回る水準まで下がったという。同記事は「競合商品に後れを取る可能性が見えている」と指摘している。

一方、流通経済研究所は2026年5月15日付の論考で「白黒パッケージは周囲とのコントラストによって強い違和感を生み出し、売場から少し離れた場所からでも目に入りやすくなる可能性がある」と分析。買物客が実際に視認している商品数は陳列全体の半数程度であることから、「まず見つけてもらうこと」という観点では白黒化が短期的な売上伸長につながる可能性も指摘している。

SNS REACTION — 二極化する評価

ネガティブ:「商品識別が難しい」「ブランドイメージが安っぽい」「子どもが選びにくい」「カルビー不買」(Yahoo検索急上昇ワード入り、2026年5月13日)

ポジティブ:「シンプルでかえって洗練されて見える」「環境配慮を感じる」「安定供給優先という姿勢に信頼が持てる」「逆にレトロで目立つ」「昭和感がある」「限定感がある」

慶應MBAの分析(2026年5月23日)では「白黒という違和感が売場で目立ち、ニュースになり、SNSで語られ、消費者に『なぜ?』という問いを生む。これは『プル型のコミュニケーション』として広告効果が大きい」とも指摘されており、評価は単純な賛否では割り切れない。

過去の事例との比較も興味深い。日経クロストレンドはファンケルが「水色のボトル」のリブランディング失敗で創業以来初の赤字を計上し、創業者が8年ぶりに経営復帰した事例を引き合いに出し、パッケージの大幅変更は「顧客の離反を引き起こす非常にリスクの高い選択肢」と評している。一方、カルビーの場合は「話題性によるモノクロパッケージの認知刷り込み」「ブランド力の強さ」「安定供給優先という企業姿勢への共感」がリスクを相殺する可能性も同時に指摘されている。

競合・湖池屋との比較 ―― 同水準の値上げ、白黒化はカルビー単独

「カルビーの購入意向が湖池屋を下回った」という調査結果が出たため、湖池屋は値上げしていないのかと誤解されがちだが、実際は湖池屋も2024〜2026年にかけて約2年で5回の価格改定を実施している。湖池屋の値上げ履歴は次の通り:2024年10月(27品最大14%)、2024年11月(追加価格・規格改定3〜11%)、2025年4月発表(17品7月21日実施、のり塩60g→55g)、2025年11月発表(23商品4〜11%、2026年2月実施)、そして2026年8月(19品の最新発表)。両社の小袋たべきりサイズはこの7年で120円→170円(+50円、約42%増)と、ほぼ同水準の価格軌跡を辿っている。

つまり、3000人調査で示された「カルビー購入意向の低下」は「価格水準そのものの差」ではなく「パッケージ簡素化への消費者反応の差」を映している可能性が高い。湖池屋も同様に値上げを実施しているが、ブランドカラーは維持。一方でカルビーは「価格改定+内容量変更+パッケージ簡素化」と3軸すべてを動かしたため、消費者から見て「変化が一気に多すぎる」という印象が強まったと考えられる。湖池屋の2026年8月値上げ19品の詳細はこちら

2026年3月期決算 ―― 値上げ進行下でも売上は伸長

カルビーの2026年3月期決算(2026年5月14日発表)では、売上は前年比で伸びたものの利益面に課題が残った形となった。同社の強みは「じゃがりこ」「ポテトチップス」のブランド力にあり、多少の値上げでも他社商品へ置き換わるケースが少ない点で「価格転嫁できる企業」として評価されている。実際、2022年からの4年連続値上げ局面でも一定の販売数量を維持してきた実績がある。ただし、原材料高・為替・物流問題が長期化するなかで利益率回復は容易ではなく、2026年9月の追加価格改定もその文脈で発表された。

販路別の値上げ動向 ―― スーパー・コンビニ・PBの違い

同じカルビー製品でも、販路によって価格パターンが異なる。スーパーでは特売時に100〜140円程度で購入可能なのに対し、コンビニでは定価170〜181円で並ぶことが多い。さらにイオン「トップバリュ ベストプライス」のPBポテチは60g・95円前後(製造元は湖池屋)と、ナショナルブランド(NB)の約半額。セブンプレミアムのポテチも60g・108円前後とコンビニとしては割安。コンビニ限定商品については、2024年10月に湖池屋が「価格据え置き・内容量縮小」を採用するなど、販路特性に合わせた値上げ手法の使い分けが進んでいる。

カルビーの値上げ4年史 ―― 「価格・内容量・パッケージ」3つの調整軸

SECTION 03で詳述した4年間の軌跡を整理すると、カルビーは「価格」「内容量」「パッケージ」という3つの調整軸を順番に使ってきた。注目すべきは、白黒パッケージ化が2025年7月の内容量変更(60g→55g)と2026年6月・9月の追加価格改定の間に挟まれて発表されている点だ。つまり、カルビーは2025〜2026年にかけて「内容量縮小」「価格改定」「パッケージ変更」を立て続けに実施している。これは2022〜2024年の「年1回の価格改定ルーティン」とは明らかに異なるペースであり、コスト圧力が短期間で複数軸の調整を要求するレベルに達していることを示している。

「価格を上げる」「内容量を減らす」という2軸での調整が限界に近づいたとき、カルビーが選んだ第3の軸が「パッケージそのものを簡素化する」ことだった。半世紀近く守られてきたブランドカラーに踏み込んだのが2026年5月12日の白黒化発表である。

ブランド力と値上げ耐性 ―― 価格転嫁できる企業の強み

カルビーが4年連続で値上げを実施しても一定の販売数量を維持してきた背景には、ブランド力の強さがある。「じゃがりこ」「ポテトチップス」「ピザポテト」「フルグラ」といった主力商品は、多少値上がりしても完全に他社商品へ置き換わるケースは少ない。投資家・アナリストの間では「値上げできる企業」として評価される一方、消費者側からは「値上げ疲れ」「ポテチを買う回数が減る」という変化も少しずつ表れている。SECTION 04で紹介した購入意向の低下が実販売数量にどこまで波及するかが、今後のブランド力の試金石となる。

2026年後半〜2027年の見通し ―― 次の値上げ予想

カルビーは2026年5月14日の決算発表時点で、2026年9月1日納品分からのポテチ7品+じゃがりこ18品の追加値上げを予告済み。これにより2026年内のカルビー価格改定は2月・6月・9月の年3回となる。2027年以降については、中東情勢・ナフサ価格・じゃがいも調達コスト・為替の4つが鍵となる。プライシー(2026年3月時点)の見通しでは「これ以上の値上げは公式発表されていないが、原材料の国際価格や為替動向によっては追加の値上げがある可能性も」とされており、業界全体での値上げラッシュは2027年以降も続く可能性が指摘されている。

SOURCES & REFERENCES|出典・根拠
  1. カルビー株式会社|「中東情勢の影響による一部商品仕様見直しのお知らせ」2026年5月12日 ― calbee.co.jp
  2. NHKニュース|「カルビー パッケージ白黒化を発表 中東情勢でインク調達懸念」2026年5月12日 ― nhk.or.jp
  3. 日本経済新聞|「カルビー、ポテトチップスなど白黒包装に インク不足で伊藤ハムも検討」2026年5月11日 ― nikkei.com
  4. 日本経済新聞|「佐藤副長官、インク材料不足で『企業と意思疎通』」2026年5月12日 ― nikkei.com
  5. Bloomberg|「カルビー、『ポテトチップス』などのパッケージを白黒に―インク不足」南部真帆、2026年5月12日 ― bloomberg.com
  6. logistics-today|「カルビー、14商品の包装白黒化で安定供給維持」2026年5月12日 ― logi-today.com/949344
  7. モデルプレス|「ポテトチップスなど計14品パッケージを当面の間"白黒"2色に」2026年5月12日 ― mdpr.jp
  8. カルビー株式会社|「内容量変更に関するお知らせ」2025年3月3日(PDF)
  9. 東京インキ株式会社|「グラビアインキ関連製品 価格改定のお知らせ(5月1日出荷分より30%以上)」2026年
  10. チューリップテレビ(Yahoo!ニュース)|「富山スガキ 須垣社長インタビュー:インキ10〜20%値上げ要請」2026年 ― yahoo.co.jp
  11. 帝国データバンク|「ナフサ関連調達リスクに関する企業実態調査:製造業全体の約3割・約4万7,000社が調達リスクに直面」2026年4月17日
  12. 経済産業省|「ナフサおよび石油化学製品の流通状況に関する声明」2026年4月14日
  13. 化学工業日報|ナフサ市況データ(2026年1〜5月)― 2026年3月に2週間で600ドル台後半→1,100ドル前後へ急騰・2026年5月時点125,103円/kL
  14. 旭化成|ポリエチレン製品価格改定発表(2026年4月1日出荷分より1kg 120円・30%超)
  15. 日本印刷産業連合会|年次レポート(2026年度の印刷インク生産量は2年ぶりマイナス成長見通し)
  16. 朝日新聞|「白黒になったカルビーの『ポテトチップス』『かっぱえびせん』が店頭に並び始めた」2026年6月1日
  17. テレ朝NEWS|「ドンキ、白黒パッケージで低価格に 水やティッシュなど新PB26品目 デザインも簡素に」2026年6月4日
  18. 週プレNEWS|「各メーカーが続々と見直し...ポテチに続く『白黒パッケージ商品』」2026年5月31日
  19. ダイヤモンド・オンライン|「白黒パッケージ〈最大の勝者〉はカルビーと言い切れるワケ」2026年5月15日
  20. 日経クロストレンド|河村優「カルビー白黒包装で購入意向が激減 3000人調査で判明、湖池屋を下回る」2026年6月24日 ― xtrend.nikkei.com
  21. 日経クロストレンド|「カルビーのパッケージ白黒化の影響を専門家が予測 値上げ回避に先手」2026年6月24日
  22. 公益財団法人 流通経済研究所|「白黒パッケージ化は売場をどう変えるのか――カルビーの新たな取り組みと購買行動への影響を考える」2026年5月15日 ― note.com/dei_ryuken
  23. 宮野宏樹|「カラフルが消える日 カルビー14商品『白黒包装』が映すホルムズ海峡封鎖の衝撃」2026年5月16日 ― note.com/hirokimiyano
  24. Yahoo!ニュース エキスパート|山路力也「『ナフサ不足だけではない?』食品メーカーが『白黒パッケージ』に変更する理由とは?」2026年6月17日 ― news.yahoo.co.jp
  25. 全国グラビア協同組合連合会|「軟包装グラビア印刷の現状と課題」― 食品包装が用途の80%以上を占める ― gcaj.or.jp
  26. カルビー株式会社|「価格改定および内容量変更に関するお知らせ」2023年2月6日(2023年6月1日納品分から)― calbee.co.jp
  27. カルビー株式会社|「価格改定および内容量変更に関するお知らせ」2024年2月6日(2024年6月1日納品分から)― calbee.co.jp
  28. 日本経済新聞|「カルビー、『ポテトチップス』『じゃがりこ』再値上げ」2022年6月22日(9月1日納品分から157品目、出荷額+5〜20%) ― nikkei.com
  29. カルビーポテト株式会社|「価格改定に関するお知らせ」2025年3月10日(2025年6月1日納品分・店頭想定改定率約10%) ― calbee-potato.co.jp
  30. 値上げ・実質値上げ情報サイト(neage.jp)|カルビー製品の長期価格推移データ:ポテトチップス/じゃがりこ/堅あげポテト/BIGBAG/ア・ラ・ポテト/ピザポテト/かっぱえびせん ― neage.jp
  31. カルビー株式会社|「価格改定に関するお知らせ」2026年2月2日(17品目5〜30%・6月1日納品分から)― 日経新聞・共同通信報道 ― nikkei.com
  32. カルビー株式会社|「価格改定に関するお知らせ」2026年5月14日(決算発表時、25品・9月1日納品分から5〜10%)
  33. 湖池屋|「ポテトチップス値上げ 10月から最大14%」日経新聞2024年7月12日 ― nikkei.com
  34. 湖池屋|「ポテトチップスなど17品値上げ 7月から」(のり塩60→55g)日経新聞2025年4月4日 ― nikkei.com
  35. 湖池屋|「ポテトチップスなど4〜11%値上げ」日経新聞2025年11月21日(23商品4〜11%、2026年2月実施)― nikkei.com
  36. プライシー|「【2026年最新】ポテチの値段はいくら?メーカー・店舗別に比較」2026年3月28日 ― pricey.jp
  37. 農林水産省|じゃがいも全国平均小売価格統計(2025年5月:1kg卸値ベース過去最高631円)
  38. f-leccs.jp|「カルビーのポテトチップスが値上げ2026年6月の対象商品と値上がり幅まとめ」2026年4月26日 ― f-leccs.jp
DISCLAIMER|注意事項
  • 本記事は2026年6月26日時点で公開されている一次情報をもとに整理した内容です。中東情勢・ナフサ市況・包装資材業界の動向は時々刻々変化するため、最新情報は各出典元で必ずご確認ください。
  • 記載した数値(ナフサ価格・値上げ率・対象品数・調査結果等)は、各報道・統計の公表時点でのものであり、最新値とは異なる可能性があります。
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