【2026年4月最新版】中東情勢緊迫化によるPP供給危機:不可抗力宣言(FM)の連鎖と物流混乱の全貌
PP樹脂市場緊急レポート 2026年4月 最新更新 最終更新:2026年4月25日

中東情勢緊迫化によるPP供給危機
不可抗力宣言(FM)の連鎖と
物流混乱の全貌

ホルムズ海峡の事実上封鎖から約2ヶ月。FMは世界で31件超に拡大し、PP・PE価格は最大約80%急騰。 本稿は2026年3月24日公開の原記事を、4月25日時点の最新エビデンスでアップデートしたものです。

【重要アップデート】 4月7〜8日に米・イランの軍事停止合意が一時成立するも、協議は難航。4月13日、米CENTCOMがイラン港湾向け「逆封鎖」を宣言し情勢は再悪化。海峡通航量は平時比約90%減(1日10隻前後)が続いています。
最大+80%
PP・PE 価格上昇幅
(開戦比・地域により異なる)
出典:ICIS / PolymerUpdate / Syntex 2026-03〜04
31件超
世界FM宣言数
(3月13日時点・ICISトラッキング)
出典:ICIS Force Majeure Tracker
約2ヶ月
国内PP在庫水準
(経産省公表・3月17日時点)
出典:経済産業省
12〜18M
中東PE輸出回復に要する期間
(海峡再開後でも)
出典:ICIS 2026-04-13
UPDATE

【新情報】3月24日以降の主な動き

⚠ 原記事執筆後の重大変化
3月24日の原記事公開以降、ホルムズ海峡をめぐる情勢は複数回にわたり大きく動きました。以下のタイムラインで最新経緯を整理します。
2026年3月26日
イランが「友好国」(インド・中国・ロシア・イラク・パキスタン)向けに海峡を選択的に開放。日本・韓国・EU向け商船は依然として通航リスクが継続。Syntex Week4
2026年3月28日
ホルムズ海峡を経由しない代替ルート(UAE・フジャイラ港経由)で日本向け初の原油タンカーが到着。NRI 2026-03-25
2026年4月7〜8日
米・イランが一時的な軍事停止で合意。しかしイラン海軍は「許可なく通過する船舶を破壊する」と警告を継続しており、海峡通航の実態は変わらず。Reuters 2026-04-07
2026年4月13日
米CENTCOM、イラン港湾(バンダルアッバース港等)への出入りを対象とした「逆封鎖」を宣言。即日6隻の船舶に引き返しを命令。PP・PE価格は再騰。CENTCOM / Syntex
2026年4月17日
イランが「停戦中は商業船舶に開放」を発表するも、米の逆封鎖で効果は限定的。
2026年4月20日
クウェート石油公社(KPC)が原油・石油製品の出荷についてFMを宣言(Bloomberg確認)。海峡封鎖により顧客への義務履行が困難と通知。Bloomberg 2026-04-20
2026年4月23日
トランプ大統領、海峡で機雷を敷設するイラン艦艇を破壊するよう米海軍に命令。Reuters / CNN 2026-04-23
2026年4月25日(現在)
通航量は平時比約90%減(1日10隻前後)が継続。双方向封鎖フェーズ。外交的出口は依然不透明。global-scm.com 2026-04-15

第1章

ホルムズ海峡の封鎖実態と「原料調達」の障壁

1-1. 物流の動脈停滞がもたらす影響(最新データ)

2026年2月28日の開戦以来、ホルムズ海峡は段階的に機能不全に陥りました。同海峡は世界の海上原油輸送量の約20%・LNG輸送の20%を担う物流の大動脈です。IEA / ICIS

Brent原油 ピーク
$126/bbl
▲54% month-on-month(3月)
ナフサ(東アジアCFR)3月ピーク時
$1,077/t
▲74% in 2 weeks(3月17日時点)
※4月24日時点は約$933/t(先物)まで低下
LPG 前月比
最大+80%
▲PP製造コスト直撃
海峡通航量(4月)
平時比▲90%
1日10隻前後

日本にとって特に深刻なのは、原油輸入の約9割が中東産であり、その大部分がホルムズ海峡経由という構造です。NRI・時事ドットコム さらにナフサの7割以上を中東に依存する国内石油化学産業は、3月下旬から深刻な原料不足に直面しています。NRI・東洋経済

日本政府の対応
経産省は3月17日にPP・PE等の在庫が「約2か月分」と公表。政府はGW前まで調達見通しが立つとしつつも、その後は各社の独自努力に委ねられた状態です。代替ルートとしてUAE・フジャイラ港(ADCOP経由)およびサウジ・ヤンブー港経由の輸入拡大が進行中です。経産省・NRI

1-2. 不可抗力(FM)宣言の拡大:31件超に

ICISのFMトラッカーは2026年3月13日時点で、アジア・中東で31件、欧州で2件、米州で1件のFM宣言または販売割当通知を確認しています。その後も日々追加が続いています。ICIS / Syntex Week3

メーカー・地域 状態 詳細・根拠
Hyosung Vina Chemicals(ベトナム) 操業影響 原料供給元のPVガス(ペトロベトナムガス)がLPG供給についてFMを宣言したことに伴い、同社の操業に支障が生じていると報告されている。
Formosa Plastics(台湾) FM宣言 海峡封鎖で原料船が未着。クラッカー1基停止を検討後、FM正式発動が確認。Syntex Week4
LG Chem(韓国) FM宣言 原料供給制約によるFM。韓国Yeochonも含む複数韓国メーカーが制限。Syntex / CNN
NSRP Vietnam FM宣言(Q2通じ) 海峡封鎖による供給断絶でPP向けにFM発動。Q2期間中継続。Syntex
QatarEnergy(カタール) FM延長(6月中旬まで) 77.4百万t/年のLNG全量にFM宣言。2026年6月中旬まで延長Syntex Week4
Kuwait Petroleum Corp.(クウェート) FM宣言(4月20日) 原油・石油製品の出荷FM。海峡封鎖によりペルシャ湾への入退が不可能に。Bloomberg 2026-04-20
Chandra Asri(インドネシア) FM宣言 3月2日付でFM通知。ナフサ等原料の海上輸送が大幅に妨害されたと説明。PP年産59万t。ICIS 2026-03-03
LyondellBasell・Indorama(欧州複数拠点) FM宣言 欧州サプライヤーも相次いで宣言。ICIS 2026-03-13
TPC / Aster Chemicals・PCS(シンガポール) 出荷調整 上流制約により出荷制限を実施中。CNN / Syntex
Petronas Chemicals(マレーシア) 稼働率調整 自国原料の一定耐性あるも物流コスト急騰・需給逼迫の影響で稼働調整。

S&P Global Commodity Insightsは「イランが中東石化施設の潜在的ターゲットを公表しており、域内オレフィン供給の約32%・PE能力の42%・PP能力の40%が含まれる」と指摘しています。S&P Global 2026-03-14


第2章

供給現場での「アロケーション」と「出荷制限」の現実

2-1. アロケーションは想定から現実へ

原記事(3月24日)で「可能性」として記述したアロケーションは、2026年4月には現実のものとなっています。ブラジルのBraskemが実施した段階的割当が典型例です。

ケーススタディ:Braskem(ブラジル)のPE割当
Phase 1(4月1〜7日):+R$6,500/t、供給量を需要の35%に制限
Phase 2(4月8〜16日):さらに+R$1,500/t、累計R$8,000/t高騰
Phase 3(4月17〜27日):供給量を30%にさらに縮小

ブラジルのLDPE流通価格はR$9.80/kgからR$23/kgへ135%急騰。ABIPLASTはこれが「パンデミック時を超える混乱」と警告。 Syntex 2026-04-13

2-2. 欧州・インド・アジア市場の最新状況

欧州では「価格交渉より数量確保が優先」の局面に突入しており、複数のサプライヤーが新規注文受付を完全停止しています。インドでは石油化学MSMEの50%が生産を停止し、政府は40品目の関税免除措置(6月30日まで)を緊急発動しました。東南アジアのクラッカーは稼働率70%まで低下しています。Syntex Week4 / Plastribution

Plastribution(英国)2026年3月報告書より要旨
「紛争が仮に速やかに解決しても、サプライチェーンへの余波は数か月にわたり続く。基礎的な需給は供給過剰の状態にあるが、現時点では原料の入手が困難で需要は逼迫している」

2-3. 日本への具体的影響

国内化学メーカーはエチレン設備の減産を開始しており、C4留分・合成ゴム・ABS樹脂等の供給制約も深刻化しています。東亞合成・大倉工業・東ソー等が軒並み2桁%以上の値上げを4月14日までに通達。住宅・自動車・包装材・医療・農業の広範分野で「物理的な原料欠乏」が限界点に達しつつあります。sattu-ai-agent.com 2026-04-14

2026年3月30日には高市首相が「医療向け石油供給優先」を発表。物流資材・建設資材向けの配分は事実上後回しとなりました。増改築.com


第3章

アジア各国の供給状況と今後の見通し

3-1. 韓国・台湾の動向

韓国Yeocheon NCC(YNCC)・LG Chemはいずれも供給制限を実施。台湾Formosa PlasticsはFMを正式発動しており、日本への輸入源として大きなシェアを持つ両社の供給制限は直接的な国内リスクです。

3-2. 選択的海峡開放と「2層構造」の供給格差

3月26日以降、イランは中国・インド・ロシア等「友好国」向けに海峡を選択的に開放しています。これにより中国は一定の中東産PP・PEへのアクセスを維持しており、Dalian PE価格が4月に前月比3.4%下落する一方、日本・韓国・欧州向けは記録的高値が続くという「2層構造」が形成されています。Syntex Week4

3-3. 回復シナリオ:「停戦後も12〜18ヶ月」

ICISは2026年4月13日の試算で、海峡再開後でも中東PE輸出の回復には12〜18ヶ月を要すると推計しています。回復には①停戦・海峡再開、②戦争リスク保険の正常化(数ヶ月)、③船社の航路再開(数週〜数ヶ月)、④FM解除、⑤在庫再積み上げ、⑥物流網の復元、という複数のステップが順次必要なためです。Syntex 2026-04-13

さらに4月13日のCENTCOM「逆封鎖」宣言により、この12〜18ヶ月カウントの起点が後ろにずれる可能性があります。


第4章

再生PP(リサイクルPP)市場への注目

4-1. 「コスト削減」から「供給確保」への目的変化

バージンPPの納期が「未定(ロールオーバー)」となる中、国内や近隣地域で回収・加工される再生PPは「今すぐ手に入る唯一の樹脂」として買い付けが殺到しています。多少の物性低下や色ムラがあっても、ラインを止めないために「再生材100%」や「バージン材との高比率ブレンド」へ設計変更を急ぐ企業が急増しています。

4-2. バージン材との「価格スプレッド」の縮小と逆転

バージンPPが3月に$1,200/tを超える水準まで急騰した後も高止まりが続く中、特に透明度・臭気の少ない高品質なポストインダストリアル材(工場端材由来)は、3ヶ月前のバージン材価格を上回る単価での取引が報告されています。

4-3. 2026年規制との交差

「物理的な不足」と「環境規制による再生材利用義務化」が同時に押し寄せる構造は原記事の通りです。欧米向け製品を製造するメーカー間では、トレーサビリティ付き再生PPの争奪戦が激化しています。Packaging Dive

4-4. 新たなボトルネック:リサイクル原料の二次不足リスク

バージン材の供給減により梱包材など廃プラスチックの発生量自体が減少しており、数ヶ月後にはリサイクル原料が不足するという二次的供給不足リスクが現実味を帯びています。また再生材メーカーもエネルギーコスト(電気代・燃料代)の急騰に直面しており、再生PPの生産コストも上昇しています。


第5章

製造業・流通業が今すぐ実施すべき対応策

  • 供給プランの複数シナリオ設定:「通常通り」「50%減」「30%減」の3シナリオに加え、「停戦後も6〜12ヶ月回復しない」ロングシナリオを標準計画に組み込む。ICISが指摘する回復12〜18ヶ月を現実ベースとして扱うことが必要です。
  • Q2数量のロックイン:市場アナリストは「4月の値上げは交渉余地がなく、数量確保が価格より重要」と明言。今すぐQ2の引取確約を検討してください。
  • 調達先の地理的分散:米国湾岸(エタンフィード・稼働率90%超)からのPP・PE輸入を新たな選択肢に加える。中国産PE(東南アジア向け$1,400/t超)も選択肢として評価を開始する。Syntex / LyondellBasell CFO
  • 再生材への設計変更前倒し:再生材100%や高比率ブレンドへの切り替えを今すぐテスト。ただし廃プラ発生量の減少による数ヶ月後の二次不足リスクも念頭に置くこと。
  • FMクローズと保険確認:自社の調達契約・輸送契約のFM条項を今週中に確認。戦争危険担保(海上保険)の継続有無と保険料率の変動をブローカーと緊急確認する。ceinterim.com / Sidley Austin 2026-04
  • 在庫の戦略的積み増し:停戦合意後でもサプライチェーン正常化まで数ヶ月かかるため、入手可能な今のうちに安全在庫を積み上げる。ただし再生材の二次不足リスクを踏まえ、バージン材・再生材ともにバランスよく確保する。
  • 政府支援の活用:経産省は4月10日付で「重要物資の安定的な供給確保のための対応方針」を公表。業種別の相談窓口や在庫融資等の支援措置を積極的に活用する。経産省 2026-04-10

結び

2026年の「不確実性」に備える

原記事(3月24日)執筆時点では「供給が絞られる可能性」として記述した事態は、4月25日現在、可能性ではなく現実として進行中です。FMは31件超に拡大し、PP・PE価格は地域によって最大約80%急騰。日本向け商船の通航は依然として高リスク状態にあります。

4月7〜8日の一時的な軍事停止合意、4月17日のイランによる開放宣言など、情勢は流動的に動いています。しかしICISが示す「海峡再開後も12〜18ヶ月の回復期間」という見通し、および4月13日のCENTCOM逆封鎖による新たなエスカレーションを踏まえると、「いつか収まる」という楽観シナリオを前提とした調達計画は危険です。

プラスチックパレット株式会社としての見解
物流資材・プラスチックパレットに用いるPP樹脂の調達は、少なくとも2026年Q3〜Q4にわたり高コスト・供給制約の環境が続くと見通しています。在庫計画・発注タイミングについては、お早めにご相談ください。代替素材・リサイクル材の活用提案も含めて対応いたします。

引き続き、中東情勢の推移・各メーカーの稼働状況・国内政府の支援策を注視し、情報のアップデートに努めてまいります。